突然!ネタばれしても委員会
第10回
『複製された男』
ここはネタばれオンリーのコーナーです。
これから観る方は、観てから読んでくださいね。
『複製された男』
2013年度作品
監督:ドゥニ・ヴィルヌーヴDenis Villeneuve
原題:Enemy
原作:ジョゼ・サラマーゴJosé Saramago
配給:クロックワークス/アルバトロス・フィルム
配役:ジェイク・ギレンホール/メラニー・ロラン/サラ・ガドン/
イザベラ・ロッセリーニ、他
ミニシアター向きのこの映画をなぜシネコンで上映するのだろう。過剰説明に
慣れきったテレビ観客には歯が立たない映画だ。シネコンでこういうのを上映す
る場合、ミニシアター枠として色分けした上でスクリーンに乗せなければならな
い。映画と観客のミスマッチを防いで、観客の満足比率を上げる努力が要求され
る。
身体的にまったく同一の男がいることを発見し、二人は接触する。ジェイク・
ギレンホールが外見のみ同一の二人を演じる。これ以上の説明は不要と思う。あ
とは観るものが勝手に判断することだ。
やや食い足りない気分だったが、いくつか気になるポイントがあって、あれこ
れ思いがあとに残った。
巨大なクモ(アシダカグモか?)は主人公の内なる悪魔を象徴しているのか。
妊婦(サラ・ガドン)は何を思って大学教員(ジェイク・ギレンホール)をベ
ッドに誘ったのか。不実な夫(これもジェイク・ギレンホール)への意趣返しか。
最も気になったのは、教師が大学で教える講義内容。歴代の独裁者が民衆を統
治する手法について講義している。ローマでは民に娯楽を与え、不満を発散させ
た。また別の例では知識を持つことを恐れて教育を制限した。映画の本筋とつな
がってるようには見えない。関係ないと言い切るには印象が強すぎる。
この映画は何も説明しようとしない。ラストも、肝心の真相などどうでもいい
とばかりに、唐突に終わる。観る側に読み解く意志を要求している。
クモはサラ・ガドンかもしれない。ジェイク・ギレンホールかもしれない。
2014.7.23
[追記]
ネタバレサイトを見ると主人公は多重人格で、役柄の上でも一人の人間だとい
うことになっている。映画の中ではそういうふうに描かれてはいない。いいかげ
んなことを言うんじゃない。
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