極楽news No.36
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 極 ┃      ┃┃     ┃
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Contents
 ・『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』
 ・ターミネーターのゆくえ
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◎公開中の新作から『ブロードウェイ♪ブロードウェイ コーラスラインにかける夢』
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 監督:ジェームズ・スターン、アダム・デル・デオ
 2008年度作品

 オーディションをまるごとドラマ化した傑作ミュージカルの再演。そのオーディシ
ョンをドキュメンタリにするという、一種の入れ子構造になっている。役のセリフ部
分は" "でくくってあるので、地のセリフと混同しないようになってます。


 8か月にも及ぶ長いオーディション。オーディションの進行とともに気持ちが高ぶ
る。受験生でもないのに観てるだけで緊張し、熱くなっていく。

 各地から集まるダンサーの質は高い。それぞれの人生が試験会場で交錯している。
人生を賭したドラマが役柄のドラマに重なる。ほとんどない可能性にチャレンジして
いく大勢の精神力に圧倒される思いだ。反面、ささいなことで役を見失い、くずれて
ゆく姿も見られる。

 最初のほうで落ちる人はまだいい。最終選考に近づくほど、「不合格」の烙印はそ
れぞれの胸に大きく突き刺さる。しかし彼らは次の機会をめざし、淡々とした表情で
去っていく。

 あれほどのチャレンジを僕はしたことがあるだろうか。ないことはないが、あると
自信をもって言えなくなってきた。自分で自分の殻を破ることができなかったなと思
う。


 ラストの本番ステージは映画『コーラスライン』と同じく、『ワン』の歌とともに
全員のラインダンス。合格者それぞれの晴れやかな顔を見ているうちに涙が込み上げ
た。


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◎ 映画雑話……… ターミネーターのゆくえ
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 『ターミネーター』の第4作をひそかに期待していました。シュワルツェネッガー
がいようがいまいが関係なし。『3』は『4』へもっていくための壮大な伏線。そう
思ってました。だが、その期待はポシャッてしまった。

 新聞の一面広告に「ターミネーター:サラ・コナー クロニクル」ファースト・シ
ーズンが現われたとき、「こりゃなんだ?」と戸惑いました。『4』を作るのをやめ
てテレビシリーズに移るのか。

 調べると、違った。『4』は制作中で来年公開予定。『3』をなかったことにし、
そのかわりにテレビシリーズを挿入し、『4』につなぐということだ。『宇宙戦艦ヤ
マト』みたいなことやっている。

 シリーズ中で最も評価してたのは『3』なのです。製作者どうしで話の展開に対す
る意見が食い違い、結局『3』をボツにし、アナザーストーリーに移行したというこ
とらしい。

 『3』は、将来の人類の救世主となるべきジョン・コナーが、やたら弱々しく情け
ない顔をしたニック・スタールでした。『2』のエドワード・ファーロングともつな
がらないこともあって、一般には不評のキャスティングでした。

 なんでこんなキャスティングにしたのでしょうか? 理由は「ジョン・コナーが人
類の救世主じゃない」から。ジョン・コナーは本当の救世主を暗殺者から守るため、
名目上のリーダーとなるわけです。彼は犠牲となって斃れるが、真の救世主が人類を
率い、勝利する、という筋書きです。

 「真の救世主って、誰?」ですって? ケイト・ブリュースターです。『4』では
コナーの妻になる女性です。『3』ではクレア・デインズが演じていました。ニック
・スタールより、はるかにガッツがありそうです。人類を救うのは女性になるはず、
でしたが、なぜかその案は却下されたようです。


 新聞広告ではサマー・グラウの裸身がドデーンと大きくのっていました。善玉女性
ロボットとして登場するそうだ。個性的で人間くさい風貌はロボットにはまるで不向
きにも見えるが、案外新たなロボット像を見せてくれるのかもね。

 「クロニクル」では女性ロボットとサラ・コナー(ジョンの母、リナ・ハーディ)
がハードに活躍しそうだ。制作中の『4』にはケイト・ブリュースター役にブライス
・ダラス・ハワードが出ている。男性の背後でおとなしくしてる人ではない。いずれ
にせよ、女性が人類の命運の鍵を握ることにはかわりがないのかもしれない。

 シュワルツェネッガーは知事の任期中なので、二つの新作のいずれにも出演しませ
ん。まあそれは、いいんですけど。


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◎ こういうの、観てもいいのかな、という映画
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『ワイルド・バレット』
 公開日不明 2006年度作品 監督:ウェイン・クラマー
   出演:ポール・ウォーカー、ヴェラ・ファミーガ、キャメロン・ブライト

 ピピッとアンテナに引っかかってるサスペンス映画です。キャスティングにもシャ
ープさが感じられる。必見と思うものの、どのへんの映画館で公開されるものやら。



『動物農場』
 12月20日京都公開 1954年度作品
   監督:ジョン・ハラス&ジョイ・バチュラー
   原作:ジョージ・オーウェル

 驚いたが、日本初公開なんですね。風刺小説のアニメ化です。古さを感じさせなけ
れば傑作の可能性が大。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 CINEMAテーブルは14日に発送しました。執筆者の方、予約された方へは届
いてるはずです。届いてなければ連絡ください。

 部数はまだありますので、ご希望がありましたらどうぞ連絡を。1部600円プラ
ス送料(1〜2部なら80円)です。


「長岡京市立図書館」11.25 ルーマ・ゴッデン『ラヴジョイの庭』
「出版案内」11/21 お楽しみCINEMAテーブル発行
「ノン・アカデミックの音楽」11/19 鈴木慶江「REGALO」
「山歩き・里歩きMap」11.13 淀川サイクリングコース
「御漫画」11.7「おめでとオバマさん」
[極楽貧乏」10.18 日々のくらし

『ブロードウェイ♪ブロードウェイ』‥生ステージより面白いかも
『トロピック・サンダー』‥‥‥‥‥‥‥笑えない悲惨なコメディ
『パークアンドラブホテル』‥‥‥‥‥‥‥‥心地よい空間でした
『ラブファイト』‥‥‥‥‥‥‥‥‥北乃きいは予想通りの大満足
『天国はまだ遠く』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥徳井義実は意外な収穫
『デイ・オブ・ザ・デッド』‥脚本がもっとしっかりしてれば・・
『僕がいない場所』‥‥‥‥‥独特な味わいのあるホームレス映画
『パコと魔法の絵本』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥想定外の秀作
『崖の上のポニョ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥子供向けなのかなあ、と
『ベティの小さな秘密』‥‥‥‥‥‥‥‥女の子の存在感で魅せる
『TOKYO!』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥なんといっても藤谷文子
『アイズ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥大音響のホラー演出さえなければ
『ゲット スマート』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥オリジナルより面白い
『ハンサム★スーツ』‥‥‥‥‥‥爆笑、今年のベストワン・・?
このあとは『誰も守ってくれない』に期待
 

極楽news No.35
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 極 ┃      ┃┃      ┃
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Contents
 ・『ハンサム★スーツ』
 ・米国のメガヒット映画
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◎ 公開中の新作から……… 『ハンサム★スーツ』  2008年度作品
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 監督:英 勉
 出演者:塚地武雅、谷原章介、北川景子、大島美幸、佐田真由美、池内博之、本上
まなみ、ブラザー・トム、温水洋一、中条きよし、伊武雅刀

 着るとハンサムになるスーツを、ブサイクな男が着て変身するコメディファンタジ
ー。ありえない話を漫画チックに描いてはじけまくり、爆笑を誘っている。

 『愛しのローズマリー』同様、差別ギャグのオンパレードですが、塚地武雅だとな
ぜか遠慮会釈なく笑えてしまえる。誰もが文句なしに認めるブ男だし、本人もそれを
売りにしてるみたいだし。

 封切日、満席でした。終わってさっそく携帯で面白さを報告してる人もいた。宣伝
力だけで無理やりヒットのつまらなそうな映画が映画館で幅を利かせてる中、本当に
面白い映画が口コミで広まって大ヒットしてくれたら嬉しい。


 拾い物だったのは、『グーグーだって猫である』ではほとんど目立たなかった大島
美幸(森三中)。メインキャストとして出ると魅力全開。一見不美人タイプで、じわ
じわと好印象が伝わって、起用は見事に成功している。

 この映画、ラストのオチは途中でばれてしまう。これがデビュー作の監督はあまり
にもしつこく伏線を張りすぎた。僕は前半でわかってしまいました。わかっても面白
いんですが、やはり隠したほうがより面白かったんじゃないかな。


 田中美里が歌っていた『My Revolution』がBGM、携帯着メロ、エ
ンドクレジットなど、使いまくられている。田中美里もラストでゲスト出演して歌っ
ている。懐かしくなって、帰ってからLPを引っ張り出しました。なんと、押し入れ
のいちばん奥にあった。やっぱりいいっスよね。


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◎ こういうの、観てもいいのかな、という映画
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『ラブファイト』
 11月15日全国公開 2008年度作品 監督:成島 出
   出演:北乃きい、林遣都、桜井幸子、大沢たかお

 予告篇がめちゃくちゃ元気いっぱいで楽しそうだったんです。北乃きいはなかなか
いいですね。


『プラインドネス』
 11月22日全国公開 2008年度作品 監督:フェルナンド・メイレレス
   出演:ジュリアン・ムーア、マーク・ラファロ、伊勢谷友介、木村佳乃、ダニ
ー・グローヴァー、ガエル・ガルシア・ベルナル

 視力を失う病が蔓延するというサスペンススリラーSF。

 名作『シティ・オブ・ゴッド』『ナイロビの蜂』のメイレレスです。が、この映画
の評判はイマイチ。迷うところですが、配役が悪くないので観ると思います。


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◎ 映画雑話……… 米国のメガヒット映画
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 米国本国公開の基準では、メガヒットは興行収入で1億ドル超です。近年はその本
数が10本を下回ることがありません。

 最近日本で公開された映画を挙げます。米国内での興行収入:制作費。

 『アイアンマン』3億1829万ドル:1億4000万ドル
 『アメリカン・ギャングスター』1億3012万ドル:1億ドル
 『アルビン 歌うシマリス3兄弟』2億1732万ドル:7000万ドル
 『インクレディブル・ハルク』1億3451万ドル:1億5000万ドル
 『インディ・ジョーンズ〜』3億1701万ドル:1億8500万ドル
 『ウォーリー』2億2210万ドル:1億8000万ドル
 『ウォンテッド』1億3429万ドル:7500万ドル
 『カンフー・パンダ』2億1539万ドル:(不明)
 『ゲット スマート』1億3024万ドル:8000万ドル
 『ジュノ』1億4349万ドル:750万ドル
 『セックス・アンド・シティ』1億5263万ドル:6500万ドル
 『ダークナイト』5億2735万ドル:1億8500万ドル
 『トロピック・サンダー〜』1億0987万ドル:9200万ドル ※続映中
 『ハンコック』2億2794万ドル:1億5000万ドル
 『ビー・ムービー』1億2659万ドル:1億5000万ドル
 『ホートン ふしぎな世界のダレダーレ』1億5452万ドル:8500万ドル
 『魔法にかけられて』1億2770万ドル:8500万ドル

 目を引くのは『ダークナイト』と『ジュノ』。前者は興行収入、後者は制作費に注
目してください。

 日本で知名度の低いものや未公開のものなどを一部省略。収入には米国以外でのア
ガリや、DVD、TV放映などの、いわゆる二次利用分が入っていません。制作費の
中には配給と興業の経費は含まれません。興業収入から劇場と配給会社の取り分が差
っ引かれます。ややこしいですが、このリストで興行収入のほうが少なくても黒字に
なっているものもあります。

 さて、興行的に失敗したものも一部さらしものにしましょう。

 『スピード・レーサー』4392万ドル:1億2000万ドル
 『ナルニア国物語 第2章〜』1億4161万ドル:2億ドル
 『ハムナプトラ3〜』1億0217万ドル:1億4500万ドル
 『ライラの冒険 黄金の羅針盤』7008万ドル:1億8000万ドル

 シリーズものに関しては、出来の善し悪しにかかわらず、これで打ち止め。ひどい
のは『スピード・レーサー』。もはやウォシャウスキー兄弟の映画界での命脈も尽き
たか。

 数多い製作会社との関係をからめて取り上げたかったんですが、長くなったのでそ
ちらのほうは後日にまわします。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 9月に風邪(たぶんインフルエンザ)をひきました。12年ぶりのことでした。丸
一日寝て、なんとか治しました。なんとかは風邪ひかないはあまりあてにしないほう
がよさそうですね。体調管理をしっかりと。

 ちなみにそれ以前の風邪はまったく記憶にありません。ひょっとしたら子供時代に
ひいたことがあるかも、ぐらい。


[極楽貧乏」10.18 日々のくらし
「変神探訪」10.14 平野区の全興寺
「ノン・アカデミックの音楽」10.10 吉松隆の『プレイアデス舞曲集』
「長岡京市立図書館」10.5 岩瀬成子『そのぬくもりはきえない』
「出版案内」9.30 ひょっこり通信発行
「御漫画」9.8 「福落ち」

『ハンサム★スーツ』‥‥‥‥‥‥爆笑、今年のベストワン・・?
『ICHI』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥けっこう楽しめる映画です
『落下の王国』‥‥石岡瑛子より5歳のインド人少女のほうが立派
『ハロウィン』(新作)‥‥‥‥‥‥‥‥こわい、リアルにこわい
『コドモのコドモ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥不思議な感動を覚えました
『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』‥すばらしき政治内幕もの
『アイアンマン』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥味わい深い秀作
『トウキョウソナタ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家庭恐怖物語の秀作
『落語娘』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ミムラに落語はムリ
『おくりびと』‥‥‥‥‥‥‥‥‥ウェルメイドな娯楽映画でした
『おろち』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥谷村美月にハズレなし
このあとは『ラブファイト』に期待
 

極楽news No.34
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 極 ┃      ┃┃ ┃┃ ┃
 楽 ┃ ┏━━┓ ┃┃ ┃┃ ┃  2008.10.26
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No.┃      ┃   ┃ ┃  不定期刊
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Contents
 ・『コドモのコドモ』
 ・「アメイジング・グレイス100%」 ※
 ・日本映画の子役
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◎ 公開中の新作から……… 『コドモのコドモ』  2008年度作品
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 監督:萩生田宏治 原作:さそうあきら(コミック)
 出演:甘利はるな、宮崎美子、榎木兵衛、谷村美月、光石研、北見敏之、上野樹里、
柄本佑、塩見三省、麻生久美子 ほか

 小学5年生が、大人の手を一切借りずに出産する。

 主演の甘利はるなの顔から明確な意志の力が感じられる。自分のお腹の中に子供が
できてしまったことを知ったとき、産みたいと思い、その通りに実行する。迷いのな
さが納得印。

 出産計画の共犯者はクラスメート全員。大人には知らせない。

 家族を含む大人たちが気づかないっていうのはさすがに非現実的だが、「まさかそ
んなことがあるはずもない」という思い込みが発覚を妨げている、という演出になっ
ている。しかし僕には子供たちのファンタジーに見える。リアリティがないという意
味ではない。子供たちの部分に限定すれば、その世界はすばらしく活き活きと活写さ
れている。

 萩生田監督は子供たちの世界にしか興味がないのではないか。担任(麻生久美子)
のエピソードを含め、大人たちのエピソードがどれも半端に浮き上がって置き去りに
なっていることからも、それがうかがえる。萩生田監督は前作『神童』も『帰郷』も
コドモがメインの映画だった。


 雪の北国をバックにした映像も素晴らしい。雪を背景にした子供たちの王国。愛お
しい物語。ストーリーではなく、この世界に奇妙な感動を覚えた。

 帰り道の途中、公園で子供たちが昆虫を相手に遊んでいた。彼らの内面には僕の想
像を超える世界が展開してるのではないだろうか。見えない世界に思いを馳せてしま
った。


 この映画はシネマ・シンジケートの第一回選定作品としてロードショー公開されま
した。シネマ・シンジケートは、シネコンなどの興業チェーンに属さない独立した映
画館が集まり、映画ファンに観てほしい映画を共同で公開していこうという新たな取
り組みです。その成否には、強い関心を持っています。


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◎ これは観るべきかな、と迷っている映画
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『七夜待』ななよまち
 11月8日京都公開 2008年度作品 監督:河瀬直美
   出演:長谷川京子、グレゴワール・コラン

 うっかり「ななよざむらい」と読んでしまい、「意味不明ながらいいタイトルだな」
と感心してしまった(笑)。間違いとわかってからも、つい口にしてしまう(苦笑)。

 舞台はタイです。タイ古式マッサージを通して心までほぐされてゆく女性が長谷川
京子。最近の河瀬監督は僕にとって鬼門だが、この映画はひょっとしたらと期待を抱
かせるものがあります。



『ダイアリー・オブ・ザ・デッド』
 11月15日全国公開 2007年度作品 監督:ジョージ・A・ロメロ
   出演:ミシェル・モーガン ほか
『デイ・オブ・ザ・デッド』
 11月15日京都公開 2008年度作品 監督:ジョージ・A・ロメロ
   出演:ミーナ・スヴァーリ、ニック・キャノン、ヴィング・レイムス

 ともにゾンビ映画です。同じ監督で同日公開。シリーズではないし、配給会社も別
ですが。

 『デイ・オブ・ザ・デッド』はミーナ・スヴァーリがヒロインというだけで興味持
ってます。気になる女優です。



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◎ 最近の一枚 ……… 「アメイジング・グレイス100%」
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 BMGファンハウス BVCC37403
 『アメイジング・グレイス』(讃美歌第2編167番『われをもすくいし』)

 同一曲を、トップの白鳥英美子(トワ・エ・モア)からラストのエルヴィス・プレ
スリーまで、15のミュージシャンが歌い、演奏する。インストゥルメンタルあり、
ゴスペルのコーラスあり、オーケストラあり、です。

 曲がいいからでしようけど、実に心地よいCDです。


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◎ 映画雑話……… 日本映画の子役
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 日本映画の子役も最近はなかなか達者です。そのまま成長して若手実力派俳優とし
てシフトしていく人も多いので、たのもしい。

 この一年で目についた子役では、藤本七海(『子猫の涙』『奈緒子』『落語娘』)、
五十嵐令子(『アフタースクール』『夕映え少女』)、小池里奈(『グーグーだって
猫である』『夕凪の街 桜の国』)、須賀健太(『ALWAYS 続・三丁目の夕
日』)あたり。子役という枠組みを超え、いっぱしの役者としてそれぞれ個性を出し
ているのは立派だ。

 子供たちの意識の中で、演技するというのはどんな感覚なんでしょうか。ごっこ遊
びの延長で、案外大人たちよりも簡単に入り込めるのかもしれません。映画の中のキ
ャラクターをしっかりつかまえられてるかどうかが成功のカギになりそうですね。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 世界恐慌の真っ最中です。百年に一度の大事件です。映画館も閑散としている。す
でに影響が出てるのでしょうか。

 他人事のように言っててはいけません。自分の身に降りかかりつつあるのですから。
そう言いながらも映画館通いを続けています。


「極楽貧乏」10.18 日々のくらし
「変神探訪」10.14 平野区の全興寺
「ノン・アカデミックの音楽」10.10 吉松隆の『プレイアデス舞曲集』
「長岡京市立図書館」10.5 岩瀬成子『そのぬくもりはきえない』
「出版案内」9.30 ひょっこり通信発行
「御漫画」9.8 「福落ち」
「映画未使用名曲」9.1 マリピエロの弦楽四重奏曲
「船越屋画廊」8.31『エナジー』と『パワー』
「シネ漫コラム」8.18『ギララの逆襲』

『コドモのコドモ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥不思議な感動を覚えました
『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』‥すばらしき政治内幕もの
『アイアンマン』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥味わい深い秀作
『トウキョウソナタ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家庭恐怖物語の秀作
『落語娘』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ミムラに落語はムリ
『おくりびと』‥‥‥‥‥‥‥‥‥ウェルメイドな娯楽映画でした
『おろち』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥谷村美月にハズレなし
『デトロイト・ロック・シティ』‥‥世にも稀なる偶然が重なった
『幻の湖』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥血迷った映画
『大いなる陰謀』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥大いなる幻滅
『ネクスト』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥話の面白さはたぶん原作の力
『夕凪の街 桜の国』‥‥‥‥‥‥‥‥‥あらためて思う、傑作と
このあとは『ラブファイト』に期待
 

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Contents
 ・『アイアンマン』
 ・カフェ・マヌーシュ「ヌーヴェル・エディショ」
 ・シネコンの裏
 ・9月の懇親パーティ
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◎ 公開中の新作から……… 『アイアンマン』  2008年度作品
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 監督:ジョン・ファヴロー
 出演者:ロバート・ダウニーJr.、グウィネス・パルトロウ、テレンス・ハワー
ド、ジェフ・ブリッジス

 アメコミ・ヒーローものです。『インクレディブル・ハルク』もよかった。『アイ
アンマン』も極上の娯楽に仕上がっている。

 日本アニメを見慣れた目にはパワードスーツのデザインがダサダサに見えるかもし
れない。そんなもの、話の面白さにかき消されて気にならなくなります。


 マーヴェル・コミックスの映画化でハリウッドメジャーの大作。そのわりにキャス
トが渋すぎて、興行的に大丈夫かと心配したが、少なくとも本国米国では大ヒットし
た。日本じゃ当たらないだろうけど、いちおう二作目は製作が決定しています。

 しかしこの映画、地味なキャストの面々がいい。特にグウィネス・パルトロウの起
用は大成功だと思う。コミカルな演技をそつなくこなす人ですが、瞳の奥にときとし
て悲しみが宿る表情は深みがあって素敵です。本作でもその魅力が十分に生かされて
いる。

 同一原作の映画化?と錯覚するほど話が似ている『インクレディブル・ハルク』と
の違いは、『アイアンマン』のほうにユーモアがあること。そしてヒロインのパルト
ロウとリヴ・タイラーの差。較べると演技力の差がはっきり見えてしまった。タイラ
ーが大根とはいいきれないけど、あくまで比較の問題として。


 エンドクレジット後にエピソードがあるとかなんとか出ますが、見ても見なくても
お好きなように。見る場合は期待しないように。蛇足未満の付け足しです。


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◎ こういうの、観てもいいのかな、という映画
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『ICHI』
 10月25日全国公開 2008年度作品 監督:曽利文彦 原作:子母澤寛
   出演:綾瀬はるか、大沢たかお、中村獅童、窪塚洋介、柄本明

 松山容子の「めくらのお市」のリメイクらしいが、宣材には「めくら」の「め」の
字も見当たりません。禁止用語で自粛したのでしょうか。
 男のキャストはみんないかついですね。


『お姉チャンバラ THE MOVIE』
 公開日不明 2008年度作品 監督:福田陽平

 ゲームの映画化だそうで。ゲームを知らないと『ひぐらしのなく頃に』の二の舞い
になりそうです。

 今年、『片腕マシンガール』とか、『ギララの逆襲』とか、「これでもか!」とい
うようなアホっぽい映画が立て続けに公開される。この映画もその手かと思う。なに
しろキャッチコピーが「美女!×水着!×日本刀!×ゾンビ!」ですから(笑)。


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◎ 最近の一枚 ……… カフェ・マヌーシュ「ヌーヴェル・エディショ」
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 カフェ・マヌーシュ MAN-CM 01
 「ヌーヴェル・エディショ Nouvelle Edition」

 カフェ・マヌーシュは、マヌーシュ音楽のグループです。マヌーシュっていうのは
フランス辺りを流浪するジプシーの一部族ですが、彼らの音楽を確立したのがジャン
ゴ・ラインハルト。そんな音楽を日本でやっているのがカフェ・マヌーシュです。

 マカフェリ・ギターの名手、川瀬眞司をリーダーとし、同じくマカフェリ・ギター
の山本佳史、コントラバスの中村尚美の三人によるバンドです。このCDにはヴァイ
オリンの足立安隆もゲスト参加しています。

 すっかりはまってしまいました。心地よく流れていく乗りのいい音楽。僕は技巧を
聴かせる曲も好きなのですが、その点でも聴きごたえあり。

 自主制作のようなので、ショップには置いてないと思います。サイトのURLを挙
げます。
 http://www.manouche.jp/

 世界を視野に入れてるせいか、CDジャケットには日本語がほとんど入っていませ
ん(「税込」ぐらい)。フランス語の読みに関してはあまり自信がないので、タイト
ル表記はフランス語辞書の発音表記にしたがいました。意味は「新版」といったとこ
ろでしょう。


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◎ 映画雑話……… シネコンの裏
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 「動員数と興行収入だけがすべて」というシネコンは好きではありませんが、そん
なシネコンでも上手に利用しないと映画を観れません。

 シネコンは基本的に動員力に応じてキャパシティ(席数)を割り振りますが、大手
配給会社や自社配給に対しては手心を加える。一作品あたり、一日の上映回数が多い
ほど興行収入は伸びる。配給会社はなるべく回数を確保したがります。ただし、キャ
パシティに関しては逆になることがあります。

 マイナーな配給会社の映画が458席の大スクリーンで上映されたことがありまし
た。観客数は20人ほど。がらがらです。大手の映画は主に180〜190席のスク
リーンで上映してました。そのときはどの映画も入りがぱっとしなかったのです。大
手は小さいスクリーンでの上映を希望したのだと思っています。

 1スクリーンに対して50人しか入らない場合、458席でやれば入りが悪いとい
う印象を与える。50人をそのまま180席に移動させるとどうなるか。よく入って
るように見えます。「がらがらの印象」と「よく入ってる」では、見た目がいいのは
どっちかわかりますよね。観客の密度は興業に影響するのです。

 ちなみにチケットカウンターでは、客を中央寄りに集めようとします。均等に散ら
ばると客席がスカスカに見えることがあるので。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
───────────────────────────────────────

 9月21日にCINEMAテーブルの懇親パーティをしました。年二回が定着しそ
うです。
 新人も二人加わり、顔ぶれが毎回変わりますが、どんなメンバーであっても盛り上
がれるというのが面白いです。

 9月は再見の『夕凪の街 桜の国』を除いて当たりの映画がほとんどなく、メルマ
ガ発行の間隔が空いてしまいました。首を長くして待ってたという方はおられないで
しょうけど。


『トウキョウソナタ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥家庭恐怖物語の秀作
『落語娘』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ミムラに落語はムリ
『おくりびと』‥‥‥‥‥‥‥‥‥ウェルメイドな娯楽映画でした
『おろち』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥谷村美月にハズレなし
『デトロイト・ロック・シティ』‥‥世にも稀なる偶然が重なった
『幻の湖』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥血迷った映画
『大いなる陰謀』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥大いなる幻滅
『ネクスト』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥話の面白さはたぶん原作の力
『夕凪の街 桜の国』‥‥‥‥‥‥‥‥‥あらためて思う、傑作と
『ホットファズ』‥‥‥‥‥‥‥‥意外にマジメ?な警官コメディ
『グーグーだって猫である』‥‥‥‥‥まあ、こんなもんでしょう
『ぼくの伯父さん』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ほのぼの、ゆっくり気分
『シャッター』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥まだるっこしいホラー
『アクロス・ザ・ユニバース』‥‥‥‥‥‥‥退屈なミュージカル
『ゲゲゲの鬼太郎 千年呪い歌』2が1を凌駕するジンクスが続く
『おいしいコーヒーの真実』‥‥‥‥‥上質のドキュメンタリです
『鳥の巣 北京の〜』‥‥‥‥‥‥‥‥やっぱりなあ、という感じ
『闇の子供たち』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥心ゆさぶられる力作
『ALWAYS 続・三丁目の夕日』‥‥‥‥一作目を超える秀作
このあとは『コドモのコドモ』に期待
 

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Contents
 ・『ALWAYS 続・三丁目の夕日』
 ・観る映画決定までのプロセス
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◎ 公開済の映画から……『ALWAYS 続・三丁目の夕日』 2007年度作品
───────────────────────────────────────

 監督:山崎貴
 出演者:吉岡秀隆、小雪、堤真一、薬師丸ひろ子、堀北真希、須賀健太、吹石一恵、
小清水一揮、もたいまさこ、三浦友和、貫地谷しほり、福士誠治、小日向文世、神戸
浩、平田満、手塚理美、小池彩夢、浅利陽介、ピエール瀧、マギー、温水洋一 ほか

 ウェルメイドな娯楽映画の良品に仕上がっていて驚いた。二作目ということで、各
キャラクターになじみができていたせいもあるんだと思う。それぞれ、惰性に陥らず、
調子に乗りすぎず、実にこなれたキャラクターを見せてくれる。安心して没入してい
られた。


 「どうせ蛇足」と思って、封切公開はパスしました。『あの空をおぼえてる』が観
たくなったとき、二番館二本立てでやって来ました。この場合『あの空』のほうが併
映でしょうが、観る前は『ALWAYS』のほうが「ついで」でした。

 期待しなかった効果もあったんでしょうけど、どっぷりのめりこんでしまい、大笑
いし、しみじみ涙ぐみました。女の子(小池彩夢)が福岡へ引っ越してゆく別れのシ
ーンはどっと涙。

 大ヒット作の続編で期待を裏切らないものを作るというのは並大抵のことではない
はず。それだけに作り手のハードな努力に敬意を表したい。

 俳優はみんな味があっていいですが、特に子役の須賀健太を挙げたい。作り物の作
品世界の中にすっかり溶け込みきって、その時代をリアルに感じさせるキーキャラク
ターになっている。入り込みようが天才的というしかない。当然、演技してるんでし
ょうけど、リアルすぎる。


 本命のつもりで観た『あの空をおぼえてる』のほうはどうだったかというと、ま、
これは言わぬが花でしょう。


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◎ やっぱり観るべき? という映画
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『グーグーだって猫である』
 9月6日全国公開 2008年度作品 監督:犬童一心 原作:大島弓子
   出演:小泉今日子、上野樹里、加瀬亮、林直次郎、伊阪達也、森三中

 ミニシアター系で超ヒット必至の映画。チラシと予告篇を見ただけで「あ〜、これ
はイッてしまった」と予感できるほど作品に力がみなぎっています。憎たらしいほど
可愛らしいですね。



『シャッター』
 9月6日全国公開 2008年度作品 監督:落合正幸
   出演:奥菜恵、ジョシュア・ジャクソン、レイチェル・テイラー、デヴィッド
      ・デンマン、マヤ・ヘイゼン

 日本を舞台にしたアメリカのホラーですが、あまり詳しいことはわかっていません。
『呪怨』がイマイチだった奥菜恵に奮起を期待するのです。



 10月以降に公開される「盲目映画」2本と「かん黙映画」1本がかなり気になり
ますが、まだまだ先ですので、紹介はまた後日。


───────────────────────────────────────
◎ 映画雑話……… 観る映画決定までのプロセス
───────────────────────────────────────

 毎月劇場で映画を十本以上観てますが、ノルマではありません。観たいものを絞り
込んで、結果的にそうなってしまうのです。自分でもちょっと多いかなと思うので、
もう少し絞り込みたいのですが。

 観るか観ないかは、面白そうかそうでないか、自分が見たいものがその映画の中に
あるかないかによって決まります。映画の中の何を見たいのかをはっきりさせること
は大事だと思います。漫然と「これって、いいかも」で観て、外した場合は「なにや
ってんだ、ボク」と自己嫌悪に陥ってしまいます。

 一部、決定プロセスを簡単に例示してみましょう。

『ジャージの二人』
 ◎ 中村義洋監督は『ルート225』『アヒルと鴨のコインロッカー』『チーム・
   バチスタの栄光』と、三本連続大当たり
 △ キャスティングはビミョー
 × 予告篇はだるそー
 × キネマ旬報の星取り表では四段階での1と2が二つずつ
    → パス

『闇の子供たち』
 ◎ 内容は熾烈で容赦がなさそう
 ○ 阪本順治監督の次回作『カメレオン』の出来映えから見て、現在の充実度が感
   じられる
 ○ キャスティングは重くなりすぎず、バランスがいい
    → 当然観る

『ぐるりのこと。』
 × たぶん橋口亮輔監督とは相性が悪い
 × 予告篇でリリー・フランキーが素人演技に見えた
 ○ 木村多江のたたずまいや気配には魅かれるものがある
    → パス

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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 ユーチューブで映画の予告篇を見ています。家にいながらにして見られるのはあり
がたい。映像は映画館で見るより見劣りしますが、予告篇はだいたいの感じをつかめ
ればいいので。

 http://jp.youtube.com/watch?v=6MtIibOduyQ 火垂るの墓
 http://jp.youtube.com/watch?v=1FhDZDOvWsM 闇の子供たち
 http://jp.youtube.com/watch?v=PwH4Bsfaz_M 落語娘
 http://jp.youtube.com/watch?v=1ZtSo9gje9E おいしいコーヒーの真実

 そんなの、ずっと前からやってるよ、と言われるかも。


「シネ漫コラム」8.18『ギララの逆襲』
「御漫画」8.12 「鳥の巣、萬歳」
「ボツ画供養塔」8.1「アメーバ」
「映画未使用名曲」8.1 バルトーク『ルーマニア民族舞曲』
「極楽貧乏」7.29 「シシトウ・ジャングル」
「長岡京市立図書館」7.22 ウィリアム・メイン『闇の戦い』
「船越屋新製品」7.7 「蓄冷スーツ」

『ALWAYS 続・三丁目の夕日』‥‥‥‥一作目を超える秀作
『あの空をおぼえてる』‥‥‥‥‥‥‥竹野内豊が台なしにしてる
『闘茶』‥‥‥‥‥方向性の定まらない演出にフラストレーション
『ギララの逆襲』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥パロディなのに笑いがない
『インクレディブル・ハルク』満足度がきわめて高いメジャー映画
『世界で一番美しい夜』‥スズキコージのアニメ部分は素晴らしい
『火垂るの墓』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥松坂慶子はインパクトある
『クライマーズ・ハイ』‥臨場感あるドラマにどっぷりひたりきり
『純喫茶磯辺』‥宮迫博之と仲里依紗の絶妙抱腹絶倒親子コンビ!
『百万円と苦虫女』‥‥‥‥‥‥‥‥‥話がところどころおかしい
『シークレット・サンシャイン』‥‥‥‥‥‥‥‥‥ついていけん
『ホートンふしぎな世界のダレダーレ』ハリウッド・アニメの限界
『ジェリーフィッシュ』‥‥‥‥気持ちよくひたっていられる秀作
このあとは『闇の子供たち』に期待
 

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 楽 ┃ ┏━━┓ ┃┗┓  ┃ 2008.7.31
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Contents
 ・『純喫茶磯辺』
 ・勝手に2008年前半賞
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◎ 公開中の新作から……… 『純喫茶磯辺』  2008年度作品
───────────────────────────────────────

 監督:吉田恵輔
 出演者:宮迫博之、仲里依紗、麻生久美子、濱田マリ、近藤春菜、ダンカン、和田
聡宏、ミッキー・カーチス、斎藤洋介 ほか

 スケベな下心オンリーで節操もなく喫茶店を開業するダメ父(宮迫博之)と、父を
情けないと思いつつ、けなげにフォローする高校生の娘(仲里依紗)。母は男を作っ
て家を出、8年前に離婚している。一見するととてもアンバランスな親娘コンビも、
見てるぶんにはなかなかいい関係だと思えてきます。

 面白いからとにかく観てよと、無条件に推奨できる数少ない映画の一つです。全編
サービス精神にあふれ、笑いが絶えない。斎藤洋介の小ボケなギャグもなかなか利い
ている。


 宮迫博之は今年の主演男優賞が決まったようなもんです。いや、ぜひ、各方面に推
薦させていただきたい。宮迫にとってはこの映画が代表作です。断定します。あとに
なって彼の評価が高まって、適当な映画で賞を獲ってしまうより、獲るべき作品で獲
ったほうがよろしい。

 仲里依紗(なか・りいさ)も、今年の新人賞が本決まりと言えるハイレヴェルな演
技を見せてくれています。『ガチ☆ボーイ』ではチョイ役だったのに主演クラスを食
っていたが、今作で楽々と主演もこなせることを証明した。


 この映画に関しては細かいことをごちゃごちゃ書くより観てもらうにこしたことは
ないので、書きません。脱線して仲里依紗について、ちょっと。

 多部未華子、谷村美月に次ぐ十代演技派の大物女優の登場という印象です。ただ、
仲の俳優としての資質はこの二人と決定的に異なっている。谷村は現実離れした存在
感ゆえか、特異なシチュエーションに置かれることが多い(『リアル鬼ごっこ』『神
様のパズル』『魍魎の匣』『カナリア』)。女子高生を演ってもちょっとブッ飛んで
ます(『檸檬のころ』)。

 多部未華子はときとしてカリスマ性を感じさせる風貌と、ネガティヴな心性を見せ
る瞳の力だけで、見る者を感動させる力があります。不幸なことにその力を十分発揮
できる映画にあまり出会えていません。

 仲里依紗はこの二人と違って、ごく普通な女の子を演じるのが似合っています。コ
メディじゃなくマジで超能力者や天才を演じる姿は想像できません。ナチュラルでリ
アルな女の子を演じられる人。それって貴重なことと思いません?


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◎ これはひょっとしてよさそうかも、という映画
───────────────────────────────────────

『屋敷女』
 9月?日京都公開予定 2007年度作品
   監督:ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・パスティロ
   出演:ベアトリス・ダル、アリソン・パラディ、ナタリー・ルーセル ほか

 ホラーです。ベアトリス・ダルは『裏切りの闇で眠れ』のようなマドンナ的な役で
はなく、『ガーゴイル』などのように、おっそろしい女を演じたほうが似合うと思い
ます。



『落語娘』
 9月?日京都公開予定 2008年度作品 監督:中原俊 原作:永田俊也
   出演:ミムラ、津川雅彦、益岡徹、伊藤かずえ、利重剛、なぎら健壱、絵沢萠
子 ほか

 こんな美形が落語やるか、というツッコミは置いといて、去年の『しゃべれども 
しゃべれども』に次ぐ落語ものです。さて、ミムラは噺家を立派に演じきれますでし
ょうか。


───────────────────────────────────────
◎ 映画雑話……… 勝手に2008年前半賞
───────────────────────────────────────

 年間の主演男優賞と新人賞が決まったようですので、前半限定の賞をあげてみまし
ょう。ただのお遊びです。

 竹内結子は、去年キネマ旬報の主演女優賞を『サイドカーと犬』で獲ってますが、
今年の『チーム・バチスタの栄光』のほうがはるかにいいです。個人的前半主演女優
賞はこの人で決まり。

 助演は『西の魔女が死んだ』のサチ・パーカー。男優は圧倒的にこの人というのが
ありませんが、主演に『子猫の涙』の武田真治、助演は『丘を越えて』の西島秀俊。

 外国映画は、主演女優『ジュノ』エレン・ペイジ、助演女優『フィクサー』ティル
ダ・スウィントン、主演男優『モンゴル』浅野忠信、助演男優『ゼア・ウィル・ビー
・ブラッド』ポール・ダノ。

 後半限定賞は気が向いたらまた考えます。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
───────────────────────────────────────

 知人が安いアナログカメラを買ったというので、買う前にまわりの人に不要なのが
ないか聞けばよかったのにと言った。僕は不要なアナログカメラを持っている。彼が
ほしいというので、中望遠レンズともども譲った。有効に活用してくれるなら死蔵す
るよりはいい。

 ふり返って考えると、僕自身も、ほしいけど買うのをためらっているものがある。
録音機器だ。鳥の声などを録りたいと思うものの、本体だけで五千円以上かかる。マ
イクなどの付属機器も必要だろう。ちょっと贅沢かもと迷っている。

 人によってはそれがほしいけど、人によっては不要になってるということはあるで
しょう。ここで表明しておけばもらえるチャンスがあると思い至り、書いておくこと
にしました。


「極楽貧乏」7.29 「シシトウ・ジャングル」
「長岡京市立図書館」7.22 ウィリアム・メイン『闇の戦い』
「船越屋新製品」7.7 「蓄冷スーツ」
「映画未使用名曲」7.1 アルベニスの『アストゥリアス』
「シネ漫コラム」6.24『ジュノ』
「船越屋画廊」6.17『流れ』
「じべたでひろたもん」6.16 リュックサック
「ボツ画供養塔」6.13「NAZO」
「変神探訪」6.12 棚倉孫神社の枡掻奉納
「御漫画」5.28 地すべり独立

『純喫茶磯辺』‥宮迫博之と仲里依紗の絶妙抱腹絶倒親子コンビ!
『百万円と苦虫女』‥‥‥‥‥‥‥‥‥話がところどころおかしい
『シークレット・サンシャイン』‥‥‥‥‥‥‥‥‥ついていけん
『ホートンふしぎな世界のダレダーレ』ハリウッド・アニメの限界
『ジェリーフィッシュ』‥‥‥‥気持ちよくひたっていられる秀作
『散歩する惑星』‥‥‥‥‥どう面白がっていいのかがわからない
『カメレオン』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥東映調復活の佳作アクション
『靖国』‥‥‥‥‥‥‥‥意外に上出来で、見ごたえがあったのだ
『ナルニア2 カスピアン』‥‥傑作! 一作目は忘れてよろしい
『奇跡のシンフォニー』クライマックスのコンサートで盛り下がる
『西の魔女が死んだ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ビミョーな出来映え
『譜めくりの女』‥‥‥‥‥‥絶妙なキャスティングのサスペンス
このあとは『クライマーズ・ハイ』に期待
 

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No.┃      ┃┃      ┃不定期刊
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Contents
 ・『ナルニア国物語 第2章 カスピアン王子の角笛』
 ・日本語タイトルのつけ方
 ・船越屋画廊
───────────────────────────────────────
◎ 公開中の新作から……… 『ナルニア国物語 第2章 カスピアン王子の角笛』
───────────────────────────────────────

 監督:アンドリュー・アダムソン  原作:C・S・ルイス  2008年度作品
 出演者:ジョージー・ヘンリー、アナ・ポップルウェル、ウィリアム・モーズリー、
スカンダー・ケインズ、ベン・バーンズ、ピーター・ディンクレイジ、ウォーウィッ
ク・デイヴィス、セルジオ・カステリット

 一作目よりもよさそうだという感触はあった。しかし一作目がアレなので、観る前
はたいして期待はしなかった。

 高いレヴェルにグレードアップしていた。2時間20分、ダレ場がなく、過不足を
感じない長さ。ユーモアのセンスもグレードアップ。子供たちは精悍な顔立ちになり、
テルマールの軍勢を蹴散らしても違和感を覚えない。

 監督を含めて主だったスタッフは変わっていません。キャストもメインの4人が同
じ。制作者たちは前作のヒットで増長などせず、問題点を洗い出し、積み上げを模索
してたのではないかと思えるほど。


 僕が前作で白けたのは、いろいろあったが、ひとつは子供たちの殺陣がまるっきり
子供のチャンバラ遊びにしか見えなかったことだ。剣の練習シーンがそうだった。そ
のあと、白の魔女の軍勢と対等に戦っていたのは嘘も甚だしい。

 今回はこの点が大きく改善されている。子供たちの顔つきが精悍になったこともあ
るが、訓練シーンを一切入れなかったことがよかった。これなら最初から無条件で勇
者であるというファンタジー世界のお約束が生きる。

 戦闘シーンも格段によくなったし、戦略的思考も一部で採り入れられている(ほん
とはもっと工夫の余地があるが)。難をいえば、アップのカットでは子供たちも頑張
ってるが、引きのシーンとなると、とたんに動きがトロくなる。そこまで見なければ
いいのだけど。


 欠点もありはするが、開巻から一貫する映像のテンポのよさも挙げておきたい。そ
れとともに深みのあるストーリー展開。このあたりは原作を完全に逸脱してるはず。

 原作は第一作の『ライオンと魔女』しか読んでません。だから断定はできないけど、
一作目のストーリーセンスからいって、この映画版の細かいエピソードのほとんどは
オリジナルと思います。C・S・ルイスはこれらを書くセンスを持ちあわせていませ
ん(断定してる!)。


 今回は小人俳優が二人出てますね。一人は『ウィロー』などに出ていたベテランの
ウォーウィック・デイヴィス。もう一人は『ペネロピ』の探偵役、ピーター・ディン
クレイジ。まるっきり顔相が変わってますので、気づきませんでした。


───────────────────────────────────────
◎ こういうのも、観てみようのかな、という映画
───────────────────────────────────────

『純喫茶磯辺』
 7月26日京都公開 2008年度作品 監督:吉田恵輔
  出演:宮迫博之、仲里依紗、麻生久美子、濱田マリ、近藤春菜

 ほとんど純粋に仲里依紗が見たいだけかも(どこが純粋?)。



『火垂るの墓』
 8月2日全国公開 2008年度作品 監督:日向寺太郎 原作:野坂昭如
  出演:吉武怜朗、畠山彩奈、松坂慶子、松田聖子、江藤潤、池脇千鶴、原田芳雄、
長門裕之

 日向寺監督は前作のデビュー作『誰がために』を観てますが、あの一途な直球演出
をここでも発揮するのだろうかと、期待しているのです。



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◎ 映画雑話……… 日本語タイトルのつけ方
───────────────────────────────────────

 英語の映画で、日本語タイトルが原題そのままか、それに近い邦題が目につきます。

 『ハンティング・パーティ』The Hunting PartyのPartyは「隊」で、原題は「狩猟
仲間」または「救助隊」の意味になる。わかるんだけど、すっきりとは伝わらないタ
イトルです。

 『ラスト、コーション』Lust, CautionのLustは「色欲」で、lastとは別の言葉。

 日本の外来語の感覚からすると、しっくり伝わってこないタイトルが多い気がする。
『ウォーター・ホース』The Water Horse: Legend of the Deepは庭に水まく映画か
と思ってしまう。『ジャンパー』Jumperはまだわかるかもしれない。

 挙げた映画で観たのは『ハンティング・パーティ』だけ。映画の出来はよく、面白
い。なのに興行的にはよくない。タイトルに原因があるのだとしたら、もったいない。

 配給会社が安直にタイトルをつけてるとは思いたくない。考えてはいるのだろう。
映画のポイントをきっちり押さえ、それでいて強力にアピールするタイトルを見つけ
るのは難しい。意味のわかりやすい言葉は使い込まれて新鮮味が薄い。似たようなタ
イトルが同時期に並んでしまうのは避けてほいが、並んでしまうこともある(『リト
ル・ミス・サンシャイン』と『ユア・マイ・サンシャイン』はほぼ同時期公開)。

 ちなみに『フィクサー』Michael Clayton、『フローズン・タイム』Cashback、『ブ
ルー・ブルー・ブルー』Newcastle、『ブラックサイト』Untraceableと、なぜか「フ
(ブ)」のつくタイトルばかりですが、一見原題そのままに見えて、違っています。
中身のイメージを伝えようとする工夫のあとが感じられます。


 タイトルの問題とは少しずれるが、カンフーを売りにした映画が今年目立つ。『カ
ンフーくん』『少林少女』『カンフーダンク』『カンフー・パンダ』『燃えよ!ピン
ポン』と、カンフーがらみで5本もある。こうも多いと既視感が強まり、相互にマイ
ナスになるにきまってます。


 別な意味で問題を感じるのは『4ヶ月、3週と2日』。検索すると、正しいタイト
ルの"4ヶ月、3週と2日"が最も多く挙がるが、間違いの"4ケ月、3週と2日"も少な
いながら挙がってしまう。「ヶ」と「ケ」は別の文字です。検索で問題になりそうな
文字はなるべく使わないに越したことはないのです。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
───────────────────────────────────────

 手を広げすぎのサイトゆえ、原則として新たなページの構築をしないつもりでした
が、新しいコーナーを作ってしまいました。すでにある絵を撮影して公開するだけな
ので、まあいいかと思ったのです。

 船越屋画廊というギャラリーコーナー。絵画をHPで公開というのは初めてになり
ます。気が向いたら覗いてみてください。


「映画未使用名曲」7.1 アルベニスの『アストゥリアス』
「シネ漫コラム」6.24『ジュノ』
「船越屋画廊」6.17『流れ』
「じべたでひろたもん」6.16 リュックサック
「ボツ画供養塔」6.13「NAZO」
「変神探訪」6.12 棚倉孫神社の枡掻奉納
「御漫画」5.28 地すべり独立
「極楽貧乏」5.22 「ゴソ姫」

『ナルニア2 カスピアン』‥‥傑作! 一作目は忘れてよろしい
『奇跡のシンフォニー』クライマックスのコンサートで盛り下がる
『西の魔女が死んだ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ビミョーな出来映え
『譜めくりの女』‥‥‥‥‥‥絶妙なキャスティングのサスペンス
『裏切りの闇で眠れ』‥‥‥‥‥‥肌に合わないこってりフレンチ
『接吻』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥強烈なる自己愛の権化にたじたじ
『JUNOジュノ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥予想通りの面白さで大満足
『ランボー 最後の戦場』‥‥‥期待どおりで、それ以上でもなし
『神様のパズル』‥‥‥‥‥‥‥壮大なホラ話に乗せられまくった
『Mr.ブルックス完璧なる殺人鬼』サスペンスの新境地を開いた
『アフタースクール』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥期待を裏切らず、秀作
このあとは『カメレオン』に期待
 

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No.┃      ┃ ┃     ┃不定期刊
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Contents
 ・『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』
 ・谷村美月
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◎ 公開中の新作から………『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』 2007年度作品
───────────────────────────────────────

 監督:ブルース・A・エヴァンス
 出演者:ケヴィン・コスナー、デミ・ムーア、ウィリアム・ハート、デーン・クッ
ク、マーグ・ヘルゲンバーガー

 最近は米国の映画業界も日本と似てきている。メジャーの映画からは傑作が生まれ
る素地が消失してしまった。そのぶん、マイナー系の制作会社が頑張っている。とき
としてお宝が湧いて出てくることがある。『ミスト』や『ハンティング・パーティ』
がそうでした。

 この『Mr.ブルックス 完璧なる殺人鬼』もマイナー制作会社の映画で、個人的
には今年のトップクラスでした。シリアルキラー(連続殺人犯)をケヴィン・コスナ
ーが演じます。このキャラクターが素晴らしく魅力的なのです。賞味期限切れ元大ス
ターの大蔵ざらえ映画とバカにしてはいけません。

 Mr.ブルックス(コスナー)は心優しき家庭人で、大会社の社長でセレブ。犯行
の瞬間を除き、終始「誠実で良識ある、きわめて好感度の高い中年男性」です。しか
し彼は、人を殺すことに快感を得る殺人依存症という不治の病を持っている。それを
恥じ、グループセラピーの集いに参加して、けんめいに自己の衝動と戦っているのが
なんともおかしい。今までにはありえなかったが、この殺人鬼には感情移入が可能な
のだ!

 彼の心の鬼をウィリアム・ハートが演じている。ブルックスに殺人をそそのかすこ
の悪魔は、ほとんど独立した人格を持っている。このキャラがキモい。キモすぎる。
好感のもてる常識人としての「善の顔」と「悪の顔」とが見事なほど対照的な絵とな
っている。

 この悪魔、ブルックスが他人といっしょにいるときでも、人としゃべってるときに
でも、おかまいなくささやきかけてくる。もちろんこの悪魔の姿は彼以外には見えな
いし、声も聞こえないのだけど。悪魔と殺人鬼の相当にアブナい対話は鳥肌もので、
この映画の最大の見どころと言っていい。

 ブルックスに三つの方向から同時に危機が迫る。犯行の目撃者(デーン・クック)、
彼を追う刑事(デミ・ムーア)、そして予想外な落とし穴として彼の娘の存在。これ
らのピンチに対し、彼は三正面作戦で一気にカタをつけようとするのだが・・・。


 刑事のデミ・ムーアに関する部分も見どころが多いのですが、長くなるので割愛し
ます。

 シナリオ、演出、キャラクター造型、映像。どれをとっても綿密で一級品です。観
ててゾクゾクしました。魅力的な殺人鬼、観てみませんか?


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◎ これって、ひょっとしていいかもね、という映画
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『崖の上のポニョ』
 7月19日全国公開 2008年度作品 監督:宮崎駿

 今回はひょっとしたら当たりかも、という予感もあります。大御所に過大な期待は
禁物ですが。ま、3割ぐらいの期待です。観て外しても、僕に文句は言わないように。


『神様のパズル』
 6月7日全国公開 2008年度作品 監督:三池崇史 原作:機本伸司
  出演:市原隼人、谷村美月、松本莉緒、若村麻由美、石田ゆり子、國村隼、李麗
仙、笹野高史、遠藤憲一、塩見三省、六平直政、岩尾望

 ハイテンションなSFコメディ。とにかく早く観たい1本。


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◎ 今月の注目株……… 谷村美月
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 特定の俳優が出ている映画を選択して観る、ということは基本的にないのですが、
それでもときには、俳優(まあたいがいは女優)が気になって、それだけで観てしま
うことはあります。谷村美月主演の『檸檬のころ』や『銀河鉄道の夜』はそうでした。

 谷村美月は演技コントロールが巧みで、見ていてほれぼれします。最初に観たのは
デビュー作の『カナリア』でした。13歳ぐらいでしたが、子役じゃなく、プロの女
優として大人の俳優相手に演技の駆け引きをやっている印象でした。これはおそろし
い女優が現われたなと思ったものです。

 今年は『リアル鬼ごっこ』に続いて『神様のパズル』が公開されます。たまたまS
Fが重なってしまいましたが、いろんなドラマに挑戦し、成長していってほしい。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 キネマ旬報の最新号で立川志らくが、前号で紹介した映画『ミスト』について気に
なることを書いてます。

 ラストシーンに関することなので、具体的な内容は書けません。彼はこのラストを
「蛇足」と書いてるのです。どういう意味なのかと熟読したが、どうも彼はラストシ
ーンの意味を取り違えているようです。あそこの意味を理解できない観客が存在する
ことは予想できませんでした。

 あのラストがなくてもすぐれたホラー映画だったと思いますが、あのシーンがあっ
てこそ、ホラー映画史に残る傑作となりえたと、僕は思うのですが。


「映画未使用名曲」6.1 メンデルスゾーン弦楽四重奏の4つの小品
「御漫画」5.28 地すべり独立
「極楽貧乏」5.22 「ゴソ姫」
「シネ漫コラム」5.3『ペネロピ』
「映画未使用名曲」5.1 山田耕筰、中山晋平ほか『砂山』
「船越屋新製品」4.21「ゴキ追跡ロボット」
「じべたでひろたもん」4.9 阪急乗車券
「御漫画」4.4 血べっとり聖火ランナー
「変神探訪」3.31 大豊神社の狛ネズミ

『Mr.ブルックス完璧なる殺人鬼』サスペンスの新境地を開いた
『ひぐらしのなく頃に』‥‥‥‥‥‥‥‥観たのがそもそもの失敗
『アフタースクール』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥期待を裏切らず、秀作
『丘を越えて』‥‥‥‥‥‥掘り下げ不足で表層的にとどまる印象
『ストーン クリミアの亡霊』‥‥‥‥‥‥‥‥‥わけわかんない
『崖』(フェリーニ)‥‥‥‥‥‥‥救いのない物語ながら、傑作
『ハンティング・パーティ』‥‥‥ナイスな感覚の政治サスペンス
『ミスト』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥久々、Aクラスのホラー映画
『スパイダーウィックの謎』‥‥‥‥‥‥‥妖精見て、ゆるく満足
『≒草間彌生 わたし大好き』‥‥‥‥‥思うことが多々ありすぎ
『パラノイドパーク』‥‥‥‥‥ヴィジュアル映像が生命の映画?
『歓喜の歌』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥楽しく笑えてそれでよし
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』監督にはぐらかされてしまった
『つぐない』‥‥‥‥‥‥ラストシーンに胸のふさがる思いがする
このあとは『接吻』に期待
 

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 極 ┃      ┃┃  ┏┓  ┃
 楽 ┃ ┏━━┓ ┃┃  ┗┛  ┃ 2008.5.15
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No.┃      ┃┃      ┃不定期刊
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Contents
 ・『ミスト』
 ・予告篇一刀両断
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◎ 公開中の新作から……… 『ミスト』  2007年度作品
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 監督:フランク・ダラボン 原作:スティーヴン・キング
 出演者:トーマス・ジェーン、ローリー・ホールデン、マーシャ・ゲイ・ハーデン、
アンドレ・ブラウアー、トビー・ジョーンズ、ネイサン・ギャンブル ほか

 久しぶりにガツン!と大きな手応えのくる映画に出会えた。霧とともに「何か」が
襲ってくるという、怪物ホラーです。はっきり姿を現わさない怪物が、どこからどう
襲ってくるのか想定すらできず、緊迫感が高まる。

 ジョン・カーペンターの『ザ・フォッグ』がリメイクされたと聞いてたので、観る
前はてっきりこれだと錯覚しました。リメイクは別の映画でした。ストーリーもまる
で違うし。


 ドラマの大半は人々がたてこもったスーパーマーケットの店内。その店内に、恐怖
を倍加させる存在がいる。チラシにはだいたい書いてあるので、ネタばらしにはなら
ないと思います。狂信的な女が「神のたたり」だと田舎の人々を煽動していきます。
「生け贄を捧げなくてはならない」などと言い出し、そのとおり実行する。外の強力
な敵と内の凶悪な敵とにはさまれ、主人公側の人たちは一人ひとり命を落としていく。
これではたしてハッピーエンドはあるのか。

 この胸糞悪い狂信女をマーシャ・ゲイ・ハーデンが演じる。まさにそのものの顔で
す。ほとんどそのものになりきってます。さっさと助演女優賞でも与えて映画界から
お引き取り願いたいくらいに憎たらしい顔だ。


 エンディングについてはもちろん書けません。「映画史上かつてない震撼のラスト」
という宣伝文句は嘘ではないです。このラスト、他の方はどう思われるのでしょうか。

 キャスティングが地味すぎたのか、怖さが一般に浸透しなかったのか、僕が入った
劇場では入りがよくない(公開4日目の、TOHOシネマズ千円の日)。観客を恐怖
に引きずり込むパワーをもったホラー&スリラーの秀作です。あっさり消えて行くに
はもったいないと思うのですが。


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◎ こういうの、観てもいいのかな、という映画
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『秘密結社鷹の爪 THE MOVIE 2 私を愛した黒烏龍茶』
 5月24日全国公開 2008年度作品 監督:FROGMAN 日本のアニメ

 『秘密結社鷹の爪 THE MOVIE 島根は鳥取の左側です(仮)』という仮題段階のチ
ラシもあります。どっちもどっちのタイトルですね。

 一作目は観てません。TOHOシネマズのマナーCMにキャラが登場してます。あ
の脱力ギャグがいい。ただし、映画としては一本観ればそれで満足できそうな気もし
ますが。



『接吻』
 6月?日京都公開(みなみ会館で) 2008年度作品 監督:万田邦敏
  出演:小池栄子、豊川悦司、仲村トオル

 小池栄子は初主演ではないかと思う。脇役ばかりの女優ですが、面白いものを持っ
ている人だと目をつけてました。柄を生かせる役にまだ出会えていないのではないか。
まだまだ可能性を秘めた人ではないか。若いうちにいい役柄に出会えたらいいが。

 そういう思いがあるので、中身や出来映えと無関係に、この映画は観ます。


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◎ 映画雑話……… 予告篇一刀両断
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 映画の予告篇は集客のため。映画の魅力を伝えて、それを観たい人に足を運んでも
らうため。でも実際は、「ひょっとして、観に来てほしくないの?」と言いたくなる
CMが大量に流れているのです。

『ザ・マジックアワー』(三谷幸喜)
 オーバーアクション強すぎ!のカットをつないだだけじゃ、ちっとも面白そうに見
えません。個人的趣味、みたいな作り方も鼻につく。

『クライマーズ・ハイ』(原田眞人)
 テンションの上がりまくってるカットをつないでるだけで、うるさいだけ。

『築地魚河岸三代目』
 見てるうち、1970年代にタイムスリップしたのかと錯覚する。センス古すぎる。
今ごろ松原信吾を監督に起用する松竹のセンスって・・・・?

『映画 クロサギ』
 予告篇の出来はともかくとして、山下智久を主演にするセンスはどうなのか。顔が
ぜんぜん主役じやない。

 日本のメジャー映画会社(東宝・松竹・東映)は企画や宣伝のセンスが悪い。その
点、米国メジャーのほうが宣伝に長けています。『ランボー 最後の戦場』『Mr.
ブルックス 完璧なる殺人鬼』『ハプニング』『28週後…』『大いなる陰謀』など
は、観てみようかなと期待させるものが予告篇にありました。『ハプニング』は監督
がシャマランと知って、撤回しましたが(苦笑)。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
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 一週間前に出したばかりなので、特に何もありません。暑くなりましたね。


「シネ漫コラム」5.3『ペネロピ』
「映画未使用名曲」5.1 山田耕筰、中山晋平ほか『砂山』
「船越屋新製品」4.21「ゴキ追跡ロボット」
「じべたでひろたもん」4.9 阪急乗車券
「御漫画」4.4 血べっとり聖火ランナー
「変神探訪」3.31 大豊神社の狛ネズミ
「長岡京市立図書館の棚から」3.24 シェクリイ『無限がいっぱい』

『ミスト』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥久々、Aクラスのホラー映画
『スパイダーウィックの謎』‥‥‥‥‥‥‥妖精見て、ゆるく満足
『≒草間彌生 わたし大好き』‥‥‥‥‥思うことが多々ありすぎ
『パラノイドパーク』‥‥‥‥‥ヴィジュアル映像が生命の映画?
『歓喜の歌』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥楽しく笑えてそれでよし
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』監督にはぐらかされてしまった
『つぐない』‥‥‥‥‥‥ラストシーンに胸のふさがる思いがする
『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』‥現実逃避の結晶物
『ペネロピ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ブタ鼻のペネロピちゃん可愛い
『ヒットマン』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥映像の力に酔いしれる
『怒りの日』‥‥‥‥‥‥‥‥ドライヤーの最高傑作かもしれない
『悲しみが乾くまで』‥‥‥‥人の心の温かみがじわっと沁みいる
このあとは『ジュノ』に期待
 

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 極 ┃      ┃┃      ┃
 楽 ┃ ┏━━┓ ┃┗━━━━┓ ┃ 2008.5.8
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No.┃      ┃     ┃ ┃不定期刊
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Contents
 ・アカデミー賞総まくり
 ・許しがたき映画トップ10
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◎ アカデミー賞総まくり
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 作品賞ノミネートの映画は、京都は6月公開の『ジュノ』以外、観てしまいました。
『ジュノ』もたぶん観ます。作品賞ノミネートを制覇するというのは初めてです。僕
にとって魅力的な映画がたまたまそろってしまったということでしょう。


 作品賞受賞作『ノーカントリー』は、よかったけど、コーエン兄弟のベストという
には遠いという印象です。ハビエル・バルデム演じる殺し屋が助演男優賞。あまり怖
くない殺し屋だなと思って観てましたが、世間では心臓が凍りつくほどの恐怖という
評判が多い。うーん、なんでなんだろうなあ。そりゃ目の前に現われたら怖いが、映
画の中でしょ。

 作品賞ノミネート『つぐない』はいい映画でしたが、アカデミー賞の作品賞という
映画ではなかったのです。アカデミー賞はかなり世間の空気に左右されます。よくも
悪くもそういった流れとはあまり縁のない映画です。上映時間や制作規模とは無関係
に、時代を超越した小品佳作として楽しめる。

 作品賞ノミネート『フィクサー』は毛色の変わった社会派映画です。ジョージ・ク
ルーニー演じる主人公が悪徳企業の手先なのです。胸のすくようなエンディングがあ
るのですが、それまでは相当な変化球です。助演女優賞のティルダ・スウィントンは
面白いポジションで拾い物という役どころ。これも変化球の悪役でした。

 作品賞ノミネート『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』。この映画は観たばかりで頭
が整理しきれていません。ポール・トーマス・アンダーソンは、とにかく一筋縄では
いかない監督です。主演男優賞をダニエル・デイ=ルイスが獲っています。

 未見の『ジュノ』を含め、僕ならこの5本の中からアカデミー作品賞を選びません。
作品レベルがこれらより落ちても、『ライラの冒険 黄金の羅針盤』でよかったんじ
ゃないの、と思ってしまう。楽しいし。


 『エディット・ピアフ 愛の讃歌』は、マリオン・コティヤールが主演女優賞。実
在人物を演じた主演賞がやたら多いのは、現実の人物の重みが加味されてしまうから
です。この映画の場合はその典型。チャーミングな美形であるコティヤールが、自分
の顔を汚してまで役に入り込もうとしているのが不憫に感じられました。この映画は
メイクアップ賞も獲得しています。こっちのほうが妥当な賞でしょう。

 演技賞と監督賞は、ときとして「ふさわしくない映画」で受賞が決まる。『ノーカ
ントリー』の監督賞(コーエン兄弟)や『フィクサー』の助演女優賞もそうだと僕は
思ってます。過去の実績からいって、無冠がありえない人に対し、「ここいらで与え
ておかないとまずいな」という心理がアカデミー協会員に働きます。過去の代表作に
賞を与えなかった言い訳のようなものです。そのときに与えなかったことじたいが怠
慢なのです。


 『onceダブリンの街角で』は歌曲賞。グレン・ハンサードとマルケタ・イルグ
ロヴァ二人の受賞。主演の二人です。僕はマルケタ・イルグロヴァ一人が歌う歌に魅
了されました。なので、受賞作でない歌が気に入ってるのです。

 『ヒトラーの贋札』は外国語映画賞。ドイツ映画とばかり思ってましたが、オース
トリアでした。『ヒトラー 最期の12日間』『4分間のピアニスト』などのドイツ
映画にくらべ、骨太さが欠ける印象でした。秀作ではありますが、妙に物足りない思
いを感じたものでした。

 『ボーン・アルティメイタム』は技術スタッフの賞を三つ獲得しました。技術レベ
ルはシリーズ二作目と同じです。なぜ今さら?という思いはあります。

 『ライラの冒険 黄金の羅針盤』は、視覚効果賞。これは順当なところです。CG
映像と実写との溶け込み具合があまりにも自然で、かえって物足りなく感じたほどで
す。

 『ジェシー・ジェームズの暗殺』は2部門でノミネートされ、賞を逃しました。作
品的にはちょっとかったるい。助演男優賞候補になったケイシー・アフレックは、僕
的にはハビエル・バルデム以上でした。

 外れましたが、外国語映画賞ノミネートの『モンゴル』は、真摯に現地の言語でモ
ンゴル人像をまるごとすくいとろうとした心意気に共感しました。厳密に言えばまだ
それでも正しくはないのですが。

 他の受賞作、『レミーのおいしいレストラン』『スウィーニー・トッド フリート
街の悪魔の理髪師』『エリザベス ゴールデン・エイジ』と、主なノミネート作『潜
水服は蝶の夢を見る』『アイム・ノット・ゼア』『アメリカン・ギャングスター』は、
観ていません。たぶん観ないでしょう。


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◎ こういうのも、観てもいいかな、という映画
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『ランボー 最後の戦場』
 5月24日全国公開 2008年度作品 監督:シルヴェスター・スタローン

 世界各地の紛争地域へ出かけていっては、手前勝手な正義をふりかざして暴れまく
る、ブッシュ大統領並みのおじゃま虫のランボー。

 ただちょっと、今回は雰囲気が変わった。拉致されたボランティア団体を救出する
ために5人の傭兵が派遣される。ランボーは彼らの道案内人としてミャンマーへ行き、
結局のところ傭兵たちのリーダーになって戦うというお話。

 外国で大暴れするのは同じだけど、チームリーダーになり、仲間とのすれ違いを乗
り越えて連携し、戦うというストーリーに魅かれるものがあります。



『丘を越えて』
 5月31日京都公開 2008年度作品 監督:高橋伴明 原作:猪瀬直樹
  出演:西田敏行、池脇千鶴、西島秀俊、余貴美子、利重剛

 菊池寛を題材にしたフィクション、ということらしい。

 「讃えよわが青春(はる)を いざゆけ遙か希望の丘を越えて」

 古賀政男作曲のこの歌、いいですねえ。めちゃくちゃ元気になります。ということ
で、中身関係なく観たいという気になっています。



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◎ 映画雑話……… 許しがたき映画トップ10
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・映画のキモになる部分をダラダラと台詞で説明しまくる映画。
・予告篇で重要部分を見せまくり、本編にプラスアルファがカケラしか残ってない映画。
・15分以上もえんえんとエンドクレジットを流す映画。
・作り手の自己満足で空疎なCG映像が主役ヅラしてる映画。
・絶世の美女との設定が嘘こいてる映画。
・一時間半もあれば収まる内容を二時間半に引き延ばしている映画。
・不要なラブシーンやお涙シーンで話の流れや緊張感をぶった切る映画。
・宣伝の売り込み文句と正味本体が食い違っている映画。
・思いきりハッピーエンドを匂わせておいて、思いきり地獄に突き落とす映画。
・うまく描けば感動できる話を、あざとい演出でぶちこわしにする映画。

 どれがなんという映画に当てはまるのでしょうか、ハテ?


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
───────────────────────────────────────

 だいぶ間があいてしまったので、ここらで出しとかねばと思った号です。というこ
とで初めて特定の映画の紹介は、なしになってしまいました。

 『フィクサー』あたりで書くべきだったんですけど、つい面倒くさくなってしまっ
て・・・。


『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』‥‥
  ‥‥P・T・アンダーソンにはやっぱりはぐらかされてしまう
『つぐない』‥‥‥‥‥‥ラストシーンに胸のふさがる思いがする
『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』‥現実逃避の結晶物
『ペネロピ』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ブタ鼻のペネロピちゃん可愛い
『ヒットマン』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥映像の力に酔いしれる
『怒りの日』‥‥‥‥‥‥‥‥ドライヤーの最高傑作かもしれない
『悲しみが乾くまで』‥‥‥‥人の心の温かみがじわっと沁みいる
『ジプシー・キャラバン』フルコースメニューでロマの音楽を満喫
『雪の女王』‥‥‥‥‥‥‥観て宮崎駿が推奨した理由がわかった
『エディット・ピアフ 愛の讃歌』‥観たのが間違いだったのかも
『モンゴル』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥話は創作だが、骨太で実に壮大
『フィクサー』‥‥‥‥‥異色のカラーを持つ企業告発ものの秀作
『レストレス 中天』‥‥‥‥‥‥力は入ってるが、話は展開せず
『うた魂♪』‥‥‥‥‥キャラが魅力的で、気分よく観ていられた
『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』‥‥‥‥‥笑ってすっきり
『フローズン・タイム』‥おフザケなシーンを少し切ればいいのに
『死神の精度』‥‥‥‥‥‥‥ひねりも何もなく終わってしまった
『ブラブラバンバン』‥‥二番せんじのB級ながら奇妙な魅力あり
『バンテージ・ポイント』‥‥‥‥‥‥‥‥考えて脚本書いてる?
『明日への遺言』‥‥‥‥‥演出上の問題が多すぎて入り込めない
『ぜんぶ、フィデルのせい』‥‥‥‥いいです、今年のベストワン
このあとは『ジュノ』に期待
 

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 楽 ┃ ┏━━┓ ┃┃ ┏━━━┛ 2008.3.18
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No.┃      ┃┃      ┃不定期刊
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Contents
 ・『ぜんぶ、フィデルのせい』
 ・ハリウッドの大スター
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◎ 公開中の新作から………『ぜんぶ、フィデルのせい』 2006年フランス映画
───────────────────────────────────────

 監督:ジュリー・ガヴラス
 出演者:ニナ・ケルヴェル、ジュリー・ドパルデュー、ステファノ・アコルシ

 共産主義にかぶれて狂ってしまった大人たちを皮肉るという、シンプルな映画と勘
違いしていました。監督がコスタ・ガヴラスの娘であることをころっと忘れてました。

 1時間40分で一つの一家を描いた映画です。この一家に大きな事件は発生しない。
なのに、スピーディーで、全編緊迫感あふれるドラマが展開される。観る前はかなり
眠たくてやばいなと思ってたが、観てる間に眠気は吹っ飛んだ。

 9歳の少女、アンナの一家は中流家庭だが、スペインのフランコ政権の独裁や、チ
リの政変という社会的背景の中で、両親が共産主義思想にめざめていく。政治活動を
始め、中流の生活を捨てる。いきなりわけもわからず下流生活を強いられたアンナと
両親が衝突してしまう。


 アンナを演じる主演のニナ・ケルヴェルは大女優の貫録がある。でかいわけではな
い。居並ぶ大人たちを前にして、たった一人で全員と張り合えるのではないかと思え
るほどの迫力がある。

 アンナは政治的にはニュートラルな位置から大人たちの言動を見聞きする。何も知
らないのだから、ニュートラルなのが当然。自分の立場から、おかしいと思ったこと
に異を唱える。利己的なわがままでしかないこともあるが、何にも染まらず、偏見も
なく、白紙状態だからこそ言える立場というものがある。何を言いだすのかわからな
い彼女の発言を待つとき、それはスリリングな瞬間だ。

 アンナの目から見れば、ファシズムに対抗しようとしている大人たちこそがファシ
ズムに染まっている。アンナのしたことを「それは単なる物真似だ」と諭そうとする
親に対し、「じゃ、団結と物真似とは別物なの?」とアンナは切り返してくる。これ
は共産主義に対するきつい皮肉だ。主体性という観点に立てば、9歳の少女に親たち
は勝ち目がない。

 彼女の強い指摘が大人たちの行動を変えることはない。多分にその意味するところ
を大人たちが理解できないからだ。しかし映画を観る側にはヴィヴィッドに響いてく
る。明らかに大人のほうがずれている。


 彼女が、団結でも物真似でもない、シンパシーというものを感じ取って終わるエン
ドは感動的だ。人を動かすのは思想的な相克ではない。気持ち、なのだ。


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◎ こういうのを観てみようかな、という映画
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『≒草間弥生 わたし大好き』(にあいこーるくさまやよい〜)
 ?月?日公開 2008年度作品 監督:松本貴子

 京都ではみなみ会館が公開予定になってます。

 異形のアーティストをとらえたドキュメンタリです。例年、ドキュメンタリは映画
全体の1%程度しか観ないのですが、今年は多いです。観るドキュメンタリは必然的
にアート関係ばかりになってしまいますが。



『非現実の王国で ヘンリー・ダーガーの謎』
 ?月?日公開 2004年度作品 監督:ジェシカ・ユー

 これも異形のアーティストのドキュメンタリで、みなみ会館で公開予定。

 ヘンリー・ダーガーは死後にその存在が知られた孤独なアーティストです。要する
に、死んでしまってから、「えっ、このじいさん、何か作ってたの?」と、ご近所の
人々に知られたという、希有な人です。


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◎ 映画雑話……… ハリウッドの大スター
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 アカデミー賞でタイトルが挙がってこなくなったハリウッド映画。挙がるのはマイ
ナー系の映画ばかりです。ハリウッドの地盤沈下が進んでゆく。内容的には著しく低
下してますけど、興業力は相変わらずです。ハリウッドメジャー映画の市場支配も、
いつまで続くかわかりませんけど。


 No.24ではハリウッド映画の宣伝面での問題について書きました。そのことに
加えて僕が気にしてるのは、大スターがいなくなったことです。

 いちおうトップクラスのスターはいつでもいます。大スターと呼べるほどの大きな
存在がいるとは限りません。男優でトップはジョニー・デップです。それに並ぶのが、
ブラッド・ピット、ウィル・スミス、レオナルド・ディカプリオ。それにつづくのは、
トム・クルーズ、デンゼル・ワシントン、クライヴ・オーウェン、ダニエル・クレイ
グ、ブルース・ウィリス、ニコラス・ケイジ、マット・デイモン。スターはまだまだ
いますが、このあたりで止めておきましょう。ロバート・デ・ニーロやクリント・イ
ーストウッドあたりの大ベテラン勢は省いています。

 女優はもっと層が薄い。トップはニコール・キッドマンとミラ・ジョヴォヴィッチ
ぐらい。それに次ぐのは、キーラ・ナイトレイ、アンジェリーナ・ジョリー、スカー
レット・ヨハンソン、ナタリー・ポートマン。あとは挙げるのもためらう名前ばかり。
挙げた中に、マイナー系映画の常連もいます。ニコール・キッドマンは絶頂期を過ぎ
たかな。

 ファンの方々に失礼だと承知のうえで書きますが、どの顔も小粒と思います。映画
産業にとっては、全体を牽引するほどの大スターがいたほうがいいのですが、嗜好の
多様化ゆえか、誰もが納得印の大スターはいなくなりました。

 美形であればいいというわけではありませんが、一般人がひれ伏してしまうほどの
美形がスクリーンにいると、映画界は華やぎます。上に挙げた中でそんな人はいる?

 男優に関してはなんとも言えませんが(美男にはさほど興味がわかないので)、女
優ではミラ・ジョヴォヴィッチか、スカーレット・ヨハンソンあたりはいい線いって
ると思います。

 新人の中で有望株はというと、アビー・コーニッシュ(『キャンディ』)、ケイト
・マーラ(『ザ・シューター』)、イモージェン・プーツ(『28週後…』)。十代
のプーツは若すぎるかもしれない。新人ではないが、ジェシカ・アルバ(『シン・シ
ティ』)やズーイー・デシャネル(『テラビシアにかける橋』)も有望です。


 映画を観る楽しみの一つとして、次の大スターを自分の目で発見する、というのが
あっていいと思う。これはと思うものを見つけても、なかなか大成してくれなくて、
もどかしいですが。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
───────────────────────────────────────

 9日のパーティはいつもどおり盛り上がって終了しました。

 今回は出た話題をメモしようと思ってたんですが、すっかり忘れてしまい、終わっ
てから気がつきました。それでもその時点で書き起こせば何か書けたんでしょうけど、
書かずじまい。ずぼらになりました。

 自分が話題にした映画はいちおう覚えてます。それでも『onceダブリンの街角
で』『いのちの食べかた』『君のためなら千回でも』『テラビシアにかける橋』『チ
ーム・バチスタの栄光』ぐらいです。

 『君のためなら千回でも』なんか、内容についてはほとんど何も言わなくて、観た
あと映画館で声かけてきた白人ホモと喫茶店でダベッたことについてだけだったり・
・・。

「長岡京市立図書館の棚から」3.12 サトクリフ『闇の女王にささげる歌』
「映画未使用名曲」3.1 吉松隆『なばりの三つ』
「極楽貧乏」2.23 「値上げの季節」
「船越屋新製品」2 .2「管内補修ロボ」
「映画未使用名曲」2.1 アリアーガの弦楽四重奏曲第2番
「長岡京市立図書館の棚から」1.12 プルマン『ライラの冒険』シリーズ
「長岡京市立図書館の棚から」1.8 ゲーテ『きつねのライネケ』
「じべたでひろたもん」1.2 「体重計」

『ぜんぶ、フィデルのせい』‥‥‥‥いいです、今年のベストワン
『ノーカントリー』‥‥残念ながらあまり面白いものではなかった
『ガチ☆ボーイ』‥‥‥無理強いして乗せられたという感じで・・
『子猫の涙』‥‥‥‥‥‥‥‥‥感動の余韻がじんわり続きました
『風の外側』‥‥‥‥‥‥‥‥前作との落差には目をつぶりました
『ゼロ時間の謎』‥‥‥‥‥‥味わいたっぷり、満足のミステリー
『ライラの冒険 黄金の羅針盤』物語の厚みが出なくて物足りない
『奈緒子』‥‥‥‥‥‥‥‥悪くはないけど、はじけるものがない
『ジャーマン+雨』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥大爆笑で、発狂寸前
『ウェイトレス おいしい人生のつくりかた』豊饒なる味わいあり
『君のためなら千回でも』‥‥‥‥安心してお薦めできる秀作です
『君の涙 ドナウに流れ』‥‥‥‥‥‥‥‥微妙に、プロパガンダ
『アース』‥‥‥‥‥‥地球に生かされているという実感たっぷり
『チーム・バチスタの栄光』‥‥‥ほっこりにっこり大満足の映画
このあとは『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』に期待
 

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 極 ┃      ┃┃      ┃
 楽 ┃ ┏━━┓ ┃┃ ┏━━━━┛ 2008.3.2
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Contents
 ・『ライラの冒険 黄金の羅針盤』
 ・荒川良々
 *パーティは9日(日)の1時から
───────────────────────────────────────
◎ 公開中の新作から………『ライラの冒険 黄金の羅針盤』  2007年度作品
───────────────────────────────────────

 監督:クリス・ワイツ 原作:フィリップ・プルマン
 出演者:ダコタ・ブルー・リチャーズ、ニコール・キッドマン、ダニエル・クレイ
グ、エヴァ・グリーン、サム・エリオット、ほか

 パラレルワールドにおける冒険譚。

 とりたてて出来が悪いわけでもないのに、どうしてこんなに物足りないのだろう。
たぶんそれは、物語世界の奥行きや厚みがちっとも出てないせいだろう。

 監督はこの世界をどういうふうに描きたかったのか、わからない。この複雑な世界
を説明し、ストーリーを運んでいくだけでエネルギーを使い果たしてしまった。そん
なふうに皮肉っぽく見えてしまう。

 実際この映画、手際よく説明していかないと、ついてこれない人が出ると思う。展
開していく不思議な物語を追いかけていくだけで満足する人は、それでいいんでしょ
うけど。

 キャスティングは理想的です。でも、主演のダコタを除いては、それぞれ出方が中
途半端だ。特に魔女役のエヴァ・グリーンは、なぜそこにいて戦闘に参加してるのか
さえわからない。アスリエル卿のダニエル・クレイグも、何をやってんだかさっぱり
わからない。万全と思われたニコール・キッドマンでさえ、あまり冴えないのです。

 くり返し予告篇を見せつけられて、ほとんど既視感状態。おまけに原作まで読んで
るから、映像がそれをなぞっていくのを確認するだけになってしまった。


 これは三部作の第一作なんですが、『ロード・オブ・ザ・リング』と同じく、一作
目は上巻にすぎず、完結してないんです。三つ観て全体がわかるという話なので、第
一作の作り方が難しいんですよ。

 もっと小さくまとめてしまえばよかった。よけいな話をほのめかしもせずに伏せて
おき、悪党が死んだように見せかけていったん大団円にしてしまう。そして次回作以
降で話を大きく拡げていく、というやり方をとるべきだった。あれではいかにも「つ
づく」で終わってしまっている。

 問題はまだある。米国と日本での興業がいまひとつなので、二作目以降が制作中止
になる可能性が出ている。中止だと、作った意味がなくなってしまう。大ヒットにな
らなかったのは、英国以外で原作の知名度が低かったからでしょう。日本でもベスト
セラーという感じではないですしね。



───────────────────────────────────────
◎ こういうのを期待していますよ、という映画
───────────────────────────────────────

『つぐない』
 4月?日公開(京都) 2007年度作品 監督:ジョー・ライト

 米国アカデミー賞の本命でしたが、受賞ならず。作品賞は、珍しく質の高いレヴェ
ルでの争いとなったようです。

 ジョー・ライトは、この映画のヒロイン、キーラ・ナイトレイの『プライドと偏見』
が第一作で、今回は二作目。作品のカラーは、前回よりも悲しみの色が強そうです。



『アフタースクール』
 5月?日公開 2008年度作品 監督:内田けんじ

 主演者の名を見て驚いた。佐々木蔵之介と大泉洋(堺雅人も主演格)。『全然大丈
夫』の主演コンビも驚いたが、意表をつく組み合わせだ。

 佐々木と大泉。似てるとまでは言わないが、かぶる部分もあるだろう。この二人が
主演では、どういうドラマになるのか、まるっきり読めない。不思議な組み合わせだ。

 脚本と監督は『運命じゃない人』の内田けんじ。またしてもスリリングで刺激的な
ドラマ展開が待ち受けていそうです。



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◎ 映画雑話……… 脇役列伝・男優篇 その3
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 荒川良々(あらかわ・よしよし)1974年1月18日生

 主演の『全然大丈夫』公開記念で、荒川良々を取り上げよう。

 主演は『恋する幼虫』以来で、たぶん2本目。キネマ旬報では複数のインタビュア
ーが「初主演」と、ボケをかましてました。

 『下妻物語』や『嫌われ松子の一生』でのキャラクターが印象に残るが、映画のタ
イトルと結びついて思い出せるのはこの2本だけ。キャラが強烈に出すぎて、何を観
ても荒川良々そのまんまに見えてしまう。

 それにしても異様なキャラですね。この顔で主演といったらホラーかコメディ以外
ありえませんよ。もちろんホラーはモンスター役ですが。

 荒川良々は劇団大人計画の役者です。舞台出身の俳優には個性的な風貌の人が多い。
つるんとした美男顔より、強烈な個性を発する顔のほうに関心があります。でもこの
顔が好きか、と問われれば、ビミョ〜。

 その他の主な出演作:『ジョゼと虎と魚たち』『東京タワー オカンとボクと、
時々、オトン』『魍魎の匣』『姑獲鳥の夏』『いぬのえいが』『ドラッグストア・ガ
ール』



───────────────────────────────────────
 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
───────────────────────────────────────

 長岡京市の中央公民館では、月一回、500円のコンサートが開催されます。マリ
ンバのコンサートを聴きに行きました。長岡京室内アンサンブルのコンサートも時々
あります。

 月二回、早朝にJRの長岡京駅前でタイ式ストレッチ体操をやっている会がありま
す。日曜ですが、起きられたら時々参加してます。

 市民活動サポートセンターというNGOの会員になると、バンビオ一階にある会議
室が無料で使えます。年会費三千円でイヴェント会場費が浮かせるのか、と考えたも
のの、CINEMAテーブルのパーティに使うにはやや手狭かと思案したり。

 地元の町の中でもいろんな活動があるなあと、今さらながらに思います。気が向い
たものを、あちらこちらと参加してみます。ひきこもってパソコン相手ばかりではい
けませんので。

 京都市のほうですが、映画ファンが語らう集いというのがあって、去年の暮れに初
めて参加してきました。まったく知らない顔ばかりです。

 こちらはCINEMAテーブルの懇親会と違ってかなりディープです。京都で劇場
公開されるすべての映画のうち7割方を、僕も含めた7人で抑えている、といえばど
の程度のディープさかはわかってもらえるかと。だいたい僕程度がアヴェレージなか
んじなんです。

 そういう顔ぶれなので情報交換にはうってつけです。たいていの映画は誰かが観て
るのですから。月一回の会合を毎回参加するというところまでは考えてません。話題
が映画オンリーで脇目もふらず、という空気にはまだなじめないのです。脱線して、
参加者への個人攻撃があったりするほうが面白いです(攻撃を推奨しませんが)。


『ライラの冒険 黄金の羅針盤』物語の厚みが出なくて物足りない
『奈緒子』‥‥‥‥‥‥‥‥悪くはないけど、はじけるものがない
『ジャーマン+雨』‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥大爆笑で、発狂寸前
『ウェイトレス おいしい人生のつくりかた』‥‥味わい深い秀作
『君のためなら千回でも』‥‥‥‥安心してお薦めできる秀作です
『君の涙 ドナウに流れ』‥‥‥‥‥‥‥‥微妙に、プロパガンダ
『アース』‥‥‥‥‥‥地球に生かされているという実感たっぷり
『チーム・バチスタの栄光』‥‥‥ほっこりにっこり大満足の映画
『リアル鬼ごっこ』‥原作をはるかに超えるサスペンス映画の秀作
『人のセックスを笑うな』‥‥‥‥‥個人的には思いっきり外した
『28週後…』‥‥‥‥映画館を出たらそこが日本で、ホッと安心
『再会の街で』‥‥‥‥‥‥‥‥シビアすぎた9・11後遺症映画
『ヒトラーの贋札』‥‥‥‥‥最近のドイツ映画の活力を示す一篇
『テラビシアにかける橋』‥‥‥‥‥‥ビミョーーーに、失敗作?
『onceダブリンの街角で』ミュージシャンものの傑作、浸った
このあとは『ペネロピ』に期待
 

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 楽 ┃ ┏━━┓ ┃┃ ┃┃ ┃ 2008.2.13
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Contents
 ・『リアル鬼ごっこ』
 ・日本のB級映画続々
 ・CINEMAテーブル懇親パーティの確認
───────────────────────────────────────
◎ 公開中の新作から……… 『リアル鬼ごっこ』  2008年度作品
───────────────────────────────────────

 監督:柴田一成  原作:山田悠介
 出演者:石田卓也/谷村美月/大東俊介/松本莉緒/吹越満/柄本明

 「佐藤」という苗字の者を全部とらえて殺せと日本の王様が命ずるという、トンデ
モな原作のストーリー設定はそのまま生かしているが、それ以外は大胆に改変してい
る。ありえないストーリーを映像の力で押し切っているのは立派だ。

 なにより、あの未熟な原作をよくぞここまでエンターテイメントとして持ち上げた。
そのことに驚嘆する。この映画があれば原作は存在意義をなくしてしまう。

 僕としては原作のクラ〜イ結末だけは避けてほしいと思っていた。思いきりノリノ
リな明るいエンドにひっくり返ってしまった。そこまでやるかよー。

 よく見れば(よく見なくても)けっこう穴が多い。原作にはまったくなかったパラ
レルワールドという設定をプラスしたことによる混乱が最大の原因だ。だが、それに
よって話はより面白くなった。ストーリーの矛盾にしばし目をつぶろう。

 原作者が自覚しないまま作品に表れていた「人の命に対する感度の低さ」は、この
映画にはない。捕獲者による虐殺は原作に描かれなかった。なのに、人命に対する冷
たさは原作のほうに感じられる。この本がベストセラーになったのは、この「感度の
低さ」に共振できる人が多いからではないのか。そのことに薄ら寒い思いを覚える。
他人が生きていることに対する共感の欠如、みたいなものが蔓延してるような気配が
ある。


 映画を観る直前にそそくさと原作を読んだので、原作との比較ばかりに目がいって
しまった。原作からの改変で著しかったのは主人公の妹、愛(谷村美月)の部分。名
前と、妹であることを除けばまったく原作を無視している。そのことが嬉しかった。
あの部分がいちばん冷たいんだよー。


───────────────────────────────────────
◎ こういうの、観てもいいのかな、という映画
───────────────────────────────────────

『ライラの冒険 黄金の羅針盤』
 3月1日全国公開 2007年度作品 監督:クリス・ウェイツ
  原作:フィリップ・プルマン

 パラレルワールドもののファンタジー三部作の第一作。

 ニコール・キッドマンが悪役を演じたのは記憶にない。極悪魔女のような悪女です
が、たぶんハマリ役。『ナルニア』の白い魔女(ティルダ・スウィントン)とはまっ
たくキャラが違います。

 『ナルニア』のシリーズは子役を使ってるというのにちんたら制作してます。こっ
ちも主役が子役なので、あんなペースで作ってたら成長しきって顔が変わってしまい
ます。てきぱき完結させてほしい。しかし米国での興業失敗は気になる。第一作で打
ち止めになるんだろうか。


───────────────────────────────────────
◎ 映画雑話……… B級映画の炸裂
───────────────────────────────────────

 『リアル鬼ごっこ』や『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』など、日本の
B級娯楽映画で好調なものが続いてるので、今年前半に公開されるものを展望してみ
たい。好調というのは中身のことであって、ほとんどは興業成績に結びついてません。
そのへんを考えて、少しは注意を向けてみたいなと思ったのです。


『うた魂♪』(うたたま) 監督:田中誠 主演:夏帆、ゴリ 原作:なし
 配給:日活 4月5日全国公開
 となると、まず挙げるべきはこれかと。『スウィングガールズ』系の、高校生音楽
青春コメディ。まずは企画ありきで作られたくさいですが、どうでしょうか。今年は
日活配給のラインナップが充実してそうです。でも、どれも不入りになりそう。

『ブラブラバンバン』 監督:草野陽花 主演:安良城紅 原作:なし
 配給:トルネード 公開日未定
 その系統でもう一本。高校のブラスバンド部です。もろに『スウィングガールズ』
の流れ。しかもキャスティングは地味。安良城紅って、藤谷文子か?と思ったが、別
人ですね。

『ガチ☆ボーイ』 監督:小泉徳宏 主演:佐藤隆太 原作:蓬莱竜太
 配給:東宝 3月1日全国公開
 佐藤隆太2本目の主演作品。記憶障害で翌日にはほとんど全部忘れてしまうという
青年がレスリングに挑戦するというもの。東宝配給の映画のカラーから逸脱してるの
で、驚く。

『奈緒子』 監督:古厩智之 主演:三浦春馬、上野樹里 原作:坂田信弘&中原裕
 配給:日活 2月16日全国公開
 高校生駅伝もののコミックが原作。上野樹里はマネージャー。『出口のない海』で
もそうだったように、上野は受け身側の配役では冴えないように思う。

『カンナさん大成功です!』 監督:井上晃一 主演:山田優、山崎静代
 原作:鈴木由美子 配給:デスペラード 公開日未定
 韓国映画からのリメイクが今年2本あります。『僕の彼女はサイボーグ』よりこっ
ちのほうが面白いのではないでしょうか。太っちょが整形して美形歌手に。ンなわけ
ないだろというツッコミを映画はかわせるか。

『ぼくたちと駐在さんの700日戦争』監督:塚本連平 主演:市原隼人、佐々木蔵之介
 原作:ママチャリ 配給:ギャガ 4月5日全国公開
 へたすると、ただの悪ふざけで終わってしまいかねない懸念もあります。主演の二
人はキャラが立ちすぎてるような。そういうタイプの主演俳優が最近目立ってきたよ
うな。

『死神の精度Sweet Rain』 監督:筧昌也 主演:金城武、小西真奈美
 原作:井坂幸太郎 配給:ワーナー 3月22日全国公開
 金城武が死神。これをB級扱いしては文句を言われそうです。でも、B級映画とし
て観たほうが楽しめそう。小西真奈美は純愛(『天使の卵』)でもコメディ(『UD
ON』)でもいまひとつだった。ここらで一発代表作を作れ!

『純喫茶磯辺』 監督:吉田恵輔 主演:宮迫博之、仲里依紗 原作:なし?
 配給:ムービーアイ 公開日未定
 内容不明ですが、面白そうな空気が伝わります。仲里依紗は「なかざと・いさ」と
思ってたけど、「なか・りいさ」ですって。ややこしい。

『全然大丈夫』 監督:藤田容介 主演:荒川良々、木村佳乃 原作:なし
 配給:スタイルジャム 3月1日公開(京都)
 これは前回の23号で紹介済です。

 他にも『アフタースクール』とか『グーグーだって猫である』とか、まだまだある
のですが、このへんで止めます。こ難しいことは考えず、ひたすら面白がれる映画。
そういう映画を作り手が熱心に作っている、という空気が日本の映画界から感じられ
ます。


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 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
───────────────────────────────────────

 CINEMAテーブル懇親パーティに参加される可能性ありの方々へはすでに案内
を発信しています。念のための確認を入れておきます。メール文の再掲ですみません。


 3月9日(日) 午後1時より5時までで、ややアバウトに
 (借りてる時間帯は12時より6時までなので)

 長岡京市総合交流センター 配膳試食室
  JR長岡京駅西口から南(大阪方向)へすぐ バンビオ1番館の6階

 参加費は千円で、一品持ち寄り。
 学生割引500円、貧民割引500円(自己申告制)。
 都合で短時間しか参加できない方も適宜割引。
 コンビニとスーパーは目の前にあり。

 駐輪場はバンビオ2番館(西側の建物)の地階で、無料。駐車場も2番館の上階に
あります(20分100円)。


「船越屋新製品」2 .2「管内補修ロボ」
「映画未使用名曲」2.1 アリアーガの弦楽四重奏曲第2番
「長岡京市立図書館の棚から」1.12 プルマン『ライラの冒険』シリーズ
「長岡京市立図書館の棚から」1.8 ゲーテ『きつねのライネケ』
「じべたでひろたもん」1.2 「体重計」

『リアル鬼ごっこ』‥原作をはるかに超えるサスペンス映画の秀作
『人のセックスを笑うな』‥‥‥‥‥個人的には思いっきり外した
『28週後…』‥‥‥‥映画館を出たらそこが日本で、ホッと安心
『再会の街で』‥‥‥‥‥‥‥‥シビアすぎた9・11後遺症映画
『ヒトラーの贋札』‥‥‥‥‥最近のドイツ映画の活力を示す一篇
『テラビシアにかける橋』‥‥‥‥‥‥ビミョーーーに、失敗作?
『onceダブリンの街角で』ミュージシャンものの傑作、浸った
『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』
        ‥‥‥‥‥‥‥‥超おバカな青春コメディに爆笑
『ジェシー・ジェームズの暗殺』‥‥‥‥‥‥いい映画とは思うが
このあとは『君のためなら千回でも』に期待
 

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 楽 ┃ ┏━━┓ ┃┃ ┏━━┓ ┃ 2008.2.1
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Contents
 ・『28週後…』
 ・映画を観る選択の基準
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◎ 公開中の新作から……… 『28週後…』  2007年度作品
───────────────────────────────────────

 監督:ファン・カルロス・フレスナディージョ
 出演者:ロバート・カーライル、キャサリン・マコーマック、イモジェン・プーツ、
マッキントッシュ・マグルトン、アマンダ・ウォーカー、ハロルド・ペリノー

 『28日後…』の続編です。前作を超える恐怖の映像です。シャープなサスペンス
感覚はこの手のもの(ゾンビもの?)の中ではピカ一。

 凄絶な地獄絵の連続。緊張で顔と体が固まりまくった。ハリウッド映画ではこんな
厳しいドラマを描けません。なんだか『アイ・アム・レジェンド』がほのぼのとした
ホームドラマに見えてきてしまった。


 感染・発病すると凶暴化する病原体が英国本土を覆いつくしたのが前作。英国を封
鎖したことにより、感染者は短期間で餓死し、全滅。そして半年後に英国を再建する
ために街を作る、というのが今回の設定。

 この病原菌は体液で感染する。それは前回と同じなんだけど、接触して10秒もた
たないで発病という、ありえない現象を映像で納得させきっているのはこの映画のう
まいところ。それがたたみかけるようなスピードと恐怖感につながっている。

 当然、感染者集団との戦いがメインになるはずだけど、この映画はそこにウェイト
を置いていない。あまり書きすぎるとこれから観る人の楽しみを奪うので書けないが、
別な部分が恐怖のメインになっている、とだけ書いておこう。


 ひっかかったのは、再度爆発的な感染を引き起こした原因が、どうしようもない愚
かな身勝手だったということ。肉親に対する切実な思いはわかるものの、どうしても
単なる愚かな行為にしか見えない。

 もう一つ、エンドでは主人公二人の行く末をチラリとでもいいから見せてほしかっ
た。ヒントもない終わり方だと、余韻としての方向性を見失ってしまう。



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◎ こういうの、観てもいいかな? という映画
───────────────────────────────────────

『全然大丈夫』
 3月1日公開(京都) 2008年度作品 監督:藤田容介

 大丈夫かな?と思うようなユルムービー。

 荒川良々と木村佳乃の主演。この組み合わせって、どうなんよ。想像つかん。どっ
ちも脇役俳優で、主演はちょっと・・、という俳優。ともに初主演ではないんだけど、
主演である状況が想像しにくいというか。だからこそ興味を持ってるということだけ
ど。



『リアル鬼ごっこ』
 2月9日公開 2008年度作品 監督:柴田一成 原作:山田悠介

 自費出版系の文芸社から出たベストセラーらしいですが、まだ読んでません。

 「佐藤」という苗字の人だけが次々死んでゆくという、奇妙な世界観を持った映像
作品。面白いのかどうか、さっぱり予測つきません。谷村美月が出てるというのが、
気になってるだけかもしれない。



『君のためなら千回でも』
 2月23日公開(京都) 2007年度作品 監督:マーク・フォースター

 ストーリーはよく知りませんが、『チョコレート』と『ネバーランド』のフォース
ター監督がアフガニスタン少年の友情を描いたドラマ、というだけで妙に期待を抱か
せます。



───────────────────────────────────────
◎ 映画雑話……… 映画を観る選択の基準
───────────────────────────────────────

 みなさん、何を基準に映画を観ておられます? 映画にはいろんな要素があります。
ジャンルや俳優、テーマやモチーフ、使われている何か。そのどれに大きなウェイト
を置くか、ということになるんじゃないでしょうか。

 僕の選択基準は「面白そう」のみです。たまに特定の女優目当てということもあり
ますし、原作を読んだからということもあります。

 面白そうかどうかを判断するのは、第一にチラシなどの宣伝ヴィジュアル。あとは
いろんなメディアの評価や紹介など。総合的な判断というより、ほとんど山勘です。

 パスするのは、どんな映画なのかを宣伝で伝えていない映画。宣伝に俳優の顔を無
造作に並べておしまいという映画もパス。これらは配給会社が内容を売り込めないと
判断した結果だと思ってます。最近の例では、前者は『シルク』、後者は『大いなる
陰謀』です。おそらく両方ともダメ映画と思う。


 選択基準というのとはちょっと違うけど、メジャーの映画では作り手に熱気を感じ
取れないものが増えているように思います。観客ターゲットを絞り込まず、より多く
の観客を誘い込もうとすると、どうしても「角を取った」平均的な映画になってしま
う。

 ハリウッド映画は短期で全世界公開して早く資金を回収しようとする流れが強まっ
ています。製作費の高騰で、早期回収が必要になってるせいですが、海賊版対策とい
うこともあります。コピーが出回る前に稼いでしまおう、ということです。

 以前のように時間をかけて宣伝するということもできなくなり、手っ取り早く浸透
させられるということで、リメイク・続編・シリーズもの・有名原作に偏り、制作サ
イドが冒険をしなくなりました。いきおい、味の薄い、面白みが乏しいものが横行す
るようになった、と言えば言い過ぎでしょうか。


 東宝の映画についてなんですが、徹底的なマーケットリサーチをし、テレビ局など
とのタイアップが先行して、そのラインに合う企画ばかりが並んでしまう。結果とし
て東宝は日本では断トツの興業成績をあげる映画会社になった。しかし、冒険のない
つまらない映画会社に成り下がってしまった。

 映画に限らず創作物は、作り手が「これを見せたい」という熱狂的な思いがあり、
受け取り手がシンクロした場合に強いパッションを受け止めることができるものです。
「この素材をこんなふうに出せば客は来る」ぐらいのナメた態度で宣伝されても、乗
れないのです。



───────────────────────────────────────
 あとがきのかわりに、最近のことなど……… 
───────────────────────────────────────

 キネマ旬報のベストテンや個人賞が発表されました。大勢の人が選んでるので、朝
日のベストテンよりはましです。でも、しょせんは他人のベストだなと感じます。

 誰とは書きませんが、大根役者であることを暴露してしまった映画で演技賞を獲っ
た俳優が一人います。まあ、しょせんは他人の選んだ賞なので、目くじらを立てない
ことにしましょう。


 自費出版系出版社の最大手の文芸社から電話があり、本を送ってほしいというので
今までの本の中から三つを送りました。一作ずつ、きめ細かい講評が送られてきて、
こちらで出版してみませんかと、電話でお誘いがあったのですが、断りました。旧作
を仕立て直して再度出版することになんの意味があるのかわかりません。

 今は物語がまったく書けていない状態ですし、絵を描くほうに気持ちが向いていま
す。丁寧に説明したのですが、むこうも商売ですから、長時間、必死に粘ってきまし
た。

 また書けるようになって、新作を書いたなら考えてもいいのですが、それでも一冊
で百万単位の費用が発生するというのは考えものです。


『再会の街で』‥‥‥‥‥‥‥‥シビアすぎた9・11後遺症映画
『ヒトラーの贋札』‥‥‥‥‥最近のドイツ映画の活力を示す一篇
『テラビシアにかける橋』‥‥‥‥‥‥ビミョーーーに、失敗作?
『onceダブリンの街角で』ミュージシャンものの傑作、浸った
『ネガティブハッピー・チェーンソーエッヂ』
        ‥‥‥‥‥‥‥‥超おバカな青春コメディに爆笑
『ジェシー・ジェームズの暗殺』‥‥‥‥‥‥いい映画とは思うが
『カフカ田舎医者』‥‥‥‥山村監督に危うい「巨匠化」の傾向が
『洲崎パラダイス 赤信号』‥‥‥久しぶりに再見し、傑作と断定
『アイ・アム・レジェンド』‥‥‥‥由緒正しいゾンビ映画でした
『いのちの食べかた』愛想なしの、身も蓋もない系ドキュメンタリ
『魍魎の匣』‥‥‥‥‥‥‥‥谷村美月がエグすぎて、ショック!
『エティーのものがたり』ハイセンスなアニメで、くり返し観たい
『ボーイフレンド』‥‥‥‥‥絢爛たるミュージカルに満足度高し
このあとは『君のためなら千回でも』に期待
 

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