CINEMAテーブルのページ

管理人(船越聡)のページ

当ページ

映画カフェ




 毎年、CINEMAテーブルという小冊子を発行しています。冊子の体裁での発行は1991年からです。
CINEMAテーブル2023年度版
CINEMAテーブル2022年度版
CINEMAテーブル2021年度版
CINEMAテーブル2020年度版
CINEMAテーブル2019年度版
CINEMAテーブル2018年度版
CINEMAテーブル2017年度版


  内容見本(自分以外の末尾署名をぼかしました) CINEMAテーブル 内容見本  部数が少ないので市販はしていません。  希望される場合は、面倒をおかけしますが、メールをください(トップページにアドレスあり)。

  CINEMAテーブルから見える21世紀の高得点映画 CINEMAテーブル2016年度版

CINEMAテーブル 内容見本

CINEMAテーブル2015年までの表紙 CINEMAテーブルは1991年に創刊し、30年を経過しています。

   。 。    〔ふ〕           

   映画の評価一千本

 CINEMAテーブルの内容見本です。他の参加者の了解を得ていないので、僕自身の評の一部だけ。
 2009年以降に観たもののみです。記憶に薄いものは外しました。
 ここでは10点満点の表記を改め、☆◎◯△Xの5段階に変更しました。
タイトル監督 船越の評価         
ARGYLLE アーガイル
2024年
マシュー・ヴォーン△ 現実離れしたアクション演出が今回は上滑りした印象。この監督作の中では「中の下」ぐらい。遊びすぎ。やたらゴチャついた筋は呑み込めない。 新作小説が現実のスパイ組織の動きを先取りする ブライス・ダラス・ハワード、 サム・ロックウェル
Arc アーク
2021年
石川慶X 現代から今世紀後半、そして来世紀までピョ〜ンと飛んでいくストーリー。言葉ではなく行動で示しなさいと寺島しのぶは言うのだが、映画は言葉で説明し続ける。永遠の生命を得ることは人にとって幸せなことなのかと、この映画が問いかけることもセリフで問うている。どの役者も感情を伝えないロボット。 人類で初めて永遠の命を得た女性 芳根京子、岡田将生
アーティスト
2011年
ミシェル・アザナヴィシウス◯ 一箇所、劇中劇のトーキー映画でサイレント演技があったのは変。それを別にすれば気持ちよく乗れる映画だった。ゲジマユが売りのミッシー・パイル。剃った顔を初めて見た。眉毛なくても存在感たっぷり。男は過去の栄光や履歴にこだわってはいけない。捨てろ忘れろ。一から出直せ。 モノクロ、音楽つきサイレントでハリウッド草創期 ジャン・デュジャルダン
アーミー・オブ・ザ・デッド
2021年
ザック・スナイダー◎ 主演のデイヴ・バウティスタがなんともいい面構えで、それだけで観る気になった。実際いい動きで、60歳とは思えない。抗いようのない身内の死に対する悲しみが全編貫かれているように感じ、他のゾンビ映画とは同列には扱えないものがある。[Netflix] ゾンビの大量発生で外界から隔絶されたラスベガスから現金回収
アーミー・オブ・シーブズ
2021年
マティアス・シュヴァイクホファー◯ 終わってから主演が監督と知った。このあとに『アーミー・オブ・ザ・デッド』につながるという、前日譚。別個の映画と思って観るべきと思う。[Netflix] 難攻不落の三つの金庫に挑む泥棒たち
R100
2013年
松本人志X 選択ミス。6人のボンデージスタイルの女優は、チラシなどの宣材では強烈なインパクトがあり、しかも絵になっている。なのに映像ではどの女優もいまいち。ときおり入る次元の異なるシーンで映画を批判してるが、開き直りなのか、言い訳してるのか。 過激SMクラブ 大森南朋、大地真央、寺島しのぶ、片桐はいり
アイ・アム・マザー
2019年
グラント・スピュートリ△ 主人公がどっちの側につくかで人類の未来の方向性が決まる。どっちも彼女を欺いてるのだから、この選択もありか。乱作される終末映画の中で、これはまだ希望を見せてくれる。ヒロイン(クララ・ルガアード)が歌ってるのは『ダンボ』のテーマソングです。[Netflix] 死滅した人類を復活させる全自動システムが起動 ヒラリー・スワンク
アイアン・スカイ
2012年
ティモ・ヴオレンソラ△ 楽しかったけど案外まじめで笑えない。もっとアホアホに、特にヒロインは超天然でいってほしかった。米国大統領がサラ・ペイリン風のアホで、乗せられる米国民もアホなのは痛快。 月面基地からナチスドイツが地球侵略
アイ・イン・ザ・スカイ 世界一安全な戦場
2015年
ギャヴィン・フッド△ 終盤まで緊迫感が続く。だがストーリー設定は感心しない。英国がケニヤ人少女一人のために攻撃を躊躇する。ありえない。傷ついた少女一人を、過激組織の兵士たちが兵器を放り捨ててまで病院へ搬送する。ありえない。 無人機からテロリストを爆殺
ヘレン・ミレン、
アイ・ケイム・バイ
2022年
ババク・アンバリ△ 権力者の連続誘拐事件を暴くサスペンス映画。ということを知らずに観た。グラフィティアーティストの創作に関する映画だと思い込んでいた。ハッピーエンドかと思いきや、そうとは言いきれない厳しいエンド。普通ここまで冷たいエンドはないだろう。[Netflix] ジョージ・マッケイ、ケリー・マクドナルド
喜劇 愛妻物語
2020年
足立紳△ 喜劇と名づけるなら、もう少しコメディ色が必要だった。喜劇の基本は軽め。そしてリアリティを抑えること。リアルに重たくしてどうすんのよ。 売れない脚本家とその妻 濱田岳、水川あさみ
愛のむきだし
2009年
園子温☆ 本年の日本映画を代表する一本。3時間57分、一瞬たりとも映像は弛緩することなく、観客をぐいぐい引っ張っていく。常識外れな暴走に負けた。負けて感動した。感動して泣いてしまった。帰りついても興奮が鎮まらなかった。 闘争する変態愛 満島ひかり、西島隆弘
アイム・ヒア
2010年
スパイク・ジョーンズ◯ 不思議なラブストーリーを見た。奇妙な後味を残す。ヒロインにシエンナ・ギロリー。全身が見えないのにこんな美形を使う意味があるのか。 ロボット二人のボーイ・ミーツ・ガール
愛を読むひと
2008年
スティーヴン・ダルドリー☆ 終盤、収監されているハンナ(ケイト・ウィンスレット)が独房の棚の本を机に積んだ瞬間、鳥肌が立った。そのあとはただひたすら茫然とスクリーンを見つめるのみ。大人になったマイケルは、レイフ・ファインズよりもジョゼフ・ファインズのほうが顔もキャラもつながったと思う。 戦争犯罪に問われる女
AWAKE
2020年
山田篤宏◯ 心地よい映画空間。『ヒノキオ』もだったが、プログラムの入力風景には違和感ある。世間的なイメージはソースコードをキーボードからバタバタ叩きまくりだろうけど、現実には部分部分をコピペしてつなぎ、パラメーターなどをちょいちょいいじるぐらい。僕もWebページ入力はそうだ。 最強将棋ソフト開発者VS若手強豪棋士 吉沢
アウトポスト
2019年
ロッド・ルーリー◯ リアルな戦場シーンに満足感は大きい。戦闘でない日常シーンもリアルだ。と思っていたが、戦闘が終わって、戦死した米軍兵士の人数に違和感が。1桁。圧倒的に不利な位置関係から、圧倒的な戦力で急襲され、で、結果は圧勝。これって盛りすぎてない? 2009年アフガニスタンで圧倒的多数のタリバン兵に囲まれた米軍基地
アウトロー
2012年
クリストファー・マッカリー◯ いやあ、しびれましたねえ。初めてトム・クルーズがいいと思えました。良質のミステリー。映像エフェクトで目先をごまかす卑しい映画群とは対極にある正統派。自信過剰ぎみのトム・クルーズと、ヒロインらしさのまるでないロザムンド・パイク。奇妙な取り合わせもよかった。こういう良質の娯楽映画を鼻にもひっかけない米アカデミー協会はクソだ。 リー・チャイルド原作 ヴェルナー・ヘルツォーク
アオギリにたくして
2013年
中村柊斗◯ 無料上映で期待せずに観て、ガツンとやられた。メインは無名や新人の俳優。十分に抑制された演技がかえって涙を誘う。 広島で被爆したアオギリ 菅井玲/塩出純子/原日出子
青空ポンチ
2008年
柴田剛◯ ゆるゆるのタイトルに小池里奈のドラム、だけで観ました。ドラムは当然吹替なんだけど、猛練習の跡が見える(見た目、お気楽にやってるっぽいが)。直球勝負を外した超スローカーブな青春。ああでもなんだか心地よいのだな。 香川県の田舎ロッカーの青春
赤い闇 スターリンの冷たい大地で
2019年
アグニェシュカ・ホランド△ 予告篇でも感じられたけど、ホランドの演出に鋭さがなくなった印象。 スターリンに搾取されるウクライナを取材する英国記者
茜色に焼かれる
2021年
石井裕也△ 老人施設にオンラインで配信する尾野真千子の一人アングラ芝居。客観的な視点として、配信先の老人や職員の呆然リアクションがほしかった。独り善がりを作り手は理解しないのか。映画全体を通じて険悪な空気が漂う。 7年前に夫を亡くし、母子家庭に 片山友希、オダギリジョー、永瀬正敏
アキレスと亀
2008年
北野武△ きつい映画だ。無駄な努力はどれだけ重ねてもゼロにしかならないことを描いている。自分を戯画化するのは『監督・ばんざい!』でもやったが、こちらはあまりにも暗すぎる。主人公真知寿は自分自身の問題を理解しないが、北野武はわかったうえで描いてるはず。アーティストにはオリジナリティーがなければ可能性がない。なぜこうまで絶望的な人物を描くのか、意図がわからん。[DVD] 売れない「自称」アーティスト 柳憂怜、徳永えり
悪女 AKUJO
2017年
チョン・ビョンギル◯ 韓国映画ならではの体を張ったアクション。長回しのまま、主演女優がノースタントでハードなアクションをこなす。バイクチェイスしながらの乱闘はさすがにスタントだろうけど。韓国版のニキータは情が深い。けっして悪女ではありません。 キム・オクピン、シン・ハギュン
悪人
2010年
李相日◯ 見応えのある映画でした。『ケンタとジュンとカヨちゃんの国』同様、社会の底辺にいる負け組たちの哀歌のような物語。深津絵里の顔はリアルすぎる負け組です。 吉田修一原作 妻夫木聡/岡田将生/満島ひかり/樹木希林/柄本明
悪人伝
2019年
イ・ウォンテ◯ 主演3人の存在感で映画のグレードがぐっと上がる。容疑者を殺人犯と断定する物的証拠がないという設定はおかしい。本人の血液がどんなに少量でも照合は可能なのだから。[Netflix] マ・ドンソク
悪魔を見た
2010年
キム・ジウン◯ 心底、気持ちの冷え込む映画。登場人物すべてが最悪の不幸に陥ったまま終わる。残虐を追求するための残虐に見えて、評価したくない部分がある。あえて見せないことによる心理的な残虐さは後を引く。しかしラストのカット、イ・ビョンホンが見せる虚無の表情にはなんとも言えないものがあり、また尾を引いてしまう。 殺人鬼に復讐する刑事 チェ・ミンシク
朝が来る
2020年
河瀨直美◯ 前半の夫婦と養子のエピソードでちっとも乗れず。出産のための施設シーンでドキュメンタリ調になったとたん、ぐっと引き寄せられる。この映画で主演はどう見ても蒔田彩珠。なのに助演女優賞なんて、おかしいよな。[Netflix] 辻村深月原作 浅田美代子、永作博美、井浦新、山下リオ
旭山動物園物語 ペンギンが空をとぶ
2009年
マキノ雅彦△ 中村靖日が主演に等しい飼育係役で出る。それだけで観た。動物園の苦闘の物語はすばらしい。成功に至るプロセスは弱い。設備に金をかけ、立体化しました、だけでは画期的なアイディアにならない。成功が持続するはずもない。なんだか肝心な部分だけ抜かされた気分。 西田敏行、前田愛、堀内敬子
アジアの天使
2021年
石井裕也◯ 日本語と韓国語。相互コミュニケーションがとれないロードムービー(オダギリジョーはいちおうバイリンガル設定)。池松壮亮の息子役の子役、佐藤凌がこの映画の中心軸になっていると感じた。8歳だと。たいしたものだ。天使が登場する。世界の映画史上最もブサイクな天使だと断言できる。 人生うまくいかない日韓6人の道行き チェ・ヒソ、芹澤興人
悪しき男の10日間
2023年
ウルチ・バイラクタル◯ 前情報ゼロで、どこの国の話かもわからんまま観て、引き込まれる。探偵の相棒の18歳女がユニークで楽しい。トルコの娯楽映画は初めてだった。登場人物が多く、話も入り組んでわかりにくい。単発ものじゃなくシリーズだったのか。[Netflix] トルコの裏社会を生きる探偵
アジャストメント
2011年
ジョージ・ノルフィ◯ ありがちな設定なので観る前はナメてました。SFサスペンスでは背景がしっかりしてないと評価しないけど、これは及第点。どこでもドアーの威力を実写映像で見せつけられた気分。 フィリップ・K・ディック原作 マット・デイモン
アジョシ
2010年
イ・ジョンボム◯ クール、ビター、シャープ。日本製アクションも韓国を見習って切れ味を引き上げてほしい。エンドはやっぱり『マイ・ボディガード』にしてほしかったな。 マフィアに拉致されたよその子を救出しに行く男 キム・セロン、ウォンビン
明日の記憶
2006年
堤幸彦◎ 近年の観逃し映画でまだこんな傑作が残ってたとは。難病ものをただのお涙にしないで徹頭徹尾シリアスに描き、それでいて暗くはなってない。ラストでの樋口可南子のさみしさは心に突き刺さった。死別の悲しみよりも痛切に感じる。[DVD] アルツハイマーを発症した会社員の夫 渡辺謙 あすのきおく
アダム&アダム
2022年
ショーン・レヴィ◯ ライアン・レイノルズのキャラに当て書きされたかのような主人公。本人の少年時代との凸凹コンビのなりたちも含め、シナリオがよくできている。少年のウォーカー・スコベルのキャラもひねりが効いてていい。[Netflix] <30年前に戻って改変された過去を修正しようとする男/td>
新しき土
1937年
アーノルド・ファンク 伊丹万作△ 軍国主義鼓舞を別にしてもかなりのトンデモ映画。若き原節子がヒロインとして出番が多い。ファンにとっては映画館で観る価値ある。市川春代が面白くて、意外な収穫だった。[DVD] 日独合作の国策映画 小杉勇、早川雪洲、ルート・エヴェラー
あのこは貴族
2021年
岨手由貴子◎ 上級階級の女と下層階級の女とが一人の男を通じて出会い、飛躍する。岨手(そで)さんの映画は『グッド・ストライプス』とこれ、2本しか観てないけど、人を描くことに秀逸なものがある。気持ちが高まって爆発寸前。 山内マリコ原作 門脇麦、水原希子、高良健吾、石橋静河、山下リオ
あの娘は知らない
2022年
井樫彩△ 主演の福地桃子に確かな存在感がある。エンドクレジットで監督が女性と初めて気がついた。繊細にすぎる演出が納得できた。悪印象はないが、あまりに小さな話で、よくこれで一本の映画として成立したなと思う。京都シネマで『君だけが知らない』と両方をやっている。絶対に間違って観る人いると思う。 恋人が死んだ土地を訪れる青年
あの日のように抱きしめて
2014年
クリスティアン・ペツォルト△ 『ブラック・ブック』並みの強烈なエンドを期待してたら、スカされた。伏線、張ってたのになあ。ニーナ・ホスはチラシヴィジュアルと映像との落差が常に大きい。 強制収容所から生還した女性
あの日、欲望の大地でギジェルモ・アリアガ◯ 最初のほうで錯覚し、二つのエピソードのつながりを見失った。15年ほどのギャップがあったんだ。年齢計算で合わない人が二人いる他、妙なつっこみどころのある映画だが、演技アンサンブルの強さで魅せる。少女の顔をどこで見かけたのかと思ったら、『父の秘密』の主役、テッサ・イア。意外なところで去年の個人的なベストワン映画とつながった。 シャーリーズ・セロン、キム・ベイシンジャー、ジェニファー・ローレンス
アバウト・レイ 16歳の決断
2015年
ゲイビー・デラル△ ストーリーを動かさず、設定だけで話を重ねている。弱気なチラシも自信のなさの表れ。監督が脚本と製作を兼ねるとチェックが働かない。中性的なエル・ファニングは魅力的。けど、脇毛ボサボサはショック。 男になることを選んだ少女 ナオミ・ワ­ッツ
aftersun アフターサンシャーロット・ウェルズ◯ ほぼ何も説明しない映画。なので非常に心地よい。ヒロインの少女役はフランキー・コリオ。男女両用の便利な名前。予告篇ではさほど思わなかったが、子供ながら美形です。ふと映画館がMOVIXだと気づく。もろにミニシアター映画ですけど。 幼いころ父親と二人で過ごした夏休み
アメリカン・スナイパー
2014年
クリント・イーストウッド◯ 監督の存在を無視して観たが、イーストウッドの現実主義、正味本位の体質はしっかり感じ取れた。きれいごとやタテマエが存在しないのは観ていて気持ちがいい。主張はともかく、現実をポンと提示し、あとは観る者が考えよという姿勢だ。メジャーな観客を軽視してる映画が昨年度米国ナンバーワンの大ヒットというのは驚きだ。 イラクに着任した米国一の狙撃手 ブラッドリー・クーパー
あやしい彼女
2016年
水田伸生◯ 急にまた観たくなって、ちょっとのつもりが没頭(苦笑)。あざとい部分は多々あるのに、はまりこんで涙ぐんでしまう。この映画、好きなんです。[YouTube] 73歳が20歳に若返って 多部未華子、倍賞美津子
アリア
2008年
村松亮太郎◎ タイトルが『アリア』でバッハをバックにというから、かの有名曲かと思ったら、別のチェンバロ曲でした(こちらも有名)。個人的にきわめて好感度の高い映画です。観ていて息苦しく感じたのは、スクリーンが顔に貼り付くほど自分と映画の間にすき間がなかったからです(物理的に、ではなく)。主演の原田佳奈は、最初この人が主演?と疑問を感じたんだけど、いやいや、この人で正解だった。恋心を描いた映画で、静かな悲しみをたたえた美しい映画でした。 東京から長野の諏訪へ戻った従兄弟と再会した少女 井坂俊哉
アリス・クリードの失踪
2009年
J・ブレイクソン◯ 甘さのかけらもない冷たい感触の誘拐サスペンス。無駄のない運びで、誘拐にまつわるプロセスのほとんどを省いてる。登場人物は3人のみ。それ以外、声も人影も出ないという徹底ぶり。「小銭は置いとけ」とばかりに散らばった札をほっちらかし。残された数十枚のお札が気になって・・・・貧乏人は哀しいね。 金持ちの娘を誘拐 ジェマ・アータートン
歩いても 歩いても
2008年
是枝裕和◯ 恐るべき家庭ドラマ。笑顔の裏側の人間の本性のすさまじさ。それがあるからこそ人間って面白い。この話はハッピーエンドになりそうにないとわかるので、かえって安心して観ていられた。原田芳雄が演じる父親。あんなダメ老人がいても不思議はないけど、映画で目にするのは初めてかも。[DVD] 阿部寛、夏川結衣、樹木希林、YOU
ある男
2022年
石川慶◯ 細かい配役にいたるまで神経が行き届いてる感じで、安心して観ていられる。『嘘を愛する女』を思わせる設定だが、こっちのほうが格段に上。『罪の声』を思わせる部分もあるが、そこまでの密度はなかった。 3年と9か月一緒に暮らした男は誰だったの? 窪田正孝、安藤サクラ、妻夫木聡
アルキメデスの大戦
2019年
山崎貴◯ 頭から尻尾までフィクション。ハッタリをかまし続けて小気味よい。架空世界での嘘・ホラ・ハッタリ。これこそが映画の真骨頂。田中泯の未来を予見したようなセリフは余計。[Netflix] 戦艦大和を設計した男 菅田将暉、柄本佑
歩く、人
2001年
小林政広△ 小林政広がなにゆえ人気があるのか気になって、只券ゲットして2本観ました。主人公(緒形拳)の頑迷、わがまま、不器用はそのまま監督を投影してるような。香川照之と林泰文の会話リズムはまるで小津安二郎映画。思わず笑ってしまったが、わざとまねたのかどうかは不明。 大塚寧々、占部房子
アルゴ
2012年
ベン・アフレック◯ アフレックの演出力は確かなものがある。ないものねだりだが、足りないもの。それは米国政府に対する風刺。アメリカばんざ〜いな話で終わってしまっては物足りない。 ベン・アフレック、ジョン・グッドマン
ある優しき殺人者の記録
2013年
白石晃士◯ 監督は日本人だが、まぎれもなく韓国映画のテイスト。凄惨で狂ってる。それでいて狂ってないという無茶な設定。超低予算を逆手に取ったような作りで面白いものを生み出した。 連続殺人犯にインタビューする女性ジャーナリスト キム・コッピ
暗数殺人
2019年
キム・テギュン◯ 陰湿な犯罪を追う刑事のドラマで、爽快感とは一切無縁。楽しく映画を観たいのなら『犯罪都市』あたりがいいんだろうけど、こっちのヘヴィーさは強烈。特に悪党役はとんでもなく憎たらしい。韓国の心の闇の深さをまた、思い知らされる。それにしても韓国の俳優って、極悪党や超ムカつくやつをやると、なんでこんなにハマりこめるんだろう。[Netflix] 服役者の自供を手掛かりに別件の犯行を追う刑事 キム・ユンソク
アンダーカヴァー
2007年
ジェームズ・グレイ◯ グレイの映画には笑いがない。緊迫感が充満していて笑いを差し挟むすき間がない。味のある俳優をそろえていて、それを見るだけでも値打ちがある。親子・兄弟の絆にこだわりすぎるのは米国映画の常。現実にないからこそ、映画の中に求めようとするんだろうけど。 麻薬組織殲滅のために戦う兄弟 ホアキン・フェニックス
アンダー・ザ・シルバーレイク
2018年
デヴィッド・ロバート・ミッチェル△ 陰謀だの暗号だのと、オタク度がきつすぎて女性には不向きな映画。家賃を滞納して退去寸前というのに、気にするそぶりもなく素人探偵業にうつつを抜かす主人公が理解できない。極秘であるはずの場所がネット地図に「画像なし」表示。これではかえって目立つ。 アンドリュー・ガーフィールド、ライリー・キーオ
アンダー・ザ・スキン 種の捕食
2013年
ジョナサン・グレイザー☆ 観てる時は退屈して居眠りもしたが、あとになって強烈なイメージが蘇る。映像とサウンドは独自のものがある。『寄生獣』の亜流とは違う。『記憶の棘』の時、説明過少ぎみと思ったけど、こっちはまったく状況を説明しない。原作はある。読むか? 美しい女に化けた地球外生命体 スカーレット・ヨハンソン
アンダードッグ 前編
2020年
武正晴◯ ボクシング映画には傑作秀作が多い。これも水準以上ながら、岸井ゆきのの『ケイコ 目を澄ませて』を観たあとではかなり落ちる印象。[Netflix] 森山未來、瀧内公美、勝地涼
アンダードッグ 後編
2020年
武正晴△ 前編で一旦終了。後編を作ってつなげる意味がいまいちわからない。おまけにやたら長い。[Netflix]
アンダーワールド:ビギンズ
2009年
パトリック・タトポロス◯ シリーズヒロインの誕生前夜という話で、ヒロインはローナ・ミトラです。顔ではケイト・ベッキンセールに負けてるが、アクションの力量では圧勝。この映画は作品世界を形作るセットのデザインがとても美しく、見とれてしまう。[DVD] 吸血鬼一族の支配する世界
アントニオ・ルナ 不屈の将軍
2015年
ジェロルド・ターログ◯ フィリピンの対米戦争を背景にした、実在したフィリピン将軍の話。冒頭に「史実に基づくフィクションです」と出る。この手の実話映画はすべてこう宣言すべきだ。嘘八百な脚色をして観客を騙すのはけしからん。優秀な将軍が独善的で傲慢で、周囲と摩擦を生んでばかり。だからこうなってしまったのは身から出た錆といえる。ここまで身内との間で争いを生んでしまうなら、軍人として有能だったという評価も怪しくなる。[Netflix]
アンネ・フランクと旅する日記
2021年
アリ・フォルマン◎ 傑作だが、メルマガ紹介で書いたからくり返さない。フォルマンの前の映画『戦場でワルツを』は印象的なシーンでショパンのワルツ7番を使っていた。この映画ではショパンの夜想曲の7番。べつに意識してるわけじゃないんだろうけど。 アンネのイマジナリーフレンドが現代に出現する
アンノウン
2011年
ジャウム・コレット=セラ◎ 一級の娯楽作品。切れのいいサスペンス。結末は明かされるまでわかりませんでした。『エスター』と『蝋人形の館』の監督さんは要注目です。観終わって気になることが一つ出た。もう一度先頭から観直さないとわからなくなった。 病院で目覚めると偽物の自分が存在していた リーアム・ニーソン
アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場
2017年
アク・ロウヒミエス☆ 戦場に叩き込まれた気分。フィンランド人なら人ごとじゃないので激しく心揺さぶられただろう。涙なくしては見れないだろう。カレリア地方の大半は今もロシア領だと、あとで調べて知った。ロシアの自治共和国だった。ここはフィンランドだろう。 フィンランドの対ソ戦争
アンビュランス
2022年
マイケル・ベイ◎ 最近のマイケル・ベイは捨てたもんじゃない。ラストまで緊迫感のあるサスペンスを維持して満足させてくれる。劇場で観るべき映画だった。 銀行強盗が救急車を強奪 ジェイク・ギレンホール、エイザ・ゴンザレス
EO イーオー
2022年
イエジー・スコリモフスキ△ 元になってるのが『バルタザールどこへ行く』なので、明るい話じゃないってことは予想がつく。エンドクレジットにイーオー役のロバの名前が六つも。演技づけに苦労しただろうことが想像できた。 持ち主が変わりつつ旅するロバ イザベル・ユペール
イーダ
2013年
パヴェウ・パヴリコフスキ◯ イーダより、血のつながってないおば、ヴァンダの人生が興味を引いた。抱え込んだ重みゆえ放縦な生活に走ったのか。ラスト近く、イーダがレコードの針を落とす位置は『ジュピター』の第1楽章ですが、流れてきたのは2楽章。つっこんでいいものかどうか。 若い修道女が出生の秘密をたどる旅に出る
家路
2014年
久保田直◯ チェルノブイリの『故郷よ』ではウクライナの農民たちが禁止区域に多数残った。日本では「お上に従う」が当然でほぼ全体が退去した。この映画では一人若者が反抗して居座り、田畑を耕す。従順な日本人に対して「それっておかしくないか」という異議申し立てとなっている。自己責任で自己管理、自己判断が日本人にはなさすぎる。エンドの苗を植えるシーン。手前から植えて前へ進むという植え方、本当にあるんかいな。 松山ケンイチ、田中裕子
イカゲーム
2021年
ファン・ドンヒョク◎ 『カイジ』のパクリだという批判は侮りすぎ。見る者の良心を突き刺す秀逸なストーリーがある。『カイジ』にそんなものあるか。脚本や演出の力技をこそ見るべき。俳優で強い印象を残したのは、ほぼ新人といっていい二人の若い女優、チョン・ホヨンとイ・ユミ。[Netflix] 大金に命を賭けるサバイバルゲーム イ・ジョンジェ、パク・ヘス、コン・ユ
怒り
2016年
李相日△ 俳優はやたら豪華で、主演級をズラズラ。役者のヴォリューム感に押され、かえって物語が薄められたような。そのへんが『ウシジマくん』と正反対。森山未來はキャラクターとしてつながっていない。 松山ケンイチ、綾野剛、広瀬すず
生きてるだけで、愛。
2018年
関根光才◯ トータルとして好きな映画。脇役でも目立つ趣里がここでは主演全開でぶっ飛んでいる。対する菅田将暉は「動」に対する「静」で、立ち位置が難しい。仲里依紗が面白い役どころを楽しそうにやっている。まるで地のまま。 本谷有希子原作
田中哲司、西田尚美
生きのびるために
2017年
ノラ・トゥーミー◯ 言葉が英語なのに驚き、映画の国籍を見た。欧米の映画だった。欧米視点でのイスラム原理主義風な描き方ではあったが、一人一人の個人をくっきり描き出したのには好感がもてる。すんなり乗せられてしまった。[Netflix] タリバン支配下のアフガニスタンで 旧題:ブレッドウィナー
息もできない
2008年
ヤン・イクチュン☆ いつか再見したいと思ってたら京都シネマが旧作500円で上映。以前はインパクトの強さで押しまくられていた。二度目の今回、じっくり深く入り込めたと思う。類まれな傑作で、韓国映画屈指の名作だと再確認した。あまりにも熾烈な描写が続くので、入れない人は多いでしょうけど。「シバラマ(クソ野郎)!」というセリフが何百回も出る異常な映画です。 ヤン・イクチュン、キム・コッピ
イコライザー
2014年
アントワーン・フークア◯ CGを多用しないアクションはなんとすがすがしいことか。切れのいいアクションがリアルで心地よい。デンゼル・ワシントンは僕とほぼ同年齢。体が鈍ってあんなふうに動けない。侘しいような羨ましいような。 神に代わって正義を遂行する元CIAエージェント クロエ・グレース・モレッツ
遺体 明日への十日間
2013年
君塚良一◯ ほとんど遺体安置所のみのドラマだが、じわじわ迫ってくるものがある。心が圧倒される。酒井若菜、いいですね。抑制のきいた演技で訴えてくるものがある。最初誰かわからず、相葉雅紀が女装してるのかと・・・。 東日本大震災で釜石市の遺体安置所の奮闘 西田敏行
一月の声に歓びを刻め
2024年
三島有紀子△ 観る前にはオムニバスとは知らず、相互の関連もよくわからなかった。第一章でバリバリの主演格という態度の人が誰か、エンドクレジット見るまで気づけず(カルーセル麻紀でした)。各章のつながりについては、どうにも考える気力を失わせる映画だった。 前田敦子、哀川翔、坂東龍汰
1917 命をかけた伝令
2019年
サム・メンデス◯ カットを割らずに続けるから、間を持たせるための四苦八苦が露骨に見える。飛行機があるのだから、メッセージを投下すれば伝令より確実な気がするのだが。 攻撃停止命令を届ける二人の兵士
1922
2017年
ザック・ヒルディッチ△ なんとも陰鬱で救いのない話。けど、観て損した気はしない。主演のトーマス・ジェーンは愚かで見苦しい農夫と、なんともすごいイメチェン。[Netflix] スティーヴン・キング原作 資産家の妻を殺害
1987、ある闘いの真実
2017年
チャン・ジュナン◯ リアリティを損なう演出で残念な出来の『タクシー運転手』と同傾向なので懸念したが、上質の娯楽映画に仕上がっていた。人権も民主主義もない独裁社会。そっちの方向へフラフラ向かっている国が今ある。国民が自分の頭で考えなくなると、口先ばかりの独裁元首が立ち現われる。最後に「アレ?あんた主演じゃなかったの?」という人が出てくる。 拷問死を隠蔽する公安
ハ・ジョンウ、ユ・ヘジン、キム・テリ
市子
2023年
戸田彬弘◯ 複数の男性からこれほどまでに愛されていれば、もはや不幸な人生とは見えない。今年の主演女優賞レースで争いそうな趣里の『ほかげ』とハシゴしたが、杉咲花に軍配をあげる。 プロポーズを受け入れた翌日に姿を消した女性 若葉竜也
1303号室 → 1303号室(せんさんびゃくさんごうしつ)
1日半
2023年
ファレス・ファレス◯ シンプルなサスペンスだが強いインパクトがある。冒頭では容疑者の男はもろに犯罪性向の危険な男だったが、彼を追い込んだ周囲の人間の存在が徐々に見えてくる。彼も被害者だったのかも。[Netflix] 妻と娘を人質にとって逃走する男
1秒先の彼女
2020年
チェン・ユーシュン◯ ラブコメでSFでミステリー。おまけに一部ファンタジー。てんこ盛りの内容で、本筋と関係なさそうなあれこれの小ネタにも目配りを忘れず。主演のリー・ペイユーが絶好調で、ラストまで引きずり回された。一日が消失する設定部分で明白な矛盾を見つけた。と思ったら、きっちり矛盾を回避するひねりを入れていた。 バレンタインデーの1日の記憶がない
1秒先の彼
2023年
山下敦弘◯ 生意気女の印象が強かった清原果耶。ガラッと変わった今回の役柄が案外似合っていた。話には不自然な箇所が多々あるけど、個人的にはお気に入りの一作。あとで予告篇を見直して、クライマックス周辺をきっちり隠してるのを確認。この部分はぜひ本編を見て味わってほしいものです。 昨日の一日を紛失した青年 台湾映画『1秒先の彼女』リメイク 岡田将生、荒川良々
1408号室 → 1408号室(せんよんひゃくはちごうしつ)
犬ヶ島
2018年
ウェス・アンダーソン◯ 映像より画集がほしい。眺めていたい。ということで、自分用に絵本をiBooksで作った。著作権侵害なので一般公開はできないが。 野村訓市、ヨーコ・オノ、渡辺謙、夏木マリ
犬と猫と人間と
2009年
飯田基晴◎ 殺処分ゼロの英国と、殺すしかなくていかに殺処分を減らすかというレヴェルの日本とを比較して描かれると、つらいものがある。人の意識の差はどこから来るのか。キリスト教文化ゆえか。文化的な成熟度の違いか。動物とかかわってきた歴史のあるなしか。引き取りお見合いイヴェントで、野良の子犬らを育ててきた小学生たちが、引き取り手が現われて泣きじゃくるさまに気持ちがシンクロし、泣けてしまった。 捨て犬猫に関するドキュメンタリ
犬どろぼう完全計画
2014年
キム・ソンホ◯ 完全無計画。まるでずさんな小学生の思いつき。アホアホな話がほほえましく、愛らしい。イ・レは小学校低学年ながら、ベテラン俳優顔負け。笑い・涙・サスペンス。てんこ盛りサービスが韓国映画のよさだ。 カン・へジョン、キム・ヘジャ
犬は歌わない
2019年
エルザ・クレムザー、レビン・ペーター◯ 最初、役者犬が野良犬を演じてるのかと思った。が、演技では無理なシーンが続いて、純粋に野犬のドキュメンタリだとわかった。メイキング映像でも確認。演技と思ったのは、犬たちが撮影班や撮影機材を完全に無視し、1メートル以内に近づいても見ようとしないから。そこに至るまでの入念な準備があったからだと思う。 宇宙に飛び立った犬たちとモスクワを徘徊する犬たち
いのちの戦場 アルジェリア1959
2007年
フローラン・エミリオ・シリ◯ プロパガンダ、お涙頂戴、きれいごとは嫌いな性分で、心配したが、この映画に関しては杞憂だった。フランスとアルジェリア解放軍、どちらにも肩入れせず、客観性を貫いている。シビアでリアルでインパクトのある映画だった。 アルジェリア独立戦争 ブノワ・マジメル
命みじかし、恋せよ乙女
2019年
ドーリス・デリエX 樹木希林が『ゴンドラの唄』を歌っている。黒澤明が志村喬に歌わせたことで世界的に有名になった歌。志村はミュージカル(『鴛鴦歌合戦』)でも華麗にこなすほどの力量があったが、樹木の声は弱々しい。樹木の遺作だが、すでに死相が漂っている。[Netflix] 人生にゆきづまったドイツ人男性を一人の日本人女性が訪れる
イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密
2014年
モルテン・ティルドゥム◯ 暗号解読のみに徹したサスペンスの佳作。解読が対独戦勝利にどこまで貢献したのか。それはわからないが、少し大層に描いてるかな、という気がする。終盤の非情な決断を解読チームが下したことになってるが、そんなの、軍が押しつけたに決まってるだろ。だから戦後も長らく事実を公表できなかったんだ。[Netflix] エニグマの解読に挑んだ英国人数学者 ベネディクト・カンバーバッチ
鰯雲
1958年
成瀬巳喜男◎ 『夫婦善哉』と並ぶ淡島千景の代表作。30年ほど前に観て、鮮烈な印象が残ってたが、そのインパクトは今回も変わらない。戦争未亡人で農村の嫁という立場ながら、旧来の価値観をものともせずに発言し、行動する自由な気質に魅かれる。そして妻のいる男性との情事に足を踏み入れるさいの艶めかしさ、あだっぽさ。男ならみな、イチコロ(笑)。[video] 小林桂樹/中村鴈治郎/司葉子/木村功/杉村春子
イングロリアス・バスターズ
2009年
クエンティン・タランティーノ◯ 良識派を蹴散らす外道一直線。すばらしい。ユダヤ人のナチに対するうっぷん晴らしをそのまま映像にしてるファンタジー映画だ。終盤の展開についての情報を入れないで観たので仰天した。架空ではあっても連合国の組織的な虐殺行為を描いた映画は初めてではないか。 メラニー・ロラン、クリストフ・ヴァルツ、ブラッド・ピット、ダイアン・クルーガー
インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌
2013年
イーサン・コーエン、ジョエル・コーエン◯ 男はつらいよの超シリアスヴァージョン。力はあっても何かが足りず、売れないままの歌手。キャリー・マリガンは『ドライヴ』ではオスカー・アイザックと夫婦役をやった。今回は微妙な関係。 ジョン・グッドマン、ギャレット・ヘドランド、ジャスティン・ティンバーレイク
インセプション
2010年
クリストファー・ノーラン◎ 素晴らしいのひと言。オリジナルでこれだけの世界を作り上げるっていうのは天才。あとから思い返すとツッコミどころはたくさんあったけど。 レオナルド・ディカプリオ、渡辺謙、エレン・ペイジ
インターステラー
2014年
クリストファー・ノーラン◎ 凝りに凝ったストーリーを堪能する。科学はわからないほうが楽しめます。下手に半端な知識を持ってると「それって無理」を連発してつっこみまくる。ジェシカ・チャステインの役はアン・ハサウェイと交換すべきだった。子役のマッケンジー・フォイと顔がつながらんというか、アン・ハサウェイをそのまんま子供にしたようだったから。SFなんだけど、結局は家族の映画なんだね。 居住可能な天体を探索 マシュー・マコノヒー、マット・デイモン
インフル病みのペトロフ家
2021年
キリル・セレブレンニコフ◯ 映画を理解することは観る前すでに諦めている。ロシアという国のずさんさをあばいてるような気も。後半に出て来た若い女は、映画の中でどういう位置づけなのか、さっぱりわからず。いかにもロシアっぽい音のバヤーンという楽器がこんなにも多用されるの、『聖なる鹿殺し』以来。 インフルエンザが蔓延する2004年のロシア
陰謀の代償 N.Y.コンフィデンシャル
2011年
ディート・モンティエル◯ 警察組織の不正をテーマにしたミステリーだが、みごとに騙されました。最後の最後まで背後の構図が読めない。うまい脚本です。映画ファン向きの渋いキャストに渋いストーリー。ヒットしない映画の典型だ。 チャニング・テイタム、レイ・リオッタ、ジュリエット・ビノシュ、アル・パチーノ
Virginia ヴァージニア
2011年
フランシス・フォード・コッポラ◯ デジタル映写だが映像は美しい。エル・ファニング。怪しげな魔物。美しい。ダコタ姉さんだとこうはいかない。ストーリー的にはドカン!とくるものがなく、インパクトない。 三流ホラー作家が田舎町で過去の忌まわしい事件を探る
ヴィヴィアン・マイヤーを探して
2013年
チャーリー・シスケル、ジョン・マルーフ◯ 乳母なのに世話してる子供が事故って倒れてるとき、ケアもせず、絶好の撮影タイミングを逃すまいと撮りまくるなんて、『ナイトクローラー』かよと爆笑! これぐらいでなきゃアーティストはつとまらない。 埋もれていた天才写真家を見つけ出す
ヴィジット
2015年
M・ナイト・シャマラン◯ ホラー風味のスリラー。先読みしないようにしつつ気楽に観ました。怖くはありません。女性歌手の名前でののしり声を表現するというのは笑った。歌手はそれぞれ知らない名前だ。ビデオ会話での母親のリアクションはおかしい。状況を知ってパニックになりそうなタイプなのに。冷静に子供たちに指示してる。この監督はホラーを演出できてもスリラーは不得手だと思う。 祖父母宅で一週間お泊りの姉弟
ウィッチ
2015年
ロバート・エガース◯ どいつがワルかというミステリー的な興味もあったが、伏線がほとんどなくて先が見えん。悲惨なストーリーで、目は釘づけ。ヒロインのアニャ・テイラー=ジョイは『スプリット』よりもこちらが格段に魅力的。要注目の女優。 狂信的な男の一家で、赤ん坊が神隠しに
ヴィヨンの妻 桜桃とタンポポ
2009年
根岸吉太郎◯ たまには「いい映画」を観なきゃね。そう思って観て、相性の悪さを実感。浅野忠信演じる作家を目の当たりにしたら「甘ったれんな!」とボコボコに殴って・・・・みたい気もするけど、見なかったふりするかな。あれが天才なら天才になりとうない(ハナからムリ?)。松たか子は無教養で垢抜けない貧乏な田舎者の美人にぴったりはまっている。他の役者を含めてキャスティングは満点です。 太宰治原作 広末涼子 妻夫木聡 堤真一 室井滋 伊武雅刀
ヴィレッジ
2023年
藤井道人△ 期待せずに観たのがかえって悪かったのかも。想像力の貧困を感じた。新作の映画には、すでにあるものを超える想像力をこそ求めたい。[Netflix] 山中にゴミ処理施設を作った村 横浜流星、黒木華、中村獅童
ウィンターズ・ボーン
2010年
デブラ・グラニック◎ 密度の濃いドラマ。甘さのかけらもないシビアなテイストは好みです。17歳の女の子が村のタブーに臆せず分け入る。不屈の面構えのジェニファー・ローレンスが素晴らしい。冷ややかな空気と温かなハートのバランス。今年のベストワンです。劇場(シネラリーベ)支配人に礼を言ったのは初めての経験だった。 行方不明の父を探す娘
ウインド・リバー
2017年
テイラー・シェリダン◯ やや頼りなげな新米FBI(エリザベス・オルセン)をフォローするハンター(ジェレミー・レナー)が、元特殊部隊かというほどにキレる。ジェレミー・Rと違って男前のジョン・バーンサル。よく見かけるけど、出てくるたびに殺されてるような。 先住民居留地で殺人事件
ウォッチャーズ
2008年
モーガン・J・フリーマン◯ 絶望的なほど怖いスリラー。あれよあれよというまにズルズルひきずりこまれた。観てる間、体がどんどん冷え込み、上着を羽織ってました。名の知れた俳優はミーシャ・バートンだけ。こういう役柄は初めてと思うが、優しさと狂気の両面の顔を巧みに見せて、怖い。[DVD] 狂気のストーカー女
ウォレスとグルミット チーズ・ホリデー
1989年
ニック・パーク◯ 久しぶりに見る。第1作はやはり少し造型が粗い。スキーする月のロボット君にはほっこり和む。 チーズをとりに月へ行く
ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ
1993年
ニック・パーク◎ サスペンスとスピード感で勝負。コマ撮りアニメでこれだけのスピード感を出せるのはすごいこと。 第2作
ウォレスとグルミット 危機一髪
1995年
ニック・パーク◎ ヒロインのブサイクさがなんともご愛嬌。関係ないけど、笛でテーマ曲、吹けます(簡単だけど)。 第3作
ウォレスとグルミット ベーカリー街の悪夢
2008年
ニック・パーク△ 凡庸な作りで、印象に残るシーンはない。1〜3作と同時上映だったが、2作目3作目との落差が大きい。3作目はスラプステックアクションコメディの傑作として映画史上に名を残す。 シリーズ5作目
動くな、死ね、甦れ!
1989年
ヴィターリー・カネフスキー◎ インパクトあるシーンだけで構成されたかのような1時間45分。観るのは二度目なのに、次に何が起こるかわからない緊張感で満たされる。映画制作の作法をとことん無視してると思う。そこに破壊的なパワーがある。カネフスキーは日本の歌が好きらしい。状況と無関係にやたら歌が出てくる。 自伝的映画
うさぎドロップ
2011年
SABU△ 後半、どんどんきれいごとに流されて失速していき、残念だった。無理にドラマチックに盛り上げなくても、さりげない日常描写だけで絵になってたのに。結局、芦田愛菜可愛い、だけが残った。 幼い「おば」を養育するはめになった青年 松山ケンイチ、香里奈
嘘つきみーくんと壊れたまーちゃん
2011年
瀬田なつき◯ 観初めて10分もたたんうちに選択ミスと思ったが、終わったあと、観てよかったなあと思ってる。シリアスなのにやたら脱力の演技は意図的だ。が、舞台劇のような芝居が混じるのは違和感あった。傍観者でしかなかったゆえの罪悪感が彼を駆り立てている。一生それを背負っていくのかな。 一女性を守るために現われたみーくん 大政絢、染谷将太
嘘八百
2018年
武正晴◯ 役者たちの真剣度が感じ取れる。特に主演の二人(中井貴一、佐々木蔵之介)。自虐的なうらぶれぶりが素晴らしい。エンドの混乱ぶりが惜しい。状況がわからない。堀内敬子は森川葵の姉という設定なの? 友近、前野朋哉、坂田利夫、木下ほうか
嘘八百 京町ロワイヤル
2020年
武正晴◯ ツッコミ・文句は多々あれど、今回は封印。この連作は脇の役者たちそれそれの持ち味を生かす映画だ。特に森川葵が秀逸。もっと映画に出てほしい。 中井貴一、佐々木蔵之介、広末涼子、加藤雅也、友近
嘘を愛する女
2018年
中江和仁△ 以前観たらしいけど、ほとんど忘れてる。ヒロインがイマイチの人なので、探偵役の吉田鋼太郎が光ってくる。自分的にはこの人が主演。脇の川栄李奈とDAIGOのコンビも効いている。[Netflix] 一緒に暮らしていた男は誰だったの? 長澤まさみ、高橋一生
海にかかる霧
2014年
シム・ソンボ△ フロンガスがもれたぐらいで人間の大量死が起こるか? 面白いドラマだけど、その点で引っかかる。微妙なシチュエーションで終わるエンドはいい。 密航者の運び屋 キム・ユンソク
海辺のポーリーヌ
1983年
エリック・ロメール◎ 再見。強いインパクトが残ってたわけがようやくわかった。ヒロインの少女ポーリーヌ(アマンダ・ラングレ)の存在感の強さは当然のこととして、その対極にある中年男のいやらしさが強烈だったんだ。この二人は終盤で一対一で向き合う(対決する?)。緊迫するシーンだった。アマンダ・ラングレはロメール映画中、最強のヒロインだ。[DVD] ひと夏の恋愛劇
ウルトラミラクルラブストーリー
2009年
横浜聡子△ 監督前作の『ジャーマン+雨』を知らず、松山ケンイチ目当てで来たファンたちはどう思ったか、映画よりそっちが気になったが、前から2列目なので見えず。これだけ無茶苦茶な映画をホイとシネコンに差し出した若い監督の根性は見上げたものだ。麻生久美子が受けの演技に徹したのはよかった。彼女まで暴走してたら映画は崩壊した。前作もだったが、横浜は子供の扱いがうまい。 町子先生一直線愛の精神遅滞青年 渡辺美佐子、原田芳雄
ウルフマン
2010年
ジョー・ジョンストン◯ 主演の二人ではなく、ヒロインのエミリー・ブラントを見に行きました。全身から切々と迫ってくるものがあります。ベニシオ・デル・トロはミステイクのような。変身する前からケモノ顔だから。レイフ・ファインズみたいな整った顔だちなら変身の「前・後」のギャップがあるだろうけど。 狼男の悲劇 アンソニー・ホプキンス、ヒューゴ・ウィーヴィング
運命は踊る
2017年
サミュエル・マオズ◯ エンディングへ向かう話の流れが、分岐のない一本道のようにくっきりと。踊られるフォックストロットとラストの曲『鏡の中の鏡』(アルヴォ・ペルト)が皮肉な絡み方をしてるような。 息子の戦死の報を受け取る夫婦
永遠のこどもたち
2007年
フアン・アントニオ・バヨナ◯ 静かな悲しみがラストで広がっていく。ファンタジー系のサスペンスの傑作と思う。美しい映像の残り香が終わったあとも漂っていました。ジェラルディン・チャプリンは登場すると、貫録でその場をさらってしまいますね。 息子が忽然と姿を消す ベレン・ルエダ
永遠の門 ゴッホの見た未来
2018年
ジュリアン・シュナーベル◯ 彼は人とは違った目で世界を見ている。それに惹かれる。当たり前のことだけど、この時代の一般の人たちはゴッホを知らない。それを前提に描いている。思うこと、感じることは多すぎるが、全部は書けない。[Netflix] ウィレム・デフォー。オスカー・アイザック
えいがのおそ松さん
2019年
藤田陽一◯ 原作を無視したシュールなファンタジー。感情移入など無理なほど悲惨な成れの果ての6つ子。エンドクレジット後に前半のさりげない伏線を回収している。そこで妙に感動![Netflix] 大人になった6つ子たち
英国王のスピーチ
2010年
トム・フーパー◯ クライマックスの戦争スピーチでベートーヴェンの圧倒的な『アレグレット』が荘重に響き渡る。それだけでパブロフ犬状態で感動し、涙ぐんでしまう。ジェフリー・ラッシュら、役者で魅せるドラマも大満足。お高く止まりすぎな日本の皇族どもも、もっと国民に語りかけろよ。 コリン・ファース ヘレナ・ボナム=カーター
駅 STATION
1981年
降旗康男◯ それぞれの生きざまがゆっくり浮かんでくる構図になっている。倍賞千恵子は他の女優を圧倒する存在感を見せて、格の違いを感じさせる。ほんのちょい役だったが武田鉄矢は印象的なシーンを作って彩りを添えている。カムチャッカうんぬんのギャグは高倉健にしては珍しい(おまけに下ネタ)。[DVD] 烏丸せつこ/宇崎竜童/田中邦衛
駅馬車
1939年
ジョン・フォード△ ストーリーも人物造型もシンプル。9人の配役は割り当てられたキャラクターを愚直に演じている。個としての人物像はない。印象としては悪くないのであれこれ書きたくないが、アパッチの女がスペイン語の歌を歌うのは変すぎる。 ジョン・ウェイン、ジョン・キャラダイン
エグザム
2009年
スチュアート・ヘイゼルダイン◯ 観客を翻弄するこの手のミステリーは竜頭蛇尾で終わることが多いが、これは納得で、合格。ほとんど一室のみセットで、無名の俳優10人。シナリオの力頼みで、あきれるほどの低予算な映画。役者はそれぞれ厳選された顔ぶれなので、安っぽく見えたわけではないが。 高額報酬を得るためのヤバい就職試験
エクスティンクション 地球奪還
2018年
ベン・ヤング◎ Extinctionって「絶滅」だと。侵略テーマのSFだけど、今までに観たことないストーリー設定で、価値観がひっくり返るような奇妙な感覚にとらわれた。何を書いてもネタバレになるが、「いっぺん観てみんか」って、まわりにそそのかしまくりたくなる映画だ。[Netflix] 宇宙から大軍が襲撃してくる マイケル・ペーニャ
エクソシスト ビギニング
2004年
レニー・ハーリン◎ フリードキンの記念すべき第一作を別にすれば、シリーズ中、本作は格段に高水準だという記憶に間違いはなかった。地味な内容だが、高く評価できる一作。カラーがまるで異なるため、第一作とどっちが上かという比較は無意味。[Netflix] 前日譚 ステラン・スカルスガルド
エクストリーム・ジョブ
2019年
イ・ビョンホン◯ 抜けたおばかギャグとハードなアクションのギャップ。韓国のこの路線はなかなかイケる。 張込みのために唐揚げ屋を営業する警察チーム リュ・スンリョン、シン・ハギュン
エクスペリメント
2010年
ポール・シェアリング◯ ドイツ映画の『ES[エス]』をさらにテンション上げた映画。楽しい要素が何もない深刻な映画を元旦に観てしまう。たった6日で秩序が崩壊するのはおかしいと思ったが、現実の実験でも6日で停止されたんだと。 実際に行われた危険な心理実験 エイドリアン・ブロディ、フォレスト・ウィテカー
エクス・マキナ
2015年
アレックス・ガーランド◎ 日本公開が決まる前から注目してた一作がついに京都公開。生身の肉体よりロボットの体のほうがエロいと感じさせるCGデザイン。デザインというものはこうでなくっちゃ。 ロボットは人を恋するか? アリシア・ヴィキャンデル
エグゼクティブ・デシジョン
1996年
スチュアート・ベアード◯ 何度か観てるが、役者のキャラを生かしたひねりが効いている。B級サスペンスの秀作。スティーヴン・セガールの部下の数が足りないことに気づき、じっくり観直した。旅客機に潜入しそこなったため、途中から消えた兵員が2名いたことに今回初めて気がついた。[Netflix] テログループに乗っ取られた旅客機 カート・ラッセル
SNS 少女たちの10日間
2020年
バーラ・ハルポバー、ビート・クルサーク◯ エサを投げ入れたとたん、一斉にゴキブリが集結したみたいな映画。こういった輩は更生する可能性がないので、一生豚箱入りがよろしい。この映画が公開されただけでも犯罪者たちにとっては打撃だろう。顔が加工されてるといっても知人が見ればわかるし。 18歳以上の女優を12歳に化けさせてSNSでおとりに
エスター
2009年
ジャウム・コレット=セラ◎ おっそろしく怖い。余韻を楽しむどころではない。早く忘れ去りたいぐらい。微妙に後味も悪いから、口直しにゆるっぽい『クヒオ大佐』を観るべきだったかも。あとでチラシの不気味な顔をじっくり見て、「なるほどそうだったのか」と得心するものがあった。 孤児院から引き取った少女は何者? ヴェラ・ファーミガ、イザベル・ファーマン
エスター ファースト・キル
2022年
ウィリアム・ブレント・ベル◯ 中盤に想定外の悪党が登場し、俄然面白くなった。二十代半ばのイザベル・ファーマンを十歳に見せる工夫。最初はそればかり気になった。前作から13年もたって再び十歳で登場させるというのはかなり無理あった。 殺人鬼映画の前日譚 ジュリア・スタイルズ
X−MEN ファースト・ジェネレーション
2011年
マシュー・ヴォーン◯ シリーズ最高傑作と思える上出来の娯楽映画。最近のハリウッドメジャーにはないシャープさ。シリーズで唯一観ていた第一作を再見したくなった。 シリーズの前日譚 ジェームズ・マカヴォイ/マイケル・ファスベンダー
エッシャー 視覚の魔術師
2018年
ロビン・ルッツ◯ 遊び心満載の映像が楽しい。できたらもう一度じっくり観たい。グラハム・ナッシュがエッシャーに電話した。「アーティストじゃなく数学者だ」と言ったそうな。たしかにアーティストとは対極にある人生とライフスタイルだ。 エッシャーのドキュメンタリ
エミアビのはじまりとはじまり
2016年
渡辺謙作△ 前野朋哉の漫才を期待した。が、冒頭の漫才で沈没。漫才になってません。お笑いをナメとるだろ。じべたに落とした揚げ物を箸でつまんで食ってる黒木華の真似は、さすがにできん。 漫才コンビの相方が死んだ 森岡龍/山地まり/新井浩文
エリジウム
2013年
ニール・ブロムカンプ△ 地球上の最大の問題、人口爆発をほったらかしにしてきれいごとのハッピーエンド。能天気すぎる。 富裕層だけが極楽にすむ未来社会 マット・デイモン
L.A.ギャングストーリー
2012年
ルーベン・フライシャー◯ ウェルメイドな娯楽映画でよろしい。傑作なんか期待してない。面白ければいい。いかついジョシュ・ブローリンと優男のライアン・ゴズリング。絶妙のコンビ。詰めの甘い部分もあるが、B級映画だ。時々ショーン・ペンがエルム街のフレディに見えてしかたなかった(顔が)。 警察対マフィアの仁義なき戦い ニック・ノルティ、エマ・ストーン
エルネスト
2017年
阪本順治X 日本・キューバ合作映画なので阪本監督の演出の自由度が下がったんだと思う。やりたい放題のパワーが消え、真面目な映画になった。映画シナリオとして辻褄の合わない点が終盤に複数出てくるのも気になる。オダギリジョーがボリビア農民に「医薬品を持って必ず戻るから」と告げて、実行しないなど。現実ではありえても、映画ではありえない。 義勇軍に参加した日系人 永山絢斗
LBJ ケネディの意志を継いだ男
2016年
ロブ・ライナー◯ 裏話は面白かった。事実との食い違いが見えず、実話ものはいつもそれが気になる。ケネディ大統領の役者は、似てないというより、あまりにも貧相でキャスティング失格。主演のウディ・ハレルソンは合格です。 第36代米国大統領リンドン・ジョンソンを描く
エレクション 死の報復
2006年
ジョニー・トー◎ ダリオ・アルジェントの『ジャーロ』が公開中止となり、配給会社が差し替えでお蔵入り映画を出した。配給と劇場はお気の毒だが、僕にとっては大正解の差し替えでした。同じ監督でも『エグザイル/絆』のようなスタイリッシュと違う。リアルでエグい実録マフィア映画の第2作で、前作より密度がアップ。会長職を望んでない男が抗争劇の中心人物になるという皮肉。さらにラストは駄目押しの皮肉で泣き笑い。 香港黒社会の会長選挙 ルイス・クー/サイモン・ヤム
エンジェルウォーズ
2011年
ザック・スナイダー△ 吹替しかなかったのでしかたない。しかしTVドラマ調のセリフにはメゲた。予告篇ではドラマ部分が緊迫感あってよくて、バトルシーンが凡庸。吹替のせいでそれが逆になった。絵で見せるバトルは吹替の下手さが気にならない。 監禁を脱するために空想世界で戦いを挑む エミリー・ブラウニング
エンド・オブ・ステイツ
2019年
リック・ローマン・ウォー◯ 初見だということは観てから知った。軍事産業による陰謀など、あまりにも作られすぎのストーリーを懸命にやってくれてるのが微笑ましい。ニック・ノルティは爺さんになったけど、元気いっぱいで暴れてる。[Netflix] 大統領を狙った陰謀 ジェラルド・バトラー
王将
1948年
伊藤大輔◯ 将棋バカに手を焼く妻と娘の物語。と、言い切ってしまっていいように感じられた。苦労させられながらも愛情が一本通っている。だから堰を切ったような娘の父親にたいする容赦ない罵倒、叱責が生きてくる。[YouTube] 坂田三吉の物語 阪東妻三郎/水戸光子/三條美紀
王手
1991年
阪本順治◯ ビンビンに気合い入っとんなあ。映像の端々に力がみなぎってる。赤井英和も将棋の勝負師にぴったり。つまらんツッコミですまんけど、故郷の田舎町でストリップ嬢やってる女って、ありえんよ(広田玲央名ですが)。[DVD] 加藤昌也/仁藤優子/若山富三郎/國村隼
おおかみこどもの雨と雪
2012年
細田守◯ 予告篇では見どころが見えてこなかった。危うく逃してしまうところだった。久しぶりにハイレヴェルなアニメーション。オリジナル作品でこんな地味な企画がパスした。それでまたヒットしてるのが不思議。動物が出てくるけど子供向けのアニメでもないし。雪がだだこねて狼になる部分がとっても可愛らしくて、そこだけリピートして何度も見たい。 狼人間の子供を産んだ女性
オオカミの皮をまとう男
2017年
サム・フエンテス◯ 極限の世界。山中の孤独な暮らしを淡々と描く。熾烈な人間ドラマも含め、久しぶりに「魅せる」映像作品に出会えた。[Netflix] 深い山の中で生きる猟師とその妻
狼の死刑宣告
2007年
ジェームズ・ウォン◯ 観終わってすっきりさわやかはありえない映画だけど、もうちょっとカタルシスがほしい。前半のケヴィン・ベーコンのマイホームパパはぜんぜん似合わない。保険会社のリスクマネージャーなら、後半の戦いの中で無意識で性癖が出るといった工夫もほしかった。なんだかんだいいながらもこの手の映画は好き。 ブライアン・ガーフィールド原作 街のチンピラ集団と戦う一人の男
オーケストラ!
2009年
ラデュ・ミヘイレアニュ◎ クライマックスの公演はチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。曲の力強さにも後押しされたが、そのクライマックスへ向かってすべてのドラマが一気に流れ込むよう計算された構成は見事で、震えた。この時点での今年の最高傑作。余韻に浸りきりました。 メラニー・ロラン、アレクセイ・グシュコフ、フランソワ・ベルレアン、ミュウ=ミュウ
大阪ハムレット
2009年
光石富士朗◎ 近年の日本映画では出色の出来。(DVDレンタルで)観るかどうか迷ったのが恥ずかしいほど。映画の中の空気、映像空間に酔ってしまいました。微妙に大阪のようで架空の異空間のようで、面白い空間を作った。大塚智哉クン、可愛らしいなあ。惚れてしまいそう(あぶない)。[DVD] 森下裕美原作 松坂慶子、岸辺一徳、久野雅弘、間寛平、加藤夏希
大鹿村騒動記
2011年
阪本順治△ もうちょっと笑えるかと期待した。特筆すべきはおカマちゃんの冨浦智嗣(失礼!性同一性の役)。演技に見えず、本物と思ってしまった。登場するたび注目。可愛らしいですね。 伝統ある村芝居の直前の騒動 原田芳雄 大楠道代 岸部一徳 おおしかむら〜
Oh!それみよ
2013年
古川タク◯ ピクシレーションという、人物と実景を使ったコマ撮りアニメです。古川タク自身の歌で『オー・ソレ・ミオ』が流れる中、広い公園をゴンドラが疾走する。毎度のことながら、人を食った楽しい作品です。
オーバー・フェンス
2016年
山下敦弘△ 映画全体、合わない雰囲気。オダギリジョーも合わないんだけど、壊れる人間じゃなく壊す人間だって言った。これはひょっとして僕自身のことかな。一人のほほんとしてて周囲を壊していく人、いるよね(他人事ではない)。 佐藤泰志原作 蒼井優、松田翔太、北村有起哉、満島真之介、優香
オー!ファーザー
2014年
藤井道人◯ ありえない設定でとことん楽しませようとする。原作伊坂幸太郎というよりやはり吉本の映画でしょう。撮影モードが見たことないトーンだ。ファンタジー風にしたかったのか。忽那汐里はハデ顔全開でコメディに合っている。 息子一人に父親4人 岡田将生、佐野史郎、河原雅彦、宮川大輔、村上淳、柄本明
オールド
2021年
M・ナイト・シャマラン◯ ユニークな設定を次々提示してくるこの監督に興味を持ってます。意外にも原作があるんですね。そんなバカなというツッコミを返上して観ることをお勧めします。[Netflix] 急速に年老いていく場にとじこめられた人々
オールド・ガード
2020年
ジーナ・プリンス=バイスウッド◯ 痛すぎるバトルアクション。言葉と写真で語られるそれぞれの歴史の厚みを、現物の各メンバーから感じとれない。それなりの大物俳優を並べるべきだった。[Netflix] 不死身の軍団 シャーリーズ・セロン、キキ・レイン
オール・ユー・ニード・イズ・キル
2014年
ダグ・ライマン◯ タイムリプレイものに異星人襲来ものをプラスしたユニークな快作。エミリー・ブラント、すばらしい。 トム・クルーズ 桜坂洋原作
オキシジェン
2021年
アレクサンドル・アジャ◯ 謎の密閉容器に缶詰状態で蘇生し、自分が誰かも何もわからないという設定。刻々と酸素が少なくなっていく中、懸命に生き残り&脱出をはかる一人の女性。何を書いてもネタバレになってしまう。撮影空間は小さなセット一つだけで、登場人物はほぼ一人。こんな低予算でも、脚本次第でいくらでも面白く作れるという一例。[Netflix] メラニー・ロラン、マチュー・アマルリック
オクジャ
2017年
ポン・ジュノ△ 観てから知ったが、ポン・ジュノの映画は短編を除いて全部観ていた。これまで失敗作や不満な映画がなく、ほとんどが高いレヴェル。この映画は、俳優が元々のイメージの範囲内に収まる。映像に気をとられたのか、ストーリーが弱い。[Netflix] スーパーピッグを巨大企業から守ろうとする少女 ティルダ・スウィントン
オケ老人!
2016年
細川徹◯ 『がんばれ!ベアーズ』老人楽団篇とでもいうべきか。フランス映画の『オーケストラ!』ともどことなく響きあう。『マエストロ!』も大好き。オーケストラコメディと相性がいいのかも。 杏、笹野高史、左とん平、黒島結菜、坂口健太郎
おこんじょうるり
1982年
岡本忠成◯ はやらなくなったイタコのばあさんと、浄瑠璃名手のキツネ。異類の情愛を描いている。はずだが、裏読みすると互いを利用しあって稼いでるようにも見える。おこんの歌は力強い。このアニメの最大の魅力になっている。 さねとうあきら原作の人形アニメ 25分
鴛鴦歌合戦
1939年
マキノ正博☆ B級テイストたっぷりのミュージカル。何度も観てるはずなのに、今回初めて感動した。市川春代の愛くるしさにコロッと参ってしまった。[YouTube] 片岡千恵蔵、志村喬、ディック・ミネ
おだやかな日常
2012年
内田伸輝◎ この手の映画はほとんど観ないんだけど、音楽を聴いてやろうという動機で。大正解でした。俳優陣の芝居に見とれ、どっぷり漬かりきった。関係ないが、エンドクレジットの曲目、間違っている。制作側に知らせたら、パブリックドメインは挙げなくてもいいんですよと、ずれた返事が返ってきた。 3・11の被災のあとで 杉野希妃/篠原友希子
おっぱいバレー
2009年
羽住英一郎◎ 思わぬところに感動ポイントがひそんでいて、目をうるませる。学生スポーツの世界の不純さがストレートに出ていて、実情のカリカチュアライズが見事。宣伝コピーは「おっぱいなんか見せられるわけないじゃん」。当然じゃん。綾瀬はるかは化粧品広告の契約でがちがちに縛られてるから、見られるわけないじゃん。[DVD] 一勝したら顧問が胸を見せるという約束に男子バレー部が発奮
オデッセイ
2016年
リドリー・スコット◯ どこが火星やねん、な火星の大地。パッピーエンドが見えてる話なのでサスペンス感は弱い。だけど過大な期待さえしなければ楽しめる映画です。 火星においてきぼりの一人ぼっち マット・デイモン
お父さんと伊藤さん
2016年
タナダユキ◯ かなり久しぶりの上野樹里。予感はあったが低迷を脱して完全復活。というより、以前以上。円熟味がにじむ。勝手に主演女優賞に推しときますから。親子の和解に向かう話は苦手です。藤竜也演じる自己中老人が目をむいてがなる姿には嫌悪感を覚える。僕の父親からあんなふうに怒鳴られたことはないけど。 カップルの部屋に親父がころがりこむ 藤竜也、リリー・フランキー
おとなの事情 スマホをのぞいたら
2021年
光野道夫△ スマートフォンをみんなにオープン!と決めても、いざかかってくると、全員が一瞬無意識のうちに隠そうとする。誰しも心に一抹のやましいものが…。米国のオリジナル版は観てないけど、本来はコメディのはず。あまりにも深刻になりすぎ。ゲスなやつをリアルに演じる田口浩正は、正真正銘のゲスに見える。 東山紀之、常盤貴子、木南晴夏、鈴木保奈美
おと な り
2009年
熊澤尚人◯ 主演二人がアレなので敬遠してたが、予想外の面白さでぐいぐい引き込まれ状態。一貫した緊迫感がいい。ときめいてしまう。ひそやかな音で恋が始まる。「お隣=音鳴り」ひっかけてるわけね。なるほど。でしゃばり谷村美月もそれなりだったが、今回はさりげなく大人の女を出した市川実日子に軍配を上げよう。谷村美月「聡もがんばりな」って、おまえに言われるのかよ。[DVD] 岡田准一/麻生久美子/岡田義徳/池内博之
おにいちゃんのハナビ
2010年
国本雅広◎ 携帯電話の使い方に意表をつかれる。観る前は、難病もので谷村美月が薄幸の少女なんてありえないと思ったが、見事なはまり役で文句なし。谷村が映画全体を引っ張っている。こんな映画で泣くわけないと思ってたのに、不覚。それだけよくできていた、ということ。 天国へ行った妹のために花火を上げる兄 高良健吾
お引越し
1993年
相米慎二◎ 久しぶりに観直すと、映像の力のみなぎりかたが尋常ではなかった。特に主演の3人(中井貴一、桜田淳子、田畑智子)の力。終盤はレン子の気持ちが突き刺さってきた。個人的には日本映画の国宝的存在。[YouTube]
オフサイド・ガールズ
2006年
ジャファル・パナヒ◎ 強烈な熱気にあおられて大興奮状態。若いイラン人俳優たちが達者で、すっかり乗せられた。こんなに面白いのにチラシのデザインセンスが劣悪で、もったいない。結果が予測不能な、イランのオリンピック進出がかかった実際のゲームをドキュメンタリ風にドラマへ組み込むという、おそろしく大胆なことをやる。ノリノリの楽しい映画だけど、イランでは上映禁止。不自由な国だ。 イラン映画 男装してサッカー・スタジアムに潜り込む少女たち
オブリビオン
2013年
ジョセフ・コシンスキー◯ 事前の情報をシャットアウト。そのせいか、見事にだまされた。SF系のサスペンスにはありがちだが、穴はあるし観終わって疑問も残る。それでもハリウッドメジャーでこのレヴェルは希少だ。 トム・クルーズ、オルガ・キュリレンコ、アンドレア・ライズブロー
オマージュ
2021年
シン・スウォン◯ なによりも主演女優イ・ジョンウンのキャラです。最も映画監督役に向きそうにない人を起用するのは勇気がいったのでは。三枚目のボケキャラ。もっとコメディ色を強めてもよかった。彼女が映画館で帽子をもらった時、帽子の飾り紐が何であるのか気づかなかったのは不自然に感じる。 韓国最初期の女流監督が撮った映画の欠損部分を探す女性監督
おみおくりの作法
2013年
ウベルト・パゾリーニ◯ エンドはそういう結果に。彼自身は報われたのかもしれないけど、僕は報われた気がしない。 身寄りのない死人の世話をする役人 エディー・マーサン
オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分
2013年
スティーヴン・ナイト◯ 舞台はハイウェイの車の中だけ、出演者が一人だけという、ステージを絞り込んだのは効果が生きた。制約は大きなチャレンジだが、成功している。登場人物の顔が見えないのは一部ハンデになった。特に妻のキャラクターが描けていない点は引っかかった。 ロンドンの産科病院へと車を走らせる男 トム・ハーディ
オンディーヌ 海辺の恋人
2009年
ニール・ジョーダン◯ アイルランドのアザラシ女房の伝承をベースにしたサスペンス。というだけで無茶苦茶珍しい映画になる。サスペンスとしては物足りなくても、メインの女優二人の魅力もあって、好印象。[YouTube] 漁師が引き上げた網の中に女がかかっていた コリン・ファレル
女の子ものがたり
2009年
森岡利行◯ 菜都美の高校時代を演じる女優。大後寿々花。すばらしかった。いい女優になった。子供時代の森迫永依とも大後寿々花とも、絵的にもキャラ的にもつながらない深津はミスキャスト。だけど深津で売ってる映画だから外せなかったんでしょう。友人と決別するシーンについては事前に知ってたのだけど、波瑠と大後寿々花の気迫のこもった対決に泣けてきました。思いの中に沈み込んでゆかざるをえません。 西原理恵子の自伝的漫画を映画化 板尾創路、奥貫薫
女の坂
1960年
吉村公三郎◯ もはや存在してない京都の名物が現われ、動揺する。京都朝日会館の東郷青児の壁画。ナショナルの広告塔も。京都の職人の世界は中途半端に知ってるせいか、ツッコミを入れたくなってしまう。滝花久子は戦前の出演作と違ってやわらかな受けの演技。主演クラスよりもこちらに気持ちがなびく。 京都の和菓子屋を受け継いだ現代娘 岡田茉莉子、乙羽信子
オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
2013年
ジム・ジャームッシュ◯ 人間社会にまぎれる吸血鬼たち。彼らにいざなわれて人類史を振り返るような奇妙な感覚。ミア・ワシコウスカは初めてしっくりくる役を与えられた気がした。 ティルダ・スウィントン
カーテンコール
2005年
佐々部清◯ ハートフルなストーリーが心に優しかった。幕間芸人の話です。その芸人を演じた藤井隆は素人臭さがよかったのですが、顔も名前も知りません。何十年か後を演じた井上尭之はキャラがつながってません。娘を捨てて韓国に帰国し、ずっと負け犬だった心のひずみがなく、あっけらかんとしすぎ。芸人の妻を演じた奥貫薫はついに代表作を獲得。この一作で彼女を忘れられなくなりそうだ。[DVD] 伊藤歩/鶴田真由/津田寛治/藤村志保/粟田麗
ガールフレンド
1978年
クローディア・ウェイル◯ 四十何年かぶり。なにゆえこんなに引き込まれてしまったのかと思いつつ鑑賞。若いクリエイターが苦闘してはいあがろうとしている姿に我が身を重ねてしまったか。主演のメラニー・メイロン。出演作で観た映画はデビューの『ハリーとトント』を含めて4本。どれも強い印象を残している。 女性写真家の卵が奮闘
海角七号 君想う、国境の南
2008年
魏徳聖ウェイ・ダーション◯ 2本ハシゴする予定を1本で止めた。あまりに魅力的で、余韻を失いたくなかった。心地よい温かみ。センスのいい音楽と映像。それがミックスされて至福の時間。タイトルからアートっぽいかもと予想したが、良質の娯楽映画でした。これが監督デビュー作。台湾映画の質の高さを思い知らされた。 日本から60年前の手紙が送られてくる
回帰
2022年
アレハンドロ・モンティエル◯ 以前観て気になりつつ短評を書かなかった一本。書くために観直しました。米国のサスペンスアクションとはひと味違った風味に惹かれる。アルゼンチン映画で、原題はヒロインの愛称のPipa。いい映画なのに『回帰』なんていうタイトルでは印象がぼやける。もったいない。[Netflix] 田舎町に住む元警察官の所有地で死体が発見される
外事警察 その男に騙されるな
2012年
堀切園健太郎◯ タテマエに毒されないナマのドラマの気持ち良さ。一般人をとことん騙して利用し、あやつる警察官。素晴らしい。こんなやつ身近にいたらいやだ。でも非常事態では頼りになる。渡部篤郎は今年度主演男優賞ものです。他のキャストも実にいい顔触れがそろった。みんなリアルな顔している。 裏警察の暗躍 キム・ガンウ、真木よう子、尾野真千子、田中泯
かいじゅうたちのいるところ
2009年
スパイク・ジョーンズ◯ この手触りはCGでは出せない。キャラクターとテクスチュア。魅力的なモンスターたちが乱暴に暴れまくる。ストーリーはもともとないに等しい。実体化は難しかったろうと思う。この内容で子供が楽しめるかどうかはかなり疑問だが。 モーリス・センダックの絵本の実写映画化
海底47m
2016年
ヨハネス・ロバーツ△ シリーズ2作目のよさに惹かれて観たが、これは映画館向き。家で観ると、一部のシーンを除いてダレてくる。エンドは『ディセント』を思い起こさせる後味の悪さ。あちらのほうが辛辣でしたけど。[Netflix] サメ・ウオッチングに来てサメに襲われる姉妹
海底47m 古代マヤの死の迷宮
2019年
ヨハネス・ロバーツ◯ シリーズ第2作だと知らずに観ました。緊迫感一直線で押しまくる。食われながらも戦うヒロイン。満足したが、一年たったら全部忘れてるのかも。 海底遺跡にホオジロザメが乱入
海難1890
2015年
田中光敏◯ ツッコミどころ多数で楽しめた。『故郷の空』の合唱にもブッとんだが、唱歌としての発表は1888年だった。きわどくセーフ。忽那汐里はぴったりキャスト。映画の好感度を上げた。内野聖陽の英語発声は見事。だけど、明治初期の日本人ですよ。 遭難したトルコ兵を和歌山の漁民たちが助ける
怪物はささやく
2016年
フアン・アントニオ・バヨナ◯ 怪物が語った三つの物語。何を伝えたかったんだろう。善人と悪人は同居する。それだけか。よくわからなかったので図書館の本を借りて読んだ。理解は進まなかったが、本は面白かった。 ルイス・マクドゥーガル、フェリシティ・ジョーンズ
カウボーイ&エイリアン
2011年
ジョン・ファブロー◯ トンデモな企画でメジャー映画。違和感なく娯楽大作としてまとめあげたのは立派だ。ヒロイン、オリヴィア・ワイルドは顔が人間離れしてると思ったら、やっぱり。ハリソン・フォードは一徹じいさんやるにはキャラに軽みがつきすぎる。 西部劇でエイリアン襲撃 ダニエル・クレイグ
帰ってきたヒトラー
2015年
デヴィッド・ベンド◯ 事前アポなしでドイツ国家民主党などの本部を訪れ、アドリブで党首らと論争している。「どっきりカメラ?」なんていうリアクションでドギマギしてる政党関係者たちが面白い。街に出ると大うけで、ツーショットされまくり。全部ナマでアドリブ。ヒトラー役者が実物と似てないからこそジョークとして受けている。似てたら拒絶感あるはず。ヒトラーが一般大衆に受け入れられる傾向が見えるという紹介は誤り。 死んだはずのヒトラーが現在に現われる
顔のないスパイ
2011年
マイケル・ブラント◯ 『消えた天使』『クロッシング』など、最近リチャード・ギアがサスペンスもので渋い演技を連発している。これもなかなか。ラストのどんでん返し、読めず。かつて冷酷非情だったというわりには人情たっぷりなのが、この映画の場合、マイナスになる。 リチャード・ギアが凄腕の殺し屋 トファー・グレイス
案山子
1920年
エドワード・F・クライン◎ 一瞬でカカシに変身するシーンを見直したくて借りました。表情も変えず、危険なシーンを含め、肉体の動きだけで映画を作り上げるバスター・キートンは、僕にとってコメディの王様です。

1959年
市川崑◯ 主要登場人物4人が実に嫌な連中で、楽しくない映画。と思ってたら、ラストで大逆転。強烈なエンディングに笑い転げる。なにこの急激な変転は。このラストは監督の発案だそうで、原作にはないとのこと。この時代に珍しくエンドクレジット方式。市川崑監督らしいセンス。 谷崎潤一郎原作 京マチ子、中村鴈治郎、北林谷栄
鍵泥棒のメソッド
2012年
内田けんじ◯ 広末涼子のぶっとびキャラは合っている。香川照之はあまりの悪相で話に乗れない部分がある。内田監督は一作目の成功にとらわれてないか。たまにはフェイクっぽい話から離れてもいいんじゃないか。 売れない役者と凄腕の殺し屋が人生を取り換え
楽隊のうさぎ
2013年
鈴木卓爾◯ 中学生が吹奏楽部で一所懸命。しかも俳優たちの演奏はほとんど一発撮りの吹替なし。音楽室の雑然としたリアリティは作りものの『スウィング・ガールズ』とは対照的だ。フルートのメガネちゃん、井手しあんが途中で抜けたのは残念だった。入れ込みかけてたのに。 中沢けい原作 川崎航星、山田真歩、鈴木砂羽、井浦新
かくて神風は吹く
1944年
丸根賛太郎△ 元寇の研究が進んでいる現在とは違った認識でどのように描かれてるかが気になった。トンデモな「やあやあ我こそは〜」はさすがに出てこない。ラストは暴風で元の軍船が全部沈没。これは事実に反する。暴風で沈んだ元船は一部で、あとは逃げ帰っている。中国でも日本でも元寇の研究は急展開していて、ホットです。[YouTube]
“隠れビッチ”やってました。
2019年
三木康一郎◯ 『君は永遠にそいつらより若い』のキャラとのあまりの落差に愕然となる。ワルすぎ。佐久間由衣の振り切れた演技は賞賛に値する。[Netflix] 男をその気にさせてはポイ捨ての女 村上虹郎、大後寿々花、森山未來
崖っぷちの男
2012年
アスガー・レス◯ 判断ミスで劇場公開をパスしてしまった一本。ジェイミー・ベルとその恋人のコンビが、慣れない泥棒仕事をぶつくさ文句たれながら協力して遂行しているシーンは傑作だった。飛び降り自殺交渉人が命綱をつけてないということは絶対ありえないと思う。 NYのホテルから飛び降りようとする元刑事 サム・ワーシントン、エリザベス・バンクス
影の軍隊
1969年
ジャン=ピエール・メルヴィル◯ レジスタンスたちが逮捕や処刑を逃れようと、戦わずにひたすらゲシュタポから逃げまくり、組織を守るために仲間も処刑する。一人また一人と消されて壊滅する。こんな後ろ向きのレジスタンス映画を観たのは初めて。映像や演出的には秀作だが、カタルシスがない。 リノ・ヴェンチュラ、シモーヌ・シニョレ、ポール・ムーリス
カケラ
2010年
安藤モモ子△ 主体性ゼロの女を満島ひかりが演じていて戸惑った。『愛のむきだし』『プライド』からのイメージ修正ができない。ラスト除いてダサい恰好。それに合わせたみっともない歩き方。こんなタイプを熱烈に惚れる? 可愛いだけで惚れるなら男と同じ。女の人はいいね。同性で手をつなぎあっても誰も白い目で見ない(男と手をつなぎたいわけではけっしてない)。 原作:桜沢エリカ 女の子に恋する女の子
風の電話
2020年
諏訪敦彦△ 長回しが多く、映像リズムが失われたのが残念。モトーラ世理奈の微妙すぎる風貌は、これ以上ないというほど映画世界にピッタリはまっている。ロクでもない連中が出てくる。これがないと映画は引き締まらない。 故郷へ向かう女子高生 西島秀俊、西田敏行
かぞくのくに
2012年
ヤン・ヨンヒ△ ヤン・イクチュン出てるので観ました。『息もできない』のちんぴらヤクザと同一人物か?と思うほどのイメージチェンジ。ドラマをきっちり引き締めてます。うまいですね。たしか日本語ぜんぜんできなかったのでは?と思ってたら、やっぱり喋らない。ほとんどのカットが手持ちカメラ。ドキュメンタリじゃないんだから、背後のカメラマンと演出の存在を意識させるのはまずい。 北朝鮮から兄が病気治療のため一時帰国 安藤サクラ、井浦新
火宅の人
1986年
深作欣二△ もっとシリアスな話かと思ってた。好き勝手なことやってて、女たちに振り回され、時々不幸になった気のいい小説家。そんな話に見える。檀一雄をめぐる女3人(いしだあゆみ、原田美枝子、松坂慶子)は、いずれも強烈な個性で主役を圧倒してる。 檀一雄の自伝小説の映画化 緒形拳
勝手にふるえてろ
2017年
大九明子◯ 不器用女子の恋物語。ヒロイン(松岡茉優)は、はた迷惑なこじらせ女だが、妙にシンクロし、片時も目を離せない。トイレに行くのも我慢して、終わった瞬間すっ飛んだ。宇宙人顔の趣里はここでは外国人役。またしてもぶっ飛んだキャラ。[YouTube] 綿矢りさ原作 渡辺大知、石橋杏奈
哀しき獣
2010年
ナ・ホンジン◯ 前作の『チェイサー』のシンプルさとはうってかわってこみいった設定。おかげで終わっても?がいっぱい残った。痛さのリアリティ、アクションのリアリティはリメイク予定の米国がいくら金をかけても真似できそうにない。ハ・ジョンウは似たところが一つもないのに妙に親近感を覚える。 殺人依頼を引き受ける中国に住む朝鮮族の男
蟹工船
2009年
SABU△ 意外にも、というより、やっぱりシリアスドラマだったんですね。現代の過酷な労働環境と通底するものを感じさせる。で、どうしたらいいのかという問題とこの映画は関わってないと思う。 小林多喜二原作 松田龍平/西島秀俊/高良健吾/新井浩文/柄本時生
彼女が消えた浜辺
2009年
アスガー・ファルハディ◯ とんでもなく大きな嘘が隠れてて、最後に大どんでん返し、というのを期待してしまった。イラン映画でそんなのありえないか。事実上の主人公であるセピデーが下した最後の決断は深い意味を感じさせる。 小旅行中、突然姿を消した女性
彼女がその名を知らない鳥たち
2017年
白石和彌◯ 宣伝コピーの共感度0%は正解。全員好感度ゼロ。エンドは予測できず。阿部サダヲは不思議なキャラで、長く記憶に残りそうだ。原作そのままとはいえ、覚えにくい言いにくいタイトルはどうにかならなかったのか。 蒼井優、松坂桃李、竹野内豊
彼女のいない部屋
2021年
マチュー・アマルリック◯ 極力何も考えないようにして観た。なのに途中でネタ割れしたような。まさかそんな単純な話なの?と思ったら、そのまんまで終わってしまった。いちおうネタバレ厳禁だろうから、それ以上は書けない。予告にも使われていたラモーのガヴォットは超魅力的。 ヴィッキー・クリープス
彼女の人生は間違いじゃない
2017年
廣木隆一◯ 深く考えず、ぼーっと見てしまう。そのせいか主演の女優を時々見失う。役者の顔を覚えるのは得意だと思ってたが、瀧内公美にはお手上げ。主演:趣里ヴァージョンがあれば見てみたい。 デリヘル嬢として福島から東京に通勤する女
KANO 1931海の向こうの甲子園
2014年
マー・ジーシアン馬志翔△ 試合演出は引き締まっててよかった。全体として印象はいいので文句言いたくないが、盛り上げ音楽がだめ。うるさすぎて白ける(ラジオアナウンサーも)。 甲子園をめざす戦前の台湾の球児たち 永瀬正敏
南瓜とマヨネーズ
2017年
冨永昌敬◯ あっけらかんと浮気し、引け目も後ろめたさもなし。そんな女を臼田あさ美がリアルに演じる。あっぱれというしかない。一つ難をいうと、同い年という設定のカップルが臼田と太賀では、一回り年上の姉さんに見えてしまうこと(現実には8歳半ほどの差だが)。 魚喃キリコ原作 オダギリジョー、光石研
カミーユ、恋はふたたび
2012年
ノエミ・ルボフスキーX コメディではなかった。四十代の女性が高校時代に舞い戻ってしまう話。あまた多い類例映画と違うのは、観客には元のおばさんに見え、映画の人物には16歳女子高生に見えてるという設定。どんだけハチャメチャな話かと思ったが、やけにまじめ。問題なのは、主演のルボフスキー(監督兼任)が四十代に見えないこと。五十代が四十代を演じ、さらに16歳に見せようという、変な図になっている。いっそのこと設定を60から16へ、にすればヴィジュアル的には納得したと思う。 ジャン=ピエール・レオ、マチュー・アマルリック
KAMIKAZE TAXI
1995年
原田眞人☆ 何回観てるのかというほど観てるが、ヴァージョン違いがいくつかあるので、つい観てしまう。キャラや展開が定石外しのてんこ盛り状態。そこに観る楽しみがある。いちいち挙げてたらキリないが、主演の役所広司(ペルー人)、ミッキー・カーチス(ヤクザの組長)、片岡礼子(娼婦)といったあたり。そしてラストでは大きなカタルシスが待ち構えている。[YouTube] 高橋和也、矢島健一、内藤武敏、根岸季衣、渡辺哲
KAMIKAZE TAXI
1995年
原田眞人☆ 組織に反旗を翻したチンピラ、日系ペルー人のタクシー運転手、フーテン娘。復讐の道行きの奇妙な三人連れ。ペルー人を演じた役所広司が意外なはまり役だった。スペイン語の発音がきれいで、たどたどしい日本語とのアンバランスが絶妙だ。エンディングは死にゆく男と撃った男との悠長な会話がえんえんと。肌が粟立ち、発狂しそうになった。長年観たかった映画がつたやの旧作の棚にひょいと置かれていた。これは隠れた傑作だ。 高橋和也/片岡礼子/ミッキー・カーチス/矢島健一/内藤武敏
神さまの言うとおり
2014年
三池崇史◯ 遊び感覚で人が殺されていく鬼畜な映画。こんなものを楽しんじゃいけない。だが目は釘づけで、一瞬たりとも気が抜けなかった。東宝の劇場CMでおなじみの山崎紘菜。普通に演技ができることを初めて知った。[YouTube] 正体不明なものに弄ばれ、殺されていく若者たち
神様のパズル
2008年
三池崇史◎ 前に観たときは仰天した。お笑い+ハードSF(+お色気)。宇宙を作ってしまおうとする女子大生。宇宙を生成してしまうと現存の宇宙は吹き飛ばされて消滅してしまう可能性が高い。SFは本来的に壮大でド派手なホラ吹きだということを実感する。結末わかってながらハラハラする。[YouTube] 谷村美月、市原隼人、石田ゆり子
紙の月
2014年
吉田大八◯ 女主人公の行動は僕の感覚ではついていけない。後先考えず、他人の金で途方もない豪遊をして楽しいかな。たかが7桁の金額に目がくらんで狂うかな。狂うなら9桁以上にしなさい(笑)。犯行の動機も二つに分裂し、ぶれた印象。大島優子がいいポジションをゲットしていた。感情移入できるとしたらこの人だけ。”It's Only a Paper Moon”の歌は出てこなかった。タイトルの意味としては同じようだが。 巨額横領の女銀行員 角田光代原作 宮沢りえ/池松壮亮
神弓 KAMIYUMI
2011年
キム・ハンミン◯ 飛び道具(弓)アクション。素晴らしい。韓国映画は総じて絵づくりがうまい。高いテンションを支えてるのがその高レヴェルな映像感覚。ドラマ的にツッコミどころがないかと問われれば、まあ、あるんですけどね。 清軍と戦う弓の名手 パク・ヘイル、リュ・スンリョン
COME & GO カム・アンド・ゴー
2021年
リム・カーワイ◯ 多国籍社会の大阪アジアン。北京からの旅行者のじいさんと台湾からの旅人のエピソードが興味深い。中国は典型的な情報鎖国で井の中の蛙。台湾人は世界の情報に通じている。越えられない落差がある。外国人差別反対の集会は映画の中で浮きまくってたが、明らかに意図的。彼らのずれたアピールよりもこの映画を観たほうが、アジア人たちの生き方への理解に近づける。 リー・カーション、ナン・トレイシー、渡辺真起子、兎丸愛美
ガメラ3 邪神<イリス>覚醒
1999年
金子修介◯ この時の前田愛。超美少女。見てるだけで幸せな気分(笑)。妹も出てるが、まるで似てない。映像に気迫がみなぎり、そちらにも目を吸い寄せられる。怪獣どうしのバトルは甚大な被害をもたらす。どっちもハタ迷惑な存在。[YouTube] 中山忍、藤谷文子、螢雪次郎
カメリア
2011年
ウィシット・サーサナティアン、行定勲、チャン・ジュナン◯ 第2話の「カモメ」(行定勲)が秀逸。吉高由里子が可憐で不可思議な存在で、天使のような美しい娘を演じるとは。二度とはやらないであろうキャラにはまりこんでいて、目を釘づけにする。8点は他の二つを観なかったことにしての、第2話のみの評価です。誤解なきよう。 釜山を舞台にした愛のオムニバス3篇 ソル・ギョング、カン・ドンウォン
カラフル
2010年
原恵一◯ あまりにも伏線がなく、この先どうなるのかと心配した。あとからふり返ると何箇所かはあった。話のサイズにくらべて123分は長すぎると思う。長いから、じれてよけいなことを考えてしまう。大人の人物造形はみな類型的だが、子供たちは個性が光る。全体として高感度は高い。キンモクセイの花にタイトルがかぶるオープニングも好きだ。 森絵都原作 死んだ魂が少年の体で再チャレンジ
カルメン故郷に帰る
1951年
木下恵介◎ 紛れもなく高峰秀子の主演映画。だけどこの映画では裏主演の井川邦子の引き立て役となってるように感じられた。前からそんな気がしてたけど、じっくり見直して。[Netflix] 故郷に錦を飾る頭の弱いストリッパー
彼らが本気で編むときは、
2017年
荻上直子◯ 大人たちの演技は良くも悪くも演技を感じさせる。柿原りんかだけ、映画世界の中で生きているかのようにリアルだ。底知れぬ力を持つ子役が現われたという印象。人の持つ偏見や差別の問題は難しい。僕の中にも差別意識はあるし、表に出てしまったことはある。差別する人としない人を単純に二分できるものではない。生田斗真は最初から最後まで男そのものです。 桐谷健太、ミムラ、小池栄子、門脇麦、りりィ、田中美佐子
彼らは生きていた
2018年
ピーター・ジャクソン◯ 生々しい戦闘シーンはない。インタビュー音源が豊富だったようだ。日本では音声を記録を残す習慣がなく、こうしたドキュメンタリが生まれにくい。戦勝帰還なのに生きて帰ったことをなじられる。そこがきつい。敗残兵撤退で大歓迎された『ダンケルク』より正直かも。 第一次世界大戦の英独戦
渇き
2009年
パク・チャヌク◯ 畳みかけるような一直線の地獄落としを期待したが、長すぎたせいか、散漫。パク・チャヌクの映画を平然と見ていられる。それでは物足りない。たいがいの映画はベッドシーンが退屈だけど、役者に気合いが入ってるせいか、目が釘づけになった。吸血鬼に太陽光線が当たると焦げだすという設定はいつから使われてるのか確認してないが、ピグロー監督の『ニア・ダーク 月夜の出来事』がたぶん最初。 吸血鬼になった神父 ソン・ガンホ、キム・オクビン
渇きと偽り
2020年
ロバート・コノリー◯ アクションシーンは一切なしで、見応えある本格的なサスペンス映画。惜しいのは最初の事件と最新の事件とが無関係で終わったこと。容疑者も別々。最初の事件の容疑者は結局どうなるんだ、というところがはっきりしない。原作を読みたくなったが、地元の図書館にあるのは続編の『潤みと翳り』だけだった。 故郷に帰って事件を捜査する警察官 エリック・バナ
川の底からこんにちは
2010年
石井裕也◯ デジタルビデオ映写に最初がっくりきたが、それを忘れてしまうぐらい面白かった。満席なのに笑ってるのは僕の周辺5〜6人だけというのが奇妙で、なんで?と思わず振り返ってしまった。子役の女の子(相原綺羅)、セリフもほとんどないのに存在感があり、面白い。今を時めく満島ひかり。「どうせ私は中の下」などと言ってる。満島が中の下なら、世の平均は下の下?(暴言?)
監視者たち
2013年
チョ・ウィソク、キム・ビョンソ◯ 観始めていやに既視感が、と思ったら、香港の警察ものサスペンスの秀作『天使の眼、野獣の街』のリメイクだった。チラシには何も書いてないし、あとで調べたら公式サイトなども沈黙。ずいぶん失礼な話だ。多くはオリジナルを踏襲しながらも、韓国テイストで重厚に。どっちが上とかいうことはないが、観直して較べたくなった。こちらはヒロイン(ハン・ヒョジュ)が美形にすぎて、尾行者には目立ちすぎてまずいんじゃないかと思うが。 監視と尾行のエキスパートチーム
感染列島
2009年
瀬々敬久◯ 国仲涼子の携帯でその幼子にメールを送るシーンに泣けた。しかしそのあとの大きなシーンでは泣けませんでした。藤竜也が「人間とウィルスが平和に同居できたら」と言ってるのは同感。だけど、すでに遺伝子の中にウィルスが入り込んでいる。 未知のウィルスが日本全土に感染拡大 妻夫木聡、檀れい
カンゾー先生
1999年
今村昌平◯ 若いときの麻生久美子を見るだけでも価値ある一篇。体当たり演技が若々しい瑞々しい。彼女が海中でザトウクジラと一騎打ちするシーンも見逃せない。開放的で直情的で、それ以降のスレてヒネた彼女しか知らない目には新鮮だった。[DVD] 坂口安吾原作 柄本明 ジャック・ガンブラン
鑑定士と顔のない依頼人
2013年
ジュゼッペ・トルナトーレ◯ 中途の伏線はどれもラストに直結せず。『マッチスティック・メン』のような明解さがない。この映画はジャンルを挙げるだけでネタバレになるので書きにくい。秘密の部屋の膨大な点数の有名絵画は全部本物だったらしい。エンドクレジット見るまでは模造と思ってた。 ジェフリー・ラッシュ、ジム・スタージェス
ガンパウダー・ミルクシェイク
2021年
ナヴォット・パプシャド◯ 比較のために『355』も観ておきたい。5人の顔ぶれは『ガン〜』が上。主演のカレン・ギランは初めて見るけど、注目株だ。この映画は何年かたったらまた観たくなるような気がする。 女5人の叛逆 レナ・ヘディ、カーラ・グギーノ
消えた声が、その名を呼ぶ
2014年
ファティ・アキン◯ じわっと心にしみる。ストーリー的には絶対無理と思う。合作で、制作国にはトルコも含まれる。アルメニア人虐殺の歴史にふれている。ファティ・アキンはこのあと故国のトルコでは制作できないんじゃないか。 娘をたずねて三千里
消えた天使
2007年
劉偉強アンドリュー・ラウ◯ きわめて奥深い作品だと思う。公共安全局の登録者監察官。登録された性犯罪者を監視するのが仕事です。が、主人公は異常者たちと接するうち異常が伝染したかのように常軌を逸する。職務を逸脱し、彼らを尋問する。事件が起きると執拗に追及する。彼らを痛めつけるのが趣味みたいな変質者です。こんな人物が誘拐事件の捜査をする(もちろん越権行為)。このリチャード・ギアのキャラクターにはなぜか魅かれるものがあります。人権派の人たちが観れば目をむいて怒りそうな映画です。[DVD] クレア・デインズ、アヴリル・ラヴィーン
消えない罪
2021年
ノラ・フィングシャイト◯ 見事な脚本だが、原作あり。このどんでん返しは想定できず。その部分ゆえに、映画が終わっても尾を引いてしまう。サンドラ・ブロックの年齢設定が気になる。5歳の妹がいるということは、せいぜいハイティーン? いやいやそれでは吉永小百合並みの年齢詐称。[Netflix] 保安官銃殺で20年の刑期を終えた女 アイスリング・フランシオシ
記憶探偵と鍵のかかった少女
2013年
ホルヘ・ドラド△ 少女アナが描いた無数の絵画は妖しげな空気をはらんでどれもすばらしい。映画を観る直前、いつも読んでない映画メルマガをさっと眺め、うっかりネタバレ部分を目に入れてしまった。なのでぜんぜんサスペンス感覚が盛り上がらない。肝心のストーリーがわかりづらい。ラスト、どうなったんだっけ? マーク・ストロング、タイッサ・ファーミガ、サスキア・リーヴズ
祇園の姉妹
1936年
溝口健二◎ 文化博物館で観てるはずだか、完全に忘れてる。溝口はシビアなドラマを描くと容赦がない。山田五十鈴は『赤線地帯』の若尾文子をとことん突き詰めた上昇志向のキャラクター。あまりの熾烈さに目を吸い寄せられる。[YouTube] 売れない芸子の姉妹 梅村蓉子
祇園囃子
1953年
溝口健二◎ 芸妓の世界でなにをうぶなことをと思わないでもないが、祇園の色街を舞台にリアルで薄汚い社会を描出する。常はふてぶてしい木暮実千代が生一本な女。色気で売った若尾文子が清純な娘。気のいいおばはんイメージの浪花千栄子が狡猾な女。ほとんどが逆イメージ。溝口健二の映画は鋭いナイフのような切れ味があり、油断ならない。[YouTube] 進藤英太郎/菅井一郎/田中春男/小松みどり ぎおんばやし
菊とギロチン
2018年
瀬々敬久◎ 特別興行として割高に設定されてたのには驚いたが、内容ぎっしりで、まあ納得かな。ヒロインに抜擢した新顔の木竜麻生(きりゅうまい)が大正解。他のキャスティングも納得印。音楽センスもよく、今年の日本映画の収穫。 女相撲一座とテロリストグループ
新喜劇王
2019年
チャウ・シンチー、ハーマン・ヤウ◯ 先にネット映像で観てしまったのだが、ぜひとも日本語字幕つきで観たくなった。ぐっと気持ちが熱くなった。美人でもないエキストラ女優の、踏みつけられても屈しない精神に魅せられる。 売れない女優の奮闘 エ・ジンウェン、ワン・バオチャン
寄生獣
2014年
山崎貴☆ 原作の「抜け」まくりの味わい、お笑いテイストがしっかり残ってて嬉しかった。ミギーたちに言わせている冷徹なセリフは作者の本音の一部。そこをきちっとふまえて観なければならない。 岩明均原作 染谷将太、深津絵里、橋本愛、東出昌大、余貴美子、國村隼
寄生獣 完結編
2015年
山崎貴☆ 20年以上前に読んだ原作はいい具合に記憶が薄れ、新鮮な気分で再会した。人間とはなんぞや?という重要な問いを突きつける。観る人はこのポイントをスルーしないでほしい。某主演級女優が登場して即あっさり殺された。ありえないことで、見せ場シーンが編集の都合でカットされたとしか思えない。 染谷将太/深津絵里/橋本愛/浅野忠信
寄生獣 ザ・グレイ
2024年
ヨン・サンホ◯ 大傑作だった日本版の『寄生獣』二部作とは関連のないリブートのアナザーストーリーとして楽しんだ。なのにラスト、なんの脈絡もなしに泉新一(菅田将暉)が登場して、ひっくり返ってしまった。日本版とはキャストが違うとはいえ、そこで話をつないでしまっては辻褄が合わなくなる。何も考えずに思いつきで出した、ということはないと思うが。[Netflix] 岩明均原作 寄生生物たちと闘う
奇跡の2000マイル
2013年
ジョン・カラン◯ ヴィジュアル的には原作者から遠いが(原作者のほうがはるかに美形)、ミア・ワシコウスカのキャスティングは正解。誰にも飼い馴らされない野生の人間をめざす女性にぴったり。目的も理由もない過酷な冒険旅行がリアルに伝わる。 ラクダをお伴にオーストラリア大陸を横断する女性
キック・アス
2010年
マシュー・ヴォーン◎ クロエ・グレース・モレッツ万歳! アーロン・ジョンソン、ニコラス・ケイジ
きっと地上には満天の星
2020年
セリーヌ・ヘルド、ローガン・ジョージ◯ その選択肢がありうるかもと思ったのは、実にわかりやすい伏線があったから。でも実際にそうなってしまうと、ちょっとショックだった。 廃トンネルで暮らす母と娘が地上に脱出
希望のかなた
2017年
アキ・カウリスマキ◯ シリア難民役の青年が好印象。カウリスマキの映画は美形が期待できないので、珍しく感じる。『竹田の子守唄』のかかる寿司店シーンは爆笑の連続。勘違い日本じゃなく、わざとやってる。 シリア難民をかくまうヘルシンキのレストラン
君たちはまだ長いトンネルの中
2022年
なるせゆうせい△ 女子高生が大人たちに徹頭徹尾たてつくのは小気味よい。けど言ってることはみな、誰かからの受け売りで、自分で考えてない。若い人たちには社会や経済について理解を深めてもらいたいが、あくまで自分で考え、判断した上でのこと。終盤はほとんどアブナイ宗教のよう。 消費税をゼロにして給付金をばらまけ論の映画
きみにしか聞こえない
2007年
荻島達也◯ すでに観ていると錯覚していた。乙一の原作を読んでて話を知ってたので勘違い。 ファンタジーの掌編だが、上々の映画化。小出恵介はここではなんと、純真な青年役![YouTube] 頭の中の携帯電話でつながる男女 成海璃子
きみはいい子
2015年
呉美保◎ 胸が痛くなる母親は多いと思う。キャストはすべてよかったが、大勢出演した子役たちのリアルさは大人たちの演技を吹き飛ばすほどのインパクトがあった。キャスト一覧を捜したが、重要な子役すらきちんと挙がってないのは残念でならない。ドラマには「落としどころ」が肝心。見事に決められ、涙してしまった。タイトルの「いい子」が何なのか、観たあとで気がついた。 中脇初枝原作 尾野真千子、池脇千鶴、高良健吾
君は永遠にそいつらより若い
2021年
吉野竜平◎ 佐久間由衣の役は本来なら3枚目俳優。男が誰も手を出しそうにないイケてない役柄と合ってるのか。主人公の行動は贖罪意識からなのだが、これは人が根底に持っている正義意識に通じる。タイトルだけでアイドル青春ものかと敬遠していたのは間違いであった。シビアな熱い物語であった。 奈緒、宇野祥平、馬渕英里何
きみへの距離、1万キロ
2017年
キム・グエン△ 出来がイマイチなのは承知の上。でも観たかった。アラブ系のヒロインが魅力的なんです。 北アフリカのパイプラインを遠隔監視する青年
キャッシュトラック
2021年
ガイ・リッチー◯ 主演の顔だけでド派手なだけのアクションと判断したら、しっかり作り込まれた映画だった。主役の元の仕事がなんだったのかがわからなくなって、もう一度観た。けど、結局正体不明。リメイク元はほぼ忘れてる。なので比較はできない。[Netflix] 仏映画『ブルー・レクイエム』のリメイク ジェイソン・ステイサム
キャプテン・フィリップス
2013年
ポール・グリーングラス◯ 上出来のサスペンスで満足。たった4人のソマリア貧乏海賊に対して大仰な米軍・海兵隊の出動態勢。まるで米国の威信を賭けてるかのよう。チラシコピーで「感動の実話」と謳ってるが、正しくは「実話をもとにしたフィクション」。 ソマリアの海賊が米国の輸送船を襲う トム・ハンクス
CURE キュア
1997年
黒沢清☆ 観るのは三度目と思うが、観るたびに恐ろしさが強まる。監督は「なにげない日常の中で殺人が行われる」と語っている。警官役のでんでんは、日常的な動作の中で、ふと同僚を射殺する。伏線も何もないのでインパクトが強い。エンドシーンは別の人物による殺人の直前で終わる。ここはヤバそうな気配があり、なるほどと納得する。とはいうものの、持った刃物は小さく映ってるだけ。しかも見えるのは1秒の半分ぐらい。いったい何人の人が一度目で気づけただろうか。[YouTube] 殺人を犯すよう潜在意識に働きかける伝道師 役所広司、萩原聖人、うじきつよし、中川安奈、洞口依子
96時間
2008年
ピエール・モレル◯ 誘拐された娘を救うため、単身で片っ端から悪の巣窟へ乗り込んでは暴れまくるお父さん。通ったあとは死屍累々だが、シュワルツェネッガーの『コマンドー』みたいな荒唐無稽にならないのは、脚本とアクション演出がしっかりしてるから。誘拐ビジネスの組織別分業態勢の徹底ぶりがリアルで、人間の悪意の組織化を目の当たりにした思い。 リーアム・ニーソン、ファムケ・ヤンセン
96時間 リベンジ
2012年
オリヴィエ・メガトン◯ ハリウッド資本から惜しげもなく製作費が投入された映像の厚みは、些細なシーンにさえ札びらが積まれでもしたようにありありと見える。僕と年の変わらないリーアム・ニーソンのきびきびした動きは、見ていて気が引き締まるものがある。あそこまではいかないけど、気持ちだけはワイルドでいこう。 一族を殺されたアルバニア・マフィアの報復
キューバ・センチメンタル
2010年
田沼幸子◯ 映画制作未経験で、カメラ買って飛行機の中で手引きを読んだという話と大違いの上出来。技術ではなく気持ち。熱意とセンスと気質。登場する若い男女に愛着を覚える。普通の人が自分のことを生の言葉で語るだけだが、それが新鮮だ。 キューバを出国した若者たちのその後を追う
CUBE
1997年
ヴィンチェンゾ・ナタリ☆ 何度観ても底なしの恐ろしさ。ベースはワンアイディアながら、そういう映画にありがちの欠陥もない。ホラーサスペンス映画のベストワン。[Netflix] キューブ状の建造物に閉じ込められた人たち
CUBE 一度入ったら、最後
2021年
清水康彦X ホラー映画史上の傑作を日本でリメイク。しかも松竹だと。この時点で企画ミスが決定的となる。中身については論評しません。[Netflix] 菅田将暉、杏、吉田鋼太郎
凶悪
2013年
白石和彌☆ 胸くそ悪い悪党が登場する。悪党よりも始末に悪いのは、正義感にとりつかれて悪党を追及する主人公。こいつのほうが胸くそ悪い。ジャーナリストの心の闇は原作になく、映画オリジナルだそうだ。悪に感応してしまう追跡者。韓国映画の影響があるのかも。 殺人犯が殺人犯を告発 山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー、小林且弥
凶悪
2013年
白石和彌☆ 映画館で観て以来、11年ぶり。あまりにドス黒い映画なので再見するのがためらわれた。裏主演と言えそうな池脇千鶴の存在も話に奥行きを与える。映画史上における別格の存在の映画だ。[Netflix] 死刑囚による犯罪告発 山田孝之、ピエール瀧、リリー・フランキー
恐怖の報酬
1977年
ウィリアム・フリードキン◎ 話の骨格は同じでも、オリジナルの映画とは別物の印象。監督の気合の入り方が尋常じゃない。観るほうも力入りまくる。オリジナルを超えた、かな。 クルーゾーの『恐怖の報酬』リメイク ロイ・シャイダー
キラー・インサイド・ミー
2010年
マイケル・ウィンターボトム◯ 予告篇ではヘンタイもの?と思ったが、実に真っ当な異常殺人者サスペンスでした。どういうわけか殺人者に感情移入してしまった。ケイシー・アフレックの柄にまどわされたらしい。道義的には絶対許せないと、頭では思ってるのに。 ジム・トンプソン原作 ジェシカ・アルバ、ケイト・ハドソン
桐島、部活やめるってよ
2012年
吉田大八◎ 東出昌大は嫌みなほど男前なのに好感度が高い。橋本愛はホラー映画『アナザー』宣材の眼帯顔が似合ってて、こっちよりホラーが合いそうだ。川上麻衣子の若いころに似ている清水くるみがチャーミングだ。それぞれに俳優が興味深い映画だった。内容についてはメルマガに書きまくってしまい、くり返す気になれない。 高校中の人気者のバレー部キャプテンの退部が生徒たちの心に波紋を広げていく 神木隆之介
ギリシャに消えた嘘
2014年
ホセイン・アミニ◯ 理屈で割り切れない行動をし、じわじわと自らの首を絞めていく。ストーリーもテイストもパトリシア・ハイスミスみたいだと思ったら、ハイスミス原作だった。『殺意の迷宮』。読んでるやないか。忘れとったわ。原作者のテイストは見事に生かされてる。[YouTube] オスカー・アイザック、ヴィゴ・モーテンセン、キルスティン・ダンスト
鬼龍院花子の生涯
1982年
五社英雄◯ 花子を演じる高杉かほり(主演ではない)は、この映画以外で見たことない。不思議な顔の女優です。主役の夏目雅子と仙堂敦子の引き立て役みたいな。ドラマティックだが、ドラマより役者の佇まいを見る映画のような。 仲代達矢、岩下志麻、佳那晃子
キリング・フィールズ 失踪地帯
2011年
アミ・カナーン・マン◯ 好みのテイストで、すんなり入り込める。が、ストーリー的に物足りない。ホンボシがあれ、というのがしっくりこない。クロエ・グレース・モレッツは今回初めて美形に感じられた。 実在の犯罪多発地帯で少女の誘拐事件 サム・ワーシントン
THE GUILTY ギルティ
2018年
グスタフ・モーラー◯ 劇場公開をスルーしてしまった。してはいけなかった。秀逸な脚本と演技、演出。娯楽映画の定型文法をほぼ外してるのは、かえってリアルになっていい。通報電話の音声を手掛かりにして殺人事件を解決しようと奮闘する話だが、緊迫感マックスの中、「自転車で事故った、膝が痛い、なんとかして」なんていう電話もかかってきたりして、ずっこける。[DVD] 警察の緊急通報センターにかかってきた1本の電話
THE GUILTY ギルティ
2021年
アントワーヌ・フークワ△ 思いきりヘヴィーなテイストに置き換えられている。重たすぎる。リメイクのやり方としては感心できない。[Netflix] 緊急通報番号にかかってきた電話 デンマーク映画のリメイク ジェイク・ギレンホール
キル・ボクスン
2023年
ピョン・ソンヒョン◯ 刃物でバトルを続けていたチョン・ドヨンとファン・ジョンミン。突如としてジョンミンを銃殺するドヨン。「そろそろスーパーで買い出ししなくちゃならないから」だと。そういうおバカな出だしが秀逸。反面、登場人物を一掃するかのごとくの大量殺人はやりすぎ。本来は残さなくちゃいけない人物まで死んでいる。[Netflix] 凄腕の女殺し屋 ソル・ギョング
キング
2019年
デヴィッド・ミショッド◯ シェイクスピアのフォルスタッフって実在だったんだ。と思ったが、あとで調べたらやはり架空。歴史劇に架空人物を入れるかよ。血の通った人物造形。想定を超える展開。戦闘シーンのリアルさ。すべてが花マル。 ティモシー・シャラメ、ジョエル・エドガートン、リリー=ローズ・デップ、トーマシン・マッケンジー
キングス・オブ・サマー
2013年
ジョーダン・ヴォート=ロバーツ△ 傑作かもという期待はあっさりスカされる。大人視線で見たら、単に人騒がせな子供たちっていうだけかも。終始エイリアンなビアッジオ少年はGood!。 家出してマイホームを作る高校生3人
キングスマン
2014年
マシュー・ヴォーン◯ 人口問題に対する解決策を過激な手段で実行する。やり方はまずいが、いずれは解決しなければならない。マシュー・ヴォーンのアクション演出センスは評価する。 英国の秘密スパイ組織 コリン・ファース、マーク・ストロング、タロン・エガンート
キングスマン:ゴールデン・サークル
2017年
マシュー・ヴォーン◯ ポピュラーソングのあの御大が老体に鞭打ってハードなアクション。ジュリアン・ムーアは『ハンニバル』のクラリスで違和感あったが、悪役だとしっくりきて、安心して見てられる。 コリン・ファース、タロン・エガートン、マーク・ストロング
空気人形
2009年
是枝裕和△ 生命を得た人形の驚きと戸惑いと好奇心が、ペ・ドゥナの瞳に凝縮される。他の女優が考えられない。特異な映画空間を楽しみつつ、特有の演出リズムに合わせられず、何度もあくび。企画のよさで作り手が酔ってしまったかのよう。 人の心を持った人形
偶然と想像
2021年
濱口竜介◯ 3話目は女二人(占部房子、河井青葉)がある種の「遊び」に突入した時の没入ぶりがリアルで楽しく、随所で笑いがもれる。この第3話を最後に持ってきたのは正解。おかげで深刻な最初の2話の印象が薄らいだ。 3話オムニバス 古川琴音、中島歩、渋川清彦
クーリエ:最高機密の運び屋
2020年
ドミニク・クック◯ 劇場で観るべき水準の映画だった。ただ、実話ベースの映画は必ず事実を歪めて伝えるだけに、手放しの賞賛はあり得ない。友情・家族愛・戦争回避と、感動話にまとめたからこそ面白くなったのではあるけど。主人公の妻役のジェシー・バックリーがここでもいい味を出している。[Netflix] ソ連の機密情報を西側に運ぶビジネスマン ベネディクト・カンバーバッチ
牯嶺街少年殺人事件
1991年
楊徳昌エドワード・ヤン◯ 3時間ヴァージョンをYouTubeで観たが、これはぜひとも日本語字幕付きで、ということで4時間ヴァージョンを1800円(特別料金の前売り)出して観ました。日本語でも、なーんにも説明しない映画でした。一癖二癖ある中学生たちのキャラは際立っていた。 1960年代の台湾 くーりんちぇ〜
苦役列車
2012年
山下敦弘◎ 形容しようもないほど超カス男を森山未來がリアルに演じる。女性が見たら目をそらさざるをえないシーンが頻発するが、なぜかお一人さまの女性観客がそれなりにいた。スクリーンの中だから僕は許せるが、現実の存在なら10メートル以内に近寄りたくない。見ごたえある秀作だが、怒りが怖くて「観て」とはよう言わん。 西村賢太の自伝的小説を映画化 高良健吾/前田敦子
愚行録
2017年
石川慶△ 「日本は格差社会じゃなく階級社会」だと言っている。下級階層は上級階層からいいように利用され、使い捨てられていく。絶望的なストーリーをメジャー(ワーナー)が制作したことは意義ある。ただ、ミステリー的には穴がボコボコ。日本の警察はそこまで無能じゃない。臼田あさ美(秀逸!)も含め、三十代の女優たちが堂々と女子大生を演じてるのには感心するというか、呆れるというか。 妻夫木聡、満島ひかり
クソすばらしいこの世界
2013年
朝倉加葉子◎ 日本人留学生がみなおバカで英語も喋れず、韓国人一人だけが英語ぺらぺら優秀という自虐設定が面白い。突拍子もないストーリー展開はさすが日本の伝統。日本映画の伝説的名作のパクリと言えばそうなんだけど、うまくストーリーに取り込んだ。ほとんど先が読めず、ありえないラストに突入。ストーリー払底の米国映画がリメイクしても不思議はない。 夏休みのバカンスに出た日韓の米国留学生 キム・コッビ
グッド・ウィル・ハンティング 旅立ち
1997年
ガス・ヴァン・サント◯ 触発されることの多い映画だった。主人公の運命の女性がミニー・ドライヴァー。それって、リアリティゼロでしょ。人は外見だけじゃないとはいうものの。 学歴のない数学の天才 マット・デイモン、ロビン・ウィリアムス
グッド・ストライプス
2015年
岨手由貴子◎ 尋常じゃない温度の低さ。予告篇で「これはいける!」と思ったのが、本編でもそのまんま。反面、予告を超えるものはなかった。「意図的にやってる」部分の多い映画だが、きわめつけはヒロインを魅力的に描かないこと。菊池亜希子がモデルと知ったのは今回が初めてだけど、モデルなら無意識のうちにもきれいに見える顔を作るはずだが、美人をあっさり捨ててる。16ミリで撮ったとしか思えない粒子丸見え映像まで好印象。好きな作家は?と聞かれてヒロインが「ジャック・ケッチャム」と言ったのにはのけぞった(聞いたボーイフレンドの父親も、たぶん)。「冗談です」と言ったが、たとえ冗談でも女が口にしない名前です。 マンネリカップルのできちゃった婚 中島歩、臼田あさ美
グッド・ナース
2022年
トビアス・リンホルム◯ 良質な社会派サスペンスの趣。彼は犯行の動機について、ついぞ語ることがなかったと。そりゃそうだろう。やってることの意味を自覚してたら、こんな大事件、起こらない。犯罪者はみな動機を自覚してるというのは、よくある世間の誤解の一つ。[Netflix] ジェシカ・チャステイン、エディ・レドメイン
グッドバイ 嘘からはじまる人生喜劇
2020年
成島出△ 小池栄子の絶世の美女設定は無理すぎ。戸田恵子を除き、俳優はみな、自分の持ちキャラの一つを律儀に通している。その分、話が通りやすく、わかりやすい。[Netflix] 女たちと別れるために偽の妻を仕立てる 大泉洋
グッバイ・クルエル・ワールド
2022年
大森立嗣△ クルエルは英語だけど、「狂える」の意も含んでいそう。悪党ばかりの中でも、きちんと感情移入できる人物を配してるのは立派。かなり展開がゆっくりなので、50%増しの早回しで演出してもらえたら、と思う。 一夜限りの強盗団 ⻄島秀俊、宮沢氷魚、玉城ティナ、大森南朋
蜘蛛の巣を払う女
2018年
フェデ・アルバレス◎ ノオミ・ラパスからルーニー・マーラへ、そしてクレア・フォイ。三代目のリサベット。なかなかいい面構えだ。山場の連続演出で、一瞬たりとも気を抜いて観られない。なぜかデータベースサイトでの一般投票の評価がかなり低い。何が気に入らなかったのか。 「ミレニアム」シリーズ
クライ・マッチョ
2021年
クリント・イーストウッドX 予告篇がダメすぎて観る意欲が起きなかったけど、タイミングよく旧作『ひまわり』とハシゴできたので観た。久方ぶりのイーストウッド。話がゆるゆるの甘々。「ワシゃこれで十分」とでも言ったか。 子供の連れ戻しの依頼を受けた老人
グラスホッパー
2015年
瀧本智行◯ 冷静に見れば穴は多いが、魅せられるミステリーだった。なんにでも化ける佐津川愛美を殺し屋の一人にキャスティングしたのは正解。駅のアレではないが、「押し屋」という商売があるのか。あんなふうな殺し方があるのかと妙に感心。 伊坂幸太郎原作 生田斗真、浅野忠信、山田涼介
クラバート 闇の魔法学校
2008年
マルコ・クロイツパイントナー△ ストーリーには物足りない部分があるけど、クラバートの映像世界を実写と一部CGで作り上げてくれたことには満足感がある。クラバート役の少年をどこで見たのかと思ったら、『愛を読むひと』の主演でした。[DVD] プロイスラー原作 魔法使いに弟子入りする少年
グランド・ブダペスト・ホテル
2014年
ウェス・アンダーソン◯ 不思議世界のウェス・アンダーソンはこれが初めて。実質主演のトニー・レヴォロリがいい。それだけに、あの老人(F・マーリー・エイブラハム)のキャスティングミスが痛い。ジャン・レノにやらせときなさい。 遺産相続をめぐるドタバタミステリー レイフ・ファインズ
グラン・トリノ
2008年
クリント・イーストウッド△ 小粒な印象がある。アジア系新人の演技が淡泊すぎるなど、感情のためこみが足りてない部分があるせいかも。あるいは小さい街のストリートギャングが悪役だからか。憎まれ口の応酬で笑えるシーンが多かったのに、客席は静まり返っている。映画はもっと楽しまなくてはね。 街のチンピラと対決する頑固老人
クリーピー 偽りの隣人
2016年
黒沢清◯ 香川照之って、『ゆれる』の頃からまともな人間性を持ってないと密かに思い続けてたが、やはりそうなんですね。creepyだから「不気味さ」をかもさなきゃいけないのに、顔に出るのは「不愉快」のみ。ほぼノーメイクでそれを出せる役者。原作を読みたくなった。映画には明示されなかったことが多すぎる。 西島秀俊、香川照之、東出昌大、竹内結子
グリーン・ゾーン
2009年
ポール・グリーングラス◯ 米国・イラクとも、単純でない敵対関係によるぶつかり合いで最後まで緊迫感が途切れず、面白かった。イラクの大量破壊兵器が陰謀のネタなんだけど、存在しないことが明白な今となっては賞味期限切れ。制作から公開まで2年ほどラグがあったみたいだけど。この映画、面白いことにCIAが善玉に描かれている。それって、世界の映画史上で初? マット・デイモン、グレッグ・キニア、ブレンダン・グリーソン
グリーンブック
2018年
ピーター・ファレリー◎ 思うんだけど、ヴィゴ・モーテンセンの出腹は「自腹」なんだろうか。あんなに出たら引っ込められるんだろうか。くだらないことばかりを考える。映画は二重丸。 イタリア人の運転手を雇ってコンサートツアーをする黒人ピアニスト
クレイジー・ハート
2009年
スコット・クーパー◯ たまたまだけど自作の新曲をサイトにアップしてから観にいった。だから妙なところでシンクロしてしまう。年も同じ(に、見えないが)。渋い風貌で、負けている。曲も歌も渋い。マギー・ギレンホールはついに代表作を手に入れたね。おめでとう。 初老カントリー歌手の彷徨 ジェフ・ブリッジス
クレイマー、クレイマー
1979年
ロバート・ベントン◯ 初めてです。メリル・ストリープの新しい恋人というのが出てこない。よく考えたら『マンハッタン』と混同してる。子役(ジャスティン・ヘンリー)が映画の出来栄えを左右するが、この点で成功している。いい映画だけど、微妙に時代がずれた。今作るとすると、かなり流れが変わるだろう。[Netflix] 離婚して息子の養育権を裁判で争う二人 ダスティン・ホフマン
グレイマン
2022年
アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ◯ ライアン・ゴズリングですね。たまにライアン・レイノルズと混同する。街中のド派手なぶっ壊しアクションはセットじゃなくロケ撮影みたいだけど、むちゃくちゃ金かかっていそう。てんこ盛りのアクションでした。[Netflix] CIAの秘密兵士 アナ・デ・アルマス
グレートウォール
2016年
チャン・イーモウ△ 真剣に向き合おうとしたらアホくさいが、1時間40分ほど、頭空っぽにして楽しむ分には問題ない映画。コメディ演技にセンスを感じるマット・デイモンは、こんな映画で油売ってる場合じゃない。[Netflix] 長城に立てこもって怪物軍団と対決する
黒い家
2007年
シン・テラ◎ 大竹しのぶ主演の日本映画ヴァージョンも観てるが、比較にならない。公開された時、観に行くつもりが行けなかった。そのことが悔やまれる出来映えだ。それにしても韓国映画の映像は痛い。[YouTube] 貴志祐介原作のホラー
黒い潮
1954年
山村聡◯ これってほぼ『新聞記者』(2019&2020年)そのまんま。警察は上からつぶされ、新聞社へも圧力がかかる。21世紀にもなって昭和と同じことしてる日本には進歩がないんか。こうなったらあらゆる合法的手段を総動員して徹底的に闘うべし。 国鉄総裁が死亡する下山事件をモデルに
黒い画集 あるサラリーマンの証言
1960年
堀川弘通◎ 同じ日、先に観たのが『ウディ・アレンの夢と犯罪』。たまたま同系のサスペンスだったけど、密度は三倍濃かった。人物造形も雲泥の差。ささいな嘘が雪だるま式におおごとへと発展していく地獄落ち話。救われない容赦のないエンディング。いいんだよなあこれが。 小林桂樹、原知佐子、中北千枝子
CHLOE クロエ
2009年
アトム・エゴヤン△ アマンダ・セイフライドの演技の問題と思うが、初っぱなから嘘ついてるのバレバレ。だから終盤の驚愕のはずのシーンは「ああやっぱりね」。セイフライドもヴィジュアル的には絶品です(胸ではなく顔)。ただし、始終口をあけっ放しにしていては大スターになれんと思うぞ。 フランス映画『恍惚』のリメイク ジュリアン・ムーア、リーアム・ニーソン
クロース 孤独のボディーガード
2019年
ヴィッキー・ジューソン◯ 男まさりが似合うノオミ・ラパス。女性のハードなアクションヒーローが最近増えた。それを女性監督が演出することも。ヴィッキー・ジューソンも女性。ちゃっかりというか、監督は妹をチョイ役で起用していた。[Netflix] 富豪の令嬢を守護する女
クローズド・ノート
2007年
行定勲◯ 『1303号室』の後味の悪さを払拭するために続いて借りた。1本目のツッコミ癖が残ってしまい、ツッコミまくってたのだが、いつのまにかのめりこんでいる。細部のエピソードや言葉に響きあうものがある。映画館で観なかったのは沢尻エリカゆえと思うが、今回はその美貌がまったく嫌みにならずに見れる(変な褒め方)。見慣れた場所が頻出するので舞台は京都なのかと思ったが、違うらしい。観光客でも知ってる場所を使いまくるのはまずいのでは。[DVD] 前の住人の残した日記を読む 伊勢谷友介、竹内結子
クローバーフィールド・パラドックス
2018年
ジュリアス・オナー◯ 前作の『HAKAISHA』とはうまくつながっておらず、ラストに言い訳説明のように怪獣がちょろっと。シリーズとしてのつながりを無視すれば、SFサスペンスとして見どころたっぷりで楽しめる。[Netflix] 『クローバーフィールドHAKAISHA』の前日譚 大気圏外でのエネルギー実験により多次元の世界が交雑する
クローンは故郷をめざす
2009年
中嶋莞爾◯ 前日観た映画未満から一転、真っ当な映画を観て大満足。子役を除いて演技レヴェルはきわめて高い。主演の及川光博にはこれまで好印象を持ったことがなかったが、すばらしかった。SFとファンタジーが融合した作品テイストは魅力的だし、オリジナルなものがあふれている。テクノロジーは人間を超えることはなかった。クローン再生した主人公が本物の自分自身を取り戻してゆくドラマに感動した。 クローン技術で再生させられた男 永作博美、石田えり、嶋田久作
黒木太郎の愛と冒険
1977年
森崎東◎ 日本版『タクシー・ドライバー』。完全に埋もれてるけど、観逃してはいけない秀作だ。助け出した少女に「(ヤクザが運営してる特殊浴場へ)戻りたい。なぜ自分の体で金を稼いじゃいけないのか」と迫られ、黒木太郎(田中邦衛)が言葉に詰まるシーンなど、見どころ多し。[YouTube] 財津一郎、沖山秀子、倍賞美津子、清川虹子
クロッシング
2009年
アントワン・フークア◯ リチャード・ギアは過去、一度として注目したことのない男優だが、今回は別格。定年退職する警官役。目立たず、賞罰ともになし。新人警官にすら臆病とさげすまれる無能警官を自然体で演じる。地味なサスペンスだけど、いい映画なので多くの人に観てほしいと思いつつ、こんな渋い映画、観る人少ないのしかたないな。 別部署の3人の警官が交差する
クワイエット・プレイス
2018年
ジョン・クラシンスキー△ 息をひそめて一家を見守った。設定などに関してはツッコミ多数あり。ずっと裸足だが、スニーカーを履けばいいのに。視力のない生物の多くは嗅覚が発達する。そうした生物学の常識に疎すぎる。ミリセント・シモンズは当たり役が続く。聾唖俳優というハンデを乗り越えてビッグになれるか。 ジョン・クラシンスキー、エミリー・ブラント
クワイエット・プレイス 破られた沈黙
2021年
ジョン・クラシンスキー△ 一作目は納得いかないシーンが多く、この二作目を無視するつもりだった。気になって観たら、やっぱり納得いかないシーンが多い。[Netflix] 音に反応して襲ってくる謎の生物
軍中楽園
2014年
ニウ・チェンザー◯ 娼婦であるヒロインにリアリティがないという批判が出そうだ。が、高貴で美しいレジーナ・ワンに目が釘づけ。俳優が魅力的なのは全配役、徹底している。役者がいいと観るほうも気合が入るというもの。今年の外国映画を代表する一本になった。 台湾金門島の軍人専用娼館に勤務する若い兵士
群盗
2014年
ユン・ジョンビン◯ シラーの戯曲とは関係ないが、やや近い部分もある。娯楽大作として上出来であるけど、ラストになんの余韻も残さないっていうのが物足りない。ところであの赤ん坊はあのあとどうなるんでしょ。 圧政に立ち向かう盗賊団 ハ・ジョンウ、カン・ドンウォン
警官の血
2022年
イ・ギュマン◯ 上出来な警察小説だけど、地味すぎ。韓国映画らしいド派手さは抑えられ、眠気を誘う。ヤクザ組織まがいの腐った警察組織も目新しくない。[Netflix] 佐々木譲原作 チェ・ウシク
ケイコ 目を澄ませて
2022年
三宅唱◎ メルマガで紹介済みなので評は省略。本気の岸井ゆきのはパワーアップし、主演女優賞を狙え!と言ってたら、本当に獲ってしまった。三浦友和も助演男優賞を獲った。 ボクシングにのめり込む聾唖者の女性
競輪上人行状記
1963年
西村昭五郎◯ オープニングでグレゴリオの『怒りの日』をふざけたアレンジ。タイトルと主演だけでキワモノのコメディかと思ったら、むちゃくちゃシリアスなギャンブル依存症の話だった。意思の弱い僕にとってはギャンブルは鬼門です。 競輪狂いの僧 小沢昭一、南田洋子、渡辺美佐子
KCIA 南山の部長たち
2019年
ウ・ミンホ△ 韓国の実録サスペンスものは毎度引き寄せられる。が、イ・ビョンホンが終始陰気くさくてイマイチ楽しめない。有能な公安職員に見えず、これでKCIAのトップに登り詰めたというのが得心いかない。良心的な人物として描いてるのも納得いかない。[Netflix] 朴正煕暗殺事件 クァク・ドウォン
激動の昭和史 沖縄決戦
1971年
岡本喜八◯ 豪華なキャスティングで、映画を観るより配役で目移りする。三井弘次が爺さん役。いつまでも若いような錯覚があった。[Netflix] 沖縄での壊滅的な負け戦
消されたヘッドライン
2009年
ケヴィン・マクドナルド◯ どんでん返しありきが強引すぎる気もするが、警察を出し抜いて殺人事件を捜査する記者コンビが絶妙。短期間で3本も観たベン・アフレックは、この映画でも癖のある役どころ。こうした役が似合う人になってきた。[Netflix] ラッセル・クロウ、レイチェル・マクアダムズ
ゲット・アウト
2017年
ジョーダン・ピール◯ 危ない空気が充満したスリラー。終盤までネタは読めず。たっぷり感情移入して入り込んでしまった。 黒人青年が恋人の白人女性の実家へ
ゲティ家の身代金
2017年
リドリー・スコット△ ミシェル・ウィリアムズが、誘拐犯と義父の大富豪、双方と駆け引きして息子を救おうと奮闘する。その一点に見どころは集中。というか、それしか見どころはない。 クリストファー・プラマー、ロマン・デュリス
ゲノムハザード ある天才科学者の5日間
2013年
キム・ソンス◯ テンションの高いサスペンス。日韓両国の文化が混じりあえば面白いものがどんどん生まれそう。ヒロインのキム・ヒョジン、チラシではさほどでもないが、なかなかいい女優です。 すり替えられた記憶 西島秀俊、真木よう子
下郎の首
1955年
伊藤大輔◎ 同監督による戦前の『下郎』(1927年)のリメイク。父君の仇討ちで、従者がはずみで仇を殺ってしまう。その敵討ちに来た門弟たちに従者を差し出してしまう意気地なしの若い武士。無惨なエンディングだが、極悪人のいない話なので気持ちのふり向けようもない。 田崎潤、嵯峨三智子
ケンタとジュンとカヨちゃんの国
2010年
大森立嗣△ 最底辺の世界で、笑いも知性も何もないものを観るのはきついものがある。製作委員会の顔ぶれから判断して、普通にロードショー公開をめざしてた企画だったようだが、できた映画は超マイナーなロードムーヴィーだった。これはシネコンでやっちゃいけない映画だ。 松田翔太/高良健吾/安藤サクラ/柄本佑/多部未華子
恋人たち
2015年
橋口亮輔◯ 諦念の世界。ほどほどのところで諦めることでしか人は生きられない。というお話に見える。おそろしくいけすかないゲイの弁護士(池田良)が登場する。こいつだけは完全に幸せから見放されていて、納得。 篠原篤/成嶋瞳子/光石研/安藤玉恵
コヴェナント 約束の救出
2023年
ガイ・リッチー◯ 型通りの戦争アクションながら、監督の映像に対する感度のよさがグレードをあげている。なので「ありえねー」を封印して楽しんだ。アフガニスタン人じゃなくイラク人らしいが、通訳のダール・サリムが好印象。部下を全員失った軍曹(ジェイク・ギレンホール)が落ち込んでる時、声をかけるべきかとためらうシーンが秀逸。 恩人のアフガン人通訳を救出
工作 黒金星と呼ばれた男
2018年
ユン・ジョンビン◯ 近過去の政治状況を描く韓国映画は秀作が多い。北朝鮮の対外経済委員会所長を演じるイ・ソンミンがいい。韓国側のスパイ、ファン・ジョンミンとの友情が温かく、リアルに感じられる。 工作員として北に潜入
高地戦
2011年
チャン・フン◯ 迫力ある戦場シーンの連続。殺しすぎ。本来は生きて戻るべき者たちまでまとめて殺してしまった感がある。余韻まで殺してしまった。紅一点のキム・オクビン(『渇き』のヒロイン)は掃きだめに鶴以上の輝きがあった。 停戦発効まで陣地取りのぎりぎりの激闘
鋼鉄の雨
2017年
ヤン・ウソク◯ エンド周辺のはしょりぎみが惜しいけど、政治的サスペンスの秀作。なじみのある役者が多いのも印象を上げた。第2作がすでに公開されている。Netflixに来るかな。[Netflix] 北朝鮮のクーデターに翻弄される韓国 チョン・ウソン、クァク・ドウォン
幸福
1981年
市川崑◯ 再見。ビデオもDVDも出てなかったが、ようやく出た。シルヴァーカラーの撮影は過酷なほどだったようだけど、ネガからの復元も大変だったことは特典映像からうかがえた。映像のこだわりは別にして、内容がいい。エド・マクベインの『クレアが死んでいる』を下敷きにしつつ、家族の絆をメインにしたオリジナルな秀作になっている。特に子役の使い方に関しては必見と思う。映画館で観たとき、不意をつかれ、涙してしまった。[DVD] 水谷豊/中原理恵/永島敏行/川上麻衣子 こうふく
幸福路のチー
2017年
ソン・シンイン◯ 本来は地味なはずの物語を、ファンタジックにぶっ飛んで描き出す台湾アニメ。引き込まれたが、途中から「ちょっと長いな」と感じたり。主演の声はグイ・ルンメイだった。声に特徴ある人じゃないので気づかなかった。[Netflix] 台湾の1女性の半生を台湾史に重ねて描く
幸福なラザロ
2018年
アリーチェ・ロルヴァケル◯ 途中まで、エンドは浦島太郎かと思ったが、違った。ポヨンとした無防備な体型も含め、主演の若者のキャラで映画が出来上がった印象。領主の息子が飼っている小型犬。名前のエルコレはスペイン語のヘラクレスです。 アドリアーノ・タルディオロ
傲慢な花
2022年
モニカ・ミッチェル△ やけに既視感があると思ったら、二度目だった。主演のアリッサ・ミラノが製作者も兼ねている。ストーリー忘れてるから誰が連続殺人犯か見当がつかず、楽しめた。IMDbでのレイティングは4.1と、かなり悲惨。主演に華がないからね。[Netflix] 妹を殺された作家が捜査する アリッサ・ミラノ
荒野にて
2017年
アンドリュー・ヘイ◯ 孤独に米国を漂流する少年。自分的には体にしっくりくる映画だけど、地味すぎてシネコンでロードショー公開するのは無理すぎ。馬と激突した車のボディーが無事というのは引っかかった。 チャーリー・プラマー、スティーヴ・ブシェミ、クロエ・セヴィニー
荒野の誓い
2017年
スコット・クーパー◯ 主演トリオはいずれも出演作のレヴェルが高く、信頼の証。しかし演出はどこか締らず。特にラストの緩みは残念すぎる。ロザムンド・パイクは今年一気に主演作が3本も公開。嬉しい気分。 敵対していた米国先住民のリーダーを故郷に搬送する軍人 クリスチャン・ベール、ウェス・ステューディ
声もなく
2020年
ホン・ウィジョン◯ 予告篇で僕好みの韓国映画だと確信し、期待通りだった。誘拐された女の子がなかなかの存在感を見せる。こういう悲惨な世界を描くと韓国は元気いっぱいだ。知った顔が少ない映画だが、みな個性的で、キャラが立っている。 犯罪組織の下請けが誘拐された少女を預かる
ご縁玉 パリから大分へ
2008年
江口方康△ 驚いたが、山田泉(「いのちの授業」の人)は仏語ぜんぜん喋れない。パリに憧れパリに行き、クテュリエに出会って意気投合したというのに。小学生レヴェルの英語のみでコミュニケートしてしまえる人には敬意を表す(僕には真似できない)。ドキュメンタリとはいってもカメラがあると人は意識して役割を演じてしまいがち。ずっと自然体のクテュリエを見てるとほっとする。 五円玉の縁で再会する エリック・マリア・クテュリエ
ゴースト・イン・ザ・シェル
2017年
ルパート・サンダーズ△ 20年以上前の『攻殻機動隊』は完璧に忘れてるが、これって話は別でしょ。リメイクと言えるのかな。製作に中国資本がからんでるせいか、日本を示すものが終始チャイニーズイメージ。 スカーレット・ヨハンソン、北野武
ゴースト・ドッグ
1999年
ジム・ジャームッシュ◎ ある企画の参考作品として覆面上映。すでに観てるので帰りかけたが、残って正解だった。とてつもなく変だぞ。面白いぞ。何もかもが変だぞ。マフィアが町内の老人会だぞ。シケててビンボーで大家からどやされてるぞ。フォレスト・ウィテカーを真似て武士道にはまりこみそう。[DVD] 武士道を信奉する黒人の殺し屋 イサーク・デ・バンコレ、トリシア・ヴェッセイ
ゴーストバスターズ アフターライフ
2021年
ジェイソン・ライトマン◯ 記憶はないけど記録では第一作を観たらしい。有望な新人女優(マッケンナ・グレイス)をしっかり見ておきたかった。ツッコミは入れだすときりないので、封印。 辺鄙な田舎町で化け物退治
ゴーストライダー
2007年
マーク・スティーヴン・ジョンソン◯ 派手なCGと主演(ニコラス・ケイジ)は脇に置いておく。この映画はエヴァ・メンデスだ。目力の強さに惹かれる。[Netflix] 悪魔に魂を売った男が悪魔と対決する
ゴーストライター
2010年
ロマン・ポランスキー◯ ユアン・マクレガー演じる主人公のラストの行動が釈然としない。謎を解いたことを得々と披露してないで、まずは自分の身の安全の確保と証拠物件の保全だろう。何やってんだか。女優陣は初見のキム・キャトラル含め、Good! 元英国首相の自叙伝のゴーストライターを引き受ける オリヴィア・ウィリアムズ
コーダ あいのうた
2021年
シアン・ヘダー◯ 演出はオリジナル版を踏襲してると思うけど、終盤のオーディションで感動。使用曲は別だったようだが、『青春の光と影』の歌詞はストーリーとよく響き合っていた。話の見えてる感動ドラマでリメイク。米アカデミー賞の値打ちを下げた受賞だった。 『エール!』の英語版リメイク エミリア・ジョーンズ、マーリー・マトリン
コーヒーブレイク
1977年
古川タク◎ 久しく再見を待ち望んでいた短編アニメがネットにアップされていた。たった3分で表現できる。イメージの爆発を。バックの音は冨田勲の『火星』を借用してることを今回知った。[YouTube] 3分短編
氷がすべてを隔てても
2022年
ペーテル・フリント△ ニコライ・コスター=ワルドーが主演だが、技術屋を演じたジョー・コールばかりが目立った。[Netflix] 遠征隊が残した地図を回収するためにグリーンランドを探検する2人
ゴールデンスランバー
2010年
中村義洋◯ ハラハラドキドキでたっぷり楽しませてくれました。キャスティングも予告篇もいいので大ヒットの予感があったんですが、中ヒット程度。堺雅人はメジャー映画の主演にはマイナーすぎたか。エンドはあれで納得できます? 僕は納得できません。 伊坂幸太郎原作 首相暗殺犯に仕立て上げられる男 竹内結子、ソニン
COLD WAR あの歌、2つの心
2018年
パヴェル・パヴリコフスキー◯ 『芳華 Youth』のような出だしだが、映画の空気は大きく異なる。主人公男女二人の気持ちがつかめず、入り損ねる。なんでこういう展開になっていくのかもわからないまま。帰ってからポーランドの民族音楽について猛烈に調べた。テーマ曲はソ連の曲らしい。 別れと再会をくり返す歌手とピアニストの15年 ヨアンナ・クーリク
ゴーン・ガール
2014年
デヴィッド・フィンチャー◎ ネタバレ回避でほとんど書くことない。観た時点でロザムンド・パイクのアカデミー主演女優決定と思った(外れた)。強い存在感を見せつける。初めての代表作となった。 妻が失踪 ベン・アフレック
故郷よ
2011年
ミハル・ボガニム◯ 人権派のタテマエ的映画ではないのでリアルに響く。避難しないという選択を否定的には描かない。考えさせられることの多い映画であった。 オルガ・キュリレンコ チェルノブイリ原発事故の近郊の村で
国際市場で逢いましょう
2014年
ユン・ジェギュン◯ 涙腺刺激映画で、ボロボロ涙。韓国映画らしく、笑いと涙をこってりまぶした作りだ。親子兄弟、家族の絆の物語。無縁なだけに魅かれるのか。キム・ユンジンのドイツ語発音が素晴らしくて聞き惚れた。 こくさいいちばで〜 家族のために激動の時代を必死に生き抜いた男
哭声 コクソン
2016年
ナ・ホンジン◎ 肝心なことを明らかにしないまま終わる。しかし今年ここまで観た映画のベスト。何を書いてもネタバレっぽくなるので、サイト(ネタバレしても委員会)に書くことにする。 オカルトホラー 國村隼
告白
2010年
中島哲也◯ きれいごとや善意くそ食らえの姿勢を多いに評価する。反面、まだ悪意が足りてない印象がある。先生も嘘をつく。最後のセリフは大胆なひっくり返し。だったんでしょうね。 湊かなえ原作 娘を殺された女教師の復讐 松たか子
告白、あるいは完璧な弁護
2022年
ユン・ジョンソク◯ メールマガジンやネタバレしても委員会に書いたのと同じことは書かない。個人的にはなんといってもキム・ユンジンです。怖さがある。悪党を演っててもおかしくはない。いっぺんサイコキラー役をやってほしい。 愛人殺害の嫌疑のかかったIT企業経営者 ソ・ジソブ、ナナ
孤高のスナイパー
2013年
アネット・K・オルセン◯ デンマークの油田開発計画を止めようとテロに走る男。緊張感のあるドラマ展開で、見応えがある。きれいごとに流されない真摯な姿勢に好感がもてる。北欧の映画は質が高い。[YouTube] 環境過激派によるテロリスト対女性ジャーナリスト
孤高のメス
2010年
成島出◎ 日本映画からはときどき世界のどの国にも真似できそうにない上質のものが出てくる。嘘っぽさを感じさせることなく誠実な心が描かれる。一看護婦の目を通してドラマが描かれているが、演じた夏川結衣が繊細で素晴らしくいい表情を見せる。感動し、熱くなった気持ちが冷めやらず。 荒廃した医療現場に赴任した一人の医者 堤真一
凍える牙
2012年
ユ・ハ◯ 狼と犬のあいのこだと言われても本物の狼を見たことがないから、それっぽいかどうかもわからない。シベリア系の大型犬はだいたいあんな目をしてるし。人体発火事件は本筋とどうつながるのかさっぱりわからないが、それ以外は普通に面白かった。 乃南アサ原作 狼犬が人を襲う ソン・ガンホ
心と体と
2017年
イルディコー・エニェディ△ 奇妙な恋愛風景。見ているうちにこの二人に対する愛着が強くなった。監督のデビュー作『私の20世紀』はもう一度観たい映画のトップに挙げられる。夢の中の鹿の撮影がうまいと思ったら、2頭の鹿はともに役者鹿だった。エンドクレジットに名前が挙がっている。 眠ると同じ夢の世界にいる男と女
心の傷を癒すということ 劇場版
2021年
安達もじり◯ ドボドボに泣きを入れる映画だったら劇場から逃げてたかも。杞憂でした。その方向へ行きそうになるのを抑え、リアルに徹した。役者は女優陣がよかったけど、その中でも特に平岩紙! 阪神淡路大震災後に心のケアを尽くした若い医師 柄本佑、尾野真千子、谷村美月
ゴシカ
2003年
マチュー・カソヴィッツ◯ 観終わるまで、ラジー賞の映画だと勘違いしていた。それは同じハル・ベリー主演の『キャットウーマン』。だからラストでどんなヘボなシチュエーションが出るか、あるいは救いようのないバッドエンドかと期待していた。わりとまともなサスペンス映画でした。[Netflix] 夫を殺したとして精神病院の隔離病棟に収容された医者
ゴジラ-1.0
2023年
山崎貴◎ オキシゲンデストロイヤー並みの怪しい科学的説明があったりする。細かなツッコミどころはあったが、まさかゴジラ映画で感極まって涙するなんて予想できなかった。今年はけったいなアメゴジが公開されるようだし、先手を打って公開したのは大正解。 神木隆之介、浜辺美波
太夫さんより 女体は哀しく
1957年
稲垣浩◯ 文化博物館が珍しいのをやるなと思ったら、外部フィルムの特別上映。逃したら二度と観る機会がなかったんだ。いろんな映画で描かれる太夫道中もしっかり映像化。民俗学の映像資産。淡路恵子が珍しくボケなキャラで目立ってる。悪女やキツい役ばかりでなく、こういう振れ幅のある役をもっとやってほしかった。 京都島原の舞妓芸妓の置屋 こったいさんよりにょたいはかなしく
COP CAR コップ・カー
2015年
ジョン・ワッツ◯ 超低予算B級の楽しさ。ケヴィン・ベーコンって、悪徳警官のキャラそのまんま。 パトカーを盗んだ少年二人
孤独なふりした世界で
2018年
リード・モラーノ△ ラストが不気味だ。そこにいるはずのない人間がうじゃうじゃいる、みたいな。主演のピーター・ディンクレイジが深刻すぎ。そういう話じゃないんだろうけど、ユーモアのセンスもほしい。[Netflix] 人類が絶滅した世界に生きる エル・ファニング
コトバのない冬
2010年
渡部篤郎△ 伏線があったから、エンドは回転木馬が『波濤を越えて』の曲とともにヒロインを迎えるシーンだと勝手に期待して感動してたのだが…。曲が鳴らない。全編手持ちカメラや台本なし撮影は、この映画では成功していない。 渡部篤郎、高岡早紀、北見敏之、広田レオナ
コネクテッド
2008年
ベニー・チャン◯ リメイク元の『セルラー』よりも格段に面白くなった。リウ・イェのねちっこい悪辣顔に評価アップ。テンションの高さ、娯楽映画作りへの本気度がハリウッドにまさっている。ありえないとか、いつものようにツッコミどころはあったけど、香港映画人のパワーは健在で、よかった。 『セルラー』香港リメイク ルイス・クー、バービー・スー
子猫の涙
2008年
森岡利行◎ 心に染み入る秀作。劇場で観たときも心ゆさぶられたけど、なぜか今回のほうが感動が大きい。親(武田真治)に向かって「アホ!」「死んだらええねん」と毒づく藤本七海。インパクトの強さは『カナリア』でデビューした谷村美月に匹敵する。抜けた演技の武田真治。ふっ切れたように底辺の女を演じる広末涼子。ともに代表作といっていい。[Net] 元ボクサーのダメ男 鈴木砂羽
この愛のために撃て
2010年
フレッド・カヴァイエ◯ 一貫してハイテンションなサスペンスアクション。唯一名前知ってる俳優があっさり殺られて驚いた。ありえない二人タッグが案外マッチしていて違和感ない。何より前作(『すべて彼女のために』)とちがって攻撃するという前向きの方向だったので盛り上がる。 身重の妻を人質に取られる ミレーユ・ペリエ
この心亡き者
2023年
ツァオ・インティン◯ 日本では無名の俳優ばかりの台湾製刑事ものサスペンス。気合い十分で惹きつけられる。同じ日に観た、これも台湾刑事ものだった『第九分局』のゆるさとは雲泥の差。ただ、本ボシにつなげる伏線の弱いのは気になった。[Netflix]
この世界の片隅に
2016年
片渕須直◎ 日本映画の良品がヒットしてるのは嬉しい。戦前戦中の生活を淡々と描いている。あえてドラマティックに盛り上げるのを避けているかのような。現実を歪めまいとするかのように。 原作:こうの史代 声:のん(能年玲奈)
この茫漠たる荒野で
2020年
ポール・グリーングラス◎ 西部劇の秀作が現われた。これまで一度もトム・ハンクスをいい役者と思ったことなかったけど、風格を感じさせて素晴らしい。心を通いあわせることになるドイツ人少女(ヘレナ・ゼンゲル)も。『ペーパームーン』のテイタム・オニールを連想させる。[Netflix] 孤児の少女を親族のもとに送り届ける赤の他人
コラテラル
2004年
マイケル・マン◎ 特別な映画というほどに思い入れがありすぎて、観直すことがなかなかできなかった。やはり名作です。トム・クルーズはトム・クルーズそのままでも、一味違う。[Netflix] 殺し屋を乗っけてしまったタクシー ジェイミー・フォックス
コリーニ事件
2019年
マルコ・クロイツパイントナー◯ インパクトある映画だった。久しぶりのフランコ・ネロ。演技以上のものが出てます。 殺害の動機を語らない容疑者 エリアス・ムバレク
これからの人生
2020年
エドアルド・ポンティ◯ 地味ながら、少年の精神的な成長をきっちり描いて清々しい。主演の黒人少年は沈黙と静止によってヴィヴィッドに表現する術を持っている。この少年がいて成り立った映画だ。[Netflix] 不良少年を預かった老婦人 ソフィア・ローレン
孤狼の血
2018年
白石和彌◯ ずしっ、どしんっ、とくる感触。役所広司にはできたら心底から悪い奴を演じてほしかった。阿部純子は吉永淳という芸名で出演していた『2つ目の窓』とは別人のような成長ぶりで、喜ばしい。今後も期待している。 広島のマル暴の刑事
松坂桃李、真木よう子、滝藤賢一、ピエール瀧、石橋蓮司、江口洋介
孤狼の血 LEVEL2
2021年
白石和彌◯ 『仁義なき戦い』シリーズを彷彿とさせる。脚本もよく練られていて満足感は高い。にもかかわらず、ヤクザの抗争劇が時代ずれを感じさせる。今どき抗争などしてる余裕はヤクザにないはず。稼げなくて生活難に怯えるヤクザならリアリティある。村上虹郎は殺され顔ですね。それも演技のうちか。[Netflix] 松坂桃李、鈴木亮平、西野七瀬、中村梅雀
コロニア
2015年
フロリアン・ガレンベルガー◯ 久々、ガツンとくるようなきついスリラーサスペンス。映画とわかってながら必死になってしまった。細かい部分では「それっておかしい」と思いつつ、文句を吹き飛ばすだけの映像の力があった。エマ・ワトソンは美少女卒業。大人の女になった。 恋人を救うためにカルト組織に潜入する若い女性 ダニエル・ブリュール
コンクリート・ユートピア
2023年
オム・テファ◎ 韓国映画らしい容赦ないサバイバルドラマ。きれいごと抜きで本性むき出しになるところがいい。遠慮のかたまりの日本人は少し見習うべきかも。廃墟映像がこってりしてていいと思ったら、デジタル・エフェクトのスタッフ数が半端じゃなかった。 大地震で唯一崩落しなかったマンション イ・ビョンホン
コンテイジョン
2011年
スティーヴン・ソダーバーグ◎ 狙い通りのテイスト。こけおどしもケレンもはったりもない。娯楽性に媚びることもなく、シビアに作る。だから興業は惨敗。エンドには想定を覆すほどのサプライズがほしいのだが、弱い。今思うと『ブラインドネス』は稀なる傑作だった。 接触感染でウイルスが世界中に蔓延 マリオン・コティヤール、マット・デイモン
コンフィデンシャル 共助
2017年
キム・ソンフン◯ 娯楽要素てんこ盛りで楽しい。何もかも忘れて没入。極端なほどキャラの違う凸凹二人組の刑事。取り合わせが絶品。特に韓国の刑事役のユ・ヘジンが。随所にあるツッコミどころは大目に見る。 北と南の刑事が共同で犯罪者を追う
コンペティション
2021年
ガストン・ドゥプラット、マリアノ・コーン◯ 性格が悪くて相性の悪い3人が寄り集まって映画を制作するとどうなるか。映画文法をことごとく無視し、予想を裏切りまくる。映画の中身よりも作られた背景に興味津々。 富豪が映画製作に資金を出す ペネロペ・クルス、アントニオ・バンデラス
婚約者の友人
2016年
フランソワ・オゾン◯ いかにもミステリーっぽい予告篇。どんなどんでん返しがあるのかと期待してしまった。ストーリーは脇に置いて、妙な雰囲気が全体を覆う。監督はフランス人なのにドイツ中心。モノクロ中心のパートカラー。どういう意図があるのか。 戦死した婚約者の墓参りに来た元ドイツ兵を迎える女
パウラ・ベーア、ピエール・ニネ
search サーチ
2018年
アニーシュ・チャガンティ◯ パソコン慣れしてない人は置いてきぼりの映画。終盤の解決に至る部分でボロが出たが、スピーディーな展開で息もつかせない。僕もあれぐらいの粘りで調査探求したい。[Netflix] パソコン画面だけで展開する映画 娘の失踪を調査する父親
30デイズ・ナイト
2007年
デヴィッド・スレイド△ 極地に近いアラスカの町。30日続く極夜に吸血鬼の集団が襲ってくる。ホラーとしては上出来の部類です。でも、ジョシュ・ハートネットが最後にとった究極の選択に納得しません。それに31日目、太陽は昇ってもすぐ沈みます。 吸血鬼ホラー メリッサ・ジョージ
サード・パーソン
2013年
ポール・ハギス△ オリヴィア・ワイルドを恋愛ものに起用するという発想はどこから湧いて出たのか。ホラー映画のモンスターが似合う顔だが、不思議と演じてない(宇宙人役はあった)。タイトルの意味はわからないし、それぞれのドラマの地理的関係もさっぱりわからん。モラン・アディアスは妖しげな魅力を発し、6人の主演の中で際立っていた。 ミラ・クニス、リーアム・ニーソン、エイドリアン・ブロディ
サーミの血
2016年
アマンダ・シェーネル◯ サーミ人差別の映画が日本で公開されることはこれを除いてなさそう。ヨイク(サーミの音楽)も興味ある。スウェーデン社会で生きた主人公がサーミに対する差別意識を育んでしまう。そういう視点がありえたのか。 故郷のラップランドから出ていく少女
最愛の子
2014年
ピーター・チャン◯ チラシイメージでヴィッキー・チャオが主演と思ってた。男の子より可哀想なのは妹にされてた少女のほうでしょう。弁護士が言った。この国の人はみな、相手の立場でものを考えない、と。中国人に限ったことではないが、中国人は特にそうだ。子供が一人で遊んで安全なのは日本だけなのか。 さらわれた息子を取り戻す
ザ・イースト
2013年
ザル・バトマングリッジ◯ 細かいようだけど原題は”The East”だから『ジ・イースト』にしてほしい。これじゃ酵母菌(The Yeast)になってしまう。低迷してる米国メジャーを尻目に、準メジャーの配給会社フォックス・サーチライトと制作会社Scott Freeは意欲的な新作を次々送り込んでくる。目を離せない。 環境テログループに潜入する捜査員 ブリット・マーリング
再会の夏
2018年
ジャン・ベッケル◯ 愛すべき掌編ながら、海外での評価の低さも納得する。主人公の若い兵士のとった行動の動機。ラストで一気に矮小化する。これはもう一人の主人公たる「名なしの黒犬」を見る映画だったか。 犬に勲章をくれてやる兵士
サイコキネシス 念力
2018年
ヨン・サンホ◯ 『エクストリーム・ジョブ』などと同種の、韓国お得意のお笑い映画。ド派手でサーヴィス満点。主演のリュ・スンリョンはシリアスとコメディ、どちらでもOKながら演技の振れ幅が大きい。[Netflix] 地上げ屋に対抗して商店街が徹底抗戦 シム・ウンギョン
最後の忠臣蔵
2010年
杉田成道◎ 映画館でスルーしたのが悔やまれる出来映え。不覚にも予期せぬ場面で落涙した。ラストはわかってたとはいうものの、映画的にも違うエンドであっていいだろうと思うのだが。純粋現代っ子の桜庭ななみは見事に「凛とした美しき姫君」を体現していた。[DVD] 忠臣蔵秘話 役所広司 佐藤浩市
最後の追跡
2016年
デヴィッド・マッケンジー◯ サスペンスでもアクションでもないテキサス・レンジャーものであった。追うほうも追われるほうも、自らの絆のために戦っている。[Netflix] 銀行強盗の捜査を命じられたテキサス・レンジャー
最後まで行く
2014年
キム・ソンフン◎ こういう「とことん悲惨ネタ」をやると韓国映画に太刀打ちできる国はない。日本でリメイクって、無謀すぎる。最後まで気を抜けないストーリーを堪能した。エンドクレジットに使用曲リストがなくて驚いた。珍しい曲を使ってたのに。[Netflix] ついうっかりから最悪のドツボまで一直線の刑事
最後まで行く
2023年
藤井道人◯ 日本で韓国のサスペンス傑作をリメイクというだけで無謀な挑戦と思った。が、予想に反して大健闘。岡田准一の「いかにもやましい顔」は過剰だけど。[Netflix] 岡田准一、綾野剛
SRサイタマノラッパー2 女子ラッパー☆傷だらけのライム
2010年
入江悠◯ 観れてよかった。女たちのシビアなドラマをラップに乗せて映像化。ミュージカルだが、現実シーンとの乖離がない。仰天するほど長いカットがやたら多いが、アドリブではなくきちんと演技で見せてるのは驚異的。 群馬の女ラッパー5人の苦闘
サイド・エフェクト
2013年
スティーヴン・ソダーバーグ△ ミステリーで釈然としないまま終わるのはいかがなものか。終盤の展開に納得してません。ルーニー・マーラの不思議な個性は印象に残ったが。 新薬の被験者が夫を殺す ジュード・ロウ
サイレント・トーキョー
2020年
波多野貴文△ 人物のつながりがいまいち呑み込みにくく、重要人物のはずの佐藤浩市って、結局なんなの?で終わってしまった。たぶんPKOの元自衛隊員だろうけど、だからなんなの?って感じ。佐藤を含め、役者が自分の動機を体現してないのが問題だと思う。[Netflix] 爆破テロ事件 石田ゆり子
The Witch 魔女
2018年
パク・フンジョン◯ 続編が4年もたってから出てきたので、忘れかけてた一作目を再見。人間性を削ぎ落とした怪物たちが暴れまくっている。死んでも悲しくない連中なのでお気楽に見てられる。組織の幹部の女、記憶あると思ったら『嘆きのピエタ』の主演。こういういやらしい女も似合っている。[Netflix] ミュータントに改造させられた子供たち
ザ・ウォール
2017年
ダグ・リーマン◎ 低予算の娯楽映画の見本。面白すぎると言ったら不謹慎か。 イラクの凄腕スナイパーと対決する アーロン・テイラー=ジョンソン
サウスポー
2015年
アントワーン・フークア◯ クライマックスのファイトシーンはウーナ・ローレンス(娘役)といっしょになって盛り上がってました。リアリティを重視して映像を汚しぎみ。それが嫌われたのか、初日の館内はがらがら。レイチェル・マクアダムスはキャラが違うのに安藤玉恵に見える。必死になって安藤玉恵の顔を頭から追い出そうとしたが。 どん底に落ちたボクサーが再起を図る ジェイク・ギレンホール
サウダーヂ
2011年
富田克也◯ 不思議なものを観た。名のある俳優は一人もいないのに、素人臭い演技はほぼゼロ。隠しカメラのドキュメンタリを観てるかのように地方都市の現実がリアルに流れていく。ポルトガル語とタイ語は耳で聞いても区別できないことがよくわかった。 甲府の土方とラップミュージシャン Saudade =「郷愁、憧憬」(ポルトガル語)
サウンド・オブ・レボリューション グリーンランドの夜明け
2014年
イヌーク・シリス・ホーフ◯ グリーンランドはイヌイットの国。道路がなく、内陸は進入不能で、交通機関は船。民族のアイデンティティーや固有の言語を守りたいという志が胸を熱くさせる。デンマーク政府は自治権を認めた。香港やウイグル自治区、チベット、内モンゴルでの強権弾圧をくり返すあの国との差は天と地ほど。 グリーンランドの自治権獲得の契機になったロックバンド
ザ・コール
2020年
イ・チュンヒョンX 『オーロラの彼方へ』のリメイクかと思ったほど前半が酷似する。後半は独自の展開で、韓国らしい胸糞悪い展開になる。思い出すのもいやなほど。新型コロナウィルスが居座っているこのご時世、こういう希望のかけらもない映画はペケ。[Netflix] 一本のコードレス電話を介して過去の殺人鬼とつながってしまう
ザ・コール[緊急通報指令室]
2013年
ブラッド・アンダーソン◯ ハル・ベリー、復活。若々しいし、セクシーを強調しなくなったのもグッド。どんなどんでん返しかと身構えてたら、想定外のエンド。「反則だ」という意見もあった。なんでもありよ。 アビゲイル・ブレスリン、モーリス・チェスナット
ザ・コンサルタント
2016年
ギャヴィン・オコナー◯ アナ・ケンドリックは好感の持てるタイプながら、ちょっとイケてない理系女子にぴったりハマっている。逆にベン・アフレックの神経症演技はだめです。またその演技を予告篇でしつこく見せてるのがうっとうしい。 会計士と殺し屋の二足のわらじ
ザ・サイレンス 闇のハンター
2019年
ジョン・R・レオネッティ◯ 『クワイエット・プレイス』の二番煎じのような映画だが、出来栄えはこちらのほうが上の印象。怪物より恐ろしい人間が強烈だ。[Netflix] 空とぶ怪物の集団に襲われた地球 スタンリー・トゥッチ、キーナン・シプカ
ザ・シューター 極大射程
2007年
アントワン・フークワ◯ サスペンスアクションの傑作。一つ残念に思うのは、この映画でケイト・マーラが大スターに飛躍しそこなったこと。資格は十分あるのに。もう一人、大スターになりそこなったローナ・ミトラも出ていた。[Netflix] はめられた狙撃者 マーク・ウォールバーグ
砂上の法廷
2016年
コートニー・ハント◯ ラストに明かされるまで裏を読めず、疑いもせず。終わってから逆回転で反芻するも、真実の読めない部分がいくつも残る。たぶんあの証言は虚偽だったんだろうな、ぐらい。ネタバレ回避のために書きにくいが、ちょっとずるい手法を使っている。 父親殺し容疑の青年を弁護する キアヌ・リーブス、レニー・ゼルウィガー
ザ・スクエア 思いやりの聖域
2017年
リューベン・オストルンドX エキストラを含め、スクリーンは徹底して嫌悪感をもよおす人物で埋めつくされている。前作は観てないが、監督は人間嫌いか。最も不快だったのは、女性記者(猿男ではなく)。 現代アートの展覧会を準備する美術館
ザ・タウン
2010年
ベン・アフレック◯ 期待が過剰だったが、密度の高いドラマとアクションシーンが続き、満足度は高い。観終わってズシッと残るものがないだけ。ジェレミー・レナーの演じた犯罪者の名はクーフリン。ケルト神話の勇猛な戦士の名にふさわしくない汚れた悪党だ。 犯罪者の巣のような街 ベン・アフレック、レベッカ・ホール
サタデー・フィクション
2019年
ロウ・イエ△ 2時間超えると大半の映画は演出が弛むの法則の通り。全編で手持ちカメラぐらぐらは目につらい。観に行くのをためらったのは主演のコン・リーゆえ。やはりそこにネックがあったような。一介の舞台女優が日本の特務警察を全滅させられるわけない。なめてるだろ。 真珠湾攻撃前夜の諜報部の攻防 オダギリジョー、中島歩
ザ・タワー 超高層ビル大火災
2012年
キム・ジフン◯ ツッコミどころは多数ながら、楽しめました。冒頭、ヘリから旋回しながら空撮するタワーホテルがCGに見えなかった。見事、背景にとけこんでいる。ドラマ面も充実し、本家の『タワーリング・インフェルノ』(観てない)を凌駕したかも。B級でこのレヴェルを連発する韓国映画のパワーは頼もしい。 ソル・ギョング、ソン・イェジン、ハン・ソッキュ
ザ・テキサス・レンジャーズ
2019年
ジョン・リー・ハンコック◯ ボニー&クライド事件を追っ手の側から描く。端正に作られた名作。悪党二人組が大衆から支持されてたんだと。収穫を貧民にばらまいたわけでもないのに。ドナルド・トランプ現象と同じか。そう思うとこの映画が制作された意味が見えてくる。[Netflix] ボニーとクライドを追う二人 ケヴィン・コスナー、ウディ・ハレルソン
ザ・ハーダー・ゼイ・フォール 報復の荒野
2021年
ジェームズ・サミュエル△ 黒人ばかりの西部劇アクション。悪党のレジーナ・キングの面構えが頼もしい。映像はスタイリッシュで音楽も監督が全部手掛けてるらしい。才気がほとばしる。それだけの映画。[Netflix] イドリス・エルバ
ザ・バンク 堕ちた巨像
2009年
トム・ティクヴァ◯ 凡庸な邦題がもったいない。切れ味の鋭いクライム・アクションだ。硬派でクール。緻密な捜査プロセスが僕の心をくすぐる。関係ないが、クライヴ・オーウェンの無精ヒゲにシラガを発見。彼もようやくボクに追いついてきた。 巨大犯罪を追うインターポルの刑事
ザ・ハント
2020年
クレイグ・ゾベル◯ 大満足のB級サスペンス。久しぶりに見かけたエイミー・マディガン。おばあちゃんになってたが、元気元気。 人間狩りゲーム ヒラリー・スワンク、ベティ・ギルピン
ザ・ファブル
2019年
江口カン△ 面白くしようという熱意は伝わる。けど、観終わったらすっと抜けていく。[Netflix] 殺さない殺し屋 岡田准一、木村文乃、山本美月
ザ・ファブル 殺さない殺し屋
2021年
江口カン◯ アパート壁面のアクションはあちこちで真似されそう。近年の日本映画ではコメディ系のシリーズの成功例がちらほらと。『探偵はBARにいる』シリーズも大好き。『ザ・ファブル』も役者それぞれの持ち味を生かしている。堤真一、悪役ハマりすぎ。こんな顔見せたらもう、善玉役は無理ね。[Netflix] 伝説の殺し屋 岡田准一、平手友梨奈
サマーウォーズ
2009年
細田守◯ 日本の手描きアニメ(セルアニメにあらず)は心和ませるものがある。日本ならではの微妙な色彩センスと情感。満席の観客はエンドクレジット終了まで動かず。満足度はきわめて高い。はずなのに、なぜか物足りない。悪を成敗し、仇を討ったという気がせず、不完全燃焼。ところで陣内家に停めてあるトラックの「陣内水産」はジョークだろうか。上田市は日本でいちばん海から遠そうだが。 仮想空間に現れた怪物が世界を攻撃する
さまよう刃
2009年
益子昌一△ 韓国好みのエグい題材。韓国リメイクではさぞ凄惨なシーンになったろう。撃つときは迷ってはいかんと、山谷初男がせっかく教えたのに、なにをのんびり構えてるのか。寺尾聰は演技がトロすぎる。[YouTube] 東野圭吾原作 竹野内豊、酒井美紀
サムジンカンパニー1995
2020年
イ・ジョンピル◯ 冒頭に「実話をもとにしたフィクションです」と出る。フィクションだと宣言することにより映画は面白く作られるという、いい例。見事なほどキャラがはっきりした俳優ばかりなので、見分けがつかずに混乱することがない。観ててどんどん熱くなっていく。ラストシーンも見事。パク・ヘスは『スウィング・キッズ』の人だが、印象が一変した。 大企業の犯罪を高卒の女子社員たちが告発する コ・アソン
SOMEWHERE
2010年
ソフィア・コッポラ△ エル・ファニング可愛い、だけで観てしまった。最後までずーーーっと芸術映画が続くんかいなと冷や汗かいた。こんなのをシネコンでやるって、根性、蛮勇。 別れた妻から娘を預かる スティーヴン・ドーフ
サムライの子
1963年
若杉光夫◎ もう何回観てるかと思うほど観てるのに、ネットにアップされてるとまた観てしまう。主演の小学生役、田中鈴子のまっすぐで意志の強さを体現する演技に魅せられる。『にあんちゃん』と並ぶ日活児童映画の秀作の一つ。ラストがゆるゆるなので点数は下がるが、自分の中では忘れ得ぬ名作の一篇。[YouTube] 山中恒原作 バタ屋部落の子
ザ・モール THE MOLE
2020年
マッツ・ブリュガー△ スパイのプロジェクトとしては偉業に値する。しかし10年間も素人が潜入捜査してバレないは考えにくい。しかも同時に何台もの隠しカメラで撮影し、大量の映像素材を得ている。隠しカメラの常として、見づらいし、映画は長い。相当疲れる。 元料理人が北朝鮮の闇取引の実態を暴くドキュメンタリ
さよなら、アドルフ
2012年
ケイト・ショートランド◯ 演技も含めた映像の持つ力に魅せられる。反面、ストーリーが物足りない。戦犯の子らが兄弟姉妹5人だけで逃走の旅に出るが、けっして『山椒大夫』のような過酷な運命が待ち受けてるわけでもない。期待するものが間違ってた? ところで製作はドイツとオーストラリア。どうしてオーストラリアなの? 敗戦後の「ナチスの子供」を描く
さよなら渓谷
2013年
大森立嗣◯ 夫婦の奇妙な関係性が明らかになったあと、冒頭から観直してみたくなった。夫の「刑期」は満了したのか。それはラストで明かされる。それでまた大森南朋がややこしい問いを夫に突きつけるが、答は出ない。問題点が二つ。宣伝段階で半分ネタバレしている。展開と演出が不必要なほど遅い。真木よう子はこの映画で主演女優賞が確定と思う。 山里に暮らすいわくありげな若い夫婦 大西信満
ザ・ライト エクソシストの真実
2011年
ミカエル・ハフストローム◯ 震災で公開延期になったというから、どんだけ派手なカタストロフ映像があるのかと思った。いたって地味な映画。サスペンスホラーとして純粋に面白かったが、延期の効果はなく、客席はガラガラ。 エクソシスト養成学校に入学した青年 アンソニー・ホプキンス
ザ・ライフルマン
2019年
ジンタルス・ドレイベルグス◯ 交戦相手のドイツにではなく、味方であったはずのソ連に対する敵意が強く表れる。第2次世界大戦を舞台としたフィンランド映画『アンノウン・ソルジャー』と似ている。ロシアの性悪は未来永劫変わらず。 第1次世界大戦で前線に配置されたラトビアの少年
さらば愛しき大地
1982年
柳町光男☆ 40年ぶりの再会。評価は落ちると覚悟したが、映画のあまりの振り切れぶりが見事でインパクトが強い。秋吉久美子や山口美也子らの女優陣が素晴らしい。主人公の男は映画の初っぱなからダメダメ男でした。 転落していく男 根津甚八、矢吹二朗
ザリガニの鳴くところ
2022年
オリヴィア・ニューマン◯ 原作ファンには不評のようだが、個人的には納得印で大満足。若い男性二人のキャラが紋切り型なのは残念。女性目線ばかりでなく、男性目線も必要だ。 殺人の嫌疑がかけられた「沼の娘」
サルサとチャンプルー Cuba/Okinawa
2007年
波多野哲朗◯ タイトルに魅かれたが、音楽がメインではなく、沖縄からキューバへ渡った移民の話です。沖縄の音楽と中米の音楽。なんとなく親和性があるような。アフリカを起源とした音楽が中米に花咲き、さらに日本のエスニックな音楽が混淆すればと考えるだけで楽しい。 キューバの日系移民のドキュメンタリ
猿の惑星:創世記ジェネシス
2011年
ルパート・ワイアット◯ どっぷり状態。映画館にいることを忘れてしまう。猿たちの暴走。市警対猿軍団。気持ちは猿のほうに入りきっている。人類が猿にたたきのめされてこんなに爽快な気分になるって、信じられん。未見の『キングコング』もアンディ・サーキス。素顔を忘れた。 人類滅亡の歴史的瞬間 ジェームズ・フランコ/フリーダ・ピント/ジョン・リスゴー
猿の惑星:新世紀
2014年
マット・リーヴス◯ 戦争をしたがる猿。平和共存しようとする猿。善悪の分断にはひっかかるが、双方の心的背景はきっちり描いている。記憶が心を作ってるのだ。 ジェイソン・クラーク、ケリー・ラッセル、コディ・スミット=マクフィー 〜ライジング
猿の惑星:聖戦記(グレート・ウォー)
2017年
マット・リーヴス◯ シリーズ3作、高いレヴェルを落とさないのは立派。順番からいうとこの次が旧シリーズの第一作につながるが、リメイクするのか。チラシにはこれで終わりともなんとも書いてないのだが。 アンディ・サーキス、ウディ・ハレルソン
ザ・ロード
2009年
ジョン・ヒルコート◎ 米国映画には珍しく、苛酷でシビアすぎて娯楽性ほぼゼロ映画。父と息子が懸命に南へ突き進む根拠が「暖かいから」だけ。映画の中の目的性が淡いと観ていて落ち着かない。荒廃した世界のヴィジュアルはよくできていて、文句をつけにくいが。登場するイーライEli(またはエリ)は聖書にあるが、神を意味するみたいだ。 コーマック・マッカーシー原作 生物の死滅したあとの地球 ヴィゴ・モーテンセン
懺悔
1984年
テンギス・アブラゼ◯ 熾烈で過酷で悲惨な映画だと思いこんでいた。印象としては楽しく明るい。音楽・絵画・美形女性をふんだんに盛り込み、趣味を通してる気がする。独裁者はそんなに悪いやつに見えない。時流に押し流されて抑圧してたわけでもない。楽しんで好き勝手やっていたんだ。全登場人物、キャラが立って実にユニークな映画だった。 グルジア映画 気に入らない者たちをとことん粛清する独裁者
3時10分、決断のとき
2007年
ジェームズ・マンゴールド◯ 西部劇はいまだ死なず。現代的なセンスでリアルなアクション演出を持ち込めば立派に再生する。つっこみどころはけっこう多いんだけど、この映画は好きです。グレッチェン・モル、魅力的な女優なのでもっと見る機会がほしいのだけど。 クリスチャン・ベール、ラッセル・クロウ
山椒大夫
1954年
溝口健二◯ 端正に作られた大映の傑作の一つだが、あまりに過酷な話ゆえ、観るのをためらう。山椒大夫の息子が前半で姿を消したのが気になった。あとで説明を読んで、重要な場面で大きな役割を果たしてたことを知った。知らない俳優だし、個性が乏しい。外国人ならなおさら顔がつながらないと思う。[YouTube] 森鴎外原作 人買いにさらわれた母子3人 田中絹代
サンドイッチの年
1988年
ピエール・ブートロン◎ かなり忘れている。犬の画像をコピーするのが目的で観始めたんだけど、名作は何度観ても素晴らしく、最初に戻して全部観てしまった。もちろん日本語字幕付きです。監督も俳優も無名で当時はヒットした。今では考えられない。[YouTube] 貧しいユダヤ人少年と裕福なフランス人少年との友情
三度目の殺人
2017年
是枝裕和◯ 初見です。あえて微妙に結末をぼかしたみたいだ。ぼかし方が中途半端でぼかす意味がなかったような。シーン展開の間合いの取り方は、映画館でなら許容範囲内だったろうけど、モニター画面ではしんきくさい。[Netflix] 供述が変転する殺人容疑者を弁護する弁護士 役所宏司、福山雅治、広瀬すず
サンブンノイチ
2014年
品川ヒロシ◯ 果てしなくどんでん返しが転がっていく。ここまで転がすとさすがに穴ぼこが隠せない。が、面白ければ細かいことは気にしない、のサービス精神を評価したい。金貸しの鬼ババァ。池畑慎之介と気づかなかった。あまりにもぴったりはまりすぎ。藤原竜也がボケをかまして(ボケかましだと思うんだが)小杉竜一が突っ込むシーンがくり返されるが、まじめすぎる顔の藤原竜也がボケに見えず、空回りする。藤原竜也にボケは向かない。 銀行強盗の分け前をめぐって 田中聖、中島美嘉、窪塚洋介
THE ICEMAN 氷の処刑人
2012年
アリエル・ヴロメン◯ 出来は悪くないが、主演のマイケル・シャノンは見て楽しい面構えではない。他のキャストにも華がない。そんなことは観る前からわかってることですが。 実在の殺し屋 ウィノナ・ライダー
幸せな男、ペア
2018年
ビレ・アウグスト◯ デンマークのインフラ建設に貢献した男の偉人伝。のつもりで観てたら、とんでもなく自分勝手な男。原作者の自伝小説の映画化でした。愚かな人の話だった。[Netflix]
しあわせの絵の具 愛を描く人 モード・ルイス
2016年
アシュリング・ウォルシュ◯ サリー・ホーキンスはこちらでアカデミー主演女優賞をとってもよかった、と思ってたら、2016年の映画だった。エンドに本人映像がある。本編の内容と事実とのギャップが感じとれて面白い。 素朴派の女性画家の半生 イーサン・ホーク
GF*BF
2012年
ヤン・ヤーチェ◯ 普通の会話に日本語がぽんぽん出るのは台湾映画ならでは。『港町ブルース』も歌われる(中国語だけど)。しかしこの映画、台湾人の精神風土を理解してないとわかりづらくないか。グイ・ルンメイが冒頭とエンドのシーンに現われなかったことの意味を理解するのに手間取ったのは、いくらなんでもどうかしてる。 女一人と男二人の長年にわたる愛と友情の物語
シークレット・アイズ
2015年
ビリー・レイ◯ エンドがリメイク元とちょっと違っている。シナリオが巧みで、オリジナルに負けてない。ただ、13年の歳月の差が顔に出てないのは気になる。観ててまごつくし。 キウェテル・イジョフォー、ジュリア・ロバーツ
シークレット・ヴォイス
2018年
カルロス・ベルムト◯ トリッキーな撮影に惑わされ、ラスト近くのシーンを2回観直した。ずしっと大きな手応えを感じる話で、深く心に残った。前作の『マジカル・ガール』もぜひ観たい。「家に電話してみて」と言って携帯電話を渡すシーンは、さっぱり意味がわからない。[Netflix] 記憶喪失になった国民的歌手リラ・カッセン
シークレット・オブ・モンスター
2015年
ブラディ・コーベット△ 各役者の演技には文句をつけがたいが、肝心の少年の言動がよくわからん。思うに、この少年はごく普通の子供だ。そう思ったほうがすっきりする。こんなので怪物になってたら世の中怪物だらけになる。 美しき少年がやがて…
シークレット・チルドレン
2014年
中島央△ 生気が乏しく、鈍い演出。固定で撮影すべきシーンまでだらだらと手持ちカメラで撮ると間が抜けて見える。クローンに生殖能力がないという設定は、肝心のストーリーをほぼ無意味なものにしてしまっている。 抹殺政策に抵抗するクローン人間たち
シークレット・チルドレン 禁じられた力
2015年
アンドリュー・ドロス・パレルモ△ いちいち挙げないが、筋の通らない描写や展開の連続で驚いた。後半、妹が文明社会と接触してから面白くなった。もうちょっと見どころがほしい気が…。[Netflix] 空間移動能力を持った兄と妹 ティモシー・シャラメ
シーサイドモーテル
2010年
守屋健太郎◯ 化け物みたいな役者ばかりの中、成海璃子がしっくりなじんでいる。モーテルの四つの部屋の客たちのドラマが一つの話にまとまるのかと思いきや、そうはならない。エンドクレジットの後にも何か仕掛けてほしかった。でも、騙しの映画って基本的に好き。 山中のうらぶれたモーテルの客たち 生田斗真/麻生久美子
SHE SAID シー・セッド その名を暴け
2022年
マリア・シュラーダー◯ 女性たちの闘いの物語。被害女性たちの葛藤が一瞬にしてほどけ、怒涛の如くに事態が動くのが快感。キャリー・マリガンはゾーイ・カザンよりずっと年上に見えるが、実際の年齢は逆。マリガンは老け顔すぎる。 ハーヴェイ・ワインスタインのセクハラを告発する
ジェイソン・ボーン
ポール・グリーングラス◯ シリーズ原作(ラドラム『暗殺者』)からは遠く離れて。満足はしたけど、当然ながら第2作を超えてない。マット・デイモンもジュリア・スタイルズもずいぶんお年を召したという感じ。これで最終なんだよね。え?まだ出るの? CIAが生み出した秘密兵器が自らの出自を調べる アリシア・ヴィキャンデル
SHAME シェイム
2011年
スティーヴ・マックィーン△ 期待しないでぼんやり観てたせいか、キャリー・マリガンの登場に気づかず。『わたしを離さないで』とのイメージ落差が大きい。マイケル・ファスベンダーは男前がよすぎる。エロに飢えた男という柄ではない。 性的衝動の依存症の男とその妹
ジェネラル・ルージュの凱旋
2009年
中村義洋◯ 美人顔なのに三枚目コメディ顔ができる竹内結子は貴重なキャラだ。トリアージ(患者選別)という残酷な現場を見せたのは意味ある。助からない患者を見殺しにせざるをえないときがある。緊迫感のあるシーンだった。[DVD] 海堂尊原作 医師と製薬メーカーとの癒着の疑惑 堺雅人 阿部寛
ジェラルドのゲーム
2017年
マイク・フラナガン◯ スティーヴン・キングが原作だった。ひょっとして『ミスト』を超えるバッドエンドかもと、緊張した。妄想炸裂部分が面白い。特にブルース・グリーンウッドのねちっこいいやらしさはなんとも言いようがない。[Netflix] 倒錯プレーの最中に思わぬ事故 カーラ・グギノ
シェルター
2010年
モンス・モーリンド、ビヨルン・ステイン◯ サスペンスホラーなのに、終盤までこれといった事件が起こらないという異例の地味さ。信仰をなくした者の魂を奪う魔物という設定を飲み込んだのも終盤になってから。怖くないホラーだが、あとになってからじわじわ奇妙な味が染み出してくる。 ジュリアン・ムーア、ジョナサン・リス・マイヤーズ
ジェロニモ
1994年
ウォルター・ヒル◎ 配信リストにあったので大急ぎで観る。マット・デイモンが重要な役どころで出てるのを忘れていた。というより主演のウェス・ステュウディだけしか覚えていなかった。米国政府の非道を静かに訴える名作。[Netflix] 追い詰められ、降伏したアパッチのリーダー
ジオラマボーイ・パノラマガール
2020年
瀬田なつき◯ 前日観た『おらおらでひとりいぐも』とは対照的。若さがはじけ、気分は高揚する。山田杏奈は動きのリズムが面白い。他の映像と写真を見て、この映画できっちり役を作り込んでたのがわかった。 岡崎京子原作の青春映画 鈴木仁、滝澤エリカ、成海璃子
シカゴ7裁判
2020年
アーロン・ソーキン◯ 実話ものを好かないのは、映画では潤色が加わるので、すべての描写を信用できないから。しかしこの映画の場合、インパクトあるラストシーンが丸ごと創作てことはなさそう。肌が粟立つほどに興奮した。[Netflix] 暴動を煽動したとして訴追された7人
4月の涙
2009年
アク・ロウヒミエス◯ 背景知識がない歴史物は気になる。フィンランドの近代史なんて知ってるわけない。ヒロインは屈強な女兵士というよりファッションモデルみたいな美しい顔立ちとプロポーションなのに、ひどい汚れ役。いくら汚しても美しいお人は内側から輝きますね。 フィンランド内戦を背景に
死刑にいたる病
2022年
白石和彌◯ 阿部サダヲは演技賞級のキャラ。好感度の高い極悪人。ひそかに自分の妄想ゲームを楽しんでる。他人を自分の妄想世界の駒として使って遊ぶやつは地元長岡京にもいる。この手の輩を検出するセンサー機器があればいいんだけど。 一人だけは自分の被害者じゃないと言いだす死刑囚のシリアルキラー 岡田健史
シシリアン・ゴースト・ストーリー
2017年
ファビオ・グラッサドニア、アントニオ・ピアッツァ△ わかりやすすぎる映画はもってのほかだが、これは微妙にわかりづらい。少女の幻想と現実が同じトーンで入り混じる。観るほうは混乱する。 少年誘拐事件の真相を突き止めようとする少女
SISU シス 不死身の男
2023年
ヤルマリ・ヘランダー◯ こういう乱暴な映画を時に観たくなる。まるでナチスドイツの兵士ならいくら殺しても人権なし、みたいな。あからさまにでたらめなシーンが複数ある。せっかくのノリノリ気分が台なし。 ロシア兵を殺しまくるフィンランドの老人
7月22日
2018年
ポール・グリーングラス◯ 同年の『ウトヤ島、7月22日』とは別の映画です。孤独で単細胞の右翼がインテリ層を憎悪する典型的な犯罪だ。子供たちを襲ったのは、親たちに深刻な打撃を与えるためだと容疑者は言っている。醜悪で胸糞悪い。容疑者を演じた俳優は強烈な存在感を見せつけた。[Netflix] ノルウェー、ウトヤ島の乱射事件
シック・オブ・マイセルフ
2022年
クリストファー・ボルグリX 北欧映画にハズレなしがついにくつがえった。こんなやつが10メートル以内におったら大変な迷惑と思う。被害の及ばない場所から遠巻きに眺めるのみ。でも、こんなの眺めてて、何が面白いのかな。 注目を集めるために大量の違法薬物を摂取する女
6アンダーグラウンド
2019年
マイケル・ベイ◯ 監督の名前で不安があったが、まずまず。『オールド・ガード』に似た設定のハードなアクションで、ストーリーは異なる。マイケル君には過大な要求で申し訳ないが、派手なドンパチ以外で酔わせてくれる何かがほしいよね。[Netflix] 正義を執行する地下組織の軍隊 ライアン・レイノルズ、メラニー・ロラン
シティ・オブ・エンジェル
1998年
ブラッド・シルバーリング◯リメイク元の『ベルリン・天使の詩』よりも強い印象を残している。どうしてなのか。やはりメグ・ライアンかな。ニコラス・ケイジはどうにも天使というより死神だが。事故のシーンは不自然。エンドも演出がゆるんでいる。[Netflix] 女医を恋した天使 デニス・フランツ
シニアイヤー
2022年
アレックス・ハードキャッスル△ 17歳で事故って20年昏睡。37になって青春の続きをやろうとする。レベル・ウィルソン(女優)主演の前作『ロマンティックじゃない?』ほどの斬新さはないが、前作同様、出演者全員での派手なダンスパフォーマンスで締めくくるのが爽快だ。[Netflix] 37歳の高校生が全力で青春 アリシア・シルバーストーン
ジヌよさらば かむろば村へ
2015年
松尾スズキ△ 原作はいがらしみきおだが、松田龍平を当て書きしたようなキャラ。毎度のスローテンポの間のもたせかたはじれったく感じることがある。松たか子はミスキャスト。色気なさすぎ。映画世界は気持ちよく没入できた。こういう映画はなんぼでも観てられる。 お金アレルギーとなった男 阿部サダヲ、二階堂ふみ
SHIFT 恋よりも強いミカタ
2013年
シージ・レデスマ◯ 劇場で観るべき映画を観逃してレンタルしてしまう。パソコンで見てると、スクリーンに次々ウィンドウが半透明で重なってくるのが妙な感じです。思わずスクロールしたくなる。一風変わったラブストーリーで、言葉では表現しきれないものがある。必見です。[DVD] マニラのコールセンターに勤める若い男女の恋模様
シベールの日曜日
1962年
セルジュ・ブールギニョン◎ ウン十年ぶりのスクリーン再会で、記憶が完全に抜けてる。パトリシア・ゴッジの奇跡的な出現がこの映画を記念碑的な作品にしている。彼女は以降、ほとんど映画に出ず、日本公開はこれ1本。ピエール(ハーディー・クリューガー)はいかに純粋であろうとも、はたから見れば変質者でしかないでしょう。シベールがギリシャ神話のキュベレだということを今回観て知った。大地の女神ですね。 青年と少女の日曜日ごとの逢瀬
灼熱の魂
2010年
ドゥニ・ヴィルヌーヴ☆ 最後のピースがぴたりとはまってエンド。ミステリーだったんだ。プールサイドで母に何が起こったのかはラストで判明する。この大胆なストーリーは舞台劇の映画化だ。同一俳優が何十年もの人生を演じるが、映画の場合、経年変化の乏しいのが気になる。 双生児の姉弟に母から遺されたメッセージ
ジャック・リーチャー NEVER GO BACK
2016年
エドワード・ズウィック◯ ジェイソン・ボーンや当シリーズは生身のアクションが楽しい。CG頼りの不自然なアクションには乗れません。初お目見えのコビー・スマルダース。いい面構えです。 トム・クルーズ、ダニカ・ヤロシュ
シャッターアイランド
2009年
マーティン・スコセッシ◯ 主人公のラストの不可解な言葉。劇場出てから「そういう意味だったのか!」と気づき、愕然となった。これは『○○○○○』の○○○○○○が○○してるやつと同じではないか。毎度のことですけど、ミシェル・ウィリアムズ、きれいですね。 レオナルド・ディカプリオ、マックス・フォン・シドー
ジャドヴィル包囲戦 6日間の戦い
2016年
リッチー・スマイス◯ ちっちゃなポイントとしての戦闘地と地球規模での国際的な思惑の衝突。そこんところのギャップから150人のアイルランド兵が踏みつぷされそうになる。史実とのことだが、この戦闘で戦死者ゼロっていうの、どういうことかな。戦闘シーンは派手に盛りすぎてるだろ。[Netflix] 1961年のコンゴで行われた国連平和維持活動におけるアイルランド陸軍部隊 マーク・ストロング
シャドウプレイ【完全版】
2018年
ロウ・イエ△ 全編手持ちカメラ(ドローン撮影もあり)。スクリーン内は常に揺れ動くという苦手パターン。おまけに時制は頻繁に前後する。力作なのに入りにくくて、話をつかむのに時間かかった。観たあとでじわじわ沁みてくる。 中国不動産バブルの渦中で殺人事件
シャドー・ダンサー
2012年
ジェームズ・マーシュ△ 陰で踊っていたのは意外な人物だった。おとしまえをつけたヒロイン。だが苦い結末。話はわかるものの、納得しにくい部分も残る。説明しない映画なので、ラストは???のままだった人も多かったのではないか。 英国諜報部に抱え込まれた通報者の女 クライヴ・オーウェン、アンドレア・ライズブロー
シャドー・ディール 武器ビジネスの闇
2016年
ヨハン・グリモンプレ◯ この百年間の戦争を軍事産業とのからみでまとめきった秀作ドキュメンタリ。ただ、軍事産業が紛争と戦争を作り出しているという単純化の方向は容認しづらい。現実の戦争は複雑な国際関係がからみあって生まれている。
13時間 ベンガジの秘密の兵士
2016年
マイケル・ベイ◯ 傾向の似た『モガディシュ 脱出までの14日間』とは比較にならないほどの出来栄え。というか、あちらは意図的なゆるさだったのに対し、リアルな演出に徹していて見応えある(史実そのままという意味ではなく)。[Netflix] リビアのCIA秘密基地で大使館員たちが籠城 ジョン・クラシンスキー
十三人の刺客
1963年
工藤栄一☆ 何度も観ていてストーリーが頭に入ってるのにこのサスペンス感。普通は正義の側に立って緊張するものだが、この映画の場合、幾重にも張り巡らされた罠に陥った松平斉昭側に立って恐怖感に震え上がってしまう。[YouTube] 片岡千恵蔵/嵐寛寿郎/西村晃/内田良平/里見浩太郎
十三人の刺客
2010年
三池崇史◎ 時代が違うのでリメイク元とどっちが優れているかはなんとも言えず。しかし旧作はインパクトがあった。個人的には『七人の侍』よりも好きだ。エキストラで顔出ししてる福本清三。どうしても出たかったんだろうな。出られたら死んでもいい、ぐらいの気持ちで頼み込む姿が目に浮かぶようだ。 残忍な明石藩主を暗殺する 役所広司/山田孝之/伊勢谷友介
終戦のエンペラー
2012年
ピーター・ウェバー◯ 意欲的な企画だが、映画的な面白みは薄かった。こんな映画を米国人は観ない(実際、大コケ)。制作者は何を売りにして作ったのだろう。終戦直前に陸軍が皇居を襲撃し、天皇を暗殺しようとするエピソードには引いてしまった。 戦争責任者の調査を命じるマッカーサー
シューテム・アップ
2007年
マイケル・デイヴィス◯ 悪い連中をとことん始末しまくる単純明快な映画です。成り行きでどこの誰のだかわからない赤ん坊を拾い、撃ちまくって殺しまくって逃げまくるというのがいいです。少なくとも自分の家族を守るためだけに大量殺人を犯す映画よりはずっと健全で。[DVD] 子連れガンマン クライヴ・オーウェン
修道士は沈黙する
2016年
ロベルト・アンドー◯ 主役の修道士に魅力がなくて乗りきれず。ラスト近く、黒犬のロルフくんが意外な活躍をしてくれて、ちょっと気が晴れる。 富豪の自殺をめぐるサスペンス トニ・セルヴィッロ
12年の長い夜
2018年
アルバロ・ブレッヒナー◯ ホセ・ムヒカのみにスポットを当てた映画ではなかった。厳しい映画ながら、独特なユーモア感覚もあって、高評価。[Netflix] 12年間投獄されたウルグアイの3人の政治囚
重力ピエロ
2009年
森淳一◯ 遺伝子情報そのものがほとんど暗号のキーとして生かされなかったのは残念。周到に伏線を張られてたが、案の定ミスディレクションに釣られてしまった。鈴木京香は独身時代の若いときもそのまんまの顔で現われるものだから、のけぞった。渡部篤郎は『愛のむきだし』に続く怪演。この映画の評価の半分近くは彼だ。 伊坂幸太郎原作 岡田将生
シュガーマン 奇跡に愛された男
2012年
マリク・ベンジェルール◯ ほんとかいなと思うほどの感動的なストーリー。平常心を貫くこのミュージシャンが素晴らしいが、その次女もまた。[TV] まったく売れずに埋もれていたミュージシャンが脚光を浴びる
受験のシンデレラ
2008年
和田秀樹◯ 有村架純の『ビリギャル』系のストーリーながら、まるでテイストが異なる。エンドの分かった話なのに、ラストで感動。いやみったらしいキャラの豊原功補がそのキャラのまま、落ちこぼれの中退少女を懸命になって東大合格に駆りたてる。そのうちエロ男の本性が出るんじゃないかとひやひやした。[YouTube] 寺島咲、田中実、浅田美代子
守護天使
2009年
佐藤祐市◯ 『キサラギ』とちがってどんでん返しはない。笑いもないとは思いもよらず。カンニング竹山の不器用さは笑えず、あまりの間抜けぶりに腹が立ってくる。寺島しのぶの暴力妻は強烈で、主演の竹山が食われている。なぜ寺島に犯人を襲撃させなかったのだろう。 女高生を守る中年男
ジュピターズ・ムーン
2017年
コルネル・ムンドルッツォ◯ どうやって撮影したのかがわからないようなシーンが頻発する。気がついたら長回し撮影。カットを割らずに浮遊するシーン。CGや合成ではなさそう。映像や音響のセンスは抜群で、快適だ。ハンガリー映画なんだ。いつのまにか世界の映像の最先端をいっている。 宙を舞う青年
ジュリー&ジュリア
2009年
ノーラ・エフロン◯ 楽しげにジュリア・チャイルドを演じるメリル・ストリープはそれなりにいいんだけど、四十歳の女性に見えないし、見せようという努力もしてない。新婚の夫といちゃつきまくるシーンには鳥肌が立った。世界が違いすぎて、僕も料理をという気にはなれない。でも、料理を並べて「ボナペチィ!(めしあがれ)」と一度言ってみたい。 料理研究家と、彼女の料理を追体験する若い女性 エイミー・アダムス
春琴物語
1954年
伊藤大輔◯ 琴と三味線演奏の完成度が高く、聴きごたえがある。一部本人演奏があるのかな、というぐらいで、判別できない。春琴は絶世の美女という設定らしいが、京マチ子なのです。 谷崎潤一郎『春琴抄』映画化
上意討ち 拝領妻始末
1967年
小林正樹◎ 観ておくべき傑作時代劇の一つと思いながら、重たいドラマが2時間あるのに少々ひるんだ。が、一貫してシリアスなのに、三船敏郎の軽みが場内に妙な笑いをとる。小林正樹の重厚な時代劇はまだ未見のものが残ってます。どこかでやるまでひたすら待つ。 殿の無理難題にブチ切れる家臣 司葉子、加藤剛、仲代達矢、市原悦子
少女ムシェット
1967年
ロベール・ブレッソン☆ ラストシーンはかつて、多数の映画ファンを困惑させたことだろう。冷淡としか言いようがない。演じるナディーヌ・コルティエはムシェットの不幸な人生をまるごと体現している。映画史に残る傑作の中に自分がいるということは、当然気づいてない。このあとどういう人生を歩んだのかが気になってきた。[Net] 薄幸の少女
少年H
2013年
降旗康男◯ 『赤い月』を観たときはこの監督の寿命が尽きたと思ったものだった。完全復活している。役者は、伊藤蘭はまあ普通レヴェルだけど他の役者がよかった。特に主演の吉岡竜輝。戦後に矛盾を抱えきれなくなって爆発する。表情はほとんど動いてないのにインパクトを持って迫ってくる。 妹尾河童の自伝小説の映画化 水谷豊、花田優里音、小栗旬
少年の君
2019年
デレク・ツァン◯ チンピラと優等生の女子高校生との恋。チョウ・ドンユイ、いいね!(メルマガ「極楽news」で紹介したので大部分を省略した) 過酷な中国の受験戦争
少年メリケンサック
2009年
宮藤官九郎◯ 同じ日に観た『罪とか罰とか』と比較してしまう。同じ演劇畑の演出家だが、予算規模が違うし、宮崎あおいは成海璃子とは格が違う。波岡一喜と木村祐一。25年の経過を見事に表す絶妙のキャスティングだった。 中年パンクバンドの復活
ジョーカー
2019年
トッド・フィリップス◯ ハリウッドメジャーの大作とは信じられないほど陰鬱な映画。娯楽色が乏しすぎる。作品的な水準が高いことは、認めざるをえない。 ホアキン・フェニックス、ロバート・デ・ニーロ
女工哀歌
2005年
ミカ・X・ペレド◯ 中国へ行く機会はなかなかないが、生の姿を見たいと思っている。観ていてあれこれ思う。あまりにも巨大な独裁国家。国民はそれがもたらす大きな弊害を無視しようとしている。いろんな問題が凝縮されている。ビデオテープを没収されたり、当局から相当な妨害にあいながら、よくぞここまで内奥に迫れたと思う。 米国のスタッフが中国のジーンズ工場をドキュメント じょこうえれじー
ジョジョ・ラビット
2019年
タイカ・ワイティティ◯ 愛すべき映画ながら、大傑作ならず。アカデミー賞ジョ・ジョ対決などと勝手に決めていたが、やや弱い。スカーレット・ヨハンソンは傑作『ゴーストワールド』以外にコメディ映画に出てないが、いわゆる「抜いた」芝居のできる彼女はコメディ向き。逆の熱演タイプは好かん。 ヒトラー・ユーゲント少年のイマジナリー・フレンドはヒトラー サム・ロックウェル
女中ッ子
1955年
田坂具隆◎ 観たのは何十年も前なので、ほぼ記憶ゼロ。なのに強いインパクトを残している。観直して傑作だという確信を得た。日活制作のこの種の映画は質が高い(『にあんちゃん』『サムライの子』)。報われないエンディンクが切なすぎる。映画にも原作本にも強い愛着を感じる。 由起しげ子原作 左幸子、佐野周二、轟夕起子
書道ガールズ!! わたしたちの甲子園
2010年
猪俣隆一◯ 期待はしてたけど、結果は上回った。感動で盛り上がりまくってしまった。『武士道シックスティーン』もだけど、成海璃子の女優としての成長と充実ぶりは目を瞠るものがある。書の作品をすべて、ごまかしようもなく自分で書いてるのもおそるべきものがあるが、『武士道〜』ともども彼女の本物指向が鮮明でたのもしい。 山下リオ、高畑充希、小島藤子、桜庭ななみ、金子ノブアキ
ジョニー・ハンサム
1989年
ウォルター・ヒル◎ この映画、高く評価してるのは世界中で僕だけかも、というぐらい評価が低い。なぜなんだろう。演出やアクションに荒さはあるが、これは意図した荒さ。悪党どものキャラの立ち方は見事だし、エリザベス・マクガヴァンはあまりにも可憐で卒倒しそう(特に黒縁メガネの顔!)。30年以上前の映画だった。みんなじいさんばあさんになるのもやむなし(僕もだけど)。ラストシーンはやはり感動する。傑作だ。[YouTube]
女優
1947年
衣笠貞之助◯ 松井須磨子は にわかスター女優の思い上がり、わがまま勝手気ままに見える。映画そのものは力がみなぎり、悪くない。松井須磨子の歌唱録音がネットにいくつかあったので聴いてみた。いくら昔のといってもひどすぎ。僕のほうがまし。 島村抱月と松井須磨子の恋  山田五十鈴
ジョン・ウィック
2015年
チャド・スタエルスキ◯ シリーズ3作目までまとめて観てしまった。あと2本あるらしい。面白く観れたが、ちょっと引っかかる。実在する都会を舞台にして架空の社会を描いている。設定が難しくなるが、うまく乗っかってない印象。シリーズが進むごとに乖離が大きくなる。[Netflix] 伝説の殺し屋 キアヌ・リーヴス
白ゆき姫殺人事件
2014年
中村義洋◯ 地味でイケてない女が露骨にそのまんますぎるが、井上真央は実直にそのまんまキャラを演じている。この映画、女たちの妄想のぶつかりあいのドラマに見えた。原作(湊かなえ)では女たちの物語がどんなふうに描かれてるのか。読んでみたくなった。妄想は心の内側に隠れ、本当の姿はなかなか見えないが、ふとしたことからワッ!と表面化する。人は見かけではなかなか判断できない。 美人OL殺人事件 綾野剛、奈々緒、金子ノブアキ、蓮佛美沙子
死霊の罠
1988年
池田敏春◎ ユーチューブから抹消されないうちに観ておきたかったが、かつて衝撃を受けた映画を観直せばインパクトは確実にその半分以下になるので迷った。冷静に鑑賞すればB級低予算のあらが見える。が、作り手の気迫は半端じゃない。なにより、この頃の小野みゆきは特別の存在だった。[YouTube] 桂木文/本間優二
シルバートン・シージ
2022年
マンドラカイセ・W・デューベ◯ 現実にあった事件をもとにと書いてある。が、おそらく事実と合致する部分は毛先ほどもないと感じる。だけど、ぐいぐい引き込まれていく強度がある。国の秩序を守るためには、現職大臣の娘をも射殺してしまえる官憲の冷酷さが突き刺さってくる。[Netflix] 南アフリカでアパルトヘイトと戦う若者3人が銀行に立てこもる
白い沈黙
2014年
アトム・エゴヤン◎ ムカツクというより胸糞悪い悪党。ケヴィン・デュランドという男優はこれ一作で強烈に残った。わりあい早くに犯罪の仕組みはばらされるので、何を書いてもネタバレにはならないでしょう。新手の犯罪です。子供を誘拐し、被害者を盗撮する。仕掛けていって精神を動揺させ、それを見て楽しむという愉快犯。子供は次の誘拐の時にエサとして利用する。映画が終わってもまだ胸糞悪い。 子供を誘拐する組織 ライアン・レイノルズ、ロザリオ­・ドーソン
白と黒
1964年
堀川弘通◯ 粘り強いシナリオで、最後まで結末を見通せず。浜村純や西村晃など、脇の役者もドラマに厚みを加えている。松本清張も出てるけど、これは原作なしのオリジナル脚本。 弁護士の妻の殺害事件 小林桂樹
新感染 ファイナル・エクスプレス
2016年
ヨン・サンホ◎ 韓国映画なので覚悟してたつもりだけど、あまりの熾烈なストーリーに押されまくり。観るべき映画です。[Netflix] 高速鉄道の車内で起きた感染爆発
新感染半島 ファイナル・ステージ
2020年
ヨン・サンホ◯ スペイン語吹替で日本語なし。でもほぼ無問題。ゾンビたちを徹頭徹尾モノ扱いする割り切りように感心する。しかしあんな状況では飛沫感染しまくるでしょうに。観たあとになって、レースクィーンみたいに飛ばしまくる子が『犬どろぼう完全計画』の女の子(イ・レ)だと知った。日本人的な美少女だ。[YouTube] 朝鮮半島が封鎖された4年後 カン・ドンウォン
仁義なき戦い
1973年
深作欣二◯ 影の主役は金子信雄。幹部たちを欺いて殺し合わせる。トップの座を守るためとはいえ、幹部クラスがゼロになって組が弱体化してしまうという愚かさ。スター俳優の大半が死んでしまったので、続編以降では彼らが別の役で再登場するという、けったいなことになった。このシリーズはできたら5作全部、続けて観たい。 広島のヤクザ戦争 菅原文太、松方弘樹、梅宮辰夫
仁義なき戦い 広島死闘篇
1973年
深作欣二◯ ハングル字幕の投稿を見つけ、シリーズを通しで観た(第1作はすでに書いた)。この暴力描写は韓国でも人気あるだろう。だが力対力ではなく、頭対頭の戦いだ。臆病でずる賢いやつほど生き残る。[YouTube] 広島のヤクザ戦争第2作 梶芽衣子、北大路欣也
仁義なき戦い 代理戦争
1973年
深作欣二◎ シリーズの中でこの第3作が頂点だと思う。登場人物の数は膨大だが、特に小林旭が光る。[YouTube] 第3作 金子信雄、渡瀬恒彦
仁義なき戦い 頂上作戦
1974年
深作欣二◯ この複雑な人間関係をすんなり把握できる人はおらんのではないか。腹黒くて「政治」のできるものが勝つ世界。仁義のない世界だ。[YouTube] 第4作
仁義なき戦い 完結編
1974年
深作欣二◯ 第2作で死んだ北大路欣也がリサイクルで別人物だが、主演に近い役。さすがにこれは違和感あった。小林旭はこれ一本で助演男優賞の値打ちがある。[YouTube] 第5作 菅原文太、野川由美子
真空地帯
1952年
山本薩夫◎ 『近松物語』に続いて同じ日に傑作が2本。人間性を削ぎ落としていく軍隊社会を描いたものは少なくないが、その中でもこれは秀作。ほぼ群像劇で、細部の描写が雑然としながらも細やかなのが光る。[YouTube] 木村功/下元勉/加藤嘉/岡田英次/沼田曜一/西村晃
SING シング
2016年
ガース・ジェニングス◯ ウェルメイドなアニメ。いい意味でも悪い意味でも。イルミネーションはもっと冒険してほしい。ピクサーのようになってはダメだ。[Netflix] 倒産寸前の劇場オーナーが起死回生の企画を
シング・ストリート 未来へのうた
2016年
ジョン・カーニー◯ こんな極端なポジティヴ人間、日本にいないだろ。アイルランドにはいるんだろうか。15歳でここまでのレヴェルは無理とか、ツッコミは入れない。映画だから面白ければ少々の嘘はかまわない。 年上女性をゲットするためロックバンドに突っ走る高校生
シン・ゴジラ
2016年
樋口真嗣、庵野秀明◯ ツッコミどころは満載だが、全体としては大満足。原典にとらわれず、オリジナルなゴジラ物語を作ったことを評価したい。映画の内容とは無関係ながら、平泉成がふともらした「王道」という言葉に感心。生まれて初めてこの言葉の正しい用法を聞いた。 長谷川博己、竹野内豊、石原さとみ
ジンジャーの朝 さよなら、わたしが愛した世界
2012年
サリー・ポッター◯ エル・ファニングは十代にしてすでに名優の面構えを有している。観てる間、自分の人生についてなど、考えさせられることが多かった。ジンジャーの父親は世間的には許しがたいことをしたことになってるが、彼を悪く思う気にはなれない。どの登場人物も自分の考え方に基づいて行動してるだけ。この映画の中に悪い人間はいない。 核戦争の危機に揺れる青春 アレッサンドロ・ニヴォラ
新書・忍びの者
1966年
池広一夫◯ 各キャラクターが鮮明に浮かび上がる。戦国の世の無情な争いで命を落としていく者たち。質の高いものに当たると、雷蔵をではなく、雷蔵映画をもうちょっと観たい。来年もやってくれるかな。井上昭文や伊達三郎というアクの強い俳優が出てるんだけど、顔のわりに地味すぎる名前がいつまでたっても覚えられない。 市川雷蔵 安田道代 伊藤雄之助
心中天使
2011年
一尾直樹◯ 予測不能な転調に足元すくわれてしまう。ぶっ飛びな決着のつけ方に発狂笑いするし。惜しいのは、前半のつかみが悪くてなかなか入り込めないこと。「心中」は「しんちゅう」でした。心中物ではないのでした。ネタばれ部分をサイトの「突然!ネタばれしても委員会」に書きました。 尾野真千子、菊里ひかり、國村隼
シンプル・フェイバー
2018年
ポール・フェイグ△ 二転三転転がっていくのが楽しいサスペンス。ひりつくようなスリラー色がほしかったけど、スリラーはアナ・ケンドリックの柄ではなかった。この人、わざとイケてないキャラをやってるのか。それとも地のままなのか。ヘンリー・ゴールディングは『モンスーン』での好青年より、こっちのうさんくさい男のほうが似合ってる。[Netflix] ブレイク・ライヴリー
新聞記者
2019年
藤井道人◎ シム・ウンギョンは初めて見る。田中哲司はおぞましいほどの悪辣キャラを、まるで地のままのように演じている。この二人に圧倒される。 官邸の疑惑を追う 松坂桃李、本田翼
新聞記者
2022年
藤井道人◯ 希望が感じられるラストだが、現実はこの時点よりさらに悪化している。長いドラマの中、小野花梨のエピソードに最も心惹かれる。田中哲司の悪党ぶりは今さらだけど、ユースケ・サンタマリアにはメゲた。ほんっっっとに不愉快になってくる。悪党は正論を述べる。国民は基本的に変化を望まない。野党はそれ、わかってるのか。[Netflix] 官邸が関与する犯罪を追及する 米倉涼子、綾野剛
人類資金
2013年
阪本順治◯ 『エリジウム』同様、富めるものによる貧しきものたちへの支配打破というテーマだが、あっちのストーリーがいかに雑だったかがよくわかる。ただしこのテーマは深入りすればするほど難しい問題が立ち上がるし、解決困難なことがあらわになる。それでもこのテーマに挑んだことは評価できる。森山未來、絶品。 M資金を騙る詐欺師が国際的な計画に巻き込まれる 佐藤浩市
シン・レッド・ライン
1998年
テレンス・マリック◎ 何も考えず、解釈しないで受け入れました。考えても本当の狙いはわからない。二度目ですが、今回は、ジョン・キューザックと、自分の名誉のために兵士を使い捨てにするニック・ノルティが対峙するシーンが強烈に残った。[DVD] 南方の島で日本軍と米軍の死闘 ジム・カヴィーゼル、ショーン・ペン
人狼
2018年
キム・ジウン◯ 日本のアニメがオリジナルだが、かなり改変している様子。アニメ版の話は古すぎてすっかり忘れている。『鋼鉄の雨』同様、ここでも南北朝鮮の統一問題が語られる。政治問題をきれいごと抜きできっちり娯楽映画に仕立て上げる韓国映画の姿勢は賞賛に値する。[Netflix] 南北統一に反対するテロ組織対特機隊と公安部 カン・ドンウォン、チョン・ウソン
スウィング・キッズ
2018年
カン・ヒョンチョル◯ 『シング・シング・シング』が頭の中でずっと鳴り続けている。曲とステップで気持ちがゆさぶられる。音楽の力をストレートに押し出し、心地よい。終盤、いくつかの点ですっきりしないものがあり、ぼやけた印象を残したのが惜しい。 北朝鮮捕虜収容所でタップダンスのチームを作る
すーちゃん まいちゃん さわ子さん
2013年
御法川修◯ 人権イヴェントの無料上映。封切は配給がスールキートスというだけでパスした。年齢的に微妙な坂を越えつつある女性三人の苦闘を描いて見応えある。すーちゃん(柴咲コウ)鈍すぎ。こんな鈍い女性って現実にいるかな。思わず染谷がんばれとエールを送りたくなる。 真木よう子、寺島しのぶ、井浦新、染谷将太
スーパー・チューズデー 正義を売った日
2011年
ジョージ・クルーニー◯ 選挙内幕ものだが、地味という予想を覆し、意外にもサスペンス色の強い傑作になっていた。共和党よりましと言われる民主党内の予備選挙だけど、ダーティな策謀に心おどる。毒を制するには毒をという結論もよし。ジョージ・クルーニーはしっかりいやらしい顔も見せて好演。一本の映画で見せきるために単純化してるとは言うものの、米国の選挙戦の内実を分かりやすく見せてくれた点も評価できる。だけど日本の観客は米国の大統領予備選なんて興味ない。劇場がらがらなのはとても残念。 ライアン・ゴズリング、フィリップ・シーモア・ホフマン、マリサ・トメイ、ジェフリー・ライト、エヴァン・レイチェル・ウッド
スープ・オペラ
2010年
瀧本智行◯ 予告篇で「あ、よさそう」と思ったけど、「悪くなかったな」ぐらい。というか、安楽なミニシアター世界にどっぷり浸かりすぎてない? ミニシアター激減でシネコン全盛だから、殻を破らなきゃ。菅原大吉と平泉成はお友だちになりたくないキャラだけど、見てるぶんには楽しい。インスタントしかやったことないのに、鳥がらスープとポタージュを初めて作りました。 阿川佐和子原作 一人暮らし女性の家に男二人が住みつく 坂井真紀、西島隆弘、藤竜也、加賀まりこ
スキャナー 記憶のカケラをよむ男
2016年
金子修介◯ さほど出来のよくなさそうなおっさん二人の凸凹コンビによる探偵物語。ゆるいタッチが好きです。東映はあわよくばシリーズにという欲目が見え見えだが、客の入りが悪すぎる。こういう能力を持つ人間がいたら犯罪は激減するだろうな。女性の乗った自転車サドルをなめまわすかのごとくに撫でまわす野村萬斎。この変態キャラは発展させてほしかった。 物に残った思念を「おさわり」で読み取る男 宮迫博之、杉咲花
救いたい
2014年
神山征二郎△ 「いい話」を描いた映画でも『パートナーズ 盲導犬チエの物語』のように傑作が生まれることがある。が、これは凡庸で通り一遍。だが、藤村志保が現われたとたん、場の空気が一変する。「ほんとに演技か?」と思うほどに登場人物の内部に入り込む。その結果、他の俳優たちのリアルじゃない演技全部が映画から浮いた。こんな奇妙な光景を見れただけでこの映画は価値ある。 東日本大震災の2年後
鈴木家の嘘
2018年
野尻克己◯ 岸本加世子が正統派おばはん女優めざしてまっしぐら。主役はこの映画の場合、木竜麻生だね。キラキラ輝いている。この調子でさらなる成長を。 長男が自殺したことを母親に隠す家族 岸部一徳、原日出子、加瀬亮
スティルウォーター
2021年
トム・マッカーシー◯ ストーリーは想定外の転がり方をする。ただのサスペンス・ミステリーではなかったんだ。マット・デイモンのおっちゃんぶりはあまりにもハマりすぎ。もう50いってる。ジェイソン・ボーンもなかなかうまく年をとった。[Netflix] 娘の無実を証明するため捜査を続ける父親 アビゲイル・ブレスリン
ストーリー・オブ・マイ・ワイフ
2021年
イルディコー・エニェディ◯ 以前の『私の20世紀』『心と体と』と比べても難解さが上がった気がする。これをまたシネコンでやっている。ミスマッチも甚だしい。わからない部分がたくさん残ったが、曖昧度を全編にまぶした演出によるようだ。それでもなぜか好感度は高い。 レストランへ最初に入った女性に結婚を申し込む レア・セドゥー
ストレイ 犬が見た世界
2020年
エリザベス・ロー◯ イスタンブールの街中を、犬たちといっしょになってうろついた、みたいな。『犬は歌わない』もだったけど、犬たちがカメラ(+カメラマン)を意識しないのが不思議だ。焦点深度の浅さから、たいていは1メートル以内で撮影してるのはわかるのに。 殺処分ゼロの国トルコ、路上で生きる犬たち
ストレイ・ドッグ
2018年
カリン・クサマ◯ いきなりすごい顔で、メグ・ライアンかと思った。ニコール・キッドマンは老け・若両面で作りすぎ、17年ではなく30年以上の年齢差になっている。日系の女性監督は珍しいと思うが、ことさらそれを意識させるのではなく、しっかりした力量を感じさせる。このタイトル(野良犬)は日本だけですが、いいタイトル(他国では「破壊者」)になっている。 17年前の捜査ミスを取り返そうとする女性刑事
ストレンジ・アフェア
2019年
ローワン・アターレ◯ 怪しいオカルト系になだれこむのかと思ったら、意外と真っ当なサスペンスに向かう。マーガレット・クアリーの出世作。この人は何を考えてるのかわからないところがあり、そこが魅力でもある。[YouTube] 5年前に死んだ青年の子を孕ったという女性が現われる
砂の城
2017年
フェルナンド・コインブラ◯ すでに観てたのを忘れてまた観てしまう。戦地で米軍が駐屯しながら、戦闘シーンがほぼなしという珍しい映画。イラクの人々も複雑で一枚岩ではない。そうした背景をていねいに描き出す。地味だけど、いい映画。[Netflix] イラクの僻村で給水施設の修理を担う米軍 ニコラス・ホルト
スノーピアサー
2013年
ポン・ジュノ◯ 無理やりな設定や展開がありながらもテンションが高く、楽しめる。エンディングは希望が乏しすぎてぜんぜんハッピーではありません。韓国の映画屋さんはサービス精神が旺盛すぎて、やりすぎる。ポン・ジュノ監督の『グエムル』では親子だったソン・ガンホとコ・アソンが今回も親子で出てること、誰か知ってた? 氷河期が訪れた地球で クリス・エヴァンス、ティルダ・スウィントン
スパイの妻
2020年
黒沢清△ とりたてて期待していたわけではなかった。それでも1箇所ぐらいは「ウ〜ム」とうならせてくれるシーンがあるかと思ったのだが…。 軍部の不正義を告発しようとする貿易商 蒼井優、高橋一生
すばらしき世界
2021年
西川美和△ 映画はストーリーの先が見えないからこそ面白くなりうる。ていねいに伏線を張りすぎで、ほぼ方向が見えてしまう。 出所して堅気になろうとした元ヤクザ 役所広司、仲野太賀
素晴らしき日曜日
1947年
黒澤明◯ 事前の知識なく、初めて観た。終戦直後とはいえ、二人の持ち金が合わせて35円というデート。男のほうは普通のイケメンだが、ヒロインの中北千枝子。最初、この人が主演と認識できなかった。あまりのリアルな貧相に驚く。この映画には、映画館の観客を映画のストーリーに組み込む仕掛けがある。知らずに観たが、このことは広く知られてるのかもしれない。[YouTube] 貧乏カップルのデートの一日 沼崎勳
スプリット
2017年
M・ナイト・シャマラン△ えぐい顔のアップの多い映画で最前列。気色悪いジェイムズ・マガヴォイの顔を押しつけられたくない。ヒロインの回想で意味不明な箇所があって気になる。彼女のおじさんがやたら怪しいが、あれがなんなのか、よくわからない。 24人格の男が3人の娘を監禁する
アニャ・テイラー=ジョイ
スペクトル
2016年
ニック・マチュー◯ ユニークなSFホラーで引き込まれた。米国映画で舞台がモルドヴァ。地元民にアラタレと呼ばれる幽霊が人間を襲う。モルドヴァ軍と米国空軍がそいつと戦争するというめちゃくちゃ変な映画。変だけど映画としては一級品。[Netflix] 人間が作った殺人生物軍団と戦う
すべてが変わった日
2020年
トーマス・ベズーチャ◯ 病めるアメリカの象徴のような悪党一家に家族が奪われる。楽しくなさそうな映画なのでずっと避けてました。いい映画ではあったんですけど、やはりあまり楽しくない。[Netflix] ケヴィン・コスナー、ダイアン・レイン
すべて彼女のために
2008年
フレッド・カヴァイエ△ 上質のサスペンスだが、裁判で勝てなかったから脱獄させて外国へ逃げるという後ろ向きの話では気持ちが高揚しない。汚名を着せられたまま。真犯人は逃げ得。カタルシスがない。 無実の罪で収監された妻を脱走させるべく奔走する ダイアン・クルーガー
スペル
2009年
サム・ライミ◯ ゲロゲロなシーン多発の楽しいホラーです。"Drag Me to Hell" 私を地獄へ連れてって。そんなフザケたタイトルとは裏腹に、善なるヒロインはジプシー老婆に逆恨みの呪いをかけられ、とんでもなくひどい目にあわされる。アリソン・ローマンちゃん、ぐちゃぐちょにされ、ああ面白・・いや、可哀想。 ジャスティン・ロング
スヘルデの戦い
2020年
マシーズ・ヴァン・ヘイニンゲン・ジュニア◯ 第二次世界大戦末期。見応えのある戦闘シーン、ドラマ。主人公は3人だが、映画の流れ的に関与しているのはオランダ人女性一人。英国のパイロットは単なる兵士の一人にすぎない。運命が結びつく一瞬があればさらに高評価だったが。[Netflix] オランダの港湾を奪取するための戦い
スペンサー・コンフィデンシャル
2020年
ピーター・バーグ◯ 大枠では新味に乏しいけど、細部の小ネタが楽しい。エンド対決も、「策がある」と言いながら、ただトレーラーで突っ込むだけ。あとは成り行きまかせのいいかげんさ。こうしたユルさを笑える人向け。アラン・アーキンはすでに亡くなってると思ってた。存命中でした(遺作かと思った)。[Netflix] 警察の不正摘発に挑む元警官 マーク・ウォールバーグ
スマホを落としただけなのに 囚われの殺人鬼
2020年
中田秀夫◯ 成田凌の独壇場で、主役とヒロインが喰われまくっている。井浦新についてのどんでん返し部分は無理筋すぎた。でも緊迫感あるドラマで満足感は大きい。印象としては一作目より上。[Netflix] 連続殺人鬼をあぶり出そうとするサイバー警察 千葉雄大
スラムドッグ$ミリオネア
2008年
ダニー・ボイル◯ オープニングの大人に追われて疾走する子供らをとらえる映像に引き込まれる。そこが作品のピーク。魅力はあるものの、アカデミー協会員たちが何を評価したのかは疑問ある。ポジティヴシンキングを至上とする米国人がウルトラポジティヴな主人公にひれ伏した、とか。 クイズ番組に出場するムンバイのスラムあがりの青年
スリーパーズ
1996年
バリー・レヴィンソン△ 面白くて引き込まれた。実は『スニーカーズ』と勘違いして観始めてしまったんです。どちらも過去に一回観ている。『スニーカーズ』は印象に残ってるのに、『スリーパーズ』は記憶してるシーンすらない。後半、彼らが大人になった時代の部分がガタガタで、印象が散漫になったからだろう。陰湿な小悪党を演ったら右に出るものなしのケヴィン・ベーコン。アカデミー賞に胸クソ悪賞があったら受賞間違いなし![Netflix] 悪辣な少年院職員たちに復讐する
スリー・ビルボード
2017年
マーティン・マクドナー◎ ブラックな笑いをまぶすのが僕の好みに合う。ストレートで笑いのない『デトロイト』とは好対照。今年のベストワンの可能性もある。初顔合わせの監督さん。只者ではない。 広告看板に警察への批判メッセージを設置した女性
フランシス・マクドーマンド
355
2022年
サイモン・キンバーグ△ 『ガンパウダー・ミルクシェイク』と同様、女5人の連帯アクション映画だが、格落ち。女版『エクスペンダブルズ』という印象。銃撃戦の最中、弾切れとか銃がつまるといったシーンを入れてる点は評価できる。[Netflix] ジェシカ・チャステイン、ルピタ・ニョンゴ
聖地には蜘蛛が巣を張る
2022年
アリ・アッバシ◯ どういう方向で決着つけるのか。単純ハッピーエンドはありえなさそうだし、ラストまで気を抜けない。この国の問題は、何かが根本的に変わらなければ解決しないでしょう。何かとは、政治や社会のありようか、あるいは人々の意識の総和か。 イランの娼婦連続殺人事件を追う女性ジャーナリスト
聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディア
2017年
ヨルゴス・ランティモスX 選択ミス。陰気臭すぎ。不気味なバヤーン(アコーディオンの一種)の音色に聞き覚えがあったが、曲のCDがうちにあった。 医療ミスにより呪われる執刀医 バリー・コーガン
世界が引き裂かれる時
2022年
マリナ・エル・ゴルバチ◯ 理不尽な状況に対する凄まじい怒りが感じられる。そのため、終始不機嫌一辺倒。しかしドラマも映像も一級品。映画の強度に圧倒された。必見! ウクライナのドネツク州の村で
せかいのおきく
2023年
阪本順治△ エンドクレジット見るまで監督を認識してなかった。自身のオリジナル脚本だが、何を言わんとしてるのか、さっぱりわからん。演出も役者の柄に依存してるようで主体性が見えず。江戸時代の庶民の暮らしには常々関心を持っている。細部でツッコミどころが多々あった。黒木華が「忠義」を仮名書きしようとしてうっかり「ちゅうじ」と男の名を書いたシーンが彼女らしくて可愛らしかった。 寛一郎、池松壮亮、眞木蔵人、佐藤浩市、石橋蓮司
世界は今日から君のもの
2017年
尾崎将也◯ 門脇麦を当て書きして作ったようなキャラ。と思ったら、その通りだった。やりすぎ感もあるが、門脇麦のイメージそのまんま。絵描きさんの話なので、人ごとと思えず、つい応援してしまう。自らを振り返ると、飛び抜けた才能はないなとつくづく思う。 ひきこもり女、頑張る
三浦貴大、マキタスポーツ、比留川游、YOU
セッション
2014年
デイミアン・チャゼル◎ あのあとどうなるのか、というのが心配でならない。自分に従わない生徒を許すわけがない。 音楽大学で19歳のドラマーが鬼教師にしごかれる
セディック・バレ 第一部 太陽旗 第二部 虹の橋
2011年
ウェイ・ダーション魏徳聖△ 抗日映画ではいつものことだけど、たとえ無辜の民が惨殺されようとも、殺される日本人に同情する気持ちが起こらない。台湾人が抗日のリーダーを英雄視したい気持ちはわかるが、実像と乖離しすぎ。抗日の英雄というイメージじたいが作り物ですから。娯楽アクションとしては上出来で面白いが、史実を完全に無視してることは指摘しておきたい。激戦が続いたあと、アップになったら着物が汚れもほつれもない新品。満席の劇場で思わずつっこみそうになった。 日本支配下で台湾の原住民が武装蜂起
77 BOA DRUM
2008年
川口潤◯ 77人のドラマーによるライブイヴェント。うずまき状に並んだドラマーが一斉に演奏する。打楽器はたたいて音を出すのでもともと爽快感があるが、それが大量に炸裂するさまを事前に想像するのは難しかった。コンダクター兼ヴォーカル兼パーカッショナーは日本人のEV∃。そのせいなのか、音がどこか和風。ニューヨークのど真ん中で法華経の太鼓を一斉に、という感じ。夜の9時45分からの上映しかなかったけど、無理押しして行って、よかった。
迫り来る嵐
2017年
ドン・ユエ◯ 救いのない映画。ほぼ全編、主人公の回想だが、終盤で記憶の変質が明らかになった。ということは、そこまでのストーリー全体が疑記憶という可能性すらある。ジャン・イーイェン演じる女性の絶望感は現実感を持って迫る。 若い女性の連続殺人事件に首を突っこむ警備員 ドアン・イーホン
セラフィーヌの庭
2008年
マルタン・プロボスト◯ 貧乏画家が超リアルで人ごとに見えず、身につまされる。演じるヨランダ・モローは容貌も風体も性癖もなにもかもが貧乏臭い。このキャラだけで映画の8割ができあがっている。 お手伝いさんは女流画家
セル
2016年
トッド・ウィリアムズ△ エンドでがっくり。背景設定をなんにも考えてないの丸見えな終わり方。それとも僕がわからなかっただけ? その点を除けば満足の出来映え。イザベル・ファーマンは好感度が急上昇。 携帯電話を使った人たちが凶暴化する ジョン・キューザック
ゼロ・グラビティ
2013年
アルフォンソ・キュアロン◯ 終始、ハラハラドキドキ。足を床に突っ張って観ている。足下何千メートル何もない空間。宇宙空間に放り出されたら一巻の終わり。ラスト、タイトル"Gravity"(重力)がドカンと大きく出る。なるほどそうくるか。 有人衛星がダストの衝突で破壊される サンドラ・ブロック
ゼロ・ダーク・サーティ
2012年
キャスリン・ビグロー◯ 視点を変えたら主権国家(パキスタン)に断りもなく軍隊が侵攻してやりたい放題。それに関する批判的な視点はない。いけないというわけではないが。一風変わったミステリー映画として楽しめた。たとえ結末がわかってたとしても。 CIAの女性調査官がビンラディンを追いつめる ジェシカ・チャスティン
戦火の中へ
2010年
イ・ジェハン◯ 期待通りの出来映え。長尺なのにダレ場もなく、最後までしっかり引っ張っている。韓国の国民性か、血みどろの戦いとなるとやたら映像に力がこもる。認識ゼロだった朝鮮戦争の歴史をあとで少し勉強しました。 朝鮮戦争で、孤塁を死守する71人の学徒出陣兵 T.O.P、クォン・サンウ
前科者
2022年
岸善幸◯ 悪くない映画だけど、言葉や映像で説明しすぎ。過剰は映画を弱める。男優陣がそれぞれ自分のキャラを十全に生かして好演してるのに対し、女優たちが全員、もう一つな感じ。 出所者を見守る保護司 有村架純、森田剛、磯村勇斗、リリー・フランキー
1303号室
2007年
及川中X 監督が監督なので期待はしなかったけど、演出センスが悪い。主演は演技力に定評のある中越典子で、その点は安心して観ていられる。後味の悪さはいいんだか悪いんだか。確実に爽やかな映画を即観たくなります(レンタル屋の販促映画?)。続いて『クローズド・ノート』を観て、すっきりしました。[DVD] 若い女が飛び降り自殺する部屋
戦場でワルツを
2008年
アリ・フォルマン◯ ドキュメンタリの映画祭に出品を目論んだというのは読んだが、マジでドキュメンタリだった。兵士の心の傷というのは日本人の僕には実感しにくい。戦場に、ショパンのもっとも美しいワルツと思える7番が鳴り響いていた。華麗で、はかなげに。 ドキュメンタリアニメ パレスチナ難民虐殺事件
センチュリオン
2010年
ニール・マーシャル◯ 2世紀初めのブリテン島、ローマ帝国精鋭の第9軍団が忽然と消滅した謎に挑む戦記物。つっこみどころもあるが、アクション演出に秀でた監督の腕が冴える。主人公はローマ帝国軍の百人隊長だが、対するピクト人(スコットランド人の先祖筋にあたるケルト系民族)を悪役にしてないのは当然と言える。いちばんのワルはローマ帝国。という告発映画でもあるわけね。[DVD] centurion = 百人隊長 オルガ・キュリレンコ、イモージェン・プーツ
セントアンナの奇跡
2008年
スパイク・リー◯ 黒人を知らないトスカーナの人々は差別意識がなかったという部分。そういうこともあるのかもしれない。スパイク・リーにしては珍しく娯楽映画のツボをしっかり押さえている。ただ、戦闘シーンの演出はひどく凡庸。珍しくドイツ軍の謀略放送が登場したが、連合国軍の謀略放送を描いた映画はなかったんじゃないか。 第二次世界大戦のイタリア戦線に投入された黒人部隊
セント・オブ・ウーマン 夢の香り
1992年
マーティン・ブレスト◯ アル・パチーノ、強烈なオヤジ。最後は意外にいいやつで終わるのが残念な気がする。徹頭徹尾、ヤなやつでも、役者としての値打ちは変わらないよとパチーノに言ってやりたい。[Netflix] 盲人の世話をする学生バイト クリス・オドネル、ガブリエル・アンウォー
1408号室
2007年
ミカエル・ハフストローム◯ 展開が明と暗で二転三転していき、結末が読めない不安がある。エンドはなかなか味がある。余韻につながるエンドで気に入った。ただ、恐怖感は薄いので、それを期待すると外れるかも。ひょっとすると、怖くなかったのはホラー慣れしてただけかも。 スティーヴン・キング原作 ホテルの部屋が人間を殺害する
捜査官X
2011年
ピーター・チャン◯ 雑さが売り、みたいな香港アクションとは思えない端正に作り込まれた世界。ストーリー、撮影、美術、キャラクター、アクション。どれも素晴らしい。今回は脇に回ったタン・ウェイ。かわいらしい顔を見せてくれる。 盗賊二人組を成敗してしまった村の男 金城武、ドニー・イェン
早熟のアイオワ
2008年
ロリ・ペティ△ 娘を売春へと誘う救いがたき売春婦を監督自身が演じてるのかと思ったが、別の女優だった。クロエ・グレース・モレッツは演技というより顔芸の芸人になりきっている。 ロリ・ペティ自身の十代のドラマ ジェニファー・ローレンス、セルマ・ブレア
そこのみにて光輝く
2014年
呉美保◎ 池脇千鶴らのビンボー4人一家があまりにリアルで悲惨で強烈なので、主演の綾野剛の影が薄い。池脇の弟役、強烈なキャラを振りまく菅田将暉。観てる間ずっと尾上寛之だとばかり思ってた。似てるというか、菅田君は初主演の『共喰い』と同一人物に見えない。 高橋和也、火野正平、伊佐山ひろ子
そして父になる
2013年
是枝裕和◎ 『誰も知らない』同様、子供の演出がうまい。ぐいぐい引き込まれる。協定を破って会いに来た元父親に対して子供が発するひとことは、短いが厳しいものだ。慶多は親に捨てられたと理解している。誤解でない点がまた厳しく、心を打つ。真木よう子は『さよなら渓谷』に続いて気迫のこもる演技を見せてくれた。今年は賞をやってほしい。福山雅治もよくやってるけど、これで主演賞なら甘やかしすぎ。 子供を取り違えられた二つの家族 尾野真千子/リリー・フランキー
そして友よ、静かに死ね
2011年
オリヴィエ・マルシャル◯ 新たなフレンチ・ノワールの秀作が誕生。おっさんばっかりの映画で足が向きにくかったが、観逃さなくてよかった。ラスト近くになって重大な事実が明らかになる。それはよ言うとったら無駄な犠牲者がたくさん出んですんだんちゃうんかいなと、終わってから気づいてツッコミ入れてる。原題のリヨネーズはリヨン人を意味する普通名詞だが、ここではかつてのギャング仲間をさしているらしい。 追われている昔の仲間をかくまう ジェラール・ランヴァン
そして、私たちは愛に帰る
2007年
ファティ・アキン◎ 老年期に入った男と女。元夫婦だと観客にほのめかしておきながら、二人を最後まで引き会わせないままのエンドには驚愕。きちんと確認させてくれ! ドラマは三組の親子を複雑にからませた絶妙のシナリオで、魅せられた。気になった点が二つ。トルコとドイツが舞台で、トルコ語とドイツ語はいいが、なぜ英語が出てくる。ブレーメンの街角で二度にわたって赤い鳥居が現われる。これはいくら考えても理解不能。 ハンナ・シグラ
その男ヴァン・ダム
2008年
マブルク・エル・メクリ◯ シリアスな犯罪物とは予期しなかった。てっきり徹底的に自分をおちょくりまくるセルフパロディだとばかり思っていた(元の本人の脚本ではそうなってたそうな)。ヴァン・ダムは屈折や翳りを感じさせる気になる俳優です。感情移入しまくって観てました。がんばれ!中年。 郵便局強盗に巻き込まれるヴァン・ダム
その土曜日、7時58分
2007年
シドニー・ルメット◯ 一つの愚かな行為が不幸の連鎖を生み、すべてが崩壊してゆく。コーエン兄弟ならシニカルな劇にするところを真正面からシリアスに描いている。容赦がなさすぎる。事件を誘発した親子の葛藤について考え込まされるものがあった。 実家の宝石店を襲撃する男 フィリップ・シーモア・ホフマン
その場所に女ありて
1962年
鈴木英夫◎ 思わぬ秀作が飛び出して興奮する。ドラマの中心は女たち。そして実に嫌な男を宝田明と山崎努が演じる。そしてまさかという男が裏切る。観てて胃がキリキリ。男という種族に対する批判がありあり。女たちのリーダーを演じた大塚道子が格好よすぎる。女たちよ、ダメな男どもを甘やかすな![YouTube] 広告会社どうしの暗闘 司葉子、原知佐子
その瞳に映るのは
2021年
オーレ・ボールネダル◎ どうしょうもなくいいかげんで愚かしい誤爆だが、起こって当然と思えるリアルな戦争風景が描かれる。ラストで主人公の少女が一人、黙々と朝食を食べ続ける。奇妙なインパクトを感じ、このシーンをくり返し見た。外で起こってことには我関せずで、ひたすら食べ続ける。自分のすべきことはしっかり朝食を食べ、生き続けることだと思い定めたかのように。[Netflix] 友軍の誤爆によりコペンハーゲンの小学校が大破する
その街のこども 劇場版
2010年
井上剛◯ 奇妙な二人連れロードムービー。二人とも、地球外生物の血が混じってるように見える(特に佐藤江梨子、人類離れのスタイル)。だからどんなとっぴな行動でも許せる。後日、佐藤江梨子のインタビューを読んで涙がこみあげた。映画観てる間は感情が高ぶらなかったのに。 阪神大震災追悼のつどいに参加するため歩き続ける二人 森山未來
ソフィーの選択
1982年
アラン・J・パクラ◯ ナチスの収容所ものではこの映画以降にもっと優れた映画があったように思う。ケヴィン・クラインはナチスドイツに傾倒してるのかと思ったが、違った結末に。彼が持ってきた酒瓶のラベルに"Rheingold"とあった。ワーグナーの有名曲だ。 メリル・ストリープ、ピーター・マクニコル
空飛ぶタイヤ
2018年
本木克英◯ 感動しました。ギリギリまで追い込まれ、パッと解放されるあの快感。小池栄子と高橋一生のコンビがなかなかいけてる。 巨大自動車メーカーの闇を暴く 長瀬智也、ディーン・フジオカ
それでも恋するバルセロナ
2008年
ウディ・アレン◯ 舞台はスペインだが、頭で考えたシチュエーションドラマは彼らしさがあふれている。女優は美人をそろえて男優はブスばかり。意図的なキャスティング? 特に3人から熱愛されるハビエル・バルデムは両生類顔で、違和感ありすぎ。主演は複数だけど、アレンの興味がスカーレット・ヨハンソンからレベッカ・ホールに移ってるのが見え見え。 ペネロペ・クルス、パトリシア・クラークソン
ソング・オブ・ザ・シー 海のうた
2014年
トム・ムーア◯ アイルランドのアザラシ女伝承を元に。映像ヴィジュアル、素晴らしい。アイルランドの妖精文化や伝承物語に疎い普通の日本人にとって、ストーリーをのみこむのは厳しそう。せめて「セルキー」「セルキーのコート」を「アザラシ一族」「アザラシの皮」と訳さないと。 アイルランド伝承をアニメに
ゾンビランド
2009年
ルーベン・フライシャー◯ ポップでキッチュなゾンビ・コメディ。サスペンスもアクションもあって娯楽の要素がてんこ盛り。破滅しかかってる世界がどうなろうと知ったことかと、個人の欲求にのみ忠実な四人組はあっぱれというしかない。ボブ・マーリーの死に方はあまりにもアホくさすぎて、笑えなかったが。 ウディ・ハレルソン、エマ・ストーン、アビゲイル・ブレスリン
ゾンビランド
2019年
ルーベン・フライシャー△ 10年もたってから続編を作る意味がわからん。ノリノリな気分も10年継続するわけない。
ダークナイト
2008年
クリストファー・ノーラン◎ 憎悪で頭キレそうになった。映画の登場人物を憎むって、久しぶり。さっさと殺せと思うんですけどね、結局最後まで死なない。役者のほうが先に死んでしまったので、殺すこともできなくなってしまった。リヴァイヴァル公開してくれてよかった。このレヴェルの映画をDVDレンタルで観るのは失礼と思う。 バットマンのシリーズ マギー・ギレンホール
ダークナイト ライジング
2012年
クリストファー・ノーラン◎ 映像の厚み。質感、重量感。圧倒的に大きな悪の存在の表現。こういうのは日本映画ではなかなか出せない。重々しい映画だが、暗さとヘヴィーさを宣伝で強調しすぎるから日本では受けない。トム・ハーディは男前の顔もチャーミングな声も封じられてもったいない。逆にアン・ハサウェイは、目さえ出してればアン・ハサウェイという便利な女優なんだと気がついた。 バットマンシリーズ クリスチャン・ベイル、マイケル・ケイン、ゲイリー・オールドマン、マリオン・コティヤール
ターミネーター4
2009年
マックG◯ 映像百点、話五十点。無理矛盾の目立つタイムトリップ設定を新シリーズで破棄し、ゼロからスタートすればよかった。『3』の方向転換をなかったことにして元に戻し、『3』より悪くなったのでは意味がない。加えて制作者たちは、コンピュータに発想や創造の能力がないことを忘れている。そこをふまえて人間側の戦術を展開すればぐっと楽しい話になったはずだ。新たなアイディアを盛り込む気がないのなら、『5』は観ない。 クリスチャン・ベイル、サム・ワーシングトン
ターミネーター:ニュー・フェイト
2019年
ティム・ミラー◯ そもそもこのシリーズは論理的な矛盾だらけだし、リンダ・ハミルトンは以前にもましてすごい鬼瓦になってるし。でもこのシリーズ、面白くて好きです。『3』をなかったことにしての『1』『2』の続編ということ。しかし方向性としては『3』と同じだと、僕は思ったのですが(クレア・デインズがナタリア・レイエスに置き換わっただけ)。 アーノルド・シュワルツェネッガー
ダーリンは外国人
2010年
宇恵和昭◯ 不覚にも感動して涙してしまった。ウェルメイドとしか言いようのない娯楽映画なのに。井上真央は美人じゃないが『八日目の蝉』で役者として腰の据わったところを見せてくれた。ここでは多彩な表情をくり出してまた違った顔を見せてくれる。夫のトニーはハンガリー人から米国人に変更。あの濃い顔では観客が引くから、しかたない。[DVD] 小栗左多里原作 漫画家のダンナ
ダイアリー・オブ・ザ・デッド
2007年
ジョージ・A・ロメロ◯ これ以外に観たいのがなかったのでやむなくこれ一本だけで正月元旦の千円の日に出かけました。ただのゾンビホラーなどではない、観ごたえある秀作です。しかしこんな救いのない物語は人に勧められません。連れだって観たいとも思わない。この映画に限っては誰もペア割引を利用しないのでは? 蘇った死者たちが地球を覆いつくす
第九軍団のワシ
2011年
ケヴィン・マクドナルド◯ ブリテン島の古代2世紀世界にどっぷりひたりこむ。映像は文句つけがたく、アクイラを演じるチャニング・テイタムは古代ローマ人そのもの。そのまま彫像に使えそう。字幕翻訳のミスだったかもしれないけど、マクイラと2人きりでケルト人地域へ潜入するエスカ(ジェイミー・ベル)は、ブリトン人ではなくピクト人。二つは同じケルト人でも系統がかなり違う。 ローマ軍のシンボルをケルト人から奪還するためスコットランドへ マーク・ストロング
第9地区
2009年
ニール・ブロムカンプ◯ ノースターなのにストーリーだけで存分に楽しませてくれるSFサスペンス。エイリアンは当然CG嵌め込みなんだけど、映像的にも演技的にも違和感ないのでCGということを忘れてしまう。なんぼノミネート枠が10に増えたからといって、こんなゲテモノキワモノ娯楽を米アカ作品賞候補に入れるかな。こんな面白すぎる映画はノミネートすらしてはいけません。 南アフリカに漂着した異星人の難民
大コメ騒動
2021年
本木克英△ 昼飯抜きの腹ペコ状態なので、社会状況がものすごくリアルだった。井上真央は目力(めぢから)の人。もっといい映画に出て、主演女優賞を獲りましょう。演出は全体にゆるい。スクリーンの細部までコントロールが効いてません。 大正の米騒動の発端 夏木マリ、鈴木砂羽、室井滋、神戸浩
大地の子守歌
1976年
増村保造◯ 原田美枝子の暴力的とさえ言える体当たり演技が際立つ。まわりは振り回されるばかり。女衒役の木村元。プロデューサーの木村元保と同一人と勘違いしてた。同じ映画で名前を並べたら、まぎらわしいだろう。知る人も少ないが、原作を書いた素九鬼子は好きな作家です。 女郎屋に買われた女 岡田英次、梶芽衣子
大統領の陰謀
1976年
アラン・J・パクラ◯ 演技&演出が上等の、Aクラスのサスペンス劇。なのですが、関係する人物名が多すぎて何が何やらさっぱりの部分もあり。演技の点ではロバート・レッドフォードよりダスティン・ホフマンのほうがずっと上。 ウォーターゲート事件を追うワシントン・ポストの記者
タイトル、拒絶
2020年
山田佳奈△ モトーラ世理奈が最初誰かわからず。でも声に記憶あった。その姉役が恒松祐里。この二人、生年月日が同じ。同い年にはまるで見えない。キレのいい予告篇に惹かれて観たが、ちょっと重たく鈍い。若くして怪優と呼びたくなるモトーラと伊藤沙莉。このあとどんな役者になっていくんだろう。[Netflix] デリバリーヘルスクラブの女たち 佐津川愛美、片岡礼子
ダイナマイトどんどん
1978年
岡本喜八◯ 岡本喜八、爆発。破天荒なエネルギー。ヤクザどうしの縄張り争いを野球で決着しようってんだから、どんだけ汚い野球やるか、おおかた想像がつくというもんだ。劇場で観て大興奮した映画がようやくDVDになった。菅原文太が死ななければ出ないなんて、情けない。[DVD] フランキー堺/金子信雄/藤岡琢也/宮下順子/ケーシー高峰
タイピスト!
2012年
レジス・ロワンサル◯ 体育会系スポ根のノリ(プラス恋愛)。見ているこちらも力入りまくり。デボラ・フランソワが最近目立ってきてるが、世界のトップクラスの女優は無理そう。演技の問題じゃなく、ヴィジュアル的に物足りない。脇のベレニス・ベジョのほうがその点、カリスマある。 タイピング早打ちコンテストに挑戦 ロマン・デュリス
太平洋の奇跡 フォックスと呼ばれた男
2011年
平山秀幸◯ ラストで思いきりツッコミ爆発。一年半、赤ん坊がちっとも大きくなってない。映画館で思わず声をあげたぞ。他にもおかしな部分は多々ある。竹野内豊や井上真央はよかったと思う。竹野内の場合、へたに演技させず、柄を見せるだけなのが成功している。 サイパンで米軍相手に1年半戦った男
太平洋奇跡の作戦 キスカ
1965年
丸山誠治◯ 終戦間近、アリューシャン列島のキスカ島に取り残された5200名の日本軍兵士を救出する。無傷で全員生還させた史実にちなむ物語。すでに制海権を失っている。100%不可能という中、濃霧を利用して救出作戦を敢行する。史実を書き換えた「真実の物語」があふれかえる中、さほど潤色もせずに描いていることに感動した。 三船敏郎/山村聡/中丸忠雄/稲葉義男/田崎潤/佐藤允/久保明/藤田進
太陽
2016年
入江悠△ 演技演出に舞台くささが漂い、入りにくい。映画にはリアリティが必要だ。古川雄輝をどこで見たのか気になって調べたら『脳内ポイズンベリー』。あっちは好感度ゼロ。こっちのキャラは好感度大。 進化した人類とそれから取り残された者­たち 神木隆之介、門脇麦
映画 太陽の子
2021年
黒崎博◯ 前情報ゼロで観ました。戦時中の物資不足の中では、原子爆弾の開発製造はしょせん無理だったでしょう。主演トリオはいずれも適役。 戦時中、京都大学での原子力爆弾を開発するチーム
タイラー・レイク 命の奪還
2020年
サム・ハーグレイブ◯ 傭兵チームとマフィアとのド派手な戦争。こういうの観るとノリノリで元気が出てしまう。映画の中でバタバタ大量に死んでも痛くも痒くもなし。イラン美人のゴルシフテ・ファラハニも格好いいです。Wiki読んでからラストシーンだけ見直した。こんな一瞬のピンボケ映像でわかるわけない。[Netflix] 誘拐された子供(犯罪王の息子)を救出 クリス・ヘムズワース
ダウンサイズ
2017年
アレクサンダー・ペイン◯ 話は無理筋だが、映像は頑張っている。人間がいる実景がミニチュアに見えなければならない。さざなみのサイズとか。なるほどと感心。[Netflix] 人間小型化計画 マット・デイモン
誰がため
2008年
オーレ・クリスチャン・マセン◯ デンマークの対ナチレジスタンスで殺し屋の二人組。ヘヴィーな緊張感が全編をおおう。人間関係が複雑で、人物そのものも複雑きわまりない。ストーリーはこじれて一筋縄でいかない。観終わって整理のつかない部分が多く残った。演出センスはよくて好感が持てるが、カタルシスもほしい。 戦時下のデンマーク たがため
タクシー運転手 約束は海を越えて
2017年
チャン・フン◯ 楽しみはしたけど、いろいろ小骨が突き刺さるような。ドイツ人記者は身の安全を考えなさすぎ。光州の韓国人が命を投げ出してまで英雄的行為に走るのも納得いかない。あれこれの違和感、なぜそういう演出をしたかはわかるが、ありえなさすぎる。 1980年の光州事件を取材する
ソン・ガンホ、トーマス・クレッチマン、ユ・ヘジ
たけくらべ
1955年
五所平之助◯ タッチは軽いが内容は重い。マーラーの『巨人』の出だしみたいな重々しい音楽(芥川也寸志)は違和感あった。美空ひばりの所作について注意深く見ていたが、明治期の女性を見事に表現してると思えた。5歳しか違わない岸恵子(姉役)と、親子ぐらい離れてるように見えるのが奇妙だった。 樋口一葉原作 北原隆、山田五十鈴、中村是好
多十郎殉愛記
2019年
中島貞夫◯ 間延びすることなく、テンポよく進む引き締まったドラマ展開。中島監督、若い。ここに書くことではないが、時代劇の「お約束」は常に気になる(刀を構えた時のカチャッという音など)。 高良健吾、多部未華子、木村了、永瀬正敏、寺島進
ただ悪より救いたまえ
2020年
ホン・ウォンチャン◎ コリアン・ノワールの秀作。「イカゲーム」の気弱な主人公(イ・ジョンジェ)が、この映画では「趣味:殺人です」という残虐な怪物を演じる。この強烈なキャラクターより惹かれるのは、オカマ(失礼、トランスジェンダー)を演じたパク・ジョンミンです。 ファン・ジョンミン、豊原功補、白竜
立ち去った女
2016年
ラヴ・ディアス◯ 3時間48分のモノクロ映画。フィリピン映画のマイナー系。おまけに料金割高という、三重苦を背負った映画だが、初日に駆けつけた。背景にあるフィリピンの下層世界がドラマを超えて生々しく迫る。トンデモな映画体験をした気になった。 無実の罪を着せた男に復讐を目論む女
TATSUMI マンガに革命を起こした男
2011年
エリック・クー◯ 「革命を起こした」は大層にすぎる。しかし引き込まれる。一度としてビッグになれなかったことで共感するのか。彼を取り上げたのは日本映画じゃなく、マレーシア。日本よしっかりしろ。[Netflix] 「劇画」という概念を生み出した漫画家、辰巳ヨシヒロ
他人の顔
1966年
勅使河原宏◯ こんなぶっ飛んだ映画がATG(アートシアター)じゃなく東宝配給だったのか。武満徹のテーマ曲『ワルツ』がいいので再見したくなりました。前田美波里の歌う声楽ヴァージョン。そして弦楽アンサンブルヴァージョン。名曲です。[YouTube] ケロイド顔を隠すために仮面をつけ、他人になりすます男 仲代達矢
旅のおわり世界のはじまり
2019年
黒沢清◯ 芸達者な若手俳優ばかりで、安心して作品世界にひたっていられる。ただしツッコミどころは多い。前田敦子がウズベキスタンの知らない夜道を一人でウロウロとか。そこは安心して見てられない。 染谷将太、柄本時生、加瀬亮
007 慰めの報酬
2008年
マーク・フォースター◯ 釣瓶落としのハードなアクションに目を奪われ、陰謀や黒幕の実体に関してはさっぱり呑み込めない。オルガ・キュリレンコは愁いのある顔つきがよく、過去のボンドガールとは一線を画す。従来の007から変質したという嘆きの声もあるが、僕は以前のシリーズが大嫌いなのだ。 ダニエル・クレイグ、マチュー・アマルリック
007 スカイフォール
2012年
サム・メンデス◎ ハリウッドの娯楽大作では大満足の部類です。投入した資金が映像の中で生きている。人が多くて夜景のまばゆい上海&マカオと荒涼たるスコットランドとの落差。スコットランドがなぜか懐かしく感じられる(行ったことないのに)。 ダニエル・クレイグ、ハビエル・バルデム、ナオミ・ハリス
007 スペクター
2015年
サム・メンデス◯ 定番メニューながらハラドキ感満載で楽しめる。クリストフ・ヴァルツ、悪党をやらせたら絶品。まともな人生歩めませんね。 ダニエル・クレイグ、クリストフ・ヴァルツ、レア・セドゥー
ダブル・ジョパディー
1999年
ブルース・ベレスフォード◯ 出演者で覚えてたのはアシュレイ・ジャッドのみ。ブルース・グリーンウッドが出てたんだ。小心者の小悪党役にはぴったり。[Netflix] 欺いた夫への復讐を企てる女
魂のゆくえ
2017年
ポール・シュレイダー△ この映画は予告篇の出来がいい。なので中身をほぼ知らない状態で観た。あのエンドでは映画にならない。予告篇で歌われる『リパブリック賛歌』はこの映画にしっくりくる。なのに、予告篇だけの曲だったとは。 イーサン・ホーク、アマンダ・セイフライド
ダラスの熱い日
1973年
デヴィッド・ミラー◯(吹替) 保守派は時として冷徹な現実主義を口にする。ロバート・ライアン演じる政治家のセリフは一面では真理を突いている。彼が言ってるのは下等人種を億人単位でまとめて抹殺するシステムについてだが、実際、増えすぎる人口をなんとかしないと地球は立ち行かなくなる。そのための方策をまだ誰も見つけていない。[YouTube] ケネディ暗殺の謀略劇 バート・ランカスター
タリ=イハンタラ 1944
2007年
アーケ・リンドマン◯ ロシア・ウクライナ戦争の渦中で『アンノウン・ソルジャー』を観直したくなった。同じ戦争を扱ったフィンランド映画があった。何人かの兵士に焦点をあててドラマを盛り上げた『アンノウン〜』にくらべ、演出もシナリオも平板で残念。大国が小国を侵略し、手痛い打撃をこうむった一例だった。奪ったカレリア地方はまだ返してないけど。[YouTube] フィンランドとロシアの戦争
だれかの木琴
2016年
東陽一◯ 佐津川愛美と木村美言(娘役)以外、みんな落ち着き払いすぎてる。なのでドラマのテンションも上がらない。佐津川が一人いきり立っている。もうちょっとうろたえてほしい。ラストも次の犯行予告かと思いきや、はっきりしない。 美容師をストーカーする女 常盤貴子、池松壮亮、佐津川愛美
誰も守ってくれない
2009年
君塚良一◯ パスしないでよかった。きれいごとなんてまったくない、すっごく僕好みのビターテイスト。妖しげに光る木村佳乃。一味違う刑事キャラを見せる松田龍平。ドラマに奥行きを与える柳葉敏郎、石田ゆり子の夫婦。役者たちはそれぞれに味があって、よかった。 警察による容疑者家族保護 佐藤浩市、志田未来
タレンタイム 優しい歌
2009年
ヤスミン・アフマド◯ 感動するというより、コミカルなシーンが楽しくてウケてしまった。監督のファーストネームと同じ意味の中国の曲『茉莉花』が二胡で奏でられる。ここにも何か意味があるんだろうか。 音楽コンテストに向けて練習するマレーシアの若者たち
丹下左膳餘話 百萬兩の壺
1935年
山中貞雄◎ 何度も観てるはずなのに、毎度笑い転げてしまう。丹下左膳のイメージぶち壊し。原作の林不忘もお怒りだったそうだ。終盤の剣戟シーンがGHQにカットされ、観られないのは残念無念。[YouTube] 大河内伝次郎、新橋喜代三、沢村国太郎、花井蘭子
ダンケルク
2017年
クリストファー・ノーラン◎ 第二次世界大戦の対独戦における最も惨めな敗北戦を描く。ありえなさそうな映画だ。武器を捨てて逃げ帰った敗残兵たちが英国に戻った時、民衆が熱狂的に歓迎するシーンがある。これがわからん。 トム・ハーディ
タンゴ
1980年
ズビグニュー・リブチンスキ◎ よくぞこんなトンデモなのを思いついた驚嘆する。チープな合成かもしれないが、恐ろしく手間暇かかっていそうだ。そして観るほうも頭が混乱して狂気の笑いがこみ上げてくる。[YouTube] 8分短編アニメ
タンゴ・レッスン
1997年
サリー・ポッター☆ 監督自身がタンゴダンスに魅せられ、一流のダンサーの指導を受ける。吹き替えもなく、自身で美しく舞い踊っている。そのことにかつて感動した。ステージで『ラ・ジュンバ』を踊るシーンがうまくいかなかったのは未熟ゆえと、以前は勘違いした。わざとトチッてるではないか。それ以外のシーンはミスなく踊ってるのに、わからんかった。[YouTube] サリー・ポッターがダンスを習う
団地
2016年
阪本順治◯ 斎藤工の大ボケ演技がきまりまくって笑い転げる。これは『顔』ではなく『ビリケン』の流れをくんだ喜劇だ。もっと早く観てたらメルマガ紹介できたのに。 藤山直美、岸部一徳、石橋蓮司、冨浦智嗣、濱田マリ
探偵はBARにいる
2011年
橋本一◯ 面白かったが、いちゃもん二つ。シリーズ化決定だが、この話は続編作ってもうまくいかない。小雪=美人という内輪のお約束は認めない。さらに蛇足だが、車体に「ンョシーレポーコ」という文字。間違いです。縦書きなので、「ンョシ|レポ|コ」。 大泉洋/松田龍平/小雪/西田敏行/安藤玉恵
探偵はBARにいる2 ススキノ大交差点
2013年
橋本一◯ 尾野真千子、役者としては一流なのにヴァイオリンの演奏演技が悪い。このシリーズは良質です。が、この客の入りでは3作目が微妙。 オカマが殺された真相 大泉洋/松田龍平
探偵はBARにいる3
2017年
吉田照幸◯ バイプレーヤーたち(特に男優)が溌剌として弾け、笑いを誘う。中でも準主演の松田龍平。すでに実力では優作を超えている。エンドクレジット後もしっかり笑わせてくれてるし。[Netflix] 大泉洋、北川景子、松重豊、鈴木砂羽
探偵マリコの生涯で一番悲惨な日
2023年
内田英治、片山慎三△ 話がぐちゃぐちゃに拡散。とっ散らかったままでエンドかと、途中までは思っていた。タイトルも内容と食い違う。それでも伊藤沙莉が出てるだけで得した気分になるから不思議だ。 バーと私立探偵を兼業 竹野内豊、北村有起哉、宇野祥平
小さいおうち
2014年
山田洋次◯ 黒木華のタキを見る映画です。これほどぴったりピースがはまりこんだキャスティングって映画史上にあっただろうか。声高に大仰な話を演説することなく、個人の幸せや悔悟、苦悩の中から世相をあぶり出している。それだけにラスト近く、米倉斉加年がボソボソと喋りだしたのはよけいだった。 松たか子、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子
ちいさな独裁者
2017年
ロベルト・シュヴェンケ◯ リアリティを無視したトンデモ話を作ってくれたと喜んでたら、ラストで実話ネタとわかる。実話に寄りかかる企画なのがちょっと残念。でもエンドクレジットではハチャメチャ。現代のドイツの街中にヘロルト親衛隊を出現させ、事態をのみこんでない市民にやりたい放題。 大尉の軍服を拾ったドイツの脱走兵
チィファの手紙
2018年
岩井俊二◎ メルマガでしっかり紹介したから、点数だけにしようかと思ったが…。岩井監督の演出を中国人スタッフとキャストが間近で見ている。メイキング映像もネットにあがっている。中国映画人の中に小さくない影響を残した気がする。 岩井俊二監督自身の原作『ラストレター』を中国で制作 ジョウ・シュン
チェイサー
2008年
ナ・ホンジン☆ 凄惨さを売りにしてるかと思うほどの韓国映画がいくつもあるが、これはその中で最も質が高い。容赦なく、救いがない。韓国人に対する海外からのイメージが悪化しかねないほど。この映画が本国でメガヒットしたという事実もまたおそろしい。子役キム・ユジョンはすごいと思った。 シリアルキラーを追う元刑事
ちえみちゃんとこっくんぱっちょ
2005年
横浜聡子◯ 意表をつかれた。大爆発の第2作『ジャーマン+雨』とはまったくつながらない(ラストは爆発で人間が飛んでるが)。太宰治を下敷きにしてるかのようなストーリー。主演の鈴木由美子は素人をスカウトしたそうだが、選ぶ眼は確かだ。素晴らしい風貌をしている。弘前弁は何を言ってるのかさっぱりわからなかった。「こっくんぱっちょ」も結局わからない。 弘前で歯科技工士をしている若い女
チェンジリング
2008年
クリント・イーストウッド☆ イーストウッドはつくづく面白い男だ。政治的にはガチガチの保守で共和党シンパのくせに、映画作ったらリベラル本流なんだから。演出力は文句なしに素晴らしいと思う。主演女優は意識せずに観ました。 誘拐されて戻ってきた我が子は別人 アンジェリーナ・ジョリー
近松物語
1954年
溝口健二◎ 溝口健二を観るには気合いがいる。容赦ないストーリー展開。ハッピーエンドなんてありえない。そこに潔い魅力がある。田中春男演じる遊び人はまるで救いようのないキャラながら、そこがまた魅力になっている。[YouTube] 長谷川一夫/香川京子/進藤英太郎/小沢栄太郎/南田洋子/浪花千栄子
父の初七日
2009年
ワン・ユーリン、リウ・チージェ◯ 音曲たっぷり派手でにぎやか。『ハバ・ナギラ』(ヘブライ)『怨み節』(梶芽衣子)『ハレルヤコーラス』(ヘンデル)。実際の葬式にはこんなの使わんと思う。不思議な雰囲気の映画で、台湾の葬祭儀礼と生活をほっこり気分で眺めていました。 台湾版『お葬式』
父の秘密
2012年
マイケル・フランコ☆ ヒロインのテッサ・イアは十代なのに色っぽすぎて危うい。いやがらせが究極までエスカレートしていき、ブルーな気分だった。一転し、強烈で静かで冷たいエンディング。印象が焼きつく。あのあと父と娘はどうなるんでしょう。 妻(母)が事故死してメキシコシティに移った父と娘
血と砂
1965年
岡本喜八◯ 珍品に類する戦争映画。中国戦線で日本の楽隊がデキシーランドジャズはありえない、という無粋なツッコミを無視し、ミュージカルは快調に突き進んでいく。三船敏郎の事務所制作なので主演が三船。役にもう少し軽みを出せればと思ったが。[Netflix] 中国戦線を少年軍楽隊が行く 佐藤允、団令子、仲代達矢
チャーリーズ・エンジェル
2019年
エリザベス・バンクスX 元のTVシリーズのゆるさをなぞったかのようなダサい演出。それを今やる意味がどこにある?クリステン・スチュアート
茲山魚譜 チャサンオボ
2021年
イ・ジュニク◯ 韓国映画がじわじわとレヴェルをあげてることを実感する。韓国で王政に批判の刃を向けた映画は珍しい。視線は一貫して市井の民人にあり。 流刑地で海洋生物学書を著した学者 ソル・ギョング
チョコレート・ファイター
2008年
プラッチャヤー・ピンゲーオ◯ 美少女の過激バトル炸裂! しかもノースタント。ビルの壁面バトルではワイヤーを使用してたが、いかにもなワイヤーアクションはない。これって、撮影現場は大変だと思う。脳障害で恐怖心をなくしたヒロインがぶち当たっていくという設定の荒っぽいアクションだから、主役含め、けが人続出だ。やる気全開のエネルギーにたじろぐ。上り坂のパワーに満ちた映画は観ておくべきと思います。 タイのアクション映画 ジージャー、阿部寛
沈黙 サイレンス
2016年
マーティン・スコセッシ△ いろいろ文句はあるが、言語の問題に引っかかる。ポルトガル人が英語を喋り、日本人がポルトガル語+英語を喋っている。ポルトガル語はパードレとパライソのみ。それをポルトガル人がファーザー、パラダイスと言い換えている。それでポルトガル語だと言っている。変すぎる! 遠藤周作原作
日本のキリシタン弾圧
月影の下で
2019年
ジム・ミックル◯ 神秘的なミステリーで心惹かれる。けど、ストーリーの骨格部分で矛盾が…。タイムパラドックスのストーリーは本来的に矛盾を避けられないので、脚本づくりが難しいのはわかるが。ラストの苦いエンディングは心に突き刺さってくる。[Netflix] 9年ごとに発生する奇妙な連続殺人
月と雷
2017年
安藤尋◯ 草刈民代が自堕落おばさん。これだけでも観る価値がある。主演の初音映莉子にとっても大切な代表作。原作通りながら、このタイトルでは映画観客には訴求しない。 角田光代原作 高良健吾、藤井武美、黒田大輔
土と兵隊
1939年
田坂具隆◯ 原作とのストーリーの違いが気になる。戦前の映画だから、わずかでも反戦・厭戦の空気はだめだったんだろう。戦闘シーンの映像は地味だが、リアルで気迫がこもり、素晴らしい。[YouTube] 火野葦平原作 広州を転戦する小隊
椿山課長の七日間
2006年
河野圭太◯ 面白くってはまりこんでしまった。伊東美咲の色っぽさもいい。しかしこの映画で美咲は西田敏行になりきらなきゃいけない。『釣りバカ』を観て、しぐさ、話し方、とことんコピーしてほしかった。美咲の顔の中に西田の顔が浮かんで見えるぐらいになってりゃ傑作だったよ。[DVD] 浅田次郎原作 やり残したことを片づけるため、別人に変身して中陰から現世に戻る3人

1953年
成瀬巳喜男◯ 心理の綾をまるでサスペンス映画のようにからませていく。決着のつけ方は、今までどの映画でも見たことのないものだった。成瀬の映画には甘さがなく、とことんシビア。高峰三枝子の親友役、高杉早苗のきっぷのよさはこの人ならではのもの。 倦怠期の夫婦の溝 上原謙
罪の声
2020年
土井裕泰◯ モデルとなった事件は単独犯。この映画のように関わった人間がいっぱいいたら迷宮入りは無理。「キツネ目の男」は捜査員の錯覚によるもので、実際はあんな顔してない。似顔絵のおかげで容疑者は逃げられたとも言える。英国のシーンで、あえて字幕翻訳を出さなかった"fossil"。サン=サーンスの『化石』です。知っててちょっぴり優越感。 グリコ・森永事件をモデルに 小栗旬、星野源
罪の手ざわり
2013年
ジャ・ジャンクー△ だからどうだっていうんよ。で、僕の思考はストップ。驚きがない。中国ならこれぐらいの話、いくらでもあると思う。外国人のほうが現代中国の実態を理解してる、ということはありうる。 中国社会の底辺で四つの悲劇
冷たい雨に撃て、約束の銃弾を
2009年
ジョニー・トー◯ 記憶をなくしたフランス人初老男性が、理由すらも忘れたまま、復讐を遂げるためにマカオのマフィアと対決するという、異色の映画。何もかも忘れたのに使命感だけが体に染みついている。主演のジョニー・アリディは瞳の色が薄すぎて怖い。まるで死霊かヴァンパイア。[DVD] シルヴィー・テステュー、アンソニー・ウォン、マギー・シュー、サイモン・ヤム
劔岳 点の記
2009年
木村大作◯ 音楽の使い方に絞まりがない。TPO関係なくただ流せばいいというものではない。エンドクレジットで原作者以外の肩書きを入れなかったのは一つの見識だと思うが、あれだけ使いまくった楽曲名を入れないのはどうかと思う。新人監督としては特に破綻もなくよくやっているとは思うけど。 測量のために未踏の山頂をめざす 浅野忠信、香川照之
ディア・ドクター
2009年
西川美和◯ ドクターをじわじわ精神的に追いつめていく演出はすばらしい。逃げたくなるわな。世間から長らく隠れてたのを、また逃げて隠れる。社会からも自分自身からも逃げて。そんなふうでもなんとか生きてるんだ。松重豊の刑事はよかった。あれ以上ないというほどのハマリ役で。 笑福亭鶴瓶、瑛太、井川遥
デイアンドナイト
2019年
藤井道人◯ カタルシスを求めるタイプの映画ではなかった。人は善と悪の両面がある。その両極端を安藤政信が演じる。何が正しいことなのか。正義とは何か。観る人が考えてということなんね。[Netflix] メーカーを告発したあと自殺した父親 阿部進之介、清原果耶
D.I.
2002年
エリア・スレイマン△ 久々に新作が日本で公開されるスレイマン監督の代表作。一切説明しない演出。パレスチナ人にはピンとくるエピソードだろうけど、わかりづらい。イマジネーションが柔らかいのが魅力。監督は主演を兼ねるが、ほとんど演技しない。表情なし、台詞すらなし。
Tー34 レジェンド・オブ・ウォー
2018年
アレクセイ・シドロフ◯ ズシンと響く臨場感。戦車ものと潜水艦ものは面白い映画が多く、つい観てしまう。設定は秀逸で、実話ものではないよさがある。願わくばもう少し脚本に緻密さがあれば。 ドイツの戦車戦の演習に駆り出されたロシア兵の捕虜
デイ・オブ・ザ・デッド
2008年
ジョージ・A・ロメロ◯ ゾンビ映画の傑作か!と途中までは思ったが、なんの決着もつけないままのエンドにがっくり。菜食主義者のゾンビなんて、変化球も飛び出したりして面白かったけど。 『死霊のえじき』リメイク ミーナ・スヴァーリ
テイク・ミー
2017年
パット・ヒーリー◯ 尋常でない求心力に引き込まれた。変態チックな男が主人公。誘拐代行ビジネスを始めるからと言って銀行に融資を申請するという出だしから狂っている。予想に反してホラーでもスリラーでもなく、コメディでした。[Netflix] 誘拐ごっこ請負業
テイク・シェルター
2011年
ジェフ・ニコルズ7◯ 同じマイケル・シャノン主演の『BUGS』へ行ってしまう寸前の狂気暴走。ラストのカタストロフは片鱗ぐらい見せてほしかった。さんざんじらされ、待たされたんだから。回収もれの伏線もあるが、母親(キャシー・ベイカー)の事件の事情は明らかにしてほしかった。 大惨事の悪夢を見て地下シェルターを作る男 ジェシカ・チャステイン
ディファイアンス
2008年
エドワード・ズウィック◯ 戦いを描く映像感覚は、さすがこの監督と思わせるシャープさがある。しかし意外に思うほど印象に残らない。ダニエル・クレイグが何を考えてるのか、どういう人物なのか、最後までわからない。常に受け身で出たとこ勝負。計画も展望も策略も何もない。リーダーとしての資質に欠けるのではないか。見限ってたもとを分かった弟(リーヴ・シュレイバー)のほうがわかりやすい。 森に逃げ込んでドイツ軍に抵抗するポーランドのユダヤ人たち ジェイミー・ベル
Death Note デスノート
2017年
アダム・ウィンガード◯ 日本版は観てません。トリッキーなエンドは無理無理感が強い。初めて見かける主演男優より、彼をとりまく3人のキャラクターに惹かれる。マーガレット・クアリーは珍しくまともな役、と思ったら、案の定アブナイ人だった。[Netflix] そこに名前を書かれたら死ぬノートブック
テッセラクト
2003年
オキサイド・パン◎ 埋もれた傑作を発見。キネマ旬報の星取り表もiMDbの投票結果も悲惨だった。人の評価はあてにならない。自分で観てみなきゃね。タイの安ホテルで英国人のドラッグ運び屋とタイの少年と英国人の女性研究者がそれぞれに接点を持ち、運命が絡み合う。アレックス・ガーランドの原作『四次元立方体』は意味不明で2頁で放り出した。誰がどういう状況でどこで何してるのかさっぱりわからない文章だった。映像にしてくれるとよくわかる。[DVD] 盗まれた未精製ドラッグ ジョナサン・リース・マイヤーズ、サスキア・リーヴス
デッド・ドント・ダイ
2019年
ジム・ジャームッシュ◯ このバッドエンドにはむしろ爽快感がある。しかしティルダ・スウィントンはいったい何しに出てきたんだろう。街の入り口看板に"A Real Nice Place"と、嫌味っぽい説明あるの、見ました? 地殻変動により世界的にゾンビが多発 ビル・マーレイ、アダム・ドライヴァー
デトロイト
2017年
キャスリン・ビグロー◯ ワルの若手警官(ウィル・ポールター)の面構えは見事。何かしら賞を差し上げたいと思うほど。英国人俳優だった。もろに米国プアホワイト風だが。演出リズムの悪さ、テンポの鈍さが映画の長さにつながってると感じられる。ビグローは不器用でストレートすぎる。 デトロイト暴動の顛末
DUNE デューン 砂の惑星
2021年
ドゥニ・ヴィルヌーヴ◯ わが女神、レベッカ・ファーガソンがティモシー・シャラメの母親役ですと。そんな歳ではないのに。2部作の後編も観る予定。参考のため、デヴィッド・リンチ版の断片映像を観ると、予算規模が2桁ほども違うB級だが、これも観てみたいような。 フランク・ハーバート原作 オスカー・アイザック
DUNE デューン 砂の惑星 PART2
2024年
ドゥニ・ヴィルヌーヴ△ 要所要所に主演級の女優が配置されてて豪華だ。ワンカットのみだったが、次回作のキーパーソンとなるはずの若手が登場した。が、エンドクレジットに名前なし。最終段階で急遽カットを差し込んだのか。今回の映画は物語として語らず、設定で語るのみ。それは映画をつまらなくさせる。 ティモシー・シャラメ、ゼンデイヤ
テラビシアにかける橋
2007年
ガボア・クスポ◯ 児童文学の金字塔。観直して、映画化の改変には感心しない部分が多々見える。しかしこの原作の初の映画化に対して文句をつける気になれない。特に悲劇の翌日の演出には光るものがある。この心理表現は他の映画では見かけない(原作にはある)。[YouTube] キャサリン・パターソン原作 ジョシュ・ハッチャーソン、アナソフィア・ロブ
テルマエ・ロマエ
2012年
武内英樹◯ よくぞこのバカバカしい話を大まじめに作りきった。ほめてやりたい。上戸彩は初めて魅力的に感じた。ただし、古代ローマ人の美的感覚では上戸は絶対ブスです。続編は出がらしになるからやめてほしい。 古代ローマ人が現代日本へスリップ 阿部寛、北村一輝
10 クローバーフィールド・レーン
2016年
ダン・トラクテンバーグ◯ エンド直前まで状況を伏せ、緊張感をあおる。反面、状況がわかってしまうと普通の◯◯ものになってしまう。ガソリンのない酒瓶は火炎瓶にならんというツッコミを別にすれば満足レヴェルです。 ジョン・グッドマン、メアリー・エリザベス・ウィンステッド
天国にちがいない
2019年
エリア・スレイマン△ スレイマンは役者としては半人前なので、出番を減らし、狂言回し程度にとどめるべきだ。顔を出すたび、映像が死んでしまう。喋らないスタイルもここでは不自然。CGスズメは楽しかった。 映画制作実現のためにパリとニューヨークを訪れるパレスチナの監督
天国はまだ遠く
2008年
長澤雅彦◯ 映画の魅力の大半が徳井義実のキャラクターセンスによる。お笑い芸人みたいだけど、知らん(テレビないし)。映画は独特な空気が流れていて心地よくて好印象だけど、ストーリー上の大きなミス(前半で徳井義実が自殺ギャグをかますところ)があるのであまり点数を上げられない。加藤ローサは失礼ながら「美人なんだな」と、今回初めて認識した。コミカルな味はいつも通りだけど。 瀬尾まいこ原作 自殺しに宮津の民宿に来た女
天使と悪魔
2009年
ロン・ハワード◯ 前作の原作(映画は観てない)ではバチカン(カトリック)に対してけんか腰。今回(原作読んでない)はそのへんがおとなしめ。不満を感じたのはそこだけでした。サスペンスアクションとして動きの演出がよくて、見ごたえある。ロン・ハワードは前作の不評をバネに頑張ったみたい。ヒットしなかったのは地味なキャスティングのせいで、監督の責任ではありません。 ダン・ブラウン原作 トム・ハンクス、ユアン・マクレガー
天使の復讐
1981年
アベル・フェラーラX この映画をどう捉えればいいのか。被害者女性がトラウマで狂気に走り、男を殺しまくる映画。で合ってるんだろうか。フェラーラの初期の映画ってどんなのかと興味を持ったが、かつての鋭い映像センスはここにない。 ゾー・タマリス(ゾーイ・ルンド)
天使の眼、野獣の街
2007年
ヤウ・ナイホイ◎ 香港映画とは思えない稠密なシナリオによる刑事ドラマ。各シーンの密度は高く、緊迫したシーンが続くので、90分という上映時間は頃合いだった。新人女性警官の「子豚ちゃん」が主役だが、これがデビューのケイト・ツィは魅力的で演技的にも素晴らしいものがある。『チェイサー』のナ・ホンジンともども新人監督の第一作だが、韓国も香港も映画界は元気あるな。 サンモン・ヤム、レオン・カーファイ
デンジャラス・ビューティー
2000年
ドナルド・ピートリー◯ サンドラ・ブロックが出てることしか記憶になく、最後まで観終わっても記憶のあるシーンが一つもなかった。それでも芸達者なヒロインのおかげで大いに楽しませてもらった。[Netflix] 捜査のためにミスコンへ潜入参加する女刑事
トイレの花子さん
1995年
松岡錠司◎ ストーリーを忘れてしまって、先が読めずドキドキハラハラ。リアルなホラーの秀作であるとあらためて思う。実際の変質者はこの映画の緋田康人みたいなのじゃなく、ごく普通の顔して社会に紛れ込んでます。前田愛のデビュー作だった。大人顔負けの演技力と存在感。「あんたみたいなウスラバカに何がわかるというのよ」と、切ったタンカに思わず「よしっ!」とVサイン。[YouTube] 大塚寧々、豊川悦司、河野由佳
トイレのピエタ
2015年
松永大司◯ 3本ハシゴのラストで、これがいちばん面白かった。きれいごと抜きのビターなテイスト。女高生ヒロインの杉咲花、強烈なインパクト(超美麗という意味ではなくて)。 野田洋次郎
ドゥームズデイ
2008年
ニール・マーシャル◯ ウイルスによるゾンビものではなかった。強烈なハイテンションのアクション。奇妙なテイストもあって、満足。監督の前作『ディセント』からは予算規模が何倍にもなったが、演出の冴えは変わらず。主演のローナ・ミトラともども、要注目。 隔離されたスコットランドへ潜入する警察チーム
唐山大地震 想い続けた32年
2010年
フォン・シャオガン◎ 涙腺決壊映画。ほぼ10年ごとに刻まれるドラマを同一俳優が演じ続けるので、容貌の変わらなさは気になる。なんでもないシーンでも映像が美しく、監督のこだわりを感じる。 生き別れになった家族
藤十郎の恋
1938年
山本嘉次郎◎ なんとも厳しく残酷な話。ひそかに想いを寄せていた男から突然言い寄られ、舞い上がった直後に地獄を見る。男に悪意がないだけに、よけい救いがない。 長谷川一夫、入江たか子、藤原釜足
塔の上のラプンツェル
2010年
ネイサン・グレノ、バイロン・ハワード◯ 映像の厚みのすごさ。ハリウッドメジャーは金のかけ方が違う。エンディングはディズニー映画の限界を感じた。殻を破ってほしい。一部とはいえ津波を思わせるシーンがありながら、上映を打ち切られなかった。さすが、ディズニーの企業力?
動物農場
1954年
ジョン・ハラス&ジョイ・バチュラー△ 共産主義革命に対する痛烈な批判だが、現在では風刺の針の対象とすべきものが今の社会にあるのか。公開されてなかったことじたいは問題だが、ゆきすぎた資本主義のひずみが暴発した今年に公開したのはタイミングが悪くないか。原作から変更された結末はありがたかった。あのままではやりきれない思いの捨て場がなかったろうから。豪華キャストの1999年再映画化アニメもたぶん同じ結末。 ジョージ・オーウェル原作のアニメ 家畜たちが農夫を追放して自主管理農場を作る
透明人間
2020年
リー・ワネル◯ 一寸先は闇で、読めない。H・G・ウェルズ作とはなっているものの、原作小説との共通点は「男が透明人間になる」だけ。原作よりはるかに優れてるのだから、堂々と映画オリジナルとうたってほしかった。主演のエリザベス・モスは、気づかなかったが、『ザ・スクエア 思いやりの聖域』の超変なジャーナリスト役だった。まともでない役が似合う。
トゥルー・グリット
2010年
コーエン兄弟◯ あまりにも地味すぎる。あとで最初の映画化の『勇気ある追跡』を観たが、ほぼ同じなのに何かが違う。前作を超えようとして構えすぎたのではないだろうか。『勇気〜』ではキム・ダービーとジョン・ウェインとのやりとりがもっと軽妙だった。 父の仇を討つ少女 ジェフ・ブリッジス、マット・デイモン、ヘイリー・スタインフェルド
トゥルーノース
2021年
清水ハン栄治◯ 想定を大きく上回る秀作アニメだった。人々の気持ちがヴィヴィッドに響く。使用言語や映像スタイルに対する違和感はすぐに消えた。ただ、事実を土台にした映画の描いてるものを信用しない人間なので、創作だという認識で観ている。創作だからこそ、優れたドラマになり得ている。 北朝鮮の収容所に送られた家族の物語
トータル・リコール
2012年
レン・ワイズマン◯ シュワルツェネッガー版があまりにも安っぽいヴィジュアルだったせいか、納得の映像。ジェシカ・ビールもいい雰囲気。だけど行き当たりばったりの雑な脚本はいただけない。[Netflix] コリン・ファレル、ケイト・ベッキンセール
時の面影
2021年
サイモン・ストーン◯ 古代遺跡発掘という地味な話が自分にフィットする。かつて学んだブリテン島古代史を頭の中でおさらいしながら観たが、ヴァイキング時代の遺物という表現に違和感があって、あとで調べ直した。やはりアングロ・サクソンの侵攻よりあとの時代だった。[Netflix] キャリー・マリガン、レイフ・ファインズ、リリー・ジェームズ
時をかける少女
2010年
谷口正晃◯ エンディングのトーンに違和感あるが、傑作と思う。観たあとしばらく、思い出しては涙してました。仲里依紗がいい。現実に存在してることを感じさせる存在感に満ちあふれる。旧作に対するオマージュがあちこちに。前作のアニメ版に使われたバッハ(ゴルトベルクのアリア)が喫茶BGMに使われていた。これは普通、わからんで。 筒井康隆原作 母に代わって過去へトリップする女高生
独立愚連隊
1958年
岡本喜八◯ 観てからこれが初めてだったことに気づく。続編も観たつもりになっていた。反戦映画のつもりで作ったとのことだが、いやいやこれはけっこう好戦的ですよ。[Netflix] 佐藤允、雪村いづみ、三船敏郎、鶴田浩二
ドッグマン
2022年
リュック・ベッソン◎ 寓話的な気配が漂う。なので現実離れしたお話に、リアリティを度外視して観れた。作り手はリアルを無視することで自由に空想を羽ばたかせたようだ。 ドッグマンと呼ばれる女装男性の壮絶な人生を描く
隣の家の少女
2007年
グレゴリー・M・ウィルソン△ 児童虐待というような生易しいものではない。気が狂ってる。こういうのを作って公開することに意味あるのかと疑問を感じるほど。これでもサスペンスとしてのスピード感覚があれば見れたと思うが、ゆっくりやられると不快感がいつまでも居座り続けて耐えがたいものがある。[DVD] ジャック・ケッチャム原作 養母による虐待
飛べ!ダコタ
2013年
油谷誠至◯ 芳本美代子や洞口依子が田舎くさい恰好をすると、完全に田舎のおばさんになりきってしまう。そうか、もうそんな年齢になってるんだと寂しいながらも納得した。一瞬エキストラかと錯覚した角替和枝は、さすがに落ち着いた演技で堂々としたもんだ。ドラマに関してはほとんど書くべくことがなくて、女優のことばかり。[DVD] 佐渡島の海岸に不時着した英国軍機 比嘉愛未/窪田正孝/綾田俊樹
ドミノ 復讐の咆哮
2019年
ブライアン・デ・パルマ△ ひねりの入った刑事もの。中途までいい線いってると思ったのに、終盤、演出がガタガタ。観てる間、誰が監督だったか忘れてました。 ニコライ・コスター=ワルドー
止められるか、俺たちを
2018年
白石和彌◯ 若松孝二にも若松プロにも思い入れはない。女性助監督の視点で、しかもそれを門脇麦でやるというのに惹かれた。が、門脇は何を演っても門脇麦。せめていつもの髪型ぐらい変えればいいのに。今回初めて実在人物を演るんだから。 若松プロの映画制作を女性助監督の視点で描く 井浦新
共喰い
2013年
青山真治◯ また光石研が暴力男。顔を見るだけで胸くそ悪くなる。その点、田中裕子の姿には安堵するものがある。実際には暴力癖は遺伝しない。と思う。 暴力父親の血を引く青年 菅田将暉
ともしび
1954年
家城巳代治◯ 家城監督らしい誠実で丁寧な演出が好感持てる。プロパガンダ臭がなくもないが、子供たちが自主的に考えて行動することを嫌うのは現在の政府も同じ。普遍的なテーマだ。 慕われた中学教師が追放される 香川京子
友よ、さらばと言おう
2014年
フレッド・カヴァイエ◯ フランス製アクションはキレがいいので好きだ。ただこの映画、主演の二人が前二作の主演の使い回しで、俳優の層が薄いのかと思ったりする。原題の”Mea culpa”は「私の過ち」といった意味のラテン語らしいです 元警官の幼い息子が犯罪現場を目撃し、命をつけ狙われる
ドライヴ
2011年
ニコラス・ウィンディング・レフン◯ 悲しみの色を帯びたキャラクターを演じるとキャリー・マリガンはキラキラ輝いて見える。ライアン・ゴズリングはずっと同じ顔でメリハリがなく、かえって印象が薄い。 昼間はカースタント、夜は犯罪者の逃がし屋
ドライブ・マイ・カー
2021年
濱口竜介◯ この映画の三浦透子を見たかった。すばらしくキマっている。ちょっと気になったのは、車で広島から北海道の片田舎まで片道一日で行けるのか、ということ。札幌までなら飛ばせば可能なようだけど、その先までは無理でしょう。[Netflix] 西島秀俊、霧島れいか、岡田将生
ドラゴン・タトゥーの女
2011年
デヴィッド・フィンチャー☆ 『ミレニアム』を2年前に観てるので記憶は鮮明に残っている。あちらも強烈だったがそれ以上に強烈なキャラをルーニー・マーラが見せてくれる。ラストでポイッと捨てられたコート。マジで拾いにいきたかった。 ダニエル・クレイグ/ジョエリー・リチャードソン/ステラン・スカルスガルド
トランスポーター3 アンリミテッド
2008年
オリヴィエ・メガトン◯ 顔じゅうソバカス(唇にまで)娘がヒロイン。ジェイソン・ステイサムのむっつりおっさんとはあまりにもアンバランスで、ラブラブに違和感がある。毎度、死なないための懸命の悪戦苦闘が面白く、今回も楽しませてもらいました。ご苦労さま。 運び屋稼業の今回の試練
ドランのキャデラック
2009年
ジェフ・ビーズリー◯ 『目には目を』を思わせる熾烈で苛酷な復讐もの。悪党が悲惨な最期をとげても爽快感を感じる人はいないでしょう。復讐をとげた男もいっしょに地獄落ちというどんでん返しがあってもよかった。[DVD] 妻を殺された男の復讐 クリスチャン・スレイター スティーヴン・キング短編
ドリームハウス
2011年
ジム・シェリダン◯ 類例の映画はないかと記憶を探っても出てこない。原作なしのオリジナル。大傑作とまでは言えないが、映画ファンなら観ておくべき映画だろう。終盤にネタが割れたあと、一気に面白みが薄れたのが惜しい。エンドマークが出るまで安心できない危うさがほしい。 一家惨殺事件のあった家 ダニエル・クレイグ、レイチェル・ワイズ
ドリーム・ホームパン・ホーチョン◯ 中国や香港の現実が透けて見える作りは素晴らしい。殺戮の果てに得たマンション。皮肉なエンドがヒロイン(ジョシー・ホー)を打ちのめすが、不動産相場の暴落は観客に伝わったかな? マンションを手に入れるための大量殺人
トリプル・フロンティア
2019年
J・C・チャンダー◯ ビターな展開が素晴らしい。ずーっとビター続きで重苦しかったから、ラストのひねりで救われた気分。オスカー・アイザックは今や米国のトップ俳優です。[Netflix] マフィアの隠し使資金強奪を狙う元特殊部隊 ベン・アフレック
トレマーズ
1990年
ロン・アンダーウッド◯ 1991年度版にも書いてるけど、ただのB級怪獣映画。だけど気合いを入れて作ってあり、気に入っている。ヒロイン女優がイマイチなのが残念。[Netflix] 巨大地底怪獣が襲ってくる ケヴィン・ベーコン
トロッコ
2010年
川口浩史◯ 芥川龍之介を原作とする意味があったのだろうか。オリジナル作品といってもよかった。愛すべき美しい小品です。男の子二人は台湾の田舎の風景を第二の故郷として胸の内に刻印した、と感じられるシーンがある。 台湾を舞台に 尾野真千子
泥の河
1981年
小栗康平◯ 演出の一部に明白な問題がありながら、全体としてはぐっと胸に迫ってくるものがある。ヒロインといっていいのか、小学生新人の柴田真生子の見せる、演技を超えた存在の空気感が絶品。だが、かつて映画祭で舞台上に現われた本人があまりにも普通の女の子でありすぎて軽いショックを受けたことも思い出した。田村高廣は三つのお椀のトリックをワンカットで見せている。いつ見てもこの手品は不思議だ。[YouTube] 終戦後、大阪の川べりに生きる人々 藤田弓子/芦屋雁之助/加賀まりこ
ドント・ウォーリー・ダーリン
2022年
オリヴィア・ワイルド◯ 監督が出てるの、事前には知らなかった。不気味な話が監督の顔でさらに不気味になる(笑)。『ビバリウム』が脳内にちらつきだし、最悪のバッドエンドを覚悟した。 フローレンス・ピュー、ハリー・スタイルズ、クリス・パイン
ドント・ブリーズ
2016年
フェデ・アルバレス◯ 盲人の殺人者に襲われる。思わずこっちが音たてないよう息を殺してしまう。決着つけてないので、続編作る気、満々の様子。 『暗くなるまで待って』の逆パターンスリラー
トンネル 闇に鎖された男
2016年
キム・ソンフン◯ 韓国のダメさ加減を自嘲する自虐を含め、てんこ盛り状態。他の映画にない突出した要素が乏しいのは難だが、ラジオ放送局で思いを吐露したあとのペ・ドゥナは、ペ・ドゥナでなければならなかった必然性を証明していた。いっしょに閉じ込められたパグのテンイは「おバカちゃん」ぐらいの意味らしい。 トンネル崩落事故で閉じ込められた男
ハ・ジョンウ、オ・ダルス
ドンバス
2018年
セルゲイ・ロズニツァ◯ 戦闘シーンはなく、戦争の悲劇を描くわけでもない。描かれるのは戦争の原因となる事柄。ウクライナ軍による凶行に見せかけるヤラセ。それに洗脳される愚衆が延々と描かれ、見て楽しいものではない。洗脳は解けないので永遠の地獄が続く。この映画自体、一方的なプロパガンダだということは踏まえるべき。 ウクライナ東部ドンバスでのできごと
ナイチンゲール
2018年
ジェニファー・ケント◯ 報復の戦いは一直線に進まず、もどかしい。主演女優より、お供をするアボリジニの青年(バイカリ・ガナンバル)の存在が光る。全編通じて映画を支えている。19世紀の話だが、根っこのところで現在とつながっている。 夫と息子を殺した男を追う女 アイスリング・フランシオシ
ナイトクローラー
2014年
ダン・ギルロイ◯ 主人公は悪党なので、感情移入せず、気楽に観れるかなと思っていた。そういう単純なものではなかった。自己チューで他人への共感能力ゼロ。ダイアナ妃を事故死に追いやった連中と同じ精神構造の人間だ。だが、不思議なことに、この主人公へ徐々に気持ちが寄り添っていく。僕にも似たような精神構造がある? 事件現場の映像を売るパパラッチ ジェイク・ギレンホール
ナイン 9番目の奇妙な人形
2009年
シェーン・アッカー◯ 大満足の一作。独自の映像テイスト、オリジナリティあふれるデザインセンス。金太郎飴がはびこる米CG映画の中ではオアシスのような存在。ほとんど映像だけで満足してますが、ストーリーもよかったと思いますよ。 CGアニメ 人類絶滅後の世界で機械軍団と戦う人形たち
9soulsナイン・ソウルズ
2003年
豊田利晃◯ 原田芳雄もいるが、他の顔ぶれがすごい。脇の女優も贅沢。中味別にしてほとんどそれだけで元とれた気になってしまう。[DVD] 刑務所から脱獄した凶悪犯罪者9人
永い言い訳
2016年
西川美和◎ 予告篇がアレだったので今回はペケかと誤解した。ぜんぜん別物みたいに違う。誰もが指摘しそうだが、子役が素晴らしい。特に五六才の女の子のほう。演技とは思えん。映画ごとに顔を変えるカメレオン女優山田真歩も健在だ。 浮気の最中に妻が事故死 本木雅弘、黒木華、竹原ピストル、深津絵里
凪待ち
2019年
白石和彌◯ 香取慎吾のファンはみなパスするだろう。悪人ではないが、ギャンブル依存症者のダメ男。実に格好悪い。全編に暗い陰が覆ってる映画で、明るくない。絶対ヒットしない映画だが、僕的にはストライクゾーンのど真ん中。 西田尚美、恒松祐里、吉澤健、リリー・フランキー
嘆きのピエタ
2012年
キム・ギドク◎ すさんでいる。絵空事ではなく、現実の韓国社会につながっている。状況が判明したあと、演出が雑になるのは惜しい。韓国映画だから、もっと悲惨に、陰惨にと期待してしまう。 借金取り立て屋のもとに母親だという女が現われる チョ・ミンス
ナチス第三の男
2017年
セドリック・ヒメネス◯ ジェイソン・クラークの絵になる不敵な面構え。それだけで映画的な成功が約束されたようなもの。後半、視点が暗殺チーム側に移ってしまい、印象がぼやけた。暗殺側を一切描かないストーリーにできなかったのか。 ハイドリヒが暗殺されるまで ロザムンド・パイク、ミア・ワシコウスカ
七つまでは神のうち
2011年
三宅隆太◯ 冒頭から30分ほどの演出・演技の拙なさ、度が過ぎる。中盤以降は持ち直した。絶頂のエンドに向けて調子が昇りつめる。途中から観てたら傑作と勘違いしたかもしれない。色気は無縁と思ってた藤本七海。変わるもんですね。 ホラーサスペンス 日南響子/飛鳥凛/霧島れいか/宝積有香
浪花の恋の物語
1959年
内田吐夢◯ 悲劇の行方を傍観し続ける近松門左衛門(片岡千恵蔵)。最後まで放置するのかと思ったら、手を出してしまう。創作者ならそこは介入せず、見てるだけに徹すべきだったのでは。純な遊女というありえない役柄を有馬稲子は見事に演じきっている。この人に注目したのは初めて。 中村錦之助
名もなき歌
2019年
メリーナ・レオン△ この嬰児誘拐のシステムは事業的に採算が取れてない気がする。キュアロンの『ROMA ローマ』に似た雰囲気に惹かれたんだけど。 赤ん坊を奪われた母親
ナルヴィク
2022年
エーリク・ショルビャルグ◯ 悩ましい選択を迫られる映画。いくつか映画を観て、第二次世界大戦で北欧諸国のそれぞれ立ち位置が微妙に異なることが感じられた。この映画はドイツ軍が悪く描かれておらず、公平な視点を貫いている部分に誠実さがある。[Netflix] ヒトラーが初めて敗れたといわれるナルヴィク(ノルウェー)の戦い
南極料理人
2009年
沖田修一◯ しっかり食べてから観ないといけない映画です。ドラマがないのは知っていた。ここまでないとは思ってなかった。南極越冬。行ってみたくなるかなと思ってたけど、宇宙飛行士並みの単調で制約のある生活は退屈しそう。 堺雅人、生瀬勝久、きたろう、高良健吾、西田尚美
南京!南京!
2009年
ルー・チューアン◯ 日本では未公開。抗日映画ではない。リアルで格調高い。独自の振り付けだが、終盤の和太鼓伴奏の群舞は異常なほど熱がこもる。インパクトを感じてか、YouTubeにはこのシーンだけ、いくつも投稿されている。これが日本の風習と思われては困るが。[YouTube] 日本人の一兵士の視点で見た南京攻略
ナンネル・モーツァルト 哀しみの旅路
2010年
ルネ・フェレ☆ 手持ちカメラの同時録音。おまけに粗いビデオ映像。しかしどっぷりはまりこんだ。待ち時間にパンフ見て驚いた。ナンネル役の生年が1995年。年齢イメージと、気丈に人生を選択して行動する女とのギャップにも戸惑う。弟と同等の音楽的能力を持ちながら作曲家への道が閉ざされ、後半生は弟の音楽が忘れ去られないよう尽力したという説明に涙した。 モーツァルトの姉
荷車の歌
1959年
山本薩夫◯ 書かずにパスするつもりだったけど、左時枝(本作でデビュー)があまりに強烈だったのでふれないわけにいかない。左幸子演じる長女の少女時代を時枝が演じている。彼女が出てるシーンだけ、ぱあっとスクリーンが明るく輝く。奔放で野獣のような少女。母親の望月優子が忍従の日々ゆえ、対比されて際立つ。姉(幸子)との年齢差は17もあるが、よく似ている。もう一人、水戸光子。この人は主役じゃなく脇にいてこそ光ることを発見。 荷車引きの一生 三國連太郎
にごりえ
1953年
今井正◯ 三話とも密度は高いが、第二話の「大つごもり」が印象に残る。その話の肝心のネタ部分は別の日本映画に同じエピソードがあったので先の見当がついたが、それがなんという映画だったのかはいくら調べてもわからなかった。[YouTube] 樋口一葉原作の三話オムニバス 久我美子/淡島千景/山村聡/宮口精二/杉村春子
21g(21グラム)
2003年
アレハンドロ・ゴンザレス・イニャリトゥ◎ 大変な映画を封切で逃していました。説明一切なしでシーンの時系列はばらばら。前後の関係、人物関係などもわからず、途中までは何が起こってるのかもわからない。それでもこれは傑作と言える。ナオミ・ワッツ、いいです。『ダイアナ』と違って普通の人間の喜怒哀楽が生々しい。 21g=魂の重さ ベニシオ・デル・トロ ショーン・ペン
25年目の弦楽四重奏
2012年
ヤーロン・ジルバーマン◯ タイトル通り、通好みの渋い映画でした。イモジェン・プーツは過去、暗い役柄ばかりだったが、ぱっと明るい花が咲いたようなキャラ。将来のトップスターを狙える女優なので、どんどん魅力を引き出してほしい。 フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナー、クリストファー・ウォーケン
二重生活
2016年
岸善幸◯ いくら初心者といってもあのへばりつき尾行はあかんだろ。観ている間、考えることが多々あったが、ここに書けないことばかり。門脇麦はいい役者です。一見普通の顔してながら、微妙で複雑な内面を垣間見せる。ドラマが終始緊迫感を持続させるのは、役者と原作の力と思う。 原作:小池真理子 哲学の修士論文を書くために尾行
22年目の記憶
2014年
イ・ヘジュン◯ 本来的には金日成に似てないソル・ギョングだが、意外にさまになっている。けど、22年という時間差を考えると、老けさせすぎ。 首領様になりきってしまった大根役者 パク・ヘイル
22年目の告白 私が殺人犯です
2017年
入江悠◯ 想定外の面白さ。途中からストーリーを変えたが、オリジナルを超えたか。[YouTube] 韓国のサスペンスのリメイク 伊藤英明、藤原竜也
日曜日の散歩者 わすれられた台湾詩人たち
2015年
ホアン・ヤーリー◯ 詩を現代アートの映像作品に転換している。言葉と文章、絵と彫刻、音楽と写真と映像の総合芸術。ドキュメンタリの枠組みからは完全に逸脱している。欲張りすぎな印象もあるが、刺激的で、もう一回観たい。 日本語で新しい台湾文学を作ろうとした詩人たち
日輪の遺産
2011年
佐々部清◯ 森迫永依が順調に女優としてステップアップしてるのは嬉しい。20人の少女の腕章が横書きなのが気になった。終戦の年、すでに横書きがあったか。他はすべて縦書き(右から左への縦書き一文字改行も含めて)だったので気になっている。 マッカーサーの財宝を隠匿する 堺雅人/中村獅童/八千草薫
にっぽん昆虫記
1963年
今村昌平☆ ほとんどのシーンを忘れていた。おかげでまっさらの頭でこの傑作を見つめ直すことができた。女は逞しく生きていく。それは男女不平等の世の中で獲得した知恵によるものだ。ただその知恵が浅薄にすぎるのが気にかかる。この映画でも長い目で見れば女たちは幸せでない。左幸子が長い人生を無理なく一人で演じている。個人的には今村監督のベストワン。[YouTube] 吉村実子、春川ますみ、小沢昭一
にっぽんのお婆ぁちゃん
1962年
今井正◯ 高齢者問題を扱ったコメディ。重たいはずの話が、じいちゃんばあちゃん俳優総出演てなかんじで、にぎやかだ。お気に入りの織田政雄とか中村是好とか渡辺篤なども出ていて、楽しくなる。 自殺したいばあちゃん二人 北林谷栄、ミヤコ蝶々、飯田蝶子
続二等兵物語 五里霧中の巻
1956年
福田晴一◯ B級コメディのつもりで観たが、『真空地帯』ばりのシリアスで熾烈な軍隊ドラマだった。いちおうはコメディだが、笑える映画ではない。エンドは人情に流されて甘くなったのが惜しい。役者としての伴淳三郎の力量は十分うかがわれる。[DVD] 花菱アチャコ/幾野道子/伊吹友木子/田端義夫/山茶花究/関千恵子
日本で一番悪い奴ら
2016年
白石和彌◯ まるで北海道警綾野組。警察にこんなのがいたら、市民は安閑としてられません。[Netflix] 警察の組織ぐるみ犯罪 綾野剛、ピエール瀧
日本の悲劇
1953年
木下恵介◯ 木下版『にっぽん昆虫記』。甘さが欠点だった木下恵介が、徹頭徹尾辛口で描ききった映画だった。把握してない中にこんな傑作がまだ残っていた。観終えて茫然と立ちすくんでしまう。[YouTube] 戦後混乱期の一家 望月優子、桂木洋子
ニューヨーク、恋人たちの2日間
2012年
ジュリー・デルピー◯ おばさんデルピーを見たくなくてパスしてたのだが、ついに見てしまった。ほとんど三枚目顔に変身している。迷惑で非常識な三人組(父・妹・妹の恋人)がパリから押しかけてくる。僕なら半日でブッ切れて追い出してしまいそう。タイ式マッサージ店で小さく流れてる曲が『黒田節』。ちゃんとエンドクレジットにも挙がってるのを見てびっくりした。 ジュリー・デルピー 、クリス・ロック
ニライカナイからの手紙
2005年
熊澤尚人△ スクリーンで観たほうがよかったかもしれん。やや不鮮明なDVD映像で観ても入り込めるほどには演出と映像に力がない。気持ちが入ってれば、ラストで母親からの手紙を再読するシーンは涙なしには観れなかったろうと、思いながらかなり冷静に観てしまいました。[DVD] 毎年誕生日に東京の母から手紙が届く 蒼井優
人間失格 ディレクターズカット版
2009年
浅香守生◯ 今どきセルに描いてるはずもないが、セルにバックライトをあてたようなぼやけた光がほとんどの映像にかぶさる。それが夢幻の世界に入り込んだ気にさせる。クリアなCGアニメではこの手触りを出せないでしょう。邪悪なものに魅入られ、転落していく主人公。こんなのに自分をダブらせまいと、必死で抵抗している自分がいる。 太宰治原作
寝ても覚めても
2018年
濱口竜介◎ 強烈な映画。ヒロインの唐田えりかはあどけない顔を崩さない。だからこそインパクトがある。占部房子に雰囲気の近い人がいる、と思ったら占部房子だった。顔もろくに映らない役で。 東出昌大、瀬戸康史、山下リオ、伊藤沙莉、田中美佐子、渡辺大知、仲本工事
ノウイング
2009年
アレックス・プロヤス◎ ニコラス・ケイジ。今はひどいですが、この頃はまともな俳優でした。人類の滅びを受け入れる潔さに感動する映画です。ただ、前半の予言部分と後半の「選ばれし者」が乖離してると思ったので、再見した。やはりつながらない。気持ち的には傑作の9点なんですが。[Netflix] 50年前のタイムカプセルから人類破滅の予言
ノクターナル・アニマルズ
2016年
トム・フォード◯ 理屈で捉える映画ではないと思う。解釈はいろいろに分かれそう。僕の目には「これってホラー映画?」だった。 元夫から送られてきた小説 エイミー・アダムス、ジェイク・ギレンホール
残された者 北の極地
2018年
ジョー・ペナ◯ こういう厳しいサバイバルもの、好きなんです。若い女性のほう、ドラマに関わってくると思ったのですが。マッツ・ミケルセンはなんというか、助かるほうへ行かなきゃならんところで、なんで逆行くかね。 遭難した二人
ノック 終末の訪問者M・ナイト・シャマラン◎ シンプルな映画は強い。よけいなエピソードを一切さしはさまなかったのは正解。『エアベンダー』みたいなのもあったから一時は信頼が地に落ちてたけど、見事幕内復帰。 世界の終末と家族の命を天秤にかけた非情な決断を迫られる一家 デイブ・バウティスタ
のぼうの城
2012年
犬童一心
樋口真嗣
◯ 面白い。劇場で逃したのは不覚。だが、スケールの大きさを感じないので、意外にパソコン画面でも十分だったような。実話を題材にした映画は全体ストーリーのうちどこらへんまでが本当なのかわからなくて困る。個々のエピソードは全部嘘とわかるけど。[DVD] 野村萬斎/榮倉奈々/成宮寛貴/上地雄輔/山田孝之/中尾明慶/尾野真千子/芦田愛菜
野良犬
1949年
黒澤明◯ 地道な刑事の捜査もので、好みの映画。三船敏郎のリアクションや行動だけが変。居所を突き止めたホシ(銃を持っている)を一人で逮捕に向かう(丸腰で)。署から表彰されるのは変。懲罰ものです。 盗まれた新米刑事の拳銃が犯罪に使われる 志村喬
のんちゃんのり弁
2009年
緒形明◎ この映画の魅力はメインのキャラがみな、月並みを排してること。物語もパターンから外れていくところに魅力がある。小西真奈美にはコメディエンヌの可能性を見てたので期待していた。本人は気合い十分で、たっぷり楽しませてくれた。脇の役者もベテラン・若手、達者な人が多い。中でも岡田義徳演じる元夫が面白かった。目の前にいたら張り倒したくなるだろうけど。 夫を捨てて自立をめざす女 村上淳/岸部一徳/佐々木りお
パーク アンド ラブホテル
2008年
熊坂出◎ 大手と違って自由度の高いマイナー映画に触れるとほっとするところがある。フィルムは16ミリなのか粗く、サウンドはノイズいっぱい。カメラは手持ち。アナーキーな気分あふれるラブホの屋上公園「アジール(解放区)」。そこに吸い寄せられる女たちの一人が神農幸。彼女の虚無的な瞳がどこへ向けられてるのかが気になる。いったいどこを見てるんだろうか。 りりィ、梶原ひかり、ちはる
her 世界でひとつの彼女
2013年
スパイク・ジョーンズ◯ 『寄生獣』を連想した。男と二人三脚する新たな高等生物。サマンサはミギーと同じ。リアルな生きもの。スカーレット・ヨハンソンが姿を現わさず、むさ苦しいおっさんが主演なので敬遠してたが、はまりこんでしまった。傑作ですよ。 パソコンのOSに恋した男 ホアキン・フェニックス
バード★シット
1970年
ロバート・アルトマン◯ でたらめなエネルギー満載。カラスのフンでどうやって人を殺せるのかがわからない。シェリー・デュヴァルのデビュー作です。ほとんど彼女目当て。ロバート・デュヴァルがお父さんと、ずっと勘違いしてました。クレア・デュヴァルも無関係だった。 人力飛行を目指す少年
パートナーズ 盲導犬チエの物語
2010年
下村優◎ 人権啓発映画で犬もの。ナメきっていた。しかし泣かされた。脚本がていねいでよく作られている。盲導犬の誕生から末期まで、節目ごとのイヴェントをきっちり織り込み、盲導犬というものがどういうものかを手際よく見せている。特に目新しいものがあるわけではない。ていねいに描き込むことで感動を盛り上げている。不意をつく笑いがまた絶妙で。 浅利陽介/大塚ちひろ/川上麻衣子
バードピープル
2014年
パスカル・フェラン◯ 教科書的な映画作法からの逸脱が心地よい。ヨーロッパのスズメは日本のより地味な色合いだ。日本人役のタクリート・ウォンダラーは誰が見ても中国人でしょう。 スズメに変身するホテルメイド アナイス・ドゥムースティエ
バード・ボックス
2018年
スザンヌ・ビア◯ スリリングなホラーサスペンスの良作。なんだけど、襲いかかる地球規模の危機についてなんの設定もしてないのが気になった。そして何も解決せずに終わってしまう。サンドラ・ブロックが出産するシーンがある。吉永小百合顔負けの若化けだ。[Netflix] 自殺衝動の症状が世界中で蔓延
ハート・ロッカー
2009年
キャスリン・ピグロー◯ ピグローらしい映像作品に仕上がっている。武骨でいながら繊細。ハラハラドキドキもなかったのは想定外だった。『アバター』を破って米アカ作品監督を獲ったときは嬉しかったが、アカデミー協会員はまたしても作品の中身ではなく外側状況だけで判定したように見える。とはいえ、代わりの2009年度ベスト作品は何もなく、該当作なしとしか言いようがない。 バグダッドの爆発物処理班 ジェレミー・レナー
パーフェクト・ドライバー 成功確率100%の女
2022年
パク・デミン◎ パク・ソダムの面構えに惹かれて観た。見どころはオープニングのド派手なカーチェイスのみかもと思ってたが、全編見どころだらけ。韓国のアクション映画がこのレヴェルを続けられるなら、ハリウッドのアクション映画は不要です。唯一、無理筋すぎるエンドがちょい惜しかった。 ヤバいブツを運ぶ運び屋
ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから
2020年
アリス・ウー△ 引っかかる部分が多く、入りそこねる。中国人少女の学業成績が飛び抜けて優秀なことを強調しすぎているような。米国人(特に男性)はアホばかり。そういう傾向はあるにしても、やりすぎで反感を買う。近年は米国人の中国嫌いが高まっていることを意識すべき。[Netflix] ラブレターを代筆する内気な女の子
ハート・オブ・ストーン
2023年
トム・ハーパー◯ プロデューサーも兼ねるガル・ガドットを際立たせるための映画。だけど、他の役者も粒が揃っている。ソフィー・オコネドーとか。いい役者はみなコメディのセンスもある。この映画でコミカルな演技してなくても、滲み出るものがある。[Netflix] 世界を支配しうるAIシステムが悪党に奪われる
PERFECT DAYS
2023年
ヴィム・ヴェンダース△ 悪くとれば、意味ありげなシーンを連ねて結局何もなし。ドイツ人監督にとっては日本人の職人的な仕事ぶりが珍しかったんでしょうね。主人公の日常は自分に近いものがありながら、共感には至らず。〔船〕 トイレ清掃人の日々 役所広司
パーマネント野ばら
2010年
吉田大八☆ 顔は三十女。なのにしばしばしぐさが高校生。ヒロインのアンバランスの理由をラスト近くまで気づかず。ストーリーのない話かと思いかけ、途中からの転調に足元をすくわれた。菅野美穂は写真以外では初めて見ます。動いてる彼女を奇妙なものを見るように眺めていました。不可思議な映画世界。彼女以外には考えられない配役です。少女時代の役の子(佐々木りお)もうまいが、『のんちゃんのり弁』ののんちゃんでした。 西原理恵子原作 小池栄子、池脇千鶴
ハーモニー 心をつなぐ歌
2010年
カン・テギュ◯ 押しの強い顔のキム・ユンジンは苦手だが、脇のアンサンブルに魅力があった。特に対照的な、内にこもる顔のカン・イェウォンが。『スウィングガールズ』風の予定調和だが、終盤に予測不能な演出があって不意をつかれる。引き締まったエンディングともども、満足度は高い。『ダニー・ボーイ』と『ソルヴェイグの歌』。こんなに心に響いたのは初めて。 女刑務所で合唱団を結成
ハイドリヒを撃て!「ナチの野獣」暗殺作戦
2016年
ショーン・エリス◯ ハイドリヒ祭りと銘打ったか打たぬか、『ナチス第三の男』と同日公開の京都シネマ。どうせやるならハシゴして一気に観れるようにしてほしかった。暗殺も事後の逃走も、不手際・無計画が露呈して素人くさい。リアルであることはわかるが、虚しさが残る。 キリアン・マーフィ
薄氷の殺人
2014年
ディアオ・イーナン◯ グイ・ルンメイなのでてっきり台湾映画だと思ってた。台湾も中国の小都市と風土がまるっきりいっしょ、なんて勘違い。説明しない映画だし、本筋と無関係なエピソードにインパクトがある。その土地と人を見せる映画でもある。 連続殺人の陰に謎の女 リャオ・ファン
瀑布
2021年
チョン・モンホン◯ 台湾映画は平均して質が高いので要チェック。二人家族で母は若年性アルツハイマー、娘は未成年。経済的に破綻寸前。悲惨な設定で引いてしまいそうだったが、観てるうちに引き込まれる。後半の都合よすぎる展開でのハッピーエンドはいただけない。[Netflix] 精神病を発症した母親
バクラウ 地図から消された村
2019年
クレーベル・メンドーサ・フィーリョ、ジュリアーノ・ドルネリス△ 上映時間の2時間11分がちょっと気になっていた。やはり長い。テンポが鈍い。キワモノはたたみかけるようなスピード感がほしい。 何者かに攻撃される村 ソニア・ブラガ、ウド・キアー
爆烈野球団!(YMCA野球団)
2002年
キム・ヒョンソク◯ 痛快!面白い! ソン・ガンホの動物的センスとでもいうべき演技感覚がヴィヴィッドに生きる。日本軍が悪役だけど、露骨でも極悪でもないんですね。[DVD] 韓国野球創成期 キム・ヘス、伊武雅刀
バケモノの子
2015年
細田守◯ 気乗りしなくて劇場をパスしたアニメ。だったけど、さすがに細田守だ。面白い世界だ。だけどもう一つ、人間世界のほうでトンデモな大逆転をかましてくれたら大傑作になってたような。[YouTube] バケモノ世界で修行する少年
箱入り息子の恋
2013年
市井昌秀△ 評価に困るが、この映画は主役たる星野源に対してはなから好感を持ってなきゃ厳しいと思う。ゲームオタクのパラサイトではダメダメすぎて引いてしまう。意外にもといえば失礼だが、中年男優の二人(平泉成、大杉漣)が好演している。[Netflix] 夏帆、森山良子
パコと魔法の絵本
2008年
中島哲也◎ 爆笑と泣かせの波状攻撃で、乗せられまくり。客席からもあちこちからすすり泣く音が。そろってド派手メイクで、妻夫木はなかなかわからん。小池栄子もわからんかった、胸見るまでは(苦笑)。そんな中で土屋アンナの存在は際立つ。凶暴かつ繊細なキャラを好演していた。地のままかな?と思えるほど。 一晩寝たら記憶を失う少女 役所広司、アヤカ・ウィルソン
運び屋
2018年
クリント・イーストウッド△ ぶざまに演じてくれれば傑作になりえたけど、そこまでイメージを壊せなかった。役の立ち位置もふらついてるように感じ、キャラがわかりづらい。警官相手ならうろたえるのに、なんで麻薬組織の中ではリラックスしてられるのか。 コカインの運び屋 クリント・イーストウッド、ブラッドリー・クーパー
バサジャウンの影
2017年
フェルナンド・ゴンサレス・モリナ◎ 地味なスペイン製の警察もの。と思ってたら終盤にトンデモな展開へと突入する。ヒロインである女性警官の家族の問題がフラッシュバックする。鬼母は姉に対しては優しいのに、妹であるヒロインを少女時代に虐待しまくり。殺されかかってようやく母親から引き離されるという黒歴史を背負っている。連続殺人事件なんてもうどうでもいいや、というほど。タイトルのバサジャウンは伝承で、村人の守り神みたいなものだと。[Netflix] 少女たちへの連続殺人事件
パシフィック・リム
2013年
ギレルモ・デル・トロ△ 怪獣バトルに夢中になってシナリオがおろそかになっている。同日、先に観た『ホワイトハウス・ダウン』が綿密であっただけに雑さが気になった。長尺だが、配役を見るとだいぶシーンをカットしたみたいで、出てない役が多い。芦田愛菜の両親をカットしてしまっては話がつながらん。 悪の巨大生命体VS人型巨大兵器 菊地凛子、チャーリー・ハナム
はじまりのみち
2013年
原恵一◯ 濱田岳がおいしい役を拾っている。彼にとっては難しい役でもないのに高評価を受けそうな役。これで賞を獲ったりしては彼のためにならない。鼻水まみれで熱演の加瀬亮。涙もしっかり出してほしかった。木下惠介作品映像の引用は量的に多すぎる。 母と疎開先に向かう木下惠介 田中裕子
ばしゃ馬さんとビッグマウス
2013年
吉田恵輔◎ 夢を追い続けるのか、諦めて降りるのか。シビアすぎる話で、創作する者としては他人事でいられない。主人公(麻生久美子)ととりまく人たちとの関係性がヴィヴィッドで興味深かった。特に岡田義徳とのからみ。いつもうさんくさい人物なので警戒してたら、今回いいやつなんだ。 脚本家をめざす卵たち 安田章大/山田真歩
バスターのバラード
2018年
ジョエル・コーエン、イーサン・コーエン☆ 西部劇という一点つながりのバラバラな6篇オムニバス。リーアム・ニーソンとハリー・メリングの話は心底気持ちが冷え込む。最後に見せるニーソンの下卑た薄笑いは絶品。ゾーイ・カザンのエピソードに心惹かれる。が、やはり皮肉なエンディング。意地の悪い監督。[Netflix] ティム・ブレイク・ネルソン、トム・ウェイツ
パターソン
2016年
ジム・ジャームッシュ◯ 手書きで書かれる詩が美しい。文章が美しい。日本語とは違った美しさがある。エンドクレジットを見てブルドッグのネリーが映画完成前に亡くなっていたことを知った。作品というものは(この場合は詩だが)、まわりがもてはやすほどには作者自身は大層に思ってない。消失してもさほど落ち込まない。 バス運転手の詩人
アダム・ドライヴァー
裸足の1500マイル
2002年
フィリップ・ノイス△ 人種的蔑視、文化的蔑視、過酷な逃避行がストレートに描かれた点は好感が持てる。キリスト教文化の傲慢さへの指摘はこの映画に限らない。 白人とアボリジニーとの混血児隔離施設から脱走した少女
はちどり
2018年
キム・ボラ◯ 誰だよ『冬の小鳥』系だと言ってたの。僕? イマイチ気分で観てたら、漢字塾教師(キム・セビョク)が登場したとたん、シャキッとなった(美形とかいう意味ではなくて)。そうなんだ。一日一日を大切に生きねば。 1994年の韓国中二女子の日々 パク・ジフ
HACHI 約束の犬
2009年
ラッセ・ハルストレム◯ 現代では希薄になりつつある愛と絆を描き、きっちり泣かせてくれます。点数もハチにしたかったけど、制作側の計算もちらほら見え隠れしてたりして。[DVD] 『名犬ハチ公』のリメイク リチャード・ギア
Passing 白い黒人
2021年
レベッカ・ホール△ ルース・ネッガは白人として通用するかな。テッサ・トンプソンは絶対無理。なのに白人のふりをしてる。ジェシカ・アルバとか、無理なく白人を演じられる黒人女優はいるのに。女優の監督デビュー作をたてつづけに観たけど、オリヴィア・ワイルド以外はみな、肩に力が入りすぎてる。[Netflix] 白人になりすましている黒人女性
パッセンジャーズ
2008年
ロドリゴ・ガルシア△ 世のガッカリ映画の1本とかはこの映画だったか『パッセンジャー』のほうだったかと思案しつつ。こちらで正解だったけど、言われるほどひどい映画じゃない。妙に期待をふくらませた人の非難轟々はわかる気がする。[Netflix] 飛行機事故の生存者をカウンセリングする医者 アン・ハサウェイ
パッチギ! love&peace
2007年
井筒和幸◯ 第一作の印象が薄かったので期待値は低めだったが、個人的にはこの第二作のほうが好きです。前日観た『祇園囃子』とつながる印象がある。どちらも芸能世界の醜い現実を描いている。中村ゆりのエピソードは元になってる話がどこかにあったようだけど、思い出せず。[YouTube] 在日の青春 西島秀俊/藤井隆/風間杜夫/キムラ緑子/手塚理美
BAD LANDS バッド・ランズ
2023年
原田眞人X 詐欺師たちは金持ちから巻き上げるとかぬかしてるが、カモるのは決まって社会的弱者。金持ちは彼らに騙されない。彼らをみてると、金に執着するのは金持ちじゃなく貧乏人のほうだという気になってくる。この映画、被害者の視点が完全に欠落している。そういう映画じゃないのだという言い訳は認めない。 特殊詐欺を生業とする姉弟 安藤サクラ、山田涼介
バッドランド・ハンターズ
2024年
ホ・ミョンヘン◯ 『コンクリート・ユートピア』と設定が似ている。こちらはタイトルが悪く、中身とつながらない。毎度のマ・ドンソクは安心して見ていられるが、反面、表情演技の乏しさからワンパターンで見飽きてくる。[Netflix] 大災害で壊滅した世界 アン・ジヘ
バッド・ルーテナント
2009年
ヴェルナー・ヘルツォーク◯ 予期した以上によかった。元のフェラーラ版のストーリーが頭にちらついたが、共通点はほとんどない。たぶんオリジナルよりいい。しかしこれはシネコンでやる映画ではない。普通のアクション映画のつもりで入った観客にはさっぱりわけわからん映画じゃなかろうか。 悪徳警部補 ニコラス・ケイジ、エヴァ・メンデス
ハッピーフライト
2008年
矢口史靖◯ ゆるゆるの宣材ヴィジュアル。同名外国映画があったばかり。大丈夫かと観る前は不安だった。ドラマらしいドラマのないメジャー映画。航空会社スタッフのエピソードだけで終わり、は、さすがになかった。個性的なキャストに魅力があるが、僕的には平岩紙がいちばん目立った。顔だけで笑わせながら、その実チャーミングという、お得な女優。 田辺誠一、綾瀬はるか、吹石一恵、田畑智子、寺島しのぶ
パトリオット
2000年
ローランド・エメリッヒ△ 『ブレイブハート』と比較するのもどうかという気がするが、英国(イングランド)嫌悪が共通する。超極悪(ジェイソン・アイザックス)がやりたい放題。情け容赦ない悪党が出ると映画のグレードがぐっと上がる。[Netflix] 米国独立戦争 メル・ギブソン
パトリシア・ハイスミスに恋して
2022年
エバ・ビティヤ◯ やや猫背なのを知った。『リプリー』『キャロル』など、かつて観た映画が次々と。ひたりきるということはなく、淡々と眺めた。 著名作家の姿を追うドキュメンタリ
ハナ 奇跡の46日間
2012年
ムン・ヒョンソン◯ 話はセオリー通り。結末はわかってる。それでも観てるうちに熱くなってくる。ペ・ドゥナはどんな映画でもピタッとはまる順応力がある。演技は抑えめで、最小限の変化で表現している。韓国の他の若手たちとは対照的だ。冒頭に「この映画は実話に基づいたフィクションである」と出る。フィクションなのに「真実の物語」と嘘こく実話映画が溢れかえる中、好感が持てる。 卓球の韓国・北朝鮮合同チームが中国と決勝戦 ハ・ジウォン
花咲く家族
1947年
千葉泰樹◯ モンスターマザーのお話。滝花久子が、夫の死後、依怙地になって子供たちを従わせようとする母親を好演している。タイトル通りのハッピーエンドで感動したが、現実にはありえない。モンスターマザーは治癒しようのない業病だ 若原雅夫、折原啓子、小林桂樹
花ちりぬ
1938年
石田民三◯ 祇園の芸妓の置屋を舞台に女たちの世界。男の姿はなく、声が少々のみ。男がいないと女たちは辛辣な本音をポンポンと。映画は置屋を一歩も出ないが、緊張感のあるドラマを作り上げている。時代の変わり目は、否応なく芸妓たちの世界にも押し入ってくる。[YouTube] 幕末の騒乱期の祇園を舞台に 花井蘭子
花のあと
2010年
中西健二◯ よかったんだけど、いかにも西洋風(あるいは現代風)な音楽が無神経に聞こえるし、終盤にそれは変だろという場面も。北川景子はいいです。お姫さま然としてるシーンより、竹刀をかまえ、あるいは殺意と怒りに煮えたぎって真剣を持つときの姿が美しい。うっとり。 藤沢周平原作 謀殺された男の仇討ちをする女 甲本雅裕
ハナレイ・ベイ
2018年
松永大司◯ 去年見落として後悔していた一作。観てよかったと思うものの、吉田羊の役年齢を無視した見た目には違和感がある。二十代には見えないし、五十代にも見えない。なんぼ生年月日を公表してないといっても。パッパラパーの村上虹郎は、重くなりかける空気を救っている。 村上春樹原作 息子が死んだハワイへやってくる母
バハールの涙
2018年
エヴァ・ウッソン◯ 制作会社のマークが招き猫で、社名はManeki Films。日本は無関係。フランスの会社らしい。演出としては、わかりきったことをセリフで説明させたりとか、もどかしい部分がある。 息子たちをISから救出するため女性部隊を率いる ゴルシフテ・ファラハニ
母と暮せば
2015年
山田洋次◯ 台本のセリフがこなれてないのが気になったが、じんわりと悲しみの突き刺さってくる映画でした。黒木華はオールマイティで信頼の証みたいな役者です。この映画は広岡由里子をはじめとして、脇がしっかりはまっている。 長崎の原爆で死んだ息子が母に会いにくる 吉永小百合、二宮和也
母なる証明
2009年
ポン・ジュノ◯ 苦手な母バカもので避けてたけど、とんでもないものが見れるかもとの好奇心が勝った。予想つかない展開で、伏線貼りまくりだが、読めるわけない。ラスト近く、息子が母に鍼治療のケースを渡すシーン。うかつにもこのシーンをしっかり見ていなかった。あとになって、えーっ!まさか、そういうことだったの?という疑念が。 息子の無実を証明しようと暴走する母 キム・ヘジャ
パピヨン
2017年
マイケル・ノアー◯ なんの映画のシーンかわからなくなってたエピソードが旧『パピヨン』だったことに気がついた。修道女にかくまってもらったら、だまされて収容所に「売られる」エピソード。その時の院長は言う。「あなたにとってよかれと思って」とかなんとか。キリスト教の欺瞞性を的確に描いている。このシーン、新『パピヨン』ではキリスト教に忖度したのか批判性を封印した。流刑地を自分の居場所と思いさだめるドガ(ラミ・マレック)など、いいシーンはあったんですよ。[Netflix] 孤島の監獄から脱獄 チャーリー・ハナム
パブリック・エネミーズ
2009年
マイケル・マン◯ 鮮やかなエンドに虚を突かれる。愛の物語とは思っていなかった。個人的には、格好をつけない、ありのままのリアルなディリンジャーを見たい。そういう映画ではないと、わかってはいるんだけど。 ジョン・ディリンジャーの最後の一年 ジョニー・デップ
浜の朝日の嘘つきどもと
2021年
タナダユキ△ タナダユキは監督作品が非常に多いけど、代表作がない。本作も惜しいけど、演出にゆるみがあってあと一歩。大久保佳代子は個人的にブレイクしてる印象。今回はこの人が映画を盛り立てている。タイトルは意味不明だが、観ても意味不明。 閉館目前の映画館を立て直そうとする女性 高畑充希、柳家喬太郎
パラサイト 半地下の家族
2019年
ポン・ジュノ◎ 浮き草の上でかろうじて生きてる感覚は僕にもあるので、他人事ではない。この映画はどこを切り取っても韓国映画そのもの。その上質な部分を寄せ集めている。先の展開は読めない。 富豪にとりつく寄生虫家族 ソン・ガンホ、チャン・ヘジン
BALLAD 名もなき恋のうた
2009年
山崎貴◎ 武井証クンはいいキャラを持った俳優だ。ラストのクライマックス部分は原案の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦』とちがい、ゆるゆる延ばしすぎる。あそこはたたみかける急展開がほしい。山崎監督は、ここぞという見せ場をたっぷり見せたいんだろうけど、間延びして、出ていた涙が引っ込んでしまった。合戦シーンや個々の役者には不足はない。好感度はきわめて高い映画です。 戦国時代にタイムスリップ くさなぎ剛、新垣結衣 ばらっど〜
パラノーマル・アクティビティ 第2章 TOKYO NIGHT
2010年
長江俊和◯ 面白い。こけおどしやキワモノに流れそうな題材を、ぐっと抑えてリアルに撮っている。足を複雑骨折した姉(青山倫子)と、家事を受け持つ大学生の弟(中村蒼)。抜けたやりとりが演技に見えない。怖さはさほどない。それは僕の感覚なので、参考にはならん。 夜中にうごめく何か
パリ13区
2021年
ジャック・オディアール◯ なんでこんなマイナーな映画にたくさん入ってるのか。と思ったら成人指定。そんなの期待して来るんか。パリの街と人々。ひたすら眺める。自由闊達に恋愛できるのが羨ましい。 若者たちが交差する街、パリ ノエミ・メルラン
パレード
2024年
藤井道人X 長澤まさみに主演としての華がない。ベテラン俳優たちは役どころを掴みきれず、戸惑っている。監督、多作すぎて雑になってる。[Netflix] 死者たちの世界 長澤まさみ、坂口健太郎
ハロウィン
2018年
デヴィッド・ゴードン・グリーン◯ 被害者側と加害者側。追う者と追われる者の立場が逆転しかけている印象。再対決に備え、元の被害者が40年をかけて準備している。れっきとした狂気です。狂気と狂気の激突。常識を超えた悪鬼には非常識が唯一の対抗武器。 第一作から40年後の再対決 ジェイミー・リー・カーティス
パワー・オブ・ザ・ドック
2021年
ジェーン・カンピオン◯ コディ・スミット=マクフィーがウサギを解剖するシーンは何かの伏線かと思ったら、そうつながるのか。[Netflix] ベネディクト・カンバーバッチ、キルスティン・ダンスト、ジェシー・プレモンス
ハワイ・ミッドウェイ大海空戦 太平洋の嵐
1960年
松林宗恵◯ 戦後の戦争映画だけに、エンドは侘しく厳しいエンド。海戦の敗北を隠すため、生き残りを隔離した悲しいエピソードが語られる。2019年の米国映画『ミッドウェイ』(日本未公開)もちょっと観てみたい。 夏木陽介、佐藤允
ハンガーゲーム
2012年
ゲイリー・ロス△ 反則だ。話終わってない。ツッコミどころ多々な反面、いいところも多い。ジェニファー・ローレンスはハードな映像の中に映える大輪の花だ。生きていくことは日々闘い。リアル世界においても。死闘をくりひろげる24人の中に『エスター』がいた。あのインパクトが強すぎて出演作に恵まれない。殺人鬼しかとれない子役って、あんまりだ。 24人の子供たちの死闘を国中に生中継 ジョシュ・ハッチャーソン、ウディ・ハレルソン
バンク・ジョブ
2008年
ロジャー・ドナルドソン◯ 銀行の貸金庫に侵入したら、やばい記録や写真がゾロゾロ。おかげで警察・諜報機関・黒社会から追われる強盗グループ。久々、ガツンとくるよな犯罪映画でした。脇の面々が人生の履歴を映したような顔を見せて、作品に厚みを加えている。 王室スキャンダル写真を銀行から盗む ジェイソン・ステイサム
半世界
2019年
阪本順治◯ 稲垣吾郎は職人としての体の動きがこなれてないのが気になる。脇の役者も同様で、演出が行き届いてない。池脇千鶴はさすがといおうか、独自の存在感をかもしている。 田舎へ帰ってきた元同級生 長谷川博己、渋川清彦
ハンターキラー 潜航せよ
2018年
ドノヴァン・マーシュ◯ 話は無理筋、無茶すぎ。でも、潜水艦ものにはなぜか激しく興奮してしまう。ロシアの艦長が兵士一人一人の名をあげて呼びかけるシーンは感動的。個人の存在が否定されてるに等しいロシアだからこそ。[Netflix] ロシアで軍事クーデター ジェラルド・バトラー
ハンナ
2011年
ジョー・ライト◯ 映画館では期待して失望した記憶がある。何に失望したのかは思い出せなかったが、陰謀にあるべきスケール感の欠落が大きい。オリヴィア・ウィリアムスがシアーシャ・ローナンの母親役だと記憶してたが、別の役だった。母親は、この時名前も知らなかったヴィッキー・クリープス。 戦闘マシンとして養育された少女 エリック・バナ
ハンナ・アーレント
2012年
マルガレーテ・フォン・トロッタ◯ 事実を公表したとたん、蜂の巣をつついたような騒ぎになる。事実を見たくない者、隠蔽したい者たちがハンナに牙をむく。アイヒマンが単なる無能な官吏にすぎなかったこと(この見方に僕は若干の疑問を持つ)、ユダヤ人指導者たちがナチスドイツによる同胞の「移送」に協力していたこと。この二つは今じゃこの問題に関心を持つ者なら誰でも知っている(と思う)が、当時は大変な衝撃だったろう。ハンナがイスラエルに抹殺されなかったのは、当時すでに高名な存在だったからと思う。ここに描かれるアイヒマンは未来の日本にも登場する。特定秘密保護法に従って粛々と悪をなす官僚。 アイヒマン裁判リポートを公表した哲学者 バーバラ・スコヴァ
ヒアアフター 
2010年
クリント・イーストウッド△ 唐突にエンドになった印象。ラストの急転がわからん。なぜ変化してしまったのか。契機も伏線も見当たらない。これまで数多くのイーストウッド映画を観てきたが、わからん映画は初めてだ。 心に傷を負う三人が出会う hereafter=あの世 マット・デイモン セシル・ドゥ・フランス
PMC:ザ・バンカー
2018年
キム・ビョンウ◯ トランプも金正恩もいない2024年の世界。フィクションなのでやりたい放題。あり得ないを封印して怒涛のアクションが爆走する。高層から落下しながらのアクションもすばらしい。 北朝鮮の要人誘拐計画 ハ・ジョンウ
ビースト・ストーカー 証人
2008年
ダンテ・ラム◯ 素晴らしい。『密告・者』もよかったが、ダンテ・ラムのアクションと映像の感覚は鋭利な刃物のようにとんがっている。いい映画なのに、なんの工夫も見られない邦題が残念でならない。香港や韓国や台湾の映画がヒリヒリするような皮膚感覚で迫ってくる。日本はもたついてる場合じゃない。初めて香港の法廷シーンを見たが、カツラかぶってるのにびっくりした。 証拠物の隠滅を狙って裁判官の娘を誘拐 ニコラス・ツェー、ニック・チョン
ヒート
1996年
マイケル・マン◎ 25年も前に観ている。記憶あるシーンがかけらほどもない。これほどの傑作の映像記憶がすっかり消えてたのは情けない。アル・パチーノは最強。この時が絶頂だ。[Netflix] 銀行強盗VS凄腕の刑事 ロバート・デ・ニーロ
被害者が容疑者となるとき
2023年
ナンシー・シュワルツマン◯ 観てるうちにシャキッと襟を正したくなる映画だった。いかにも米国らしい犯罪社会の闇。日本もだめだけど、日本以上に米国の警察組織がだめになってることを感じさせる。てっとりばやく点数を稼ぐために性被害者を逮捕してしまうなんて。全米でこの手の犯罪行為が蔓延しているなんて。警察はなんのためにある組織なのか。[Netflix] 性被害者を逮捕する米国の警察のドキュメント
東への道
1920年
デヴィッド・ワーク・グリフィス◯ 『浜の朝日の嘘つきどもと』にクライマックスシーンが出てきたので観直した。映画史上に残る名作という評価には疑問もあるが、クライマックスだけでも一度は観るべき。今ならCGでなんとでも撮れるが、狂気の沙汰のような撮影をやっている。[YouTube] リリアン・ギッシュ
PIGGY ピギー
2022年
カルロタ・ペレダ◯ おデブちゃんが肉屋の娘というのがなんともキツい。映画の満足度はきわめて高い。こういうのをどんどん制作してほしい。 子豚と呼ばれていじめられる娘
ビザンチウム
2012年
ニール・ジョーダン◯ ビザンチウムはホテルの名前。ときおり流れる『コヴェントリー・キャロル』はクリスマスソングと思えないぐらい暗い。これがこの映画にはしっくりなじんでいる。人知れずこっそり人間社会に混じって暮らしている吸血鬼。自分でも書いてるけど、こういうタイプの物語が大好き。『コヴェントリー・キャロル』を調べると、ヘロデ王の幼児虐殺事件(真偽不明)を題材にしてるのだと。暗いはずだ。 吸血鬼同盟から追われる二人の女吸血鬼 シアーシャ・ローナン、ジェマ・アータートン
悲情城市
1989年
侯孝賢ホウ・シャオシエン◯ リバイヴァル公開。エドワード・ヤンの『牯嶺街少年殺人事件』もそうだったが、話がまるでわからんというほどではないけど、シーンの意味が捉えにくく、くたびれる。実は観るの二度目。前に見た時は完全にお手上げ状態。今回はすっと頭に入る、と思ったんだけど。 1945年からの台湾の激動の4年間 トニー・レオン
PIG ピッグ
2021年
マイケル・サルノスキ△ 眠たすぎ。意欲作必ずしも秀作とはならず。ニコラス・ケイジもこれならB級アクションのほうを観たくなる。ブタに名前をつけてないのはけしからんが、クレジットでは役者豚の名前があがっていた。 トリュフ探索用の豚を盗まれた
ビッグ・アイズ
ティム・バートン△ 嘘つきのウォルターの視点に立てば面白くなるかと思って観た。が、こんなやつには感情移入できん! マーガレットの視点で見れば平凡な話だ。マーガレットの絵も凡庸で、こんなのでひと財産作った話は信じがたい。本物のウォルターは無一文で死んだと。めでたしめでたし。 妻の絵を自作と称して売った男 エイミー・アダムズ、クリストフ・ヴァルツ
ヒックとドラゴン
2010年
ディーン・デュボア、クリス・サンダース◯ 人権イヴェントの無料上映。これなら劇場で観てもよかったと思えるほどの出来映え。人権というより竜権なのだが、趣旨はわかる。無益な争いはやめましょうね、ということ。 クレシッダ・コーウェル原作 ヴァイキングの村を襲うドラゴン
必死剣 鳥刺し
2010年
平山秀幸◯ 冒頭、説明あとまわし的にいきなりな展開は小気味よい。この思いきりのよさを全編貫いたら傑作になってただろう。まるで空気の読めてないようなミスマッチのエンディングテーマ曲(alan)は白けてしまう。対照的なキャラの池脇千鶴と関めぐみは、どちらも出演歴中、ベストといえるものを見せている。素晴らしいですよ。 藤沢周平原作 豊川悦司/吉川晃司/戸田菜穂/村上淳
羊の木
2018年
吉田大八△ 役者はそれぞれに頑張ってる。でも語り口が悪いせいか、あちらこちらでボロが出ている。 錦戸亮、木村文乃、北村一輝
ピッチ・パーフェクト
2012年
ジェイソン・ムーア◯ 音楽映画と知らずに"Bitch"だと勘違いしていた。"Pitch"ですね。主演のアナ・ケンドリックも頑張ってるが、芸達者なレベル・ウィルソンが全体を支えてるような。この二人を含め、誰一人として大学生には見えませんが。[Netflix] 大学生のアカペラ・コンテスト
ヒットマンズ・ボディガード
2017年
パトリック・ヒューズ◯ アクションシーンがド派手な上に垢抜けててノリノリ。近年では珍しく「手に汗握る」感を満喫した。極悪はベラルーシ大統領(ゲイリー・オールドマン)。ええ根性や、と思ったが、ベラルーシのことを宣伝で使わないよう配慮してるみたいだ。[Netflix] ライアン・レイノルズ、サミュエル・L・ジャクソン、エロディー・ユン
ヒットマンズ・ワイフズ・ボディガード
2021年
パトリック・ヒューズ△ 前作(『ヒットマンズ・ボディガード』)の想定外のヒットにより、続編が作られた。ちなみに「ワイフズ」のズは複数形ではなく所有格。前作からの積み上げがなく、惰性で作ったっぽい。最大の問題は、前作のヒロイン、エロディ・ユンがなぜか登場せず、代わりにサルマ・ハエックがヒロインだということ。魅力なさすぎる。[Netflix] 殺し屋の妻のボディガード ライアン・レイノルズ
ヒデキ 死霊の罠2
1992年
橋本以蔵△ 前作は池田敏春の傑作だが、続編はどうせキワモノと思って無視していた。観始めると密度の高い映像に没入。だんだんグロ度が激しくなって、結局は意味不明。主演の中島唱子を知ったことのみ収穫。[YouTube] 佐野史郎、平泉成
瞳の奥の秘密
2009年
ファン・ホセ・カンパネラ◎ まるで先の読めない上質のミステリーでした。終盤の写真立ての写真見て、なにかあるなとは思いはしたけど予想外の結末。全員立派にキャラ立ちしてるので、わかりやすくてありがたい。日本映画でものっぺり顔の若手が並ぶとわからなくなるので。捜査当局者が不法侵入して手紙を盗んでる。これがこの世界の普通なんでしょうな。 リカルド・ダリン、ソレダ・ビジャミル
ひとよ
2019年
白石和彌△ 『蜜蜂と遠雷』ではどうにも収まりが悪かった松岡茉優。ここでは不思議ちゃんキャラが噴出し、水を得た魚のよう。暗く重たい映画に唯一の光明。 子供たちに暴力を振るう夫を殺した女 佐藤健、鈴木亮平、田中裕子
ビニールハウス
2022年
イ・ソルヒ◎ 観るかどうか迷ったけど、これは逃してはならない映画だった。ラストのカタストロフは見せず、救いようのないエンディングなのに、妙に清々しい。 貧困のためビニールハウスで暮らす女
日の名残り
1993年
ジェームズ・アイヴォリー△ 格調高く、隅々まで抜かりのない端正な映画。だけどアクビが止まらん。執事(アンソニー・ホプキンス)は仕事に関わるすべてにアンテナを立てまくるが、そこから外れる部分には盲目。こういう人に惚れても無駄。あそこまで言って通じないニブトンカチはほっときなさい。 カズオ・イシグロ原作 エマ・トンプソン
ビバリウム
2019年
ロルカン・フィネガンX IMDbの評価が5.8と低かったのは納得できた。映画の出来はともかく、不快感を意図的にあおっている。バッドエンディング映画はよく観たが、この映画は全編を通じてバッドだった。 出られない住宅地に閉じ込められた若夫婦 Vivarium=動物の飼育場
劇場版 響け!ユーフォニアム 誓いのフィナーレ
2016年
石原立也◯ 同じような顔ばかりで見分けつかず、前半は入りきれなかった。後半に入って大きなドラマが入り、乗っかることができた。努力して何かを達成した場合、形あるものが何も残らなくても自信が身につくことが大きい。それはあとになって気づくことではあるが。[Netflix] 全国大会をめざす北宇治高校の吹奏楽部
ひまわり
1970年
ヴィットリオ・デ・シーカ◎ たぶんスクリーンでは初めてと思う。ウクライナで撮影されたという。その意味でも価値ある映画。結婚して子供もいる。だけど明らかに幸せじゃない。過去に戻ってやり直したく思っても叶わぬ。哀しみが一気に押し寄せるラストシーンで感きわまる。 戦争に引き裂かれる男女 マルチェロ・マストロヤンニ、ソフィア・ローレン
ひみつの花園
1997年
矢口史靖◎ よくぞこんなデタラメで無謀の極致みたいな映画を作ったもんだと感動する。西田尚美のいいかげんヒロインは、『OUT』での自己チュー妊婦へとしっかりつながっている。エンドクレジットで『春咲小紅』が流れた。サントラCDには入ってるけど、映画の中にもあったという記憶はなかった。CDをまた聴き直した。[YouTube] 大金持ち逃げの女性銀行員
ヒメアノ~ル
2016年
吉田恵輔☆ このところずっと、いろんな意味で「ヤバイ系」の映画ばかり観てる気がする。森田剛が演じるこの連続殺人犯もまた、振り切れている。それでいてごく普通にいそうな危うさ。他の殺人鬼と違って妙に感情移入したくなるやつです。 濱田岳、佐津川愛美、森田剛、ムロツヨシ、山田真歩、山中聡
百円の恋
2014年
武正晴◎ 震えがきた。荒々しく生々しい。 安藤サクラ、新井浩文
ヒューゴの不思議な発明
2011年
マーティン・スコセッシ◯ 観るまでフランスが舞台と知らなかった。となると名前の英語読みが気になる。ジョルジュがジョージ。ユゴーがヒューゴ。それでいて苗字はカブレと仏語読み。それを別にすると2時間超を楽しく観れた。この映画観てもクロエ・グレース・モレッツが美少女に見えるかな。変な顔。 自動人形を修繕する少年 エイサ・バターフィールド
ビューティフル・デイ
2017年
リン・ラムジー◎ 全身からヤバそうな空気が噴出するホアキン・フェニックス。行く手を遮る男たちをハンマーで殴り倒していく。存在そのものがぶっ飛んでいる。 行方不明者捜索人が少女を救出
エカテリーナ・サムソノフ
氷雪の門 樺太1945年夏
2010 (1974)年
村山三男△ この程度の出来映えで「傑作」は誇大宣伝と思うが、考えさせられることは多々あった。9人の女性電話交換手が樺太に踏みとどまって通信インフラを支え、自決したということではなく、終戦直後にソ連が侵攻し、無抵抗の日本人を虐殺したということ。米軍の日本占領が完了する前にそそくさと樺太を押さえるのが目的だ。1974年当時、ソ連大使館の抗議で公開中止に追い込まれたというが、なんらかの政治的な圧力がなければこんな金のかかった大作をお蔵入りにできない。今年の7月下旬、ロシアは第二次世界大戦終結の日を9月2日と新たに制定した。まるでこの映画の公開に慌て、火事場泥棒をごまかそうとしたかのようではないか。描かれてることがすべて真実と思うほど単純ではない。本当に交換手たちが志願して残ったのかどうかも、検証不能だし。 二木てるみ/鳥居恵子/藤田弓子/佐原健二/田村高廣/南田洋子/浜田光夫/栗田ひろみ
ビリギャル 学年ビリのギャルが1年で偏差値を上げて慶應大学に現役合格した話
2015年
土井裕泰◯ それまでおバカギャルイメージのなかった有村架純。パッパラパーのアホ顔があまりにもぴったりすぎて、演技とわかってても素顔に見えてしまう。乗せられて感動する。[YouTube] ビリが1年で偏差値を40上げて慶應大学に現役合格
ビルド・ア・ガール
2019年
コーキー・ギェドロイツ◯ おそろしくパワフルな16歳(演じるのは二十代後半)。この行動力、芯の強さ、真似できない。ビーニー・フェルドスタインは今後どうなっていくのか。水槽で飼っておくと面白そうだが。[Netflix] ライターをめざす16歳
ビルマ、パゴダの影で
2004年
アイリーヌ・マーティー◯ 京都外大にて。この地に安寧は訪れそうもなく、気が重くなってくる。スイス人スタッフは観光PR番組撮影を装って入国し、奥地まで潜入する。DVD上映にもかかわらず映像が非常にクリアで、フィルム撮影みたい。昨今のドキュメンタリは劣悪なビデオ映像ばかりだったので、手を抜かなかったのが嬉しい。独り善がりな決めつけナレーションもなく、事実に徹する態度もいい。独裁国家の陰には独裁大国がある。北朝鮮問題と同根で、この超大国が民主化されない限り、アジアに平和は訪れない。[DVD] ミャンマーの難民キャンプを映すドキュメンタリ
ヒンターラント
2021年
ステファン・ルツォビツキー◎ 第一次大戦後のウィーンが舞台という珍しいサスペンス。役者二人(マティアス・シュヴァイクホファー、アーロン・フリエス)が似てて混乱し、ラスト周辺はもう一回観ないとわからない。とはいえ、映画全体のみっちり構成された世界のヴィジュアルは観るに値する。 ソ連から帰還したドイツ兵が連続殺人事件に巻き込まれる
ファーザー
2020年
フロリアン・ゼレール△ 正直、途中でやめよかと思った。ぼけ老人の主観で語るなら徹底して描くべきだが、それでは映画が崩壊してしまうのか。病状は深刻の度を超している。なんぼ肉親でもこれではたまらん。[Netflix] 認知症であることを頑固に否定する老人 アンソニー・ホプキンス
ファースト・マン
2018年
デイミアン・チャゼルX この映画をどう楽しんでいいのかわからず、途方にくれた。わかりきった話を延々と。ある種の人たちは、アームストロングが月面を歩くのを見るだけで感動するのかも。[Netflix] 宇宙飛行士ニール・アームストロング ライアン・ゴズリング
ファイ 悪魔に育てられた少年
2013年
チャン・ジュナン◯ 悪党どもが誘拐した少年を殺さないで養育した理由がわかったのは、映画を観て何時間もたってから。いちおう説明してるがな。あまりの鈍さに愕然となった。 五人組の悪党に育てられた少年 キム・ユンソク
ファイター、北からの挑戦者
2020年
ユン・ジェホ◯ ビターなテイストにしびれる。ボクサーの映画なら普通、試合シーンをたっぷり入れて盛り上げるのに、それをやらない。ラストのクライマックスすら、ばっさりでエンド。主人公が試合に勝つシーンのないボクシング映画って、たぶん初めて。 脱北女性がボクシングに挑戦
ファイブ・デビルズ
2021年
レア・ミシウス◯ タイトルは村の名前。だけど映画の中で言及がなく、なぜこれをタイトルに持ってきたのかがわからない。ホラーではなく、超自然現象を通じて家庭の問題が綴られる。実質的な主演の少女、サリー・ドラメが豊かな表現力を見せて素晴らしい。 特殊な嗅覚を持つ少女 アデル・エグザルコプロス
ファの豆腐
2011年
久万真路◯ 「ファ」が音階のことだと観るまで気づかず。豆腐屋のラッパです。ファーラー。ラの音を鳴らせない不器用な豆腐屋。商売やるには純粋に質だけ追い求めればいいというものじゃない。商才がなければ成功しません。 菊池亜希子、塩見三省
ファング一家の奇想天外な秘密
2015年
ジェイソン・ベイトマン△ 前衛アーティストというより、世間を騒がせて楽しんでるだけという気がした。こういう環境で育った子供たちがどんなふうに歪んでいくか、というのが話のメインだな。[YouTube] 前衛アーティスト一家 ニコール・キッドマン
PHANTOM ユリョンと呼ばれたスパイ
2023年
イ・ヘヨンX 韓国の珍しく純粋な抗日映画。セリフの大半が日本語なのに韓国人俳優たちが演じていて、違和感が強い。韓国は未だこんな内向き映画を作ってるんだ。悪辣日本人成敗バンザイ映画一本で、韓国映画に対する信頼感がふっとんだ。 ソル・ギョング、パク・ヘス、イ・ハニ、パク・ソダム
ファンフィク
2023年
マルタ・カルボフスカ◯ 同様にトランスジェンダーの子供を扱いながら、映画的な面白さを感じなかった『ミツバチと私』と違い、こちらは弾けまくっている。映画は盛り上がってくれなきゃね。主演女優の魅力も大きい。彼女の上着の背中に意味のないカナ文字で「ホち」と大書されている。これも日本趣味?[Netflix] トランスジェンダーをカムアウトした高校生
フィッシュストーリー
2009年
中村義洋☆ 風が吹けば桶屋が儲かる式の話がどう転がっていくのか、いったい誰が地球を救うのか。まったく予想はつかない。チラシには「映像化不可能といわれた」とあるが、映像向きの話でしょう。適材適所なキャスティングが魅力。ギャグとマジのスレスレの線で正義の味方を演じる森山未來には狂喜乱舞。殺してやりたいほどいやなオヤジを演じた石丸謙二郎も強烈。 伊坂幸太郎原作 地球滅亡を阻止 大森南朋、伊藤淳史、高良健吾、濱田岳、多部未華子
フィフス・ウェイブ
2016年
J・ブレイクソン◯ 強大な力を持つエイリアン軍に対し、生き残った子供たちだけで対決しようとする。あまりにも無理筋でツッコミ満載。けど、エイリアンの悪辣な手口がウクライナを攻撃するロシア軍にかぶって見える。続編を作る気満々だが、ヒットせず、中止。タイトルもわかりにくいし。[Netflix] 異星人の地球侵略 クロエ・グレース・モレッツ
15ミニッツ
2001年
ジョン・ハーツフェルド◯ 凶悪な犯罪者がロシア人で、キレたらどんなひどいことをやらかすかわからないなんて、プーチンみたい。なんとなく顔も似ている。ヴェラ・ファーミガが超若い。すぐにはわからなかったが、目でわかった。[Netflix] エドワード・バーンズ、ロバート・デニーロ
15ミニッツ・ウォー
2018年
フレッド・グリヴォワ◯ 緊張感が半端ではない。実話ベースの話だと、どこまでが事実なのかと迷うが、この手の話は大枠だけ実話から借りてきて、事実は1ミリもないというのが定石。特殊部隊の隊長(アルバン・ルノワール)をはじめとして、それぞれ味のあるキャストだ。 スナイパー全員同時射撃でバスジャック犯必殺 オルガ・キュリレンコ
ブーリン家の姉妹
2008年
ジャスティン・チャドウィック◯ ナタリー・ポートマンがいまひとつ。国王を翻弄する凄腕女に見えない。妹メアリーのスカーレット・ヨハンソンはすばらしい。共演したことで二人の勢いの差が歴然となった。誰がアン・ボレンを演っても、ヨハンソンの前ではかすんでしまう。この映画は英国の中世史を知らなくても混乱しないし、観ておくべき秀作です。映像もドラマも素晴らしい。 英国の王妃の座を狙う女 エリック・バナ、アナ・トレント
フォーガットン
2004年
ジョセフ・ルーベン◯ かつてボコボコに叩かれていた映画。どんなトンデモなのかと楽しみにしたら、案外そこそこの映画でした。ジュリアン・ムーアは幼い子供の母親役としてはちょっと年がいきすぎ。というか、老け顔。[Netflix] 亡くなった息子のことを誰もが知らない
フォロウィング
1998年
クリストファー・ノーラン△ 映画全体が罠のような映画。手品のフォースという技法に似ている。自発的にカードを選んだと見せかけ、その実、特定のカードを選ばされている。短い映画なのにやたら複雑で、終わってすっきりしない。[DVD] 尾行癖のある作家志望の青年
複製された男
2013年
ドゥニ・ヴィルヌーヴ△ 観ながら謎を追い求めた。終わってもさっぱりわからんので公式サイトのネタバレを読んだ。おいっ、そりゃおかしいぞ。そういうふうには描いてなかったぞ。 同一の肉体を持つ男を見つける ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン
福田村事件
2023年
森達也△ 大筋では広く知られたような展開だが、知らず確認もできないことが二つあった。官憲がデマの拡散の主犯だという点。日本人が朝鮮人に恐怖心を持ってたとする点。調べてわかることではないだろう。デマの拡散を問う映画なのにデマを生み出している。というように見えてしまう。 1923年関東大震災での虐殺事件 井浦新、田中麗奈、永山瑛太、東出昌大、コムアイ、木竜麻生、豊原功補
FUSA その木戸を通って
1993(2008)年
市川崑◯ 懐かしの浅野ゆう子。記憶喪失の女を好演していた。エンドについて書きたいけど、やっぱりネタばれだ。味のある結末だとだけ書いておこう。この映画のトーンにサキソフォンはぜんぜんマッチしてません。 山本周五郎原作 中井貴一、フランキー堺、岸田今日子
武士道シックスティーン
2010年
古厩智之◯ 予告篇はたいしたことなかったので期待せずに観た。意外や、本気度の高い作りで、密度の濃い青春映画だった。成海璃子がおっそろしく深刻な役作りをしている。あっけらかんとしたキャラの北乃きいとは好対照。成海は「アイドル捨てました!」みたいなおぞましい形相で嬌声をあげている。あの顔は恥ずかしくて自分で見れないだろう。 誉田哲也原作 剣道にかける女高生
武士の一分
2006年
山田洋次◎ 『たそがれ清兵衛』もいいが、こっちのほうが好きだ。無駄なくキビキビとした演出。次の『隠し剣 鬼の爪』も含め、監督の円熟期だった。木村拓哉もこの時はいい。まだ増長してないし。[YouTube] 藤沢周平原作 檀れい 〜いちぶん
武士の家計簿
2010年
森田芳光◯ 家計の立て直し映画の二本立てとなった。娯楽映画としてしっかり作られてるこちらのほうが『ゲゲゲの女房』より得した気分。親の通夜の最中に葬儀費用をそろばんはじいてるのには恐れ入りました。コメディにできるシーンがなぜか湿っぽい。貧乏ネタは思いきり笑い飛ばさねば。 そろばん侍の家計立て直し 堺雅人/仲間由紀恵
武士の献立
2013年
朝原雄三◯ 久しぶりに端正で上質の日本映画を観た。想定違いが二つ。コメディじゃなかった。純フィクションでもなかった。気持ちよく感動できました。ただ成海璃子がどうしても場違いの印象を拭えない。 上戸彩、高良健吾、西田敏行、余貴美子、夏川結衣
2つ目の窓
2014年
河瀬直美△ 新たなスターが誕生する瞬間に居合わせる可能性があったので観ました。監督の名前は無視。奄美の時間はこっちの時間と流れ方が違うかのよう。海の水は粘りが強く、重たそうだ。吉永淳が高校の制服のまま重たそうに水をかいている。吉永が新たなスターになれるかどうか。なんともいえない。 村上虹郎、杉本哲太、松田美由紀、渡辺真起子、村上淳
ふたり
1965年
ミハイル・ボーギン◯ 再会したいと思い続けていた映画が、タイトルと監督のロシア語表記を入力しただけであっさり見つかった。セリフは重要じゃないので、日本語字幕はなくてもわかる。学校の観賞会だった記憶があるが、恋愛映画です。教職員組合は共産党が牛耳ってた時代なので、ソ連映画を適当にかけたのかもしれん。米国でリメイクの『ふたりだけの微笑』もお気に入りの映画です。[YouTube] 37分短編 音楽家の青年と聾唖のダンサーの恋 ヴィクトリヤ・フョードロワ
淵に立つ
2016年
深田晃司△ 古舘寛治が夫という役柄をこれまであまり見かけなかったが、こうまで収まりが悪いとは。読めない展開だが、考えうる中での最悪のエンド。 筒井真理子、浅野忠信、太賀
ブックスマート 卒業前夜のパーティーデビュー
2019年
オリヴィア・ワイルド◯ 「勉強はできるんですけどォ」みたいなタイトル(Booksmart)で揶揄されるガリ勉女子二人。逃した青春を卒業前日の一晩で取り戻そうと悪あがきする。監督デビュー作は大成功。さっそく次回作が期待される。 ケイトリン・デバー、ビーニー・フェルドスタイン
舟を編む
2013年
石井裕也△ 主役二人が苦手タイプだが、辞書作りの話なので外せない。用例採集。やりだすとはまりこんでしまう。「駅ナカ」とか「デパ地下」とか。うちのサイトの和英辞典サイトとは規模も真剣度も較べようもない。映画はまあまあ。サプライズは何もなし。 松田龍平、宮崎あおい、オダギリジョー、黒木華 三浦しをん原作
フューリー
2014年
デヴィッド・エアー◎ 本物感あふれる映像をたっぷり味わう。戦場にたたきこまれた気分で、神経ぴりぴり。映像の厚みは残念ながら日本や韓国では絶対出せない。「真実の物語」と宣伝してないのは映画として潔い。実話をもとにしていても、あくまで創作だ。宣材写真のブラッド・ピットはおそろしく汚い。いくらリアリティ重視といってもこれではねぇ。 ドイツ軍大隊の進行を阻止する5人 シャイア・ラブーフ、ローガン・ラーマン、マイケル・ペーニャ
冬の河童
1995年
風間志織◯ 変わった映画で、かつて映画館で観たときは強く印象に残った。ほっといたらつたやの棚から消えるだろうから借りて再度観た。ストーリーはない。説明しない。かすかな違和感が緊張感をもたらす。感覚的な映画なので捉えきってしまえばかえってつまらなくなるだろう。なぜかわからないが妙にそそる映画なのだ。[DVD] 伊藤亜希子/趙方豪/田辺誠一/久野真紀子
冬の小鳥
2009年
ウニー・ルコント◎ 演技は抑えつつリアルに感じさせる演出で、感情が生々しく届く。少女ジニを演じるキム・セロンも素晴らしい。施設から送りだすごとに歌われる『蛍の光』と『故郷の春』。引き取られてゆく子供の背後を鉄扉が閉じられる。ラストは逆方向からになるが、どちら側から見ても締めつけられるような感情がわき起こる。女の子の未来に幸いあれと願わずにいられない。 父親に施設へ捨てられた少女
プライド
2009年
金子修介◎ 発狂しそうなほど面白くて、のめり込んでしまった。ヒロインの二人は両極端な性格。自覚できない高慢さが嫌みな女と性悪な女。ステファニーと満島ひかりがはまりすぎ。二人ともほんとに演技? 地のままにしか見えない。歌のシーンは凡百の米国製ミュージカルとちがい、聴き惚れ、見惚れてしまった。[DVD] 一条ゆかり原作 オペラ歌手をめざす二人 高島礼子、及川光博、由紀さおり
フライト・ゲーム
2014年
ジャウム・コレット=セラ△ 旅客機乗客にまぎれたテロ容疑者との闘い。密室サスペンス。あっと驚きのトンデモネタか、観客の足元を危うくさせるような仕掛けがほしかったが、無難なところに落ち着いた。役者は頑張ってるが、やはりシナリオだな、肝心なのは。 リーアム・ニーソン、ジュリアン・ムーア
プライベート・ウォー
2018年
マシュー・ハイネマン◯ 腰の入った制作に敬意を表する。主役のロザムンド・パイクがインパクトある。ラストで実物のメリー・コルヴィンの姿が見られる。役者より実物が美形だった。 女性戦場記者メリー・コルヴィン
ブラインドネス
2008年
フェルナンド・メイレレス◎ 救いのない地獄絵図世界。きれいごとなんかぜんぜん通用しない世界。見つめるのはきつかった。でもエンドでは希望を見せる。復旧しても、世界も人類も同じ姿には戻りそうもない。金融恐慌とこの混乱した世界とがリンクして見えた。水も食料も不足してゆく。もうすぐここへ世界が到達しそうな予感がある。 全世界が集団感染で盲目に ジュリアン・ムーア、伊勢谷友介、木村佳乃
ブラック会社に勤めてるんだが、もう俺は限界かもしれない
2009年
佐藤祐市◯ 公開のタイミングはよかったけど、動員にはつながらなかった。作り手と俳優たちにやる気と誠意は見える。風刺の毒で笑い飛ばす映画と思うが、笑いがない。戯画調とリアル。どっちつかずの映画になった。小池徹平の母親役は知らない人と思って見てた。エンドクレジットで‥‥おおなんと、久しぶりっ! マイコ、田中圭、朝加真由美
ブラック・クラブ
2022年
アダム・バーグ◎ 特殊任務を帯び、氷った海をスケートで進む6人の小隊。呆れるほどの説明不足は脚本の問題と思うけど、チームが氷の上を進む映像は美しくてスリリング。映像的には満足してる。意味不明な日本語タイトルは失格レヴェル。[Netflix] スケートで究極兵器を運ぶ小隊 ノオミ・ラパス
ブラック・クランズマン
2018年
スパイク・リー◯ 背景となる時代は古いが「おバカな差別主義者を米国人が大統領に選ぶわけない」とか、今の米国民を痛烈に皮肉るセリフがあった。ラストも大笑い。映画なんだからこういうお楽しみがなきゃね。ジョン・デヴィッド・ワシントンの声色は癖がありすぎで、アダム・ドライヴァーとの二人一役は無理と思う。 KKKへの潜入捜査に挑む黒人警察官 ローラ・ハリアー、トファー・グレイス
ブラック・スワン
2010年
ダーレン・アロノフスキー◯ 『レクイエム・フォー・ドリーム』の同系列上の世界。アカデミーの会員たちは「女優が立派にバレエやってる」だけでナタリー・ポートマンを評価したわけじゃないと思うが、精彩がない。いくら「女として魅力がない」設定だとしても、見て楽しくない。奔放な魅力を発散するミラ・クニスの引き立て役だ。 バレエ団の主役を得た女
ブラックブック
2006年
ポール・ヴァーホーヴェン☆ 観逃してたのが恥ずかしいほどの秀作でした。凡庸なタイトルがいけない。背後の黒幕がなかなか見えない緊張感。復讐を成し遂げたあと、爽快感は何もない。苦い味が口の中に残る。[DVD] オランダでナチスの軍部をスパイするユダヤ人女
ブラックボックス 音声分析捜査
2021年
ヤン・ゴズラン◯ 生真面目で、時に思い込みで暴走する調査員役にピエール・ニネがぴったり。陰謀か?妄想か?二転三転。真相はいかに。 墜落した航空機を音声分析官が調査
ブラッド・ダイヤモンド
2006年
エドワード・ズウィック◎ 娯楽性と社会性を並立させるのが得意な監督が持ち味を発揮した傑作。ジェニファー・コネリーを初めて色っぽいと感じました。ダイヤモンドって、宝飾用より工業用が主ではなかったか。[DVD] シエラレオネ産のダイヤモンド密輸 レオナルド・ディカプリオ
フラットライナーズ
2017年
ニールス・アルデン・オプレヴ△ リメイク元の映画は未見。少し運が悪いだけで生還できないのに、医学生たちはホイホイ被験者になる。その点を除けばまずまず。少なくとも世間のボコボコ低評価には同調できない。キャストを調べてて、エレン・ペイジが男性名のエリオットになっていることを知った(この映画の時点では女性名)。トランスジェンダーをカムアウトしてるんだって。[Netflix] 臨死体験を体験してみる医学生たち
blank13
2018年
斎藤工△ 物足りない印象。想定を超える物語がほしい。いわくありげなそれぞれの参列者がユニークなのに、それぞれのエピソードに意外性が薄く、おとなしすぎる。 家出した父親の葬儀 高橋一生
フランケンウィニー
2012年
ティム・バートン◯ 人形アニメとしては最高の完成度。キャラクターデザイン、演出センス、すばらしい。J・Dと組むときのような悪ふざけを封印し、作品の質を高めることにひたすら奉仕している。作品世界に対する愛情がにじむ。結末がもろにディズニー風で、出かけた涙がひっこんでしまったのだけが残念。 バートン自身の実写短編のリメイク ストップモーションのアニメ
フランシス・ハ
2012年
ノア・バームバック◯ 初見です。意味深に見えたタイトルの意味をラストで知って、ずっこけた。台本ないんかと思うほど自由な会話の応酬。若者たちがこれだけ交差してる中、ヒロインの恋愛がカケラも見えないのが不思議。ラストのダンス公演は位置付けがわからず、結果、映画に対する評価が不可能。 ダンサーをめざすフランシス グレタ・ガーウィグ、アダム・ドライヴァー
プリズナーズ
2013年
ドゥニ・ヴィルヌーヴ◯ 見事に騙された。どういう方向へ転がっていくのか、最後までわからなかった。初日なのにがらがらの客席。第一級のスリラーサスペンスを逃してはいけない。 二人の幼い女の子が消えた ヒュー・ジャックマン、ジェイク・ギレンホール
プリデスティネーション
2014年
マイケル&ピーター・スピエリッグ◎ 驚天動地のエンディング、とはならず。あまりにもくり返し伏線を出しすぎ。タイムトリップが身体に与えるショックをリアルに表現した初めての映画と思う。サラ・スヌークの演じたジョン・ドゥは忘れがたい強い印象を残す。彼女は今後、これ以上の役はありえないと思う。 連続爆破テロを防ごうとするタイムトラベラー イーサン・ホーク
BLUE ブルー
2021年
吉田恵輔◎ 久しぶりにボクシング映画の傑作が現われた。熱くなる。柄本時生ちゃん、顔はブサイクで性格もイマイチだけど、いいです(どこが)。 松山ケンイチ、木村文乃、東出昌大
ブルーアワーにぶっ飛ばす
2019年
箱田優子X ここでのシム・ウンギョンの起用は理解不能。『新聞記者』では日本語発音の弱さを納得させる設定があったし、撮影が『ブルーアワー』のあとだったので日本語は上達していた。『ブルーアワー』では純日本人という設定なのに、発音は外国人の日本語。黒田大輔は毎度の変な役をやっている。まともな役をもらえない可哀想な人。 夏帆、渡辺大知、上杉美風、南果歩
ブルーに生まれついて
2015年
ロバート・バドロー◯ 物悲しい映画。物悲しい映像の色にイーサン・ホークが見事にはまる。トップアーティストが人生の幸福をも求めようとするのは、所詮間違っている。そうは言ってないが、そう聞こえた。 カルメン・イジョゴ
ブルーバック あの海を見ていた
2022年
ロバート・コノリー◎ 浸りきれる映画がついに現われた。ストーリーは多くなく、湾の開発と環境保護の対立ぐらい。海中シーンが美しい。泳いでる魚と人。タイトルはダメダメ。これではせっかくの熱い思いが空転する。 ミア・ワシコウスカ、ラダ・ミッチェル、エリック・バナ、イルサ・フォグ
震える舌
1980年
野村芳太郎◯ 失礼なことだったが、B級ホラーのつもりで借りた。「こわいよー、おかあさんこわいよー」の予告篇が悪いんです。重たさを感じるいとまもなく、のめりこむ。医療現場の演出がリアルで、厚みのある風景を見せる。病院側の意思伝達の不手際によるあつれきなど、小気味よく差し込まれる。埋もれた傑作だ。子供を持つ親が観たら地獄落ちの恐怖だろうけど。 破傷風にかかった子供 渡瀬恒彦/十朱幸代/中野良子
プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ 宿命
2012年
デレク・シアンフランス◎ どういう映画かと説明を求められると困る。「主人公がころころ変わります」では説明にならんだろう。奇抜な映画構成で戸惑う。しかし深く考えさせる映画だ。"The Place Beyond the Pines"(松林の向こう側)は何を意味するのかと気になったが、舞台の地名、スケネクタディの英語訳だそうだ。何か含みがありそうだが。 ライアン・ゴズリング、ブラッドリー・クーパー、エヴァ・メンデス
ブレーキ・ダウン
1997年
ジョナサン・モストウ◯ 再見。胃がキリキリ痛みそうな絶望的状況に追い込まれるサスペンス。これは以後の映画制作に影響を与えただろう。J・T・ウォルシュ演じる悪党は個人的に助演男優賞もの。主演のカート・ラッセルよりずっと魅力的だ。ただ、長年犯罪者グループのリーダーをしていながら、家族が何も気づかないというのは不自然。[Netflix] よその土地へ移動中に妻が消えた
ブレードランナー 2049
2017年
ドゥニ・ヴィルヌーヴ◯ 膨大な予算をつぎ込んでアートフィルムを作りました、みたいな。さすがに映像の厚みはでかかったが。エンドでちょい顔出しした人、アリシア・ヴィキャンデルに見えたが、エンドクレジットに見当たらず。 ライアン・ゴズリング、ハリソン・フォード、ロビン・ライト
プレシャス
2009年
リー・ダニエルズ◯ 米アカ助女賞の美旗は立っててもシネコンにかけるには少々違和感ある映画だった。ポーラ・パットンやマライア・キャリーといった好感度の高い美女がいてくれると目に嬉しい。いくらいい映画でも美人が一人も出てなきゃ、なんか劇場に忘れ物でもしたみたいな気分になりません? 『フローズン・リバー』同様、甘さが全体の印象が薄れさせる。 両親に虐待される黒人少女 ガボレイ・シディベ、レニー・クラヴィッツ
ブレット・トレイン
2022年
デヴィッド・リーチ◯ この映画は突っ込み始めると止まらないから封印する。一つだけ書く。京都を出発して西へ向かった列車が、最終的には京都の街中に突っ込んでること。重要な役回りのジョーイ・キングは『ホワイトハウス・ダウン』(2013年)の子役。こちらも主演に劣らない活躍ぶり。 伊坂幸太郎原作 ブラッド・ピット、マイケル・シャノン、真田広之
プレデターズ
2010年
ニムロッド・アーントル◎ B級映画のお手本のようなすばらしい映画。演出の切れのよさが際立つ。同監督の前作『アーマード 武装地帯』もぜひ観たい。ただ、日本のヤクザはどう見てもチャイナマフィア。おまけにヤクザとサムライを一緒くたにしてるというステロな誤りはあるが。 人間狩りの惑星 エイドリアン・ブロディ、アリス・ブラガ、トファー・グレイ
ブレンダンとケルズの秘密
2009年
トム・ムーア◯ ケルズの書の世界を感じさせる美しいアニメ。ブリテン島がアングロサクソンに攻めたてられていたのと同様に、アイルランドも激しくヴァイキングに侵略され、悩まされていたことを感じさせる。反面、ヴァイキングは凶暴な魔物扱いで、スカンジナヴィアの人たちにとっては不愉快だろう。 ケルズの書が書かれる
プロジェクト・パワー
2020年
アリエル・シュルマン、 ヘンリー・ジュースト◯ 満足したが、売人の黒人少女(ドミニク・フィッシュバック)の存在感に負うところが大きい。この子がいなければただのB級アクションだった。調べると1991年生まれ。子供かと思ってた。騙された。[Netflix] 人間にスーパーパワーを与えるカプセルをテストされる、とある地区の住民
プロミシング・ヤング・ウーマン
2020年
エメラルド・フェネル◯ 魔がさして観てしまった。ラストは思わず「よしっ!」とガッツポーズ。不謹慎か(笑)。[Netflix] 不埒な男どもをこらしめる女 キャリー・マリガン
フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法
2017年
ショーン・ベイカー◎ 放し飼いの野獣たちが暴れまくってるような映画で、「このまま目立ったドラマもなく終わるのか」と思いかけていた。そんなわけないだろ。ハッと息を呑むよなエンディング。貧富の落差と孤独感が短いシーンに凝縮される。インパクトと重い余韻を残した。 貧民が集う安モーテル
ウィレム・デフォー
文化生活一週間(キートンのマイホーム)
1920年
エドワード・F・クライン◎ 『案山子』を観たくてバスター・キートン短編集1を借りたんですが、これが断トツの出来栄え。よくこれだけナンセンスなギャグとアクションを詰め込んだもんだ。[DVD] 新婚一週間の我が家
閉鎖病棟 ぞれぞれの朝
2019年
平山秀幸◯ 劇場公開時は内容を知らずにパスしていた。意外に面白い映画だった。悪党が2人出てくる。底なしの悪が登場する映画は面白い。[YouTube] 死刑執行しそこなった元死刑囚 笑福亭鶴瓶
ペイド・バック
2011年
ジョン・マッデン△ 話は面白いけど、30年前と現在、役者の顔が違いすぎで違和感ある。特に男の二人。逆でしょう。[DVD] ヘレン・ミレン、サム・ワーシントン、キアラン・ハインズ、トム・ウィルキンソン
ベイビー・ドライバー
2017年
エドガー・ライト◯ 『夜に生きる』や『トンネル 闇に鎖された男』にも感じたことと同じ。非常に面白い。なのに、この映画ならではの突出した何かが乏しい。 強盗の逃し屋 アンセル・エルゴート
ベイビー・ブローカー
2022年
是枝裕和△ 韓国人が演じる韓国映画なのに、中身は韓国映画風ではない。同じ韓国映画の『モガディシュ』とハシゴして観たけど、『ベイビー〜』をあとにしてたら、冗長すぎて確実に爆睡してた。 ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ
ベイルート
2018年
ブラッド・アンダーソン◎ 政治的サスペンスなので、派手なドンパチを観たい人には不向きな映画です。中東の対立構図がわからないと理解しにくいかも。ロザムンド・パイクは出てるだけで映画のクォリティを一気に上げてる印象。[Netflix] 人質誘拐組織との交渉人に指名された男
平和の木々
2021年
アラナ・ブラウン◯ フツ族によるツチ族虐殺を恐れ、地下室にとじこもった4人の女性。役者のシビアな演技に引き寄せられる。ルワンダ虐殺を扱った映画はどれも同じだが、悪辣なフツ族を映すばかり。ベルギー政府の植民地支配での部族分離政策に事変の原因があることを明確にしない。そこをきちんと批判せねば。[Netflix] ルワンダの虐殺事件
ペイン・ハスラーズ
2023年
デヴィッド・イェーツ△ 映画の出来以前に、ヒロインの魅力の下落が激しい。と思ったらやはりプロデューサー兼任。人気が落ちてくると、自分を主演にした映画を企画するというパターン。[Netflix] 製薬会社の不正を暴く エミリー・ブラント
白頭山大噴火
2019年
イ・ヘジュン、キム・ビョンウ◯ 韓国映画の映像表現力の強さは世界一と思う。この手の、まともに考えたらありえないストーリーでも真剣に取り組んでいる。マ・ドンソクが体力勝負なしでメガネかけたインテリ。不思議と似合っている。 火山の噴火を止めるために北朝鮮の核爆弾を盗んで使う韓国軍 ハ・ジョンウ 、イ・ビョンホン ペクトゥサン〜
ベスト・キッド
2010年
ハラルド・ツヴァルト◯ 娯楽映画のツボをしっかり押さえ、満点の出来映え。ジャッキー・チェンにとっては転機となった映画。自分のキャラを封印し、まじめに初老のカンフーマスターを演じている。抑えた分、エンドクレジットのスナップフォトでは愛嬌を振りまいててほほえましい。 カンフー大会に出場する黒人の少年 ジェイデン・スミス
ペタル ダンス
2013年
石川寛◯ 女性のほうが感覚的にヴィヴィッドに受け止められる人がおられる映画でしょう。意味を求めるな理解するなと言われてるみたいで、ひたすら考えないて観ました。忽那汐里は犬猫ペット顔で、なぜか冬の野外風景にマッチする。達者な女優たちに芝居を一任してる風だが、ときおり演技に戸惑いが見られた。 宮崎あおい、安藤サクラ、吹石一恵 petal=花びら
ペット
2016年
クリス・ルノー◯ ペットの世界だけでこんなパワフルに展開できる。『シング』と違って冒険心に溢れ、アクションの強度が際立つ。アニメはこうでなくっちゃ。[Netflix] 人間社会の裏側にあるペット社会
ペット2
2019年
クリス・ルノー△ 展開とアクションに一作目ほどの勢いはない。あの特徴的なガラガラ声は誰だったっけと思ったら、伊藤沙莉。吹替版でした。今回はメルの出番がほとんどなくて、残念。 虎の子供のフー救出作戦
ペット・セメタリー
1989年
メアリー・ランバート△ 新作を見るつもりが、間違えて旧作を。納得いかない部分が多々あり。不気味な幽霊一人だけがまともに見えた。[Netflix] スティーヴン・キング原作 死者を生き返らせる墓地
ペット・セメタリー
2019年
ケヴィン・コルシュ、デニス・ヴィトマイヤー◯ 前回の映画化とはまったく異なったエンディング。パスコウ青年の幽霊は今回ほとんど何もせんのかい!と突っ込んでしまいました。[Netflix] スティーヴン・キング原作 ジェイソン・クラーク
別離
2011年
アスガー・ファルハディ◎ 今年のベストワン映画。アカデミー外国語映画賞じゃなく作品賞がふさわしい。監督の娘もいい演技してます。せこいですが、消えたお金がどうなったのかをまだ気にしてます。貧乏性です。 イラン映画 ささいなことから大事件に発展
ペパーミント・キャンディー
1999年
イ・チャンドン◯ 現在から過去へ、20年を順次遡っていく趣向だった。逆進行映画は『メメント』が2000年、『アレックス』が2002年なので、当映画が先駆けだったことになる。このやり方はストーリー設定をシンプルにするのが肝。盛り込みすぎる。この男の不幸は身から出た錆に見えるし、エンドも弱い。 ソル・ギョング、ムン・ソリ
蛇イチゴ
2002年
西川美和◯ 人間の醜さ、いやらしさが生で出るビターなテイスト。西川美和の評価の高い理由がこれでわかった。『ゆれる』や『ディア・ドクター』は真価を発揮していない。まじめ教師のつみきみほにシンクロする。こんな兄(宮迫博之)、殺しても許す。小学校のクラスの中で染谷将太を発見。子供だが、目だけでわかる。[DVD] 放蕩息子が帰ってきた 平泉成/大谷直子/笑福亭松之助
ベルサイユの子
2008年
ピエール・ショレール◯ 独自のテイストで魅せられる。寡黙でよけいな説明をせず、観るものの心に直接響く。どこぞの映画未満とはえらい違い。母親に置き去りにされた5歳ぐらいの男の子の存在が、映画を輝かせ、忘れられないものにしている。ギヨーム・ドパルデューの顔にはすでに死相が表れていたような。 子供を預かったベルサイユの森のホームレス
ヘルドッグス
2022年
原田眞人◯ 岡田准一は悪相がいやで見ないようにしてたが、『ザ・ファブル』シリーズで評価を変えた。コメディセンスがイマイチなんだけど、演技に対する真剣度を感じた。新作ではアクションの質、および動きのないシーンでのただならぬ気配など、高く評価できた。彼以外の役者もみな、キャラが立って存在感がある。個人的には潜入捜査物でのベストワン。惜しいのは、松岡茉優がセリフで滔々と自分の思いを語る部分。映画は言葉で説明したらあかんのです。 暴力団組織に潜入する凄腕捜査官 坂口健太郎、MIYAVI、北村一輝、木竜麻生、中島亜梨沙、吉原光夫、村上淳
ヘルボーイ ゴールデン・アーミーギレルモ・デル・トロ◯ 大金かけたB級が好きな人向け映画。ド派手で観てる間は楽しかったが、あとに何も残らないの典型映画でした。『パンズ・ラビリンス』と同じ監督とは考えないでください。人間の存在じたいが世界の害毒という部分を厳しくつきつめていれば娯楽映画の枠を突き抜けたろう。 怪物ヒーロー ロン・パールマン
ベルリン ファイル
2013年
リュ・スンワン◎ 韓国のアクション映画はアクションシーンや映像にキレがあってもストーリーの細部に細かな穴があいてたりする。これは完璧で、ケチのつけようがない。観逃してる同監督の『生き残るための3つの取引』が気になってきた。 在ベルリン北朝鮮大使館を中心とした諜報員たちの死闘 ハ・ジョンウ、チョン・ジヒョン
ヘレディタリー 継承
2018年
アリ・アスター◯ トニ・コレットのエグいご面相で敬遠してたけど、秀逸なホラー。基本グロなしで、不穏をかもす気配で恐怖を描くから、感覚が鋭い人ほど強く感じ取る。霊的なものを少しでも信じる人はNG。怖すぎてチビるかも。[Netflix] ガブリエル・バーン
返校 言葉が消えた日
2019年
ジョン・スー◯ 観てる時はわけがわからなすぎて気力が削がれたが、観終わって悪い印象はない。イメージのみ濃厚で、細かいストーリーを無視できるから。暗黒時代を知る現地の人はリアルな恐怖を感じとれるんだろう。「返校」は「学校に戻ること」だって。 台湾の暗黒時代を描いたホラー・ゲームの映画化
ベンジャミン・バトン 数奇な人生
2008年
デヴィッド・フィンチャー△ ストーリー的にサプライズはなかろうという予感が的中。破綻もないが、特に心魅かれる部分もない。二人の年齢経過メークも「よくできてますでしょ」程度で、それを見せるためだけの映画。 ブラッド・ピット、ケイト・ブランシェット
芳華 Youth
2017年
フォン・シャオガン◎ 映像センスが秀逸。役者も美麗で、目に嬉しい。主演の二人より、語り手の女性のほうに感情移入する。香港がからむアクション大作か、超マイナーしか中国映画は基本、海外に売れない。純中国の娯楽映画が公開されるのはいいことだ。フォン・シャオガンの映画を2本立て続けに観て、中国の漢字表記には簡体字以外にもう一つ字体があることを知った(繁体字ではない)。それをなんというのかは知らない。 中国軍慰問芸能団の文工団の若者たち
ポエトリー アグネスの詩
2010年
イ・チャンドン◯ 切羽詰まった状況の中で一遍の詩が生まれる。描かれる世界は大人も子供も自己チューの韓国病で、美しくないが、美しい詩を観た想いだ。 孫息子が少女の自殺に関わったことを知った老女
ホース・ソルジャー
2018年
ニコライ・フールシー△ 米軍特殊部隊が北部軍閥と共闘してタリバンの軍事拠点を奪い取る話。20年前の設定。今観ると状況が反転していて、皮肉な面白さがある。あれだけ派手な戦闘をくぐり抜けて米軍側の犠牲者ゼロは、タチの悪いジョークです。[Netflix] 特殊部隊をアフガンへ投入 クリス・ヘムズワース、マイケル・シャノン
ボーダーライン
2015年
ドゥニ・ヴィルヌーヴ◯ 一級品と思うものの、期待が大きすぎて拍子抜けの感。わかりにくくてすっきりしない。 麻薬組織との戦争 エミリー・ブラント、ベニシオ・デル・トロ
ボーダーライン ソルジャーズ・デイ
2018年
ステファノ・ソッリマ☆ 一作目も秀作だけど、中身の濃さは二作目が上。救出されたマフィアボスの娘(イザベラ・モナー)の、絶望感のある表情が強く残る。[Netflix] 麻薬組織のボスの娘をCIAが偽装誘拐 ベニチオ・デル・トロ、ジョシュ・ブローリン
ボーン・アイデンティティー
2002年
ダグ・リーマン☆ Netflixにシリーズ全作が入ってたので、まとめて再見することにした(番外編を除く)。このシリーズが大成功となった要因の第一はマット・デイモンの起用にある。いかにもハードなアクションとは無縁に見える彼が瞬時に切り替わる。その一瞬の驚きがシリーズを通じて持続する。[Netflix] ロバート・ラドラム原作 フランカ・ポテンテ
ボーン・スプレマシー
2004年
ポール・グリーングラス◎ 前作で強烈な印象を残した殺し屋、ラッセル・レヴィが出てなかったことに驚く。制作側と何かトラブルがあったのかと想像する。このシリーズはメインとなる俳優のキャスティングが秀逸だ。カール・アーバンは本当に強そう。[Netflix] マット・デイモン、ジョアン・アレン
ボーン・アルティメイタム
2007年
ポール・グリーングラス◎ ヒロイン、ジュリア・スタイルズの含み笑いでエンド。彼女がボーンに妙なこと言ってるのが気になった。ボーンが記憶喪失になる以前、彼の恋人であったかのようなことを。日本語でも英語でも、そのことに触れているサイトはなさそう。[Netflix] マット・デイモン、デヴィッド・ストラザーン
ボーン・レガシー
2012年
トニー・ギルロイ△ 10年前に観てるが、ほぼすべて忘れてる。その理由は明白。何もキリつかないままの中途半端な終わり方。なんのためにこんなの作ったのか。思うにどうやらジェレミー・レナー主演で新シリーズを立ち上げるつもりだったみたいだ。けど、作品的にも興行的にもイマイチで、打ち切り(かな?)。[Netflix] 改造人間の反逆 レイチェル・ワイズ
ボーンズ アンド オール
2022年
ルカ・グァダニーノ◯ 気色悪い食人オヤジのマーク・ライランス。食人という行為がそもそも悪食にすぎる。美味しい食材がいくらでもあるのに、わざわざ不味そうなもの、食べなくていいのに。と言ってしまうと映画にならないか。 人を喰べる衝動を抑えられない人たち テイラー・ラッセル
ほかげ
2023年
塚本晋也◯ 何を考えてるのかわからない印象の趣里が、後半でわかりやすくなるとともに魅力が減じる。何をやらかすかわからない女を演ってほしかった。趣里より少年役(塚尾桜雅)が面白い。この子、何者? 終戦後のヤミ市社会で生きている女 森山未來
僕がいない場所
2005年
ドロタ・ケンジェルザヴスカ△ ポーランドのホームレス少年の話。たくましく一人でサヴァイヴァルしてる。不幸や絶望、もしくは希望といったものとは無縁。ごく普通に生きている。養ってくれる者がいないんだから、鉄くずを拾い集めて換金するのは当然、といったふう。奇妙なテイストを持っている。
僕たちのラストステージ
2018年
ジョン・S・ベアード◯ スタン・ローレル(スティーヴ・クーガン)はあまりにも印象が違いすぎる。実話もの映画は年表的な経過事実を別にすれば、すべて創作。実物とは別物と思えば納得できはする。二人の妻との関係が違うベクトルを生んで、深みが出た。 ローレル&ハーディの晩年 ジョン・C・ライリー
ボクたちはみんな大人になれなかった
2021年
森義仁◯ 走馬灯のような映画。こういうの観ると、自分もつい自分の過去をなぞりたくなってしまう。たいしたことないんだけど。伊藤沙莉は不思議ちゃん全開で、いいね。[Netflix] 森山未來、萩原聖人、東出昌大、SUMIRE、篠原篤
ぼくのエリ 200歳の少女
2008年
トーマス・アルフレッドソン△ まるでだめというわけでもないが、ほめるところを見つけるのが難しい。いくら200歳を超える妖怪でも、映画なんだから、こんなくたびれはてた顔のヒロインでは困る。早くから読めてる結末までの時間が長い。散漫な話を絞り込んでよけいなエピソードを切り落とすべきだった。 ガールフレンドは吸血鬼
星の子
2020年
大森立嗣△ 設定に興味を持ったけど、細かいエピソードが数珠つなぎ。映画の芯になる部分が見えなかった。 両親は怪しい宗教にどっぷり 芦田愛菜、永瀬正敏
ボックス!
2010年
李闘士男◯ 谷村美月が難病少女で高良健吾が主演って、『おにいちゃんのハナビ』と同じじゃないか。こっちのほうは辛辣に「ブタ」とか「ブス」とか言われてるが、やはりめげない。キャスティングがそれぞれに興味深かったが、まだ三十過ぎの宝生舞が市原隼人の母親で大阪のお好み焼き屋のおばちゃんという設定にはぶっとんだ。10しか年かわらんいうのに。[DVD] 高校ボクシングの青春 香椎由宇、筧利夫
ホテル・ムンバイ
2018年
アンソニー・マラス◯ 実話をネタにした感動ものに仕立て上げられてたらヤだな、というのは杞憂だった。シリアスの連続で感動どころじゃない。唯一、この状況で料理長が無傷というのは無理あるな、と思ったぐらい。 ムンバイで発生した同時多発テロ デヴ・パテル、アーミー・ハマー
ほとりの朔子
2014年
深田晃司◯ 不思議な手触りの映画だ。同時録音はドキュメンタリのような効果をかもしている。二階堂ふみは女優らしさのないごく普通の女の子としての可愛らしさがある。 鶴田真由/太賀/古舘寛治/杉野希妃
ほの蒼き瞳
2022年
スコット・クーパー◯ 重たい、暗い、長い、寒い(笑)。真冬に観る映画ではないね。ハリー・メリングが若きエドガー・アラン・ボー。特異な風貌で、案外似合っている。助演なのに印象が残りやすく、もうけものの役。[Netflix] 士官学校での殺人事件を捜査する警官 クリスチャン・ベイル
炎のデス・ポリス
2021年
ジョー・カーナハン◯ YouTubeの紹介映像で「ド平凡すぎておすすめできないオススメ失敗映画4選」に挙げられていた映画の一本。観るまでもなく予想できたことだが、僕好みの秀逸なサスペンスです。特に主演のアレクシス・ラウダーという若い黒人女性は素晴らしくいい存在感を見せる。ついでに観てしまった『チャーリーズ・エンジェル』(2019年)はまさしく「ド平凡」。この2本を同列に挙げる感覚は理解不能だ。[Netflix] 砂漠の中の警察署内での生き残り戦争 ジェラルド・バトラー
ボルト
2008年
バイロン・ハワード クリス・ウィリアムズ◯ 吹替版。再会シーンで不覚にもちょっと感動。やっぱり犬バカか。名札にカタカナで「ボルト」と出て、日本版特別仕様か!と注目したら、そこだけ。ていねいな作りに好感が持てるが、ディズニーなのにドリームワークスかピクサー制作かと見まがうよう。ディズニーカラーが消え失せました。人権イヴェントの上映だったけど、人権問題と関係ある? 「人+犬」というシャレ? CGアニメ 現実を知らない映画スター犬が現実世界へ
ホワイト・ゴッド 少女と犬の狂詩曲(らぷそでぃー)
2014年
コルネル・ムンドルッツォ◎ 視覚的にガツンとくる映画。犬の集団のモブ・シーン、最高です。CGなし。(主役のハーゲン以外)プロの犬を使ってない。そのリアル感。ハーゲンは役者犬をダブルで使ってるけど、双子みたいにそっくりで見分けがつかん。要所要所でリストのハンガリー狂詩曲が効果的に。その曲全曲使用の『トムとジェリー ピアノ音楽会』のビデオを犬たちに聞かせてる意味はわからん。興奮を鎮める効果? そんなもんあるわけない。”White God”は「黒人から見た絶対権力者たる白人」という意味だそうです。
ホワイトハウス・ダウン
2013年
ローランド・エメリッヒ◯ 予定調和の娯楽映画として、これほど高水準のものを観れると思わなかった。大味な演出の監督と見くびっていた。主要キャストはそれぞれにいいが、主役の娘役の女の子(ジョーイ・キング)がいい。大統領のモデルになってるのは現職のオバマ。映画は軍縮大統領だが、オバマがシリア爆撃に向かっていた時期とぶつかってしまった。 ホワイトハウスが占拠される チャニング・テイタム、ジェイミー・フォックス、マギー・ギレンホール
麻雀放浪記2020
2019年
白石和彌◯ リメイクでも続編でもなかった。SFも込みのオリジナルストーリー。2020年が舞台の近未来なので、公開延期は不可能。「えっこんなのがヒロイン?」と思ったチャラン・ポ・ランタンのもも。だんだん可愛らしくなって気持ちがシンクロしてくるのが不思議だった。 阿佐田哲也原案 斎藤工、ベッキー、ピエール瀧、矢島健一、小松政夫
マーティン・エデン
2019年
ピエトロ・マルチェッロ◯ 資本主義・自由主義・社会主義・個人主義。あれこれ考えることが多々あって、刺激を受けた。何が最も人々を幸せにするのか、再度考えてみたい。 ジャック・ロンドンの自伝の映画化
マイ・インターン
2015年
ナンシー・マイヤーズ◯ 見てて気がついた。老人は本質的におせっかいだ。自分がまだ役に立つことを証明したいんだ。顔がアニメっぽく見えるロバート・デ・ニーロ。ほとんどの俳優が妙にアニメっぽい顔。[Netflix] ネット企業に高齢の見習い新人 アン・ハサウェイ
マイウェイ 12,000キロの真実
2011年
カン・ジェギュ◯ 力作ではある。全編、力が入りまくっている。ファン・ビンビン、出番は少ないけど、いいですね。冒頭のマラソンシーン、あそこでラストがほぼ見えてしまう演出はいかがなものか。事実かどうかを検証しないで「真実を基に作った」とうたうのは不当表示にあたる。 オダギリジョー、チャン・ドンゴン
毎日かあさん
2011年
小林聖太郎◯ 西原(小泉今日子)は鬼の形相でののしり、張り倒す。鴨志田(永瀬正敏)は家庭内の細々したものを撮り続ける。そうしたシーンが心に残る。男の弱さダメさは彼に限らない。西原の母(正司照枝)の「はよ見切りつけたほうがお互いのため」に同感。戦場トラウマさえも逃げの言い訳に思える。『酔いがさめたら、うちに帰ろう。』もだが、子役兄妹(矢部光祐・小西舞優)が素晴らしい。 西原理恵子原作 女流漫画家とアル中亭主との格闘の日々
マイ・ニューヨーク・ダイアリー
2020年
フィリップ・ファラルドー◯ 自己主張しすぎる顔のせいで落ち着かなくなるが、見てるうちに慣れてくる。このマーガレット・クアリーという人、どんな役が似合うかと考えるが、『ストレンジ・アフェア』のような不気味キャラがやはり適役。 サリンジャーを担当する新米編集アシスタント シガニー・ウィーヴァー
MY HOUSE
2012年
堤幸彦◎ 淡々と描きつつ、ドラマの緊迫感は強い。上っ面をなでるだけのヤワな映画が多い中、久しぶりに本物を見た気分。半ば趣味的に物を拾ってる自分とは違う、拾うプロの仕事を見せてもらった気分。潔癖症の傾向がないとは言えない僕だけど、専業主婦(木村多江)の病的行動はいちいち受けてしまった。よくある理想化されたホームレスの生活ではなく、危険と紙一重の厳しさもリアルだ。 ホームレスのホームドラマ いとうたかお、石田えり、板尾創路
マイブリッジの糸
2011年
山村浩二◯ 制作ドキュメンタリも見たので、アニメというより一人の作家の作品を鑑賞させていただいてるという感じがする。エドワード・マイブリッジがどういう人かというのはどうでもよかったような。バッハのカノンが頭の中で舞い踊っている。 手描き絵画の13分短編アニメ
マイ・ブロークン・マリコ
2022年
タナダユキ◯ またもや女性が暴走する映画(好みのタイプ)。先の予想ができず、引きずり回される。黒ヘルメットの悪党はどうなった。とどめを刺してないから生きてるんだろうけど。 親友の遺骨をかっさらって旅に出る 永野芽郁、奈緒、窪田正孝
マエストロ!
2015年
小林聖太郎◯ 演奏シーン、すばらしい。『オーケストラ!』以来の出来。西田敏行の指揮者はさまになっている。不思議キャラのmiwaちゃんはなかなかの見もの。 解散したオーケストラの再結成 松坂桃李
真木栗ノ穴
2008年
深川栄洋◯ 昭和初期か昭和の30年代かと思ってたら、パソコンが出てきた。真木栗のいる世界だけがスコンと昔にトリップしてる。トンネルをくぐって彼のボロアパートにたどりつくという設定もそれっぽい。「二人で暮らすのは一人でいるよりも力と優しさが必要」という言葉には力をこめて納得するものがあった。 壁の穴から隣室を覗く小説家 西島秀俊 まきぐりのあな
マクマホン・ファイル
2020年
ディー・リース◯ IMDbの評価点数が4.3と、B級ホラーかと思うような低さ。その理由を想定したけど、想定通りのストーリーだった。米国人はこういったシビアすぎる映画を嫌う。点数が低いから観たという、変な映画。関係ないが、監督は黒人女性。これは珍しい。[Netflix] アン・ハサウェイ、ベン・アフレック、ロージー・ペレス
MOTHER マザー
2020年
大森立嗣◯ 今年の主演女優賞を獲る勢いの長澤まさみ。死んでも治りそうもないダメ女。映画は、悲惨の「惨」数珠つなぎでドラマとしての起伏がなさすぎる。 社会からドロップアウトした一家 阿部サダヲ、夏帆
マザー アンドロイド
2021年
マットソン・トムリン◎ 同じ主演で熾烈なディストピアを続けて観てしまった(もう一本は『フィフス・ウェイブ』)。出来はこちらが上だけど、きついマゾな映画。[Netflix] AIロボットの一斉蜂起で人類の危機 クロエ・グレース・モレッツ
マザーズ・デイ
2023年
マテウシュ・ラコビチ◎ ポーランドの娯楽映画は初めて。センスよくアクションを決めてくれる。ヤクザ相手に暴れてるのは名も知らぬポーランドの中年女優。拾いもので、ラストもGood。[Netflix] 息子を救出するために組織と戦争する一人の女
マジック
1978年
リチャード・アッテンボロー◎ この映画は語りたいことが多すぎる。一つだけ書く。腹話術でマジシャンのアンソニー・ホプキンスは、芸人としての成功を前に、自信がなくて逃げ出してしまう。その心理は痛いほどにわかる。同様のストーリーや設定は他の映画や小説で記憶にない。[YouTube] アン・マーグレット
マスカレード・ホテル
2019年
鈴木雅之◯ 普通に娯楽映画として楽しめる出来栄えでありました(ツッコミどころはもちろんあり)。木村拓哉はかろうじて許せるかなという悪相で、よくこんな顔で俳優が務まるよな。犯人は「らしくない」こいつだと最初から目星つけたら、見事ハズレ。[Netflix] 東野圭吾原作 長澤まさみ
魔像
1952年
大曾根辰夫◯ 時代劇です。阪東妻三郎が二役で、ともに手を組んで悪政に立ち向かう話。カメラのレンズを半分ずつ閉じて撮影する二重合成とみられる。なかなかきれいに決まっていて、不自然さはない。でもこのタイトル、意味不明(原作そのままだが)。調べてみて、1956年にも大友柳太朗主演、同じタイトルで公開されてることを知った。[YouTube] 林不忘原作
マチェーテ
2010年
ロバート・ロドリゲス◯ B級映画の楽しさ満載。役者が豪華絢爛。ミシェル・ロドリゲスとジェシカ・アルバを並べた時点で成功が保証されたようなもの。あとは何をやろうがお好きにどうぞ。[DVD] 悪と戦うメキシコ不法移民 ダニー・トレホ
街の上で
2021年
今泉力哉◯ 最初は「えらいのを観てしまった」と悔やんだのに、いつのまにか没頭してしまっている。不思議な空気が漂っている。4人いるメインの女優で中田青渚のユニークさが際立つ。[Netflix] 浮気されてフられた彼 若葉竜也、古川琴音、成田凌
マックス・ペイン
2008年
ジョン・ムーア◯ てっきりオルガ・キュリレンコが主人公を援護するヒロイン役だとばかり思ってた。ゲームの映画化ということを忘れさせてくれるぐらい、リアリティある映像世界が魅力的。絵づくりのセンスでこの監督の名をしっかり記憶した。エンドクレジットの途中で帰る客は当然いるんだけど、ラストに1エピソード残ってます。 妻子を殺された刑事が復讐に燃える マーク・ウォールバーグ、ミラ・クニス
マッドマックス 怒りのデス・ロード
2015年
ジョージ・ミラー☆ 映像が素晴らしい。CGが出しゃばらない映像は清々しく気持ちいい。主演の二人にとっても代表作の一つになった。名のある俳優は二人だけかと思ったら、ニコラス・ホルトがいた。あんなにメイクされると誰かわからない。 荒廃した地球で君臨する独裁者 トム・ハーディ、シャリーズ・セロン
まともじゃないのは君も一緒
2021年
前田弘二◎ 成田凌と清原果耶コンビが絶妙。特に成田のキャラはユニークさで類例を見ない。胡散臭いオヤジに小泉孝太郎も、ぴったり(地のまま?)。エンドクレジットにミス発見。ハイドンの弦楽四重奏曲第17番『ひばり』第2楽章とあった。そんな曲は存在しない(使用した曲はハイドンですらなかった)。 数学バカの予備校講師相手に恋愛指南する女子高校生
真夏のオリオン
2009年
篠原哲雄◯ 潜水艦の戦記映画というと不思議に密度の高いものができる。これもなかなか渋い。北川景子も戦時中の若い女性としてうまくはまりこんでいる。深い海底からのハーモニカの音を海上でソナーが拾うのは無理。玉木宏の長髪も問題と思う。現代のシーンでの楽譜と戦時中シーンの同一楽譜が別物と判明。細かいけど。
真夏の方程式
2013年
西谷弘◯ 予想を超える満足度。原作ミステリーがいいんだろうけど、キャストがそれに応えている。杏の水中遊泳はまるで水棲生物のようで美しい。これだけでも観る価値あり。アルミホイルで携帯の電波を遮断できると言ってたが、本当か。ワイアレスのマウスは効果なかったぞ。 東野圭吾原作 福山雅治/吉高由里子
マネーボール
2011年
ベネット・ミラー◯ 超地味。プロ野球大好き、データ分析大好きの僕が一部退屈した。たった一人のトレードを成功させるため、他の選手数人をゲームの駒のようにトレードしたり降格させたり、ドライにてきぱき動かす。この非情さが面白い。この映画ではあいまいに描かれているが、勝負はデータだけではない。選手のメンタルな部分の割合が大きい。 マネーボール理論で貧乏プロ野球チームの立て直しを図った男 ブラッド・ピット/フィリップ・シーモア・ホフマン
まほろ駅前多田便利軒
2011年
大森立嗣◯ 今さらながらに松田龍平の存在価値を実感した。肩の力抜いたままきっちり芝居できる役者が他にいるか。映画の開放的な空気感、軽みはすべて彼がかもしている。ゆるゆるした空気感は魅力だが、これで彼ら二人が生活できるわけないだろう。主演二人は『アヒルと鴨のコインロッカー』のコンビだったことに気がついた。松田龍平はまるっきり同じキャラだといえば、その通りなんだけど。[DVD] 瑛太/片岡礼子/鈴木杏/本上まなみ
ママボーイ
2022年
アーヴィン・チェン△ 近年、絶好調の台湾映画からしてみると、少々弱く、物足りない。可愛らしいままにおばさんになったビビアン・スーは必見だが、主人公の青年の母役、ユー・ズーユーのパワーが圧倒的で見ものだ。 熱帯魚店で働く超オクテの青年
マリアンヌ
2016年
ロバート・ゼメキス◯ 戦争が必然的に持つ「冷たさ」を鋭利に描く傑作。ドイツ・連合国ともに、国のためなら個人は消耗品。ラストでわずかに血の通う描写があるのが救いといえるのか。[Netflix] マリオン・コティヤール、ブラッド・ピット
マリー・アントワネットに別れをつげて
2012年
ブノワ・ジャコー◯ ダイアン・クルーガーが我儘気儘で悪意ゼロの女をリアルに演じていた。メラニー・ロラン以来の大物新人女優(レア・セドゥ)の主演作を観たいがために映画館へ行った。その点では満足。あと、カンパン夫人を演じたノエミ・ルヴォヴスキ。いい人だね。 アントワネットに仕える読書係の女性 ヴィルジニー・ルドワイヤン
マリウポリ 7日間の記録
2022年
マンタス・クヴェダラヴィチウスX 撮影中に監督は親ロ派により連行され、殺害された。そのことで評価に下駄をはかせるべきではない。どうということもないシーンを長々と引きずり、安全地帯から被災地を眺めてるがごとくの映像。ドキュメンタリは火傷するほどの近くで事象を掬い取るのが本懐ではないのか。公開する意味があったとは思えない。 戦火のドネツク州マリウポリにて
マリッジ・ストーリー
2019年
ノア・バームバック◯ シリアスな離婚劇。おチビ時代から見ているスカーレット・ヨハンソンが、堂々たる役者に育ったことが感慨深い。ここでは現代に生きる等身大の人物を元気いっぱい演じている。このあとどんな役者になっていくのか、興味深い。 アダム・ドライヴァー
マン・オン・ワイヤー
2008年
ジェームズ・マーシュ◯ 肝心のWTC綱渡りでは動画映像のないことを承知してたが、プロセスをインタヴューと実写映像と再現ドラマとでうまくつないで、サスペンス感を盛り上げている。僕自身は支えのない高所がまるっきりだめで、屋上のへりには立てません(誰でもか)。フィリップ・プティはこのあとの人生、どうだったんだろうと、老いた顔を覗き込んだ。 ドキュメンタリ ワールドトレードセンター屋上から綱渡り
Mank マンク
2020年
デヴィッド・フィンチャー◯ 映画の出来栄えとは無関係に、イマイチ話に乗れない。フィンチャーさんも巨匠におなりあそぱした。MonkyとMankieの読みはともにマンキーだけど、英語ネイティヴにははっきり違いがわかるんだなと、映画の中のジョークで気がついた。[Netflix] 『市民ケーン』の脚本家のハーマン・マンキーウィッツ
満月の夜
1984年
エリック・ロメール◯ 昔懐かしいロメール映画のリズムがよみがえる。個人の喜び哀しみ小宇宙はまるで変わらない。僕の住む世界とはえらく違う。撮影後、26才の誕生日の前日にパスカル・オジェは死んだ。美人薄命。 チェキー・カリョ
漫才ギャング
2011年
品川ヒロシ◯ 大根役者だった佐藤隆太が好演。下手な漫才師ほど無駄に動きたがるが、そのへんは見事クリア。とことんボケツッコミ芝居だから、クサい男の友情も蹴飛ばしてくれたら傑作だった。 売れない漫才師が留置場で不良を相方としてスカウト
マン・ダウン 戦士の約束
2015年
ディート・モンティエル◯ いったいどういう話なのか。タイムトラベルものなのか。それが気になってスルーできず。観てそういう話なのかと納得。シャイア・ラブーフもその設定に似合う。ヒゲ面ラブーフは同一人と思えないほどの変身ぶりだった。 戦闘地域のアフガンから戻ったら故郷は無人の荒廃地に
万引き家族
2018年
是枝裕和☆ 『誰も知らない』は家族を死守するために奮闘する話だった。こちらはニセ家族を共同で妄想する話。ふわりと温かさがにじむ。樹木希林の「おしゃべりの男って、ダメねぇ」というセリフに思わず手を叩きそうになった。リリー・フランキーが少年から「僕を捨てて逃げたの?」と聞かれ、「ウン…。ごめん」と言ったのも心に残る。 安藤サクラ、松岡茉優、高良健吾、池脇千鶴
ミーシャ ホロコーストと白い狼
2007年
ヴェラ・ベルモン◯ そりゃありえんだろー。8歳の女の子が寒い冬に一人でベルギーからウクライナまで歩いてまた戻ってくるなんて。しかし基本的には過酷なサヴァイヴァルものが好きなのでコンマ5をおまけ。狼の一族と協調してトナカイを狩るなどのシーンがあれば、さらによかった。原題は『狼たちとともに生き抜く』なのに、狼とのかかわりがあっさりしすぎた。 両親を探して3000マイルを歩くユダヤ人少女
見えない目撃者
2019年
森淳一◯ 期待してなかったが、意外なほど面白い。元の韓国映画も観て比較したいが、たぶんこっちのほうが上。ちょこちょことツッコミ箇所が散らばってはいたが、吉岡里帆が映画をよくリードしていた。[Netflix] 韓国映画『ブラインド』リメイク 盲目の目撃者
ミセス・ノイズィ
2020年
天野千尋△ 生理的嫌悪感をかきたてる。だからあのエンドなんだろうけど、それこそ登場する編集者が言う「底の浅い、深みのない話」に堕す。とことん突き落とす、ぐらいでないと一皮むけない。作家の主観映像部分でも作家の非常識は目につく。だから視点を変えてもくるりと反転しないのだ。 早朝からの派手な布団叩きにブチ切れる作家 篠原ゆき子
密告・者
2010年
ダンテ・ラム◯ 近年の香港映画の好調を反映した気合いのみなぎる映画。粋と人情は口先ばかりだった『ハラがコレなんで』と違って映像に叩き込まれている。ヒロインのグイ・ルンメイは『藍色夏恋』の子だったことにあとで気がついた。あの色気ゼロだった子がこんなふうになってしまうとは・・。 警察の犬たちの末路 ニック・チョン、ニコラス・ツェー
ミッション:8ミニッツ
2011年
ダンカン・ジョーンズ◯ 結末は観る前からわかっていた。つもりだったが、さらに話が転がっていく。クールとホット、両極端のヒロインを配置しつつ、クールのヴェラ・ファーミガのほうが圧倒的に引き立つ。ミシェル・モナハンはシリアスドラマよりもコメディ向き。 テロ直前の8分間をリプレイして捜査する ジェイク・ギレンホール
ミッション:15
2013年
マシュー・トンプソン◯ 想定外の面白さ。ヒリヒリくるようなシチュエーションの中、なかなか先を読み通せず。タイトルも俳優も監督も知らなかったけど、拾い物でした。[YouTube] エレベーターに閉じ込められた3人の米国軍人
ミッドサマー
2019年
アリ・アスター◯ スウェーデンの民俗をベースにして新たな虚構世界をひらいた意欲作。音楽を含め、すべてが創作だけど、どっぷりスウェディシュ・フォークロアを楽しめる。主演のフローレンス・ピューは印象薄かったが、ラストはきっちりイメージの焦点を結んだ。ウィル・ポールターが途中で消滅したのが気になる。何か見落としたのか。 大学生グループがスウェーデンの夏至祭に招かれる
ミッドナイト・イン・パリ
2011年
ウディ・アレン◯ ノスタルジー万歳、みたいな話でありながら、ラストでノスタルジーに批判的な視線を浴びせかける。溺れきってるように見せながら溺れてないから気持ち良く観てられるんでしょう。マリオン・コティヤールは喋るとエディット・ピアフを連想する。声が似てるみたいだ。 1920年代のパリにスリップする脚本家 オーウェン・ウィルソン、レイチェル・マクアダムス
ミッドナイトFM
2010年
キム・サンマン◯ 幼い娘がちっとも可愛くないが、そんなこと忘れるほどのめり込んだ。韓国映画お得意の心理的サド満開。これでオリジナルな仕掛けやアイディアが何かあれば、観終わったあとも強烈に残るんだろうけど。 番組中、ラジオパーソナリティに脅迫が スエ、ユ・ジテ
ミッドナイト・スカイ
2020年
ジョージ・クルーニー◯ あまりに類似してるから『ユピテルとイオ』と原作が同じかと思った(どちらもNetflixの映画)。はっきり明示しなかったのでエンドの一部解釈に自信がないが、まあそういうことだったんだろう。幼い女の子が鍵を握る。ソーラ・バーチの子供の頃を美人にしたような女の子。という表現でわかる人いるんかいな。[Netflix] 住めなくなった地球に宇宙飛行士が帰還してくる フェリシティ・ジョーンズ
ミッドナイトスワン
2020年
内田英治◯ 劇場スルーが大失態という映画。ぐいぐい引き込まれた。ゲイの世界の話にはイマイチ乗れなかったのだ。新人を含め、キャスティングがよかった。終わり方に関しては、他の方向もありえたような。[Netflix] 草彅剛、服部樹咲、真飛聖、水川あさみ
ミッドナイト・バス
2018年
竹下昌男◯ 知らない監督、地味なキャスト、2時間半を超える長尺。バクチだったが、当たりと出た。家族の物語にじんわりとひたりきった。切なさ、哀しさが沁みるようだ。娘役の葵わかなは演技の振り幅が大きい。将来有望。 原田泰造、山本未來、小西真奈美
蜜蜂と遠雷
2019年
石川慶◯ 東宝ではなくアスミックなどの中堅クラスの配給会社だったら、普通レヴェルだったのかも。東宝映画の製作、東宝配給だったからこその驚きだったのかも。4人の主演者の中で森崎ウィンの陰が薄い。途中、指を折って数えて「あれ、3人しかいない」と錯覚した。 原作:恩田陸 松岡茉優、松坂桃李、鈴鹿央士
ミツバチと私
2023年
エスティバリス・ウレソラ・ソラグレン△ 子供が揺れる。大人も煩悶する。顕在化することで社会もざわつく。とはいえ、フタしてすむ話じゃない。「蜂の2万種」という原題の意味はわかるけど、しっくりこない。 性自認が揺れている8歳
皆殺しの天使
1962年
ルイス・ブニュエル◯ 不条理ドラマなので、字幕なしのYouTubeではお手上げ。で、映画館へ。セリフがわかるとすんなり頭に入る。監禁されたわけじゃない。全員が外へ出る意志を失う呪縛の物語だ。社会情勢が反映されていそう。難解なアート映画のはずが、意外にわかりやすかった。 晩餐会のあと、大広間に閉じ込められた人たち
みなさん、さようなら
2013年
中村義洋◯ 映画館で観た時より鋭く突き刺さってくる。団地引きこもりという珍しい例だが、自分と近い部分があるのだろうか。主人公はチンピラどもと対決するが、いくら体を鍛えても、それだけではこんな連中に勝てない。相手との間合いや呼吸が読めなきゃ、無理。[YouTube] 団地の中だけで生きていくと決心 濱田岳、波瑠、大塚寧々、ナオミ・オルテガ
ミニオンズ
2015年
カイル・バルダ、ピエール・コフィン◯ ストーリーはハチャメチャで遊び心満載。CGのヴィジュアルは完璧で、見ていて心地よい。悪役のキャラはいまいち弱い。[Netflix] ミニオンズ誕生からグルーに出会うまでの騒動
宮松と山下
2022年
関友太郎、平瀬謙太朗、佐藤雅彦X 劇場で観なくて本当によかった。席を立つしか逃げ場がなかったから。香川照之の顔の不快感はこれが最高潮。こんな顔でよく映画に出てられるものだ。[Netflix]
ミュンヘン:戦火燃ゆる前に
2021年
クリスティアン・シュボホー◯ 英独の若い外交官2人が歴史を動かそうと画策する政治サスペンス。歴史の中で架空人物を配置し、大胆に嘘話をでっち上げたことを評価する。英国サイドの身びいきは気になった。チェンバレン首相を持ち上げすぎだろ。彼がそこまで未来を読みきってたとは思えない。[Netflix] 1938年のミュンヘン会談
ミレニアム ドラゴン・タトゥーの女
2009年
ニールス・アルデン・オプレヴ◎ 上質のミステリー小説の頁をめくっていくようなスリルとわくわく感がたっぷり大満足。主演二人のアンバランスすぎるコンビも面白い。入りがよくないのがもったいない。映画観客は保守的で新ネタへの食いつきが鈍いと思う。分厚そうだが、原作も読みたい。 スティーグ・ラーソン原作 ノオミ・ラパス ミカエル・ニクヴィスト
ミレニアム2 火と戯れる女
2009年
ダニエル・アルフレッドソン◎ 追われる立場から追う立場へするりと身をかわすリスベット。緊迫感あって、長いのにムダもダレ場もない。嫌みなほどストックホルムの暗部を見せる。漠然とした北欧への憧れをぶち壊すには十分。シューヴァルとヴァールーのマルティンベック・シリーズをほうふつとさせるテイストがある。このテイストは好き。
ミレニアム3 眠れる女と狂卓の騎士
2009年
ダニエル・アルフレッドソン◯ 1は一話完結。2と3は前後編。ラストでバタバタッとすべて片づいてしまうのが物足りない。謎っぽいものがちょろっと残ってたりすると、あとを引くのに。出番の少ない「疫病神」は、渾名と風貌とキャラがばらばらで、面白くなごむ。ヒロインのリスベットは「ありがとう」のひと言もなかなか言えない対人不適応。父親が死んだと聞いて安らかな笑顔を見せたのが印象に残る。
みんなのしらないセンダック
2009年
スパイク・ジョーンズ◯ 自分のことを語るセンダックの言葉を気持ちよく受け入れる。彼の言葉にはタテマエやきれいごとがない。絵本も自分の表現したいことを描いてるだけ。読者にこびを売らない。それで受け入れられるというのはすばらしい。 モーリス・センダックへのインタヴュー
6日間
2017年
トア・フレイザー◯ 特殊部隊が突入し、人質の犠牲は最小限。実話を素材にした映画はどこまでが嘘なのかがはっきりしなくて困る。ジェイミー・ベルが突撃部隊のリーダー、というだけで「大丈夫なの?」と心配になってくる。[Netflix] イスラムのテロリストにレバノンのイラン大使館が占拠される アビー・コーニッシュ、マーク・ストロング
無垢なる証人
2019年
イ・ハン◯ 自閉症を知らないのでリアルかどうかは知らないけど、キム・ヒャンギの役作りは成功している。このキャラクターで映画の格はぐっと上昇した。[Netflix] 唯一の目撃者は自閉症児 チョン・ウソン
無垢の祈り
2016年
亀井亨◯ 人に勧めるのを躊躇するぐらい、いやーな空気が充満している。異常な世界だが、現実にありうる世界。少女が絶望して発する言葉が痛い。 義父に虐待される少女
息子の面影
2020年
フェルナンダ・バラデス◯ メキシコ社会のすさまじく深い闇が感じ取れる映画。圧倒的な映像で見せる。ネタバレ厳禁なエンドだが、監督に「してやられた」感があった。監督はこれが映画デビューで、女性です。 メキシコから米国へ向かって消息を絶った息子を探す母親
娘よ
2014年
アフィア・ナサニエル◯ 日本初のパキスタン映画。娘に輝かんばかりに鮮やかな色の服を着せて逃走するシーンに絶句。まるで追っ手に見つかってくれと言わんばかり。 老人に嫁がせることになった娘を連れて逃げる母親
無聲
2020年
コー・チェンニエン△ 奥深い映画だが、ずしっと悲惨で重たく、さらに胸糞悪くなる。救いは永遠にない。そんなエンディング。 台湾のろう学校で起きた性暴力事件
メアリーの総て
2017年
ハイファ・アル=マンスール◯ エル・ファニングが美しく撮られている。それだけで見る価値がある。義妹役のベル・パウリーは要注目だが、あとで調べるまで『マイ・プレシャス・リスト』の主演だと気づかなかった。メアリーの父親は「他人の思想や言葉を振り払え、自分の声を探せ」と言う。受け売りでは何者にもなれない。 フランケンシュタインの怪物を生んだメアリー・シェリー
メイジーの瞳
2013年
スコット・マクギー、デヴィッド・シーゲル◯ こんないいかげんな両親の元で育てられたら情緒不安定で将来は精神に異常をきたす。あるべき位置におさまっていく展開は先が見えすぎる。それは別にして楽しめる映画でした。 両親の離婚で6歳の娘が行ったり来たり ジュリアン・ムーア
MEG ザ・モンスター
2018年
ジョン・タートルトーブ◯ ジェイソン・ステイサムには知性を感じられないのでみくびってたが、この人の主演映画は映像・演出両面でわりあいしっかり作られている。この映画はホラーというよりモンスターパニックです。ハラハラドキドキを期待しないように。[Netflix] 巨大なサメが現われる
飯と乙女
2011年
栗村実◯ 料理が単なる食べ物ではなく、心的背景を表現する媒体になっていることを思わせる。仏語の「作品oeuvre」には「料理」という言葉も含まれている。帰ってからテーマ曲の『死と乙女』を聴こうとしたら、CDなかった。 調理師の女 佐久間麻由
メッセージ
2016年
ドゥニ・ヴィルヌーヴ◯ なんとも言えない切ない終わり方。エイミー・アダムスはもうディズニー映画を卒業。 エイリアンの「船」が世界各地に出
メッセージ そして、愛が残る
2008年
ジル・ブルドス◯ アイディアは面白い。が、一つのネタを冒頭からエンドまで隠して引っ張る手法には疲れた。死に神の如くのジョン・マルコヴィッチは圧倒的だし、どこから降って湧いたかと思う美形のエヴァンジェリング・リリーなど、見どころはあって損はしないのだが。 死にゆく人を見分ける能力を持つ人
メランコリア
2011年
ラース・フォン・トリアー☆ ジャスティン(キルスティン・ダンスト)は言う。地球以外に生命がないことを知っている、と。地球が消滅するということは、「意識」というものや歴史も何もかもが消失し、宇宙には「無」しか残らないことを示唆している。この提起は評価できる。生命体に関しては疑念があるが、知的生物が地球以外にいると思うのは妄想にすぎないと思ってるから、この部分に強くシンクロする。 地球に急接近する小惑星 シャルロット・ゲンズブール
メリダとおそろしの森
2012年
マーク・アンドリュース、ブレンダ・チャップマン◯ 他社のアニメとは格が違いますよと言ってる出来映え。これほど質の高いアニメを劇場でスルーしたのは面目ない思いだ。ストーリーは伝承からとらず、純粋にオリジナルらしい。物語の厚みは映像にくらべてまだまだという感じ。それでも音楽を含めてオリジナルで勝負している心構えは評価できる。[DVD] 古代のスコットランドを舞台に
MEN 同じ顔の男たち
2022年
アレックス・ガーランド◯ 同じ顔というより同じ人間性。この映画は極端に描くが、男はみんなこんなやつ、という指摘は大筋で正しい。男の自己チューは無自覚なことが多いから厄介。それを男性監督が自身のオリジナル脚本で描くので、嫌味が感じられない。 村で出会う男たちがみな同じ顔 ジェシー・バックリー
もう終わりにしよう。
2020年
チャーリー・カウフマン△ 超難解。わかる人はわかるらしいが、僕はお手上げ。せめて役者が魅力的なら見てられるが、パソコン画面でこれは相当にきつい。[Netflix] 恋人の実家を訪問する女性 ジェシー・バックリー
モータルコンバット
2021年
サイモン・マッコイドX 映画世界の構築が弱い。ファンタジーには絶対的にルールが必要だけど、ルールなしのなんでもありなら緊迫感が薄れる。[Netflix] バトルゲームの映画化 浅野忠信、真田広之
モーテル
2007年
ニムロッド・アンタル◯ 緊迫感あふれるスリラー映画は映画館に密閉されて観るに限る。2時間もあったら神経が切れてしまいそうだった。被害者が間抜けだと気持ちが離れてしまうけど、その点でも合格。 殺人モーテル ケイト・ベッキンセール
モールス
2010年
マット・リーヴス◯ 背景ヴィジュアルからエピソードまで、ほとんどオリジナルをコピーしてるとは予期しなかった。しかし出来はいい。オリジナルの不満箇所を全部直してくれたようで満足してます。 吸血鬼を恋する少年 クロエ・グレース・モレッツ、コディ・スミット=マクフィー
モガディシュ 脱出までの14日間
2021年
リュ・スンワン◯ 北と南がいっしょに脱出したという一点を除けば全部フィクション。娯楽映画としての潤色も限度を超える。協調して脱出した事実を伏せるため、ケニアの空港では互いに視線を合わすこともできない。そこにこの映画最大のキモがある。 ソマリア内戦に巻き込まれた韓国と北朝鮮の大使館 キム・ユンソク
モスル あるSWAT部隊の戦い
2019年
マシュー・マイケル・カーナハン◯ キャスティングがしっかりしてると思ったら、米国映画。中でもリーダーのキャラが強力。ラスト、最終目的地がそこだったというのは意表をつくが、そうなると話が微妙によじれてしまうような。 ISに家族を殺された警官で組織されたイラクの特殊部隊
ものすごくうるさくて、ありえないほど近い
2011年
スティーブン・ダルドリー◯ 少年の世界は奇妙で、映画として観てるという気がしなかった。それだけに、サンドラ・ブロックの泣きパターン演技が一気に普通のドラマへ落として残念だった。言いにくいタイトルで、チケット売り場でまごつく。「ものすごく」は使わない言葉だ。なぜ「とてつもなく」じゃないんだろう。 9・11に父親を亡くした少年の喪失と再生 トム・ハンクス
MONOS 猿と呼ばれし者たち
2019年
アレハンドロ・ランデス◯ どっぷり異世界体験。感覚の映画なのでストーリーを追っても意味ない。アートフィルムではありません。ちゃんとストーリーはあります。野暮を承知で書くが、一つの基地を子供たちだけで運営するのは無理。トラブるのは当たり前。 山中で集団生活する少年と少女の兵士
もらとりあむタマ子
2013年
山下敦弘◎ ダメ子と父親の間合いの取り方がなんともいえず、ほっこり入り込んでしまいました。僕が父なら「バカヤロ出て行け!」で終わってしまったような話です。前田敦子は主演女優賞もの。 康すおん/鈴木慶一/中村久美/富田靖子
森崎書店の日々
2010年
日向朝子◎ 同日観た『海炭市叙景』とは正反対。自分の身体感覚に近く、すっと入り込める。ゆっくりした演出なんだけど、緊張感のあるゆっくりなので、だれない。「価値あるものを買うんじゃなく、自分で価値を作れる人間は強い」という言葉に強くうなずいた。 古書店の二階に居候する女性 菊池亜希子 内藤剛志 田中麗奈
モンガに散る
2010年
ニウ・チェンザー◎ 傑作です。タイを含めた東アジア全域の映画は熱い。ぼやぽやしてると日本は取り残されて映画後進国になりそう。 やくざ社会に入った5人の若者
モンスターVSエイリアン
2009年
ロブ・レターマン、コンラッド・ヴァーノン◎ 懐かしくなって再見。ここ20年ぐらいのアニメの中で突出している。日本の怪獣映画をかなり意識してることを改めて感じた。出来映えは比較にならないほどこちらが上だが。[Netflix] 侵略者と戦う地球のモンスター軍団
モンタナの目撃者
2021年
テイラー・シェリダン△ 森林火災消火活動の話と思い込んでいた。犯罪サスペンス。ニコラス・ホルトが悪党、ジョン・バーンサルが善玉と、いつもの役割を交換したようで面白い。[Netflix] アンジェリーナ・ジョリー
やがて海へと届く
2022年
中川龍太郎△ 岸井ゆきのが主演というのに違和感あって迷ってたけど、『ストレイ 犬が見た世界』とちょうどハシゴできるタイミングだったので観てしまった。悪い映画ではなかったけど、違和感は取れなかった。 突然消えてしまった親友 浜辺美波
焼肉ドラゴン
2018年
鄭義信△ 泣き笑いの映画を期待したが、笑いは不発。テンポ悪いです。日本の不機嫌顔女優ナンバーワンの井上真央は健在でした。以下、少々ネタバレが入るので、要注意。この映画、韓国人を悪く描いてるわけではない。なのに、どうして?と思わざるをえない演出がある。父親が息子を自殺に追い込む。それでいて悔悟の念がない。どうかしてる。 真木よう子、桜庭ななみ、大泉洋、イ・ジョンウン、キム・サンホ
ヤクザと家族 The Family
2021年
藤井道人◯ ヤクザって、どこまでいっても悲惨ですよー、って、教育的な映画。大甘の『すばらしき世界』よりこっちが確実に上です。両方に出演してる北村有起哉も、こっちのほうが上出来。ただ、各役者に14年の年齢差がちっとも感じられなくて。 綾野剛、舘ひろし、尾野真千子、市原隼人
約束の宇宙(やくそくのそら)
2019年
アリス・ウィンクール△ 不安的中。なんとものっぺりした演出。もろもろの訓練演出は本格的だが、プラスになってない。娘の名前がステラ(星)で猫がライカ(宇宙飛行した犬)。理に落ちる部分は多いんだけど。 シングルマザーが宇宙に飛び立つ エヴァ・グリーン
屋敷女
2007年
ジュリアン・モーリー&アレクサンドル・パスティロ◯ 今までとてつもなく凄惨なホラーを観てきたつもりだが、これはひどい。公開するほうもまともな神経持ってない気がする。こんなもん作っていいのか、と思いながらも作品としての質の高さには目を瞠る。と言いつつ、「いや、やめて、それだけは」と後じさりしてしまう映像。ベアトリス・ダルは狂った役にハマる。[DVD] 妊婦が女殺人鬼に襲われる アリソン・パラディ
夜叉
1985年
降旗康男◯ このころの高倉健は精悍で、アクションシーンにも無理を感じない。トゥーツ・シールマンスのハーモニカ音楽は日本の情緒とマッチしていた。役者としては破滅的な人生を歩む北野武が最も強い印象を残す。[DVD] 漁師に転職したヤクザ いしだあゆみ/田中裕子
ヤッターマン
2009年
三池崇史◯ CGIのデザインセンスはいい。でも、お子様ランチ。深田恭子はもっとはじけまくってほしかったが、半端だ。もっとエロでスケベでもよかった。ひょっとして主役はボヤッキー(生瀬勝久)だったんでしょうか。エンドにくっついてる続編予告はジョーク? それともマジ? 実写映画化 櫻井翔、福田沙紀
やっぱり契約破棄していいですか!?
2018年
トム・エドモンズ△ 自殺できなくて殺し屋を頼んだら、事情が変わってキャンセルしようとするも、取り消し不可で殺し屋から逃げまくる話。筋を変えてくるだろうとは思ったが、そういう終わり方でしたか。 『豚と軍艦』『コントラクト・キラー』の焼き直し トム・ウィルキンソン
野盗風の中を走る
1961年
稲垣浩◎ 時代劇の隠れた名作を発見。サスペンスフルなシナリオ。練り込まれた脚本。『十三人の刺客』以来の興奮状態。感動しました。原作者である演劇人の真山美保にも興味が湧いた。野武士と村人との関係は『七人の侍』と正反対に近い。どっちが正解とも言えないが。 夏木陽介、佐藤允、市川染五郎、笠智衆、松本幸四郎、雪村いづみ
映画 闇金ウシジマくん
2012年
山口雅俊◎ 外道で金の亡者の世界。社会のクズどもが激突するわりに、結局誰も死んでないんじゃないか。絶命シーンはないけど一人死んだかもしれないやつがいる。息の根を止めてほしいのは確実に一人いた。身長は足りないけど、山田孝之はキャラクターが見事にはまっている。 闇金融業者の取り立て 大島優子、林遣都
映画 闇金ウシジマくん Part2
2014年
山口雅俊◎ 前作の大島優子もだが、門脇麦という生きのいい若手を拾い上げている。重要な登場人物が非常に多く、それにからむエピソードも多いが、混乱することなく一本の映画に収斂していくのは見事だ。お決まりのマンネリ演出もなし。このシリーズは大いに期待する。 山田孝之、綾野剛、窪田正孝、やべきょうすけ、中尾明慶、菅田将暉、柳楽優弥
闇金ウシジマくん Part3
2016年
山口雅俊◯ 近年のシリーズ物でイチ押し。出てくるのは悪党ばかりで、誰にも感情移入不可能。ハッピーエンドは常にカウカウファイナンスの連中のみ。愚かな貧乏人をだまして金を吸い上げる悪質なセミナー屋を叩き潰すだけが爽快感かな。カウカウの一味がハマリの役のやべきょうすけと、アホサラリーマンの藤森慎吾もイチ押し。カウカウのポケットティッシュをたくさんもらって帰りました。 闇金融業界の風雲児 山田孝之、綾野剛、本郷奏多、浜野謙太、岸井ゆきの
闇金ウシジマくん ザ・ファイナル山口雅俊◯ 今回も絶好調。因縁の争いは決着ついたか。このシリーズは原則として誰も死なないので、決着をつけにくい。善悪の概念が存在しない世界に一人、完全な善をまとう人物(永山絢斗)が立ち現われる。こいつにウシジマが動揺する。しっかりしろ。こんなやつ気にすんな。やべきょうすけの中学時代がこいつですか。似てないというレヴェルではない。なんで関西弁を喋らん。綾野剛の少年時代は見事にそっくり。 山田孝之、高橋メアリージュン、真野恵里菜、マキタスポーツ、八嶋智人
闇の列車、光の旅
2009年
キャリー・ジョージ・フクナガ◎ 日常そのものが過酷な世界。平穏な日本とのギャップが大きい。十代のヒロイン、パウリーナ・ガイタンの魅力が際立つ。その魅力が危険を呼び寄せているようで危うい。生き抜かねばならない。そのためには後ろをふり返ってはならぬ。 ホンジュラスから米国をめざす少女
勇気ある追跡
1969年
ヘンリー・ハサウェイ◎ 何十年か前、テレビ(吹替・短縮版)で観て以来。記憶の変質を痛感した。ガラガラヘビの穴も含め、細かいエピソードまでリメイクの『トゥルー・グリット』と同じだった。最大の違いはマティを演じたキム・ダービー。『トゥ〜』のイモねえちゃんと違って超魅力的。撮影当時二十代で子持ちだったのを知ってるが、コドモにしか見えない。トリオの珍妙なやりとりの面白さもオリジナル版が優る。[DVD] 父の仇を追う少女 ジョン・ウェイン、デニス・ホッパー
由宇子の天秤
2021年
春本雄二郎◯ 瀧内公美の気迫のこもる演技に見惚れる。前に観た主演の『彼女の人生は間違いじゃない』では、個性が見えなさすぎて顔を覚えるの無理と思ったが、今回ようやく認識した。撮影や演出にはリズム感がなく、テンポもゆるくて、しんどいものがあった。2時間超える長尺を揺れ動く手持ちカメラで通すのは勘弁してほしい。 教育現場の問題を追及するTVディレクター 光石研
友罪
2018年
瀬々敬久◯ 無関係なエピソードが並走する。最後に一本の話にまとまるわけじゃなく、バラバラのまま。予告篇はあざとくも一本の話にまとめていた。夏帆は幸薄い女を演じるとなぜこんなにはまり込んでしまうんだろう。 生田斗真、瑛太、佐藤浩市、山本美月、富田靖子、西田尚美、村上淳、片岡礼子、石田法嗣、古舘寛治
遊星からの物体X ファーストコンタクト
2011年
マティス・ヴァン・ヘイニンゲン・Jr.◯ ツッコミどころは多く、ラストは変な具合に曖昧さを残して釈然としない。肉食怪獣のエイリアンが地球人より高度な技術力を持ってるのは『スーパー8』などと同様、変だ。しかしB級なホラーサスペンスで突っ走って、観てる間はむちやくちゃ楽しい。 化け物ホラーのリメイク
夕陽のあと
2019年
越川道夫◯ 2本ハシゴで2本とも泣いてしまうという、初めての経験。もう一本『ラスト・ムービースター』ともども、自分と重なる部分なんてないんですけど。それは映画の力。役者の力というもの。 少年の親権をめぐって産みの親と育ての母親が激突 貫地谷しほり、山田真歩
行きずりの街
2010年
阪本順治△ ハードボイルドのつもりで観るとリズムが悪くてまどろっこしい。期待せずに観ればそれなりと思う。役者はワルの窪塚洋介がおいしいところをさらってしまった。小西真奈美がこのヒロインには合ってないと思ったのは、『のんちゃんのり弁』のコメディエンヌ印象を引きずってるせいらしい。 仲村トオル/南沢奈央/谷村美月/窪塚洋介
ユキとニナ
2009年
諏訪敦彦、イポリット・ジラルド◯ フランスの風景からいきなり日本の農村が現われて驚いた。ぼーっとした顔のユキ(ノエ・サンピ)がハーフながら、気質も風貌も純日本人風で、カメラが見とれてるかのように凝視している。諏訪監督は独特の演出リズムがあり、せわしないときに観るともどかしい。時間的余裕のあるときに観たかった。 両親の離婚に反発して家出する少女
雪の女王
1957年
レフ・アタマーノフ△ 宮崎駿がこのアニメを推奨した理由がわかった。女の子が男の子を救うために冒険の旅に出る。男の子はこの場合、なんにもしない。それだけが推奨の理由ではないでしょうけど、それがなければわざわざジブリが輸入して公開しなかったはず。 アンデルセン原作 雪の女王にさらわれた少年
雪山の絆
2023年
J・A・バヨナ◯ この事件の映画化はこれ以外一つも観てません。この話をあらためて映画化した意図はどこにあるんだろう。悪い印象はないけど、スカされた気分。[Netflix] アンデスに墜落した飛行機
ユピテルとイオ
2019年
ジョナサン・ヘルパート◯ ラスト近く、ヒロインが発作的に自殺を図ったように見えた。さっぱりわからんエンディング。Wikiにあらすじがあった。見間違えてた。ラストシーンで子供が現われてヒロインと並んだのも、自分の子供時代を妄想してるんだろうと思ってた。わかりにくいのは演出が悪い。ということにしとこ。[Netflix] 居住不能となった地球に残る女性 マーガレット・クアリー
夢売るふたり
2012年
西川美和◎ 好調な日本映画の中でもひときわ輝く映画が現われた。人間心理の微妙な機微をストーリーに織り込む脚本(西川美和)は見事。女性の中に現実的側面と夢想的側面が同居する。ツボにはまると夢想が暴走する。だからツボさえ押さえれば簡単に騙せる(やってないですよ)。ラストの松たか子を見て思った。女の人って現実でも夢想でもパワフル、エネルギッシュ、そして手強い。 結婚詐欺で店の資金を稼ぐ夫婦 阿部サダヲ、田中麗奈、鈴木砂羽、木村多江
許されざる者
2013年
李相日◯ 大作風な構えがシャープさを失わせたのが残念。とはいえ、各演技者の気迫のこもった演技に堪能した。予想通りだったが、忽那汐里はひかり輝いている。そこで満足しきって、あとは大目に。オリジナル(クリント・イーストウッド版)のすばらしかった点、善悪の境目の消滅は、この映画ではほぼ拭い取られている。この映画に対するイーストウッドの評価を知りたい。 渡辺謙、柄本明、柳楽優弥、小池栄子、國村隼、近藤芳正、小澤征悦、三浦貴大
湯を沸かすほどの熱い愛
2016年
中野量太◯ 演技アンサンブルが上々。むしろできすぎの感も。杉咲花にとっては出世作になった。『トイレのピエタ』の力強さから一転し、か弱さが本来のキャラかと思えるほどしっくりくる。 宮沢りえ、篠原ゆき子、オダギリジョー
ユンヒへ
2019年
イム・デヒョン△ あまりにテンポが鈍すぎて、普通の映画の半分程度の展開で終わってしまった。主演二人にもうちょっと魅力があればと思う。中村優子を唯野未歩子に替えればしっくりくる(レズビアン印象で)。 かつての恋人が住む小樽へ キム・ヒエ、木野花、瀧内公美
夜明けまでバス停で
2022年
高橋伴明◯ ぶっ殺してやりたくなるほどのワルのいる映画は強い。三浦貴大がぴったりしっくり。主演の板谷由夏は時々桃井かおりに見えてくる。声や口調までも極似。 ホームレスに転落した女 大西礼芳、ルビーモレノ、片岡礼子、柄本佑、柄本明
酔いがさめたら、うちに帰ろう。
2010年
東陽一◎ 達者な演技者が勢ぞろいだが、その中で4歳ぐらいの女の子(森くれあ)の演技はどうやって指導したのか不思議でならない。表現は豊かでダイレクトで、心を揺さぶられた。見どころは数多く、必見。 アルコール依存症の夫 浅野忠信/永作博美/市川実日子/高田聖子
八日目の蝉
2011年
成島出☆ 井上真央。無愛想が顔を持ったらこうなる、みたいな人ですが、女優としての評価が爆発的に上昇した映画です。この話だと、娘の愛情は必然的に実母じゃなく偽母に向かうことになる。哀しいことではあるが。[Netflix] 角田光代原作 母だと思った女は誘拐犯人 永作博美 小池栄子
酔うと化け物になる父がつらい
2020年
片桐健滋◯ タイトルには少なからぬ違和感があるが、僕好みの映画。姉妹の松本穂香と今泉佑唯がいいね。 毎日泥酔する父 渋川清彦、ともさかりえ、恒松祐里、浜野謙太、安藤玉恵、宇野祥平
ヨーロッパ新世紀
2022年
クリスティアン・ムンジウ◎ 最近2時間超の日本映画が軒並みイマイチだったこともあり、2時間を超える映画を観るのにハードルが上がった。しかしこれは当たりだった。人々の思いがヴィヴィッドに伝わる。ただ、主人公男性に関してだけはイマイチ考えてることがわかりづらい。ラストシーンも、どうだったのか…。日本の音楽が使われ、パン工場で招き猫がオイデオイデしてる。監督は日本趣味か。 トランシルバニアの村で住民がアジア人労働者を排斥
欲望のバージニア
2012年
ジョン・ヒルコート◯ 過酷だった傑作『ザ・ロード』と比較すれば大きく落ちるが、これはこれで秀作の水準。ミア・ワシコウスカはブスか美人かの二文法なら確実にブスに入ると思うが、どの映画でも分不相応な役を割り振られてる。 密造酒製造の3兄弟 シャイア・ラブーフ、トム・ハーディ、ジェシカ・チャステイン
よこがお
2019年
深田晃司X 全編重苦しい。不穏な空気が立ち込める。監督がこの女優を使いたがる気持ちはどうにも理解しがたい。コメディ顔でシリアス演技するか。甥っ子の犯罪の動機は最後まで明らかにされない。市川実日子の発言の動機がわからないヒロインは鈍感。 筒井真理子、池松壮亮
汚れた血
1986年
レオス・カラックス☆ スクリーンで久しぶりに上映されるので、観逃せない。僕の中で特別な位置を占める作品なので、評価も批評もできません。初めて観たときは映画の新時代が到来したかのような感動がありました。ジュリエット・ビノシュの神々しいほどの美しさ。特にモノクロシーンでのビノシュは輝かんばかり。ビノシュが美人でないと思われている方。ぜひこの映画を観てもらいたい。
ラーメンガール
2008年
ロバート・アラン・アッカーマン◯ メインキャストのトリオ(ブリタニー・マーフィー、西田敏行、余貴美子)の顔ぶれから笑いを期待したが、意外と大まじめだった。監督と脚本が日本人でないにしては日本人の演出・描写に違和感がない。韓国語のセリフがなくても韓国人役は韓国の俳優。このあたりはきっちりしてて好感が持てる。観てからわかったが、ブリタニーの遺作ではなく、未完成を含め、このあとにもかなりある。もっと活躍してほしい女優だったが。[DVD] 東京でラーメン修業をする金髪女
ライラにお手あげ
2007年
ボビー・ファレリー、ピーター・ファレリー◎ 新婚旅行中に他の女に惚れ、即離婚して乗り換える男の話。これのリメイク元の『ふたり自身』は「再見したい映画ベストワン」候補の1本(観ました!)。エンドが大胆に改変されてるが、強烈に皮肉なエンディングはオリジナルを凌ぐ。ヒロインのミシェル・モナハンがとても魅力的です。[DVD] ベン・スティラー
Love
1963年
九里洋二◯ 現代音楽とのコラボレーションの短編アニメ。セリフは「アイ」のみ。笑える実験作品だ。気取ったつもりのアートアニメーションばかりの中、唯一楽しめた。[DVD] 声:岸田今日子、水島弘 音楽:武満徹 らゔ
楽園
2019年
瀬々敬久◯ 悲惨で救いのない話。杉咲花のところだけぱっと明るく光が射してるような輝きがある。アジア系外国人役は外国人だと思ったら、黒沢あすかだった。なんらかの賞を獲って当然の存在感がある。草刈り機の使い方を理解してない佐藤浩市に、きちんと教えられるスタッフがいなかったのは残念。[YouTube] 吉田修一原作 未解決となった少女失踪事件 綾野剛、柄本明、片岡礼子
羅生門
1950年
黒澤明△ 若いころに観たときも思ったが、唐突なヒューマニズムで終わることで映画を台なしにしてるように見える。上田吉二郎のシニカルさが僕にはいちばんフィットする。なぜ刀を片手で振り回してるのかが気になったが、時代考証的に正しい?
ラスト・キングダム:死すべき7人の王
2023年
エドワード・バザルゲット◯ この映画、英国史やブリテン島の地理に疎い人にはきついよ。僕自身、アングロサクソンとケルト人が連合して外敵と戦ったという話をすんなり信用することができないでいる。嘘を見破るため、もうちっとヨーロッパの歴史を勉強したい。 10世紀、英国対デーン人、最大の決戦
ラスト・ソルジャー
2010年
ディン・シェン◯ ジャッキー・チェンはいい企画を選択した。兵として徴用された農民が敵将をとらえて自国へ戻る道中、次々災難が降りかかる。ジャッキー・チェンは強くないのだ。その制約の中で工夫するから面白い。エンドクレジットでの毎度のおフザケなNG集は、この映画に限ってはそぐわない。 敵国の将軍を捕えて護送する農夫
ラスト・ブラッド
2009年
クリス・ナオン◯ チョン・ジヒョンをキャスティングしたセンスが素晴らしい。1970年代の日本を舞台に、どう見ても別世界の異次元ワールドでの闘いを描いている。背景世界の描き込みが足りてない。やたら長い殺戮シーンを削ってきちんと描いてほしかった。リメイク元のアニメ(『Blood the Last Vampire』)は当然ながらいいので、観てください。 暗躍するオニの一族 小雪、アリソン・ミラー、倉田保昭
ラスト・ムービースター
2017年
アダム・リフキン◎ 歳とると、こういうのに弱くなる。僕は過去に黄金時代などなかった。人生における悔悟の念とも無縁。だけど泣けてきた。 映画の元大スターが怪しげな映画祭に招かれる バート・レイノルズ
落下の解剖学
2023年
ジュスティーヌ・トリエ◯ 上映時間の長さが観る前から気になっていた。限度を超えて長く引き伸ばされたシーンがいくつかある。それを別にすれば悪くない。法廷ものだけどサスペンス映画ではない。なのであっと驚くようなどんでん返しはありません。 ベストセラー作家に夫の殺人容疑がかけられる ザンドラ・ヒュラー
ラビット・ホール
2010年
ジョン・キャメロン・ミッチェル◯ 結果としてはいい映画だったが、前半は入れなくて苦戦した。原因はニコール・キッドマンにある。無理してあんまり若い役をやらないほうがいい。その違和感だけで入りづらくなる。 事故で子供を失った夫婦 アーロン・エッカート
ラブファイト
2008年
成島出◯ 北乃きいが炸裂して暴れまくって爽快。くだらん男どもを張り倒し、蹴散らす女子が出てるだけでも大満足。韓国でリメイクしないかな。『暴力的な彼女』とか。 いじめられる幼なじみを守る女の子 林遣都
LOVE LIFE
2022年
深田晃司◯ あとで予告篇を見たら見事なほど話のネタを割らないようにつないでいる。前情報ゼロで観たので面白かった。でもこの曖昧なラストでは海外で評価されにくいだろうに。顔見て思い出せない女優がいた。声を聞いたとたん、「山崎紘菜!」(笑)。 事件を契機に揺れる若夫婦 木村文乃、永山絢斗、砂田アトム
ラブリーボーン
2009年
ピーター・ジャクソン◎ 殺された14歳の女の子が、ショックでばらばらになりかけた家族を見守るファンタジー。『つぐない』のシアーシャ・ローナン、チャーミングでいい顔になりました。エリザベス・フレイザーの歌う『ソング・トゥ・サイレン』がぴったりな選曲で美しく、こっちが天国に舞い上がりそうだった。 マーク・ウォールバーグ、レイチェル・ワイズ、スタンリー・トゥッチ
ラブ・レター
1998年
森崎東◯ 中井貴一がヤクザ系の裏ビデオ屋店長という、ありえないキャスティングに驚く。金に困って中国人娘と偽装結婚させられる役割。似合わないと思った中井貴一は、徐々に合ってくるのが不思議。[YouTube] 山本太郎、根津甚八、大地康雄
LAMB ラム
2021年
ヴァルディミール・ヨハンソン◯ 不気味なシチュエーションに戸惑う。アイスランドの荒涼とした風景は登場人物以上に物語る。羊の母さん、悲しすぎるよ。このマイナーな映画に大勢の客が入ってたのには驚き。 羊から生まれた何か ノオミ・ラパス
RUN ラン
2020年
アニーシュ・チャガンティ◯ この設定でよもやのバッドエンドはなかろうねと、祈るような気持ちで観た。エンドは思わぬ展開に「おっ、そうきたか」と興奮した。 毒母の狂気が暴走 サラ・ポールソン、キーラ・アレン
ラン・オールナイト
2015年
ジャウム・コレット=セラ◯ 使用曲について調べるだけのつもりで期待せずに観て、力ずくで引き込まれる。映像と役者の演技に力がみなぎる。善も悪もあるような連中が、愛憎を交えて対決する。息子の仇を打とうとする男と、死んでも息子を守り通そうとする男。老人対決。[Netflix] 息子を守って逃げる男 リーアム・ニーソン
ランナウェイズ
2010年
フローリア・シジスモンディ◯ クリステン・スチュワート(ジョーン・ジェット役)は終始一貫して全身でロッカー魂を体現していて素晴らしかった。主演はダコタ・ファニング(シェリー・カーリー役)だけど、目はクリステンに釘づけ。 実在した少女ロックグループの軌跡
乱暴と待機
2010年
冨永昌敬◯ 冨永昌敬は前々作の『パビリオン山椒魚』から一挙に7点もアップ。無茶苦茶、一触即発、理性放棄、病的世界。最後までわけわからんままで、ようござんした。小池栄子の爆発は快感で、もっと暴れてほしかった。美波の気持ち悪キャラは虫酸が走った。 本谷有希子原作 舞台劇映画化 浅野忠信/山田孝之
ラン・ラビット・ラン
2023年
ダイナ・リード△ サラ・スヌークの老けぶりに衝撃。実年齢では7歳の子供がいてもおかしくないが、祖母に見えてしまうのだ。それに怖い、不気味。ヒロインに好感が持てないと見続けるのがしんどい。[Netflix] 幼くして死んだ妹が幼い娘の中で復活する グレタ・スカッキ
リアル鬼ごっこ
2015年
園子温◯ ざっと説明。原作は小学生の作文並み。シリーズ第1作は原作のストーリーや設定を大胆に改造し、なかなかの佳作となりました。本作はタイトルを借りただけの別物(予告篇も大嘘)。リアルではないヴァーチャル鬼ごっこです。監督が残虐趣味を爆発させたかっただけ、という気がする。主演のトリンドル玲奈は当て書きされたかのようにぴったりはまっている。[YouTube] 殺人ゲーム
リーガル・マインド 裏切りの法廷
2013年
カレン・モンクリーフ◎ 法定サスペンスでまだこんな有力な鉱脈が残されていたとは。それぞれの立場の人物がリアルに描き込まれ、終盤の大逆転劇へとなだれ込む。見事な作劇は女性監督によるオリジナル脚本。[YouTube] 殺人事件の被告を弁護する ケイト・ベッキンセール
陸軍
1944年
木下惠介◯ 映画『はじまりのみち』ではこの長いラストシーンがほぼそのまんま引用される。引用では長すぎると思ったが、元の映画で観直し、圧倒的な力に震える思いだった。ラストに流れる軍歌は名曲で、くり返し聴いていたい。歌詞は戦意高揚なのに、それを冷徹に捉えているから泣けてくる。[YouTube] 陸軍省後援の国威発揚映画 田中絹代、笠智衆、東野英治郎
陸軍中野学校 開戦前夜
1968年
井上昭◯ 日程を間違えて別の映画だったけど、観ました。中野学校対連合国軍P機関の虚実の争いがサスペンス感覚たっぷりで楽しめました。日本のスパイ側が絶妙なアイディアや作戦を出してればもっと面白かったろう。P機関の謀略に振り回され続けてるという印象がある。 市川雷蔵 小山明子 船越英二
リップヴァンウィンクルの花嫁
2016年
岩井俊二◯ 不思議の国にはまりこんだアリス。黒木華。ときおり華やかにぱっと輝く表情を見せる女優。彼女を愛らしく見せるために作られた映画。スルーはできない。映画の中で説明されていない重要な背景がある。前半で黒木をハメた人間は最後まで明示されない。全体の流れとタイトルから類推するしかない。本ボシは○○○○○のはずなのだが、ほのめかしもしないので自信がない。 黒木華、綾野剛、Cocco、りりィ
リトル・ガール
2020年
セバスチャン・リフシッツ◯ サシャという男女両用の名前がついてるのはたまたまだと思っていた。親が意識的に両用の名前をつけたという点は大きい。この映画は一家の闘いの物語。日本じゃなくフランスで、しかも現代においてなお偏狭な意識が蔓延してることに驚かされた。一家に気持ちが寄り添い、心が熱くなる。 ドキュメンタリ 女の子になりたいフランスの少年
リトル・モンスターズエイブ・フォーサイス◯ ありえないを超越したおバカ展開がてんこ盛り。『ゾンビランド』とは一味違うゾンビコメディで楽しめます。[Netflix] 遠足の児童を取り囲むゾンビ集団 ルピタ・ニョンゴ
リバーズ・エッジ
2018年
行定勲◎ やばいムード満々。秘密の白骨死体を共有する3人の高校生。ストーリー進行とは無関係に、映画のキャラクターにインタビューする映像が時々はさまる。これって台本ないでしょう。みんななりきって答えてるのが面白い。登場する若手俳優の中で、初めて見るSUMIREが只者ではない! 何者?と調べると、浅野忠信とCHARAの娘でした。 岡崎京子原作
二階堂ふみ、吉沢亮、森川葵
[リミット]
2010年
ロドリゴ・コルテス◯ 「棺」の内側だけで一本のスリラー映画を成り立たせてしまった。一室完結もので史上最小スペースではないか。死にかけている男に対し、賠償請求を回避するため事務的にメッセージを録音する雇用社側の人間。冷酷非道な人非人感覚に血がのぼった。[DVD] イラクで誘拐者されて土の中に埋められた男 ライアン・レイノルズ
リメンバー・ミー
2017年
リー・アンクリッチ◯ 随所にご都合ストーリーがありはするが、ディズニー+ピクサーなので、話をそつなくまとめた印象。CGアニメは見栄えする派手な動きに頼る傾向があるけど、本当はいかにして動かさずに人の目を引くスキルを持つかが大事。 死者の日に死者の国へまぎれこんだ少年
竜とそばかすの姫
2021年
細田守◯ 『サマーウォーズ』よりも資金とエネルギーをかけたと思える映像がゴージャス。反面、ほとんどの人物が類型の枠内に収まってるのは不満。中尾幸世はどこにいたのだろうと音声を確認して、ようやく声を見つけた。 ネット世界でカリスマ歌姫になる女子高校生
ReLIFE リライフ
2017年
古澤健◯ 5年前にも観ている大好きな映画。平祐奈のユニークなキャラにノックアウトされた。このあとは平凡な青春ものの出演が多くてもどかしい。この人ならではのブッとんだキャラクターをもっと見たい。[Netflix] タイムスリップして高校生活を再体験する 中川大志
リンカーン弁護士
2011年
ブラッド・ファーマン◯ 主役の弁護士が正義派でないのがいい。ハメられて窮地に立たされてから必死になって悪と対決する。正義をふりかざす弁護士なんて、信用できん。 凶悪にハメられたチョイ悪弁護士 マシュー・マコノヒー
リンダ リンダ リンダ
2005年
山下敦弘☆ 自分にとっての特別な映画を一本ずつ観直す。どこに惹かれたのかと思ったが、ほぼ冒頭から目が釘づけ。膨大なエキストラが絶妙な空気をかもしている。バンドメンバー4人は絶妙なアンサンブル。それぞれにとっての代表作になったと思う。みんな愛おしい。それにしても学園祭が始まってからメンバー入れて曲決めて練習始めるって、無茶。[YouTube] ペ・ドゥナ、前田亜季、関根史織、香椎由宇、湯川潮音
LOU ルー
2022年
アンナ・フォースター◎ 最近は女性のバトルアクションが目立つが、さすがにばあちゃんの肉弾戦は珍しい。名前だけは聞いたことある程度のアリソン・ジャネイがヒロイン。世界を危機に陥れる陰謀ものではなく、巨悪と対決するわけでもない。スケールの小さいアクション映画なのに面白い。金をかけなくてもちっちゃくても面白い映画を作れますという見本みたいな映画。[Netflix] 元CIAの女が母娘を救う
LUCY ルーシー
2014年
リュック・ベッソン◯ 予告篇は映画の魅力を伝えていない。ホラな話を「そんなアホな」と突っ込ませずに見せる演出呼吸のよさで、ベッソン監督すっかり復活。スカーレット・ヨハンソンは豊かな表情演技で魅せる。予告篇ではひょっとしてミスキャストかと思われたが、ばっちりです。 体内に埋め込まれた新薬で脳内覚醒し始める女 チェ・ミンシク
ルース・エドガー
2019年
ジュリアス・オナー◯ デリケートな問題に手を突っ込んでいる。下手に書くと差別する側に見られてしまう。米国の根強い黒人差別意識が黒人の意識に圧力を加えている。その圧力の二つの典型が描かれたように思った。 優等生の黒人少年は悪魔? ナオミ・ワッツ、オクタヴィア・スペンサー
ルーム
2015年
レニー・アブラハムソン◎ ラストにぐっ、ときた。母親とってルームは監禁場所。だが子供の目には懐かしいふるさと。帰ってきて残された物たち別れを告げるシーンに泣けてくる。 監禁された母と子 ブリー・ラーソン
ルームロンダリング
2018年
片桐健滋△ 目のつけどころのいい企画だが、演出も脚本も力不足。池田エライザを見てるだけ。 事故物件のマンションルームの事故履歴を消す裏稼業
ルパン三世 くたばれ!ノストラダムス
1995年
白土武◯ ハイテンションのジェットコースターアニメ。ストーリーのつじつまが全部あってるかどうかなんてわからなくなった。このシリーズは一部しか観てないけど、ハイレヴェルであることを実感した。ところでここに登場した四世のその後は?[YouTube] 怪しげな新興宗教が暗躍する
レイチェルの結婚
2008年
ジョナサン・デミ◯ 事前情報を一切入れず。直前に(2人を除いて)知らない俳優ばかりと知っただけ。なので呆気にとられまくった。この映像、音楽。わざと素人っぽくしてる。結婚セレモニーのみを背景として群像ドラマでないというのも初めて。しかも主役は花嫁の妹。この映画はあらゆる定石を外しまくっている。超マイナーな作りの映画をソニーが配給というのに驚いた。 アン・ハサウェイ、デブラ・ウィンガー
0.5ミリ
2014年
安藤桃子◯ 映画ならではの大胆な虚構で笑わせてくれる。安藤サクラ、観る前から主演女優賞総ナメと思ったが、観て確信を強めた。ずっと三十代だと思っていたが、まだ二十代だった。役柄は三十代だけど。冒頭の木内みどりの自殺からラストにつながる部分、どれだけの人が理解できたか知りたい。真相をあまりにもさりげなく提示しすぎ。 土屋希望/井上竜夫/東出昌大/坂田利夫
レイトオータム
2011年
キム・テヨン△ 映像的にはよかったけど、間の取り方がいちいち長い。初めて見るタン・ウェイは不思議な印象で目が釘づけ。絶対日本人好みの風貌だ。 3日間限定の出所で出会った男 ヒョンビン
レスラー
2008年
ダーレン・アロノフスキー◎ はまりこんで没頭し、何も考えずに入り込んでしまいました。よけいなことをひと言も書きたくない心境。人に薦めたいとも思わない。ただひたすら自分が楽しんで得心して充足して放心して涙した。ひとつだけはっきり言える。この映画のミッキー・ロークにアカデミー主演男優賞を与えなかった協会員はクソだ。これで受賞できないというのなら、歴代の受賞者は賞の資格がない。 還暦のレスラー マリサ・トメイ
レッド RED
2010年
ロベルト・シュヴェンケひ ハラハラドキドキのないサスペンスアクションながら、しっかりと楽しめる出来栄え。各キャストが持ち味をしっかり出して見せ場を作ってるのが大きい。ツッコミ入れようと思ったらいくらでもだが、それは無粋。[Netflix] 元CIAが暗殺の標的に ブルース・ウィリス
レッド・ノーティス
2021年
ローソン・マーシャル・サーバー△ 行き当たりばったりに等しい大味なストーリーの『ルパン三世』亜流映画。でも時々はこんなのを観たくなってしまう。観ても記憶に残らないのに。[Netflix] ドウェイン・ジョンソン、ライアン・レイノルズ、ガル・ガドット
レッド・ファミリー
2013年
イ・ジュヒョン◯ メルマガ情報を真に受けて、スパイもののパロディだと思い込んでいた。笑えるシーンは皆無。徹頭徹尾、シリアス。完全に袋小路に陥った連中がどう決着をつけるのかは最後までわからなかった。 北の工作員たちが家族を装って南に暮らす
レッド・ロケット
2021年
ショーン・ベイカーX 自分的にはハズレ。前作『フロリダ・プロジェクト』の鮮やかなラストシーンの記憶に引きずられて観てしまった。主人公のクズ・カス・ゴミ男はもちろんのこと、どのキャラにも感情移入できず(主人公に利用されるおバカ二人を含め)。最も悪辣な大麻売り女は、米国のド田舎ならどこにでもいそうで、妙にリアリティある。 落ちぶれて戻ってきた元ポルノ映画男優
レディ・ガイ
2016年
ウォルター・ヒル◎ ゲテモノ的B級とたかをくくってたが、実に巧妙なストーリー。最初に登場した殺し屋。うまくミシェル・ロドリゲスに似た男優を見つけてきたものだと感心した。誰なのかを調べて、ミシェル本人と知った。メイクアップとCGと演技力の勝利。[Netflix] 性転換手術で女にさせられた殺し屋
レディ・バード
2017年
グレタ・ガーウィグ◯ ビーニー・フェルドスタインは一度見たら忘れられない顔。頭でっかちな映画かと思って封切りをスルーしたが、優れた青春映画でした。蛇足ながら、日本では"Lady"の日本語表記で(僕が書くものを除き)「レイディ」を見かけない。「レディ」という発音は外国人に通じない。 シアーシャ・ローナン、ティモシー・シャラメ
レプタイル 蜥蜴
2023年
グラント・シンガー△ Reptile=爬虫類とわかった時、主演のベニシオ・デル・トロの顔がパッと浮かんだ(笑)。悪くはないんだけど、全体にテンポが遅すぎるうえに、話がわかりづらい。殺人事件のサスペンスでこの中身。2時間を越える話ではない。[Netflix] アリシア・シルヴァーストーン
レミーのおいしいレストラン
2007年
ブラッド・バード◯ 『カーズ』の口直し。めっちゃくちゃノリノリの面白さ。同じピクサーでこうも違うか。演出家の差なんでしょう。劇場で観逃したのを反省。たかが料理ぐらいでそんなご大層なとは思うけど、そこはアニメでおとぎ話。おいしくいただきました。[DVD] 天才料理人のネズミ
ROMA ローマ
2018年
アルフォンソ・キュアロン◎ 予告篇に欺かれたというか、アートフィルムだとばかり思っていた。予告にはこの映画に強く出ているエモーショナルな部分が皆無だ。実にわかりやすく、静かに感動した。武士道精神というのは欧米では高潔なものという誤解があるが、下劣な心と同居しうるものとして暴いてる点も高評価。 監督自身の半自伝的な物語
ローラーガールズ・ダイアリー
2009年
ドリュー・バリモア◯ 手垢のついたストーリー設定だけど、定石通りに楽しませてくれる。ありえない、リアリティがないは封印。エレン・ペイジが気分の悪くなった親友を吐かせようとするやり口に爆笑。でも場内で笑ってるの、二人だけだった。もっと楽しんで観ようよ。マーシャ・ゲイ・ハーデンは『ミスト』の狂信者役を引きずってはいないが、観るほうがひきずってしまった。 ローラーボールの青春 ドリュー・バリモア
ローン・サバイバー
2013年
ピーター・バーグ◯ 2005年の軍事作戦。米軍とタリバン、どちらにとっても結果的に何の成果もあげえなかった戦闘で、ともに多くの犠牲者を出した。とはいえこれが納得いく現実。似た内容でお気楽な『ホース・ソルジャー』とは正反対(どちらも実話モデル)。[Netflix] アフガニスタンでのレッド・ウィング作戦 マーク・ウォールバーグ
ロ・ギワン
2024年
キム・ヒジン◯ ヘヴィーな脱北ものだが、観てるうちにぐいぐい引き込まれていった。ロ・ギワンは主人公の青年の名。北朝鮮の人間にしてはあまりにもイノセントで、これだけは絶対ありえない。[Netflix] 北朝鮮から出国してベルギーに渡った青年
6才のボクが、大人になるまで。
2014年
リチャード・リンクレイター◯ 制作方法も特殊だが、映画のテイストも一般の劇映画とは異質だ。観ている間、いろんなことに思いを馳せる。あるいは過去を振り返り、人生を辿ってみたりする。辿ってみたくなりませんか? 同一キャストで12年間を描く パトリシア・アークエット、イーサン・ホーク
ろくでなし
2017年
奥田庸介◯ ヒロインの遠藤祐美が素晴らしいが、調べてもほとんど情報がない。これといった経歴もない。ベテランに近くなった渋川清彦は渋さを増していい役者だ。主演は大西信満だが、こういう口下手生真面目タイプは男からも女からも好かれないように思うんだが、どうだろう。 渋谷という町に生息する男と女
上原実矩、大和田獏
ロケットマン
2019年
デクスター・フレッチャー◯ 『タイニィ・ダンサー』がフルで歌われる。この歌が入る映画はこれが初めて。エルトン・ジョンは自分でつけた名前だが、ジョンという名字が存在しないことに気がついた。ジョンの名字形はジョーンズ。バーニー・トーピン役の俳優、エンドクレジット見るまで思い出せず。ジェイミー・ベルでした。そしてエルトンの母親役。クレジット見て、仰天した。 エルトン・ジョンの半生を描く タロン・エガートン、ブライス・ダラス・ハワード
ロシアン・ルーレット
2010年
ゲラ・バブルアニ◎ 映画的興奮に満ちた92分。傑作です。 サム・ライリー/ジェイソン・ステイサム/ミッキー・ローク
ロスト・アイズ
2010年
ギリェム・モラレス◯ 映像・演技・演出・脚本。きわめて高品質のスリラーながら、京都では公開されなかった。ヒロインのベレン・ルエダは観終わってから『永遠のこどもたち』のヒロインだったことに気がついた。あちらも良質のスリラー。スペイン映画はあなどれない。[DVD] 双子の姉の死因を探る女性
ロストガールズ
2020年
リズ・ガーバス◯ IMDbの投票が2.9点。C級ホラー映画並み。しかし予告篇を見る限りではよさそうな気配があった。結果としてよかったんだが、悪評価の理由はわかる。カタルシスがまったくない重苦しい映画だ。観終わってからじわっと効いてくる。わりあい最近、現実に発生した事件を元にしているのは、エンドの字幕で知った。[Netflix] 売春婦を殺して埋める連続殺人事件 エイミー・ライアン、トーマシン・マッケンジー
ロストケア
2023年
前田哲◯ 娯楽要素ゼロの映画を作るの、勇気ある。しかも人権原理主義の方面からのバッシングが予想される。容疑者(松山ケンイチ)は検事(長澤まさみ)と鋭く対峙する。二人とも最近、いい仕事している。いい映画を作りたいとの真摯な思いも感じる。きれいごとにまとめられてしまったら席を立ちたくなっただろうけど、行き着くところまでいってしまった。あまりにシビアすぎて、劇場から逃げ出した観客もいた。 担当する老人42人を殺害した介護士 鈴鹿央士、坂井真紀、藤田弓子、柄本明
ロスト・ドーター
2021年
マギー・ギレンホール△ 知らずに観たら、子育て鬱の話だった。重たい上に主人公の行動が理不尽。ジェシー・バックリーの18年後がオリヴィア・コールマンというのは無茶。顔だけじゃなく何もかもが違いすぎる。佐久間由衣が樹木希林になる、みたいなもの。[Netflix] ダコタ・ジョンソン、エド・ハリス
ロビン・フッド
2010年
リドリー・スコット◯ 静かな感動の広がるエンド。気がつくと涙ぐんでいました。イングランド中部の村でサクソン人なのにダンス音楽はアイリッシュケルト。おまけに20世紀の曲も(『アイルランドの女』)。つっこみどころもあったけど、意欲あふれる傑作でした。 伝承架空のアウトロー誕生話 ラッセル・クロウ
ロブスター
2015年
ヨルゴス・ランティモス△ 結婚しない人間は人間として生きることが許されない近未来、という設定。あまりに暗い結末に、書く気をなくしてしまう。レア・セドゥーは悪辣なキャラが似合っている。それだけは書きたい。 コリン・ファレル、レイチェル・ワイズ
ロボジー
2012年
矢口史靖△ 吉高由里子ははじけてるし、理系オタクも似合っている。が、コメディなのにほとんど笑えない。演出センス、ちょっと錆びついてないか。それとミッキー・カーチス。どう見ても偏屈でいやみなジジイにしか見えない。 開発が間に合わないロボットを老人が着ぐるみ
ロマンスドール
2020年
タナダユキ△ 不思議に思ったのは主人公の浮気相手の三浦透子。20近くも年上の高橋一生を堂々とリードしてる印象がある。タナダユキは作品数が多いわりに代表作がない。この映画も、監督自身の脚本がいいんだけど、演出・演技面で突き抜ける何かが足りてない。[Netflix] ラブドール職人とその妻 蒼井優
ロマンティックじゃない?
2019年
トッド・ストラウス=シュルソン◯ 『愛しのローズマリー』など、似た設定の話はいくつかあったと思うけど、これが一番面白い。エンドのいきなりミュージカルシーンのダンスは爆発的![Netflix] ラブコメ世界に放り込まれたデブ子ちゃん レベル・ウィルソン、リアム・ヘムズワース
ロラックスおじさんの秘密の種
2012年
クリス・ルノー◯ 人権イヴェントの無料上映だが、テーマは「自然を取り戻す」。人権とはなんの関係もない。ストーリーはあまりにもプリミティヴ。女子高生ヒロインがディズニーみたいな超没個性美形キャラでなかったことだけはOK! ドクター・スース原作 人工的な町で自然の樹木を取り戻そうとする少年
ロルナの祈り
2008年
ダルデンヌ兄弟◯ ベルギーで偽装結婚ビジネスをやってる犯罪組織。不思議な世界を見る思いだった。メンバーはさほどワルには見えず、悪事に手を染めているという認識も皆無の様子。ボスから見れば、周到に準備した大きなヤマを、勝手なことして壊していくヒロイン(これもメンバー)にむかっ腹が立つところでしょう。ダルデンヌ兄弟は音楽をまったく使わないと聞いたが、この映画ではベートーヴェンがエンドで使われている。 アルタ・ドブロシ、ジェレミー・レニエ
ロング・ショット 僕と彼女のありえない恋
2019年
ジョナサン・レヴィン△ 男の妄想ファンタジー。いくらなんでもこのヴィジュアルと性格では、女性に好かれるわけない。 美女と野獣 シャーリーズ・セロン、セス・ローゲン
YMCA野球団 → 爆烈野球団!
ワイルドライフ
2018年
ポール・ダノ△ キャリー・マリガンの老けぶりに驚いた。1985年生まれ。映画の中で息子に「34よ。50に見える?」と言ってたが、まじでそう見える。子役のエド・オクセンボールドは監督とどことなく似てるような。自己投影したかな? 壊れていく家族の絆 ジェイク・ギレンホール
我が心のオルガン
1999年
イ・ヨンジェ☆ チョン・ドヨン、おおなんと小学生の役。とおに二十歳すぎてるでしょうあんた。しっくり心になじむいい映画で、気持ちは温かくなりました。チョン・ドヨンがヒッチハイクしようとしたシーンはなんの説明もなく、あれはなんだと思ってたら、ラストシーンで判明。エンドクレジットではその後のストーリーをさりげなく。にくい演出だね。 新米教師が山間の寒村に赴任する イ・ビョンホン
私の鶯
1944年
島津保次郎◯ 戦中の映画で舞台は中国、言語は大半がロシア語という珍品。日本では劇場公開されてない。ミュージシャンの話でもあるので、ロシアを中心とした音楽がたっぷり楽しめる。ただし音楽クレジットがないので、曲名の判別に手間取った。[YouTube] ロシア革命で国を追われた貴族たち 李香蘭、進藤英太郎
私の男
2014年
熊切和嘉◯ 好みのヤバ系と思ったが、生理的に合わないシーン多し。16ミリフィルムなのか、粒子の粗い奥尻のシーンはインパクトある。子供時代を演じた山田望叶は目の表情だけで演じきって力強い。 桜庭一樹原作 浅野忠信、二階堂ふみ
私の少女
2014年
チョン・ジュリ◯ 韓国を代表する2大女優(個人的に)が主演とあれば観ないわけにいかない。明らかにペ・ドゥナが圧倒的な格上を見せて圧勝。 家族から虐待され続ける少女を保護する婦人警官 キム・セロン
私の大嫌いな弟へ ブラザー&シスター
2022年
アルノー・デプレシャン△ 家族の絆くそくらえな自分にとってはこのべったり家族ドラマは重たすぎた。なにをそんなに大層なことを。ゴルシフテ・ファラハニは欧米の映画で特異な立ち位置を確保している。主演映画が少ないのは残念。 両親の事故で姉弟が再会 マリオン・コティヤール
ワタシの中の彼女
2022年
中村真夕◯ 菜葉菜が一人で四つの話の主演を演じ分ける。第四話の盲目の女性はどう撮影したのかが気になる。たぶん菜葉菜の目の先に焦点を合わせるための目印を置いてるんだろう。微妙に両目が寄ったまま固定されてる。 4話オムニバス 浅田美代子、占部房子、大高洋子
私の20世紀
1989年
イルディコ・エニエディ◯ えーっ!こんな映画だった?とショック。覚えてるシーン、ゼロ。昔はアート映画に免疫があった。今は感覚が鈍ってる。 ハンガリーの双子の孤児が別れ別れに
私の優しくない先輩
2010年
山本寛◎ 観て正解。好感度抜群の青春映画でした。全編、ヒロインによる現在進行形のモノローグという不思議な形式。川島海荷は新スターを予感させました。エンドクレジットは爽快感のあるミュージカル。それを移動しながらワンカットで撮影してる。現場の大変さを思うとご苦労さまと言いたくなる。 クサいウザいキモい暑苦しい先輩 金田哲
わたしの名は情婦
1949年
森一生◯ 前日観た『アオギリにたくして』と同じようなエピソードがある。善意ヅラした悪意。こちらはベテランの沢村貞子が演じて段違いに上。しかも表の意識では善意だと勘違いしてるから手に負えない。「更生させてやっている」と言いつつ、弱い立場のものをいたぶって楽しんでいる。悪役がしっかりしてると映画は面白くなる。 水戸光子、二本柳寛、菅井一郎
私は貝になりたい
1959年
橋本忍◯ 一度テレビで見て二度目らしいが、まるで記憶なし。一つひっかかったこと。BC級戦犯処刑が途切れて一年以上もたってから、唐突に重松(フランキー堺)のみ執行されるのは不自然だろう。なんの説明もない。理不尽ではなく不可解な印象が残る。 戦犯として裁かれる散髪屋 新珠三千代
わたしを離さないで
2010年
マーク・ロマネク☆ ドナーになるために量産された子供たち。逆らう術も学べず、死を受け入れるしかない。あらがうことも知らない。哀しみを通り越したヒロインのまなざしが尾を引く。女優二人は同い年の設定にしては年が離れすぎだと思ったが、二人とも1985年生まれだった。童顔と大人びた顔。見た目、差がつきすぎる。 カズオ・イシグロ原作 キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイ
藁の楯
2013年
三池崇史◎ メジャー大作に偏見あって、「傑作はありえんだろう」とたかをくくっていた。傑作と言っても過言じゃない出来映えだった。ワーナーの映画だが、容赦ないストーリーがメジャーらしからぬ。ほとんど救いがない。人間の屑を中心に置きながら、本人は何もしないでとりまく警察と一般人が殺気立つ設定が秀逸だ。日本の大手も頑張ってほしいが、すぐに媚びて腰折れる。 クズを殺せば大金ゲット 大沢たかお/松嶋菜々子/藤原竜也/山崎努
悪いやつら
2012年
ユン・ジョンビン◯ この映画は韓国のイメージアップにはぜんぜん貢献していない。民度の低さをもろに出している。ハ・ジョンウ演じるヤクザの親分もだめな男だ。はなから信用できないのが見え見えの中年にあっさり騙される。初対面でも人を見抜ける眼力が必要だ。それはヤクザに限らんが。 コネをツテにして裏社会で勢力を拡大 チェ・ミンシク、マ・ドンソク、クァク・ドウォン
ワルキューレ
2008年
ブライアン・シンガー△ 英語と独語がちゃんぽん。ハリウッド映画にしてはよくできてるけど、同日観た『ザ・バンク 堕ちた巨像』とは、細部のリアリティやきめ細かさがまるで違う。観る前からわかってたけど、やっぱりトム・クルーズはドイツ人に見えません。 ヒトラー暗殺計画 テレンス・スタンプ、カリス・ファン・ハウテン
われらが背きし者
2016年
スザンナ・ホワイト◯ 市井の一市民がロシアン・マフィアと対決するかよ、という無理はさておき、サスペンス感たっぷりで楽しめるウェルメイドな娯楽映画でした。こういう映画はたいていガラガラで、映画観客の嗅覚の弱さが情けない。 ジョン・ル・カレ原作 ユアン・マクレガー、ナオミ・ハリス、ステラン・スカルスガルド
ワンダーストラック
2017年
トッド・ヘインズ◎ 映像ではなく映画的なマジックによる驚きを期待していた。少年の家族の物語をもっとていねいに描けなかったか。そこの厚みがないと話が弱くなる。もう一人の主人公を演じたミリセント・シモンズは表情が豊かで惹かれる。観たあとでミリセントの映画デビューだったことを知った。そして聾唖者の俳優だったことも。 オークス・フェグリー、ミシェル・ウィリアムズ、ジュリアン・ムーア


CINEMAテーブル2015年度版 CINEMAテーブル2014年度版 CINEMAテーブル2013年度版 CINEMAテーブル2012年度版 CINEMAテーブル2011年度版 CINEMAテーブル2010年度版 CINEMAテーブル2009年度版 CINEMAテーブル2008年度版 CINEMAテーブル2007年度版 CINEMAテーブル2006年度版 CINEMAテーブル2005年度版 CINEMAテーブル2004年度版 CINEMAテーブル2003年度版 CINEMAテーブル2002年度版 CINEMAテーブル2001年度版 CINEMAテーブル2000年度版 CINEMAテーブル1999年度版 CINEMAテーブル1998年度版 CINEMAテーブル1997年度版 CINEMAテーブル1996年度版 CINEMAテーブル1995年度版 CINEMAテーブル1994年度版 CINEMAテーブル1992年度版 CINEMAテーブル1991年度版