昭和の俳優シリーズ:井川邦子

   井川邦子 いがわくにこ、1923年10月15日 - 2012年10月4日

昭和の映画の大スターは数あれど、その中にカリスマ性のある美形は少ない。なぜこの人が大スターなのかわからない人が多いし、美形でもないのに絶世の美人の役を割り振られていて白けること、多々ある。はっきり名前を出そう。田中絹代、浅丘ルリ子、高峰三枝子、原節子、久我美子、京マチ子、美空ひばり。

大スター女優でカリスマ性のある美形はあまり多くない。山口淑子、岸恵子、佐久間良子、岩下志麻、鰐淵晴子、八千草薫、岡田茉莉子、南田洋子、渡辺美佐子、有馬稲子、小山明子、司葉子。あげると案外いましたね。でも、ここまでです。

井川邦子は惜しいところまでいったと思うが、結局大スターになれなかった。なぜなれなかったのか。ブレークする代表作に恵まれなかったことが最大の原因でしょう。出演作選びがまずかったのでしょう。

ネット上の写真を探してて気づいたのですが、井川邦子の写真はろくなのが出てませんね。なんでこんなのしかないの。親しみを感じさせる美人なんですよ。ブレークできなかったことに、ポートレート写真が影響した可能性ありますね。

チャンスはあった。木下恵介の『カルメン故郷に帰る』。主演は高峰秀子なんですが、この時の高峰秀子はなぜか精彩がない。かなりいい年したおばちゃんがストリッパーをやってるという、うらぶれた雰囲気がありました。

この『カルメン故郷に帰る』で井川邦子は、盲目の夫(佐野周二)を支える幸薄い女性を演じている。『二十四の瞳』の川本松江役の延長線上にあるような役だ。表主演の高峰秀子に対する裏主演のような役柄で、対照的な立ち位置だった。

これは想像だが、木下恵介監督は作品に恵まれていない井川邦子を不憫に思ったのではないか。「裏」の井川をメインにし、「表」の高峰を引き立て役に回した、とまで書くと、想像力が飛びすぎてるか。

いや実際、この映画で光ってるのは井川邦子のほうですよ。感情移入するのは高峰秀子のほうでは絶対ありませんよ。にもかかわらず、以後もこれといった代表作に恵まれず、終わった。

 2021.4.15

(出演作品一覧は省略します)

『カルメン故郷に帰る』

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