突然!ネタばれしても委員会

『シークレット・ヴォイス』



シークレット・ヴォイス




 ここはネタばれオンリーのコーナーです。
これから観る方は、観てから読んでくださいね。

『シークレット・ヴォイス』
2018年度作品 監督:カルロス・ベルムト 配役:ナイワ・ニムリ、エバ・リョラッチ、カルメ・エリアス、ほか 配給:『シークレット・ヴォイス』上映委員会 原題:Quién te cantará


 国民的歌手が記憶をなくし、歌えなくなった。それで歌と踊りを完コピしてる ファンを連れてきて、教師に仕立てて復活させようとする。  単純に書くとそんな話。ではあるが、後半に転調し、「実は…」となる。  歌手はリラ・カッセン。ファンはヴィオレタ。スペイン映画なので、正確には ビオレタなのだが、ヴィオレタと表記されてるのでそれに従う。  リラを演じる。ナイワ・ニムリは特異な風貌で、それでいてイノセントな雰囲 気が漂う。カリスマ性のある役にふさわしい。対してヴィオレタ役のエバ・リョ ラッチは普通のおばさん。しかし後半では想定外の能力を見せる。  この映画、説明を極力排してる無愛想な映画なので、しっかり目をこらす必要 があります。いろんな要素について書きこむと長大な文章になりそうなので、刈 り込んであとは省略します。  いくら観ても解釈のしようのない部分が一つ残る。「自分の家に電話して」と、 スマートフォンをリラに渡すヴィオレタ。どういうことかとくり返し前後を観た が、ヒントも何もない。ここで大きな転調が起こるので、重要なセリフに違いな いのだが。家に電話して誰と話せというのか。死んだはずのリラの母親、リリが 実は生きてた、とか。それをほのめかす描写はないので、ありえない。  母親のリリは、リラが与えた大量のヘロインを摂取して死んだ。母親の作った 曲を自作と偽って歌手活動してたことがバレるのを恐れて殺害したようなものだ った。  エンド近くで、ヴィオレタの自作曲を大劇場のステージで熱唱するリラ。大観 衆の喝采を浴びる。それを背中に聞きながら、ヴィオレタは静かに劇場を去り、 海に入り、消えていく。動機は明示されない。  海に入る直前のシーンだが、アパートの室内にヴィオレタの放蕩娘、マルタの 死体がブッ転がっている。死ぬシーンは描かれない。自殺か、ヴィオレタが殺害 したか。おそらく後者なんでしょう。それはリラの秘密を守るため。  血まみれの死体を、まるでペットボトルでも転がってるかのように無視し、死 に備えて着飾るヴィオレタ。秘密を完全に封じて入水した、と見るのが正解か。  久々にずしりとくる手応えのある映画だった。前作の『マジカル・ガール』を 観てないんです。反省します。これから探します。 リラ・カッセン    2021.8.15




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