突然!ネタばれしても委員会
第8回
『ライク・サムワン・イン・ラブ』
ここはネタばれオンリーのコーナーです。
これから観る方は、観てから読んでくださいね。
『ライク・サムワン・イン・ラブ』
2012年度作品
監督:アッバス・キアロスタミAbbas Kiarostam
原題:Like Someone In Love
配給:ユーロスペース
配役:奥野匡/高梨臨/加瀬亮/でんでん/鈴木美保子/窪田かね子/岸博之/
森レイ子/大堀こういち/辰巳智秋/春日井静奈、他
サミール・ナデリの『CUT』もだったが、アジアの監督を使って新しい日本映画
を作ろうとする試みがどうにもうまくいってない。こちらはうまくいったかのように
見えたのに、結局失敗している。
何が問題なのか。制作スタイルに問題があるのではないか。キアロスタミ監督は俳
優に毎日一日分の台本しか渡さなかったそうだ。本国イランでは素人俳優を使うから
それでいいのかもしれないが、こっちじゃプロの俳優が演技する。全体が見えないと
演技計算ができない。だから話がうまくつながらなかったのだと思う。
ストーリーに矛盾があっても、キャスト・スタッフが指摘できなかったということ
はあるだろう。後半はガタガタで、ツッコミどころだらけ。なんでノリアキがタカシ
の家へ乗り込んでくる? 場所を知らないのに。あとをつけてきたというのは説明に
ならない。明子が風俗(デート嬢)やってることも、ノリアキにバレるような話の流
れになってない。話の矛盾をいちいち全部あげつらうと長文になるので、それだけに
する。
意味のないシーンの多発も気になった。タカシが信号で停車して居眠りするシーン
は長いが、映画の前後でつながるものがない。無意味なシーンやカットは多い。なん
のために上映時間を引き伸ばしてるのか。90分足らずだと短すぎると考えたのか。
主演の奥野匡はセリフと動作のないとき、チック症かストレスゆえと思うが、始終
首から上をぐねぐねと動かし続ける。落ちつくべきところでも落ちつきなく動き続け
るので、ひどく見苦しい。止められなかったのか。
欠点ばかりあげつらったが、魅力あるシーンが前半にはある。タクシーに乗る明子
がおばあちゃんからの留守録を聞き続けるシーンには心動かされる。後半にはこれと
いったシーンがない。
日本国内で日本映画を撮ることにこだわる必要はない。俳優もスタッフもどんどん
外へ出ていって仕事したらいい。外国人とは感覚的な違い、制作手法の違いはある。
コラボを重ねて、もっと日本映画の可能性を拡げていってほしい。
2012.10.24 |