突然!ネタばれしても委員会
第15回
『ふたり自身』とジーニー・バーリン
ここはネタばれオンリーのコーナーです。
これから観る方は、観てから読んでくださいね。
『ふたり自身』(とジーニー・バーリン)
1972年度作品
監督:エレイン・メイ
原題:The Heartbreak Kid
配役:チャールズ・グローディン、シビル・シェパード、ジーニー・バーリン、
エディ・アルバート、オードラ・リンドリー、アート・メトラノ、ほか
大昔、『ペーパー・チェイス』併映作として、なんの情報もなしに観た映画。
『ペーパー・チェイス』も面白かったが、インパクトは『ふたり自身』のほうが
強かった。意味不明な日本語タイトルはペケだが。
あらすじはシンプル。意気投合して結婚した相手との新婚旅行中に、運命の女
性と巡り合ったと思い、即離婚して乗り換えるという話。女性が観れば怒り心頭
という筋だが、監督は女性。これは男の「性」に対する風刺コメディでした。
今回観直して気づいたが、冒頭近くの結婚式、ラストの結婚式で同じ曲が四つ
も使われている。メンデルゾーンとワーグナーの『結婚行進曲』。『I’d Like
to Buy the World a Coke』。そしてバカラックの『クロース・トゥ・ユー』。
使用順序は異なる。特に『クロース・トゥ・ユー』が強調されている。
ラストシーンで、主人公(チャールズ・グローディン)が『クロース・トゥ・
ユー』を口ずさみながら微妙な表情を見せる。同じ状況をリピートしてるような
錯覚にとらわれ始めている。運命の女だと思ったのもまた間違いだったのではな
いか。そんな疑問が立ち上ってきている。そんな表情だ。くどいほどに同一曲を
二つの結婚式で使用してるのは、リピート感を強めさせる演出効果だった。
ファレリー兄弟の手により、2007年にリメイクされている。主演はベン・ステ
ィラー。日本語タイトルは『ライラにお手あげ』で、原題は同じ。演出は新作の
ほうがシャープだし、エンドも効果的に書き換えられている。しかし最初の衝撃
が強く、『ふたり自身』のほうに愛着がある。
捨てられる花嫁を演じたのはジーニー・バーリン。この役によってアカデミー
賞助演女優賞の候補になった。彼女にとって唯一スポットライトの当たった瞬間。
その後は悲しいほどに作品に恵まれなかった。彼女の母親はこの監督のエレイン
・メイです。
エレイン・メイ自身も、俳優としてはともかく、演出家としては『ふたり自身』
以外にこれといったものはない。監督には向いてなかったというか。母娘とも、
この映画が代表作? 『ふたり自身』はそういう意味? ンなこた、ないよな。
YouTube『ふたり自身』(別ウィンドウ、日本語字幕なし)
2016.5.28 |