あやうし日本映画




あやうし日本映画



 日本映画のデータベースを作っているので、映画タイトルの外国語訳も調べます。なるほどという名訳もあればトンデモな迷訳にもぶつかる。自動翻訳ですませてるんじゃないかと思えることもある。僕も手抜きして自動翻訳の英文を使ってるのであまり言えないけど。

 内容を確認もしないで、逐語訳ですませてる場合が多い。ひどいときは逐字訳で、『銀河』(清水宏1931)が"Silver Stream"と、完全な誤訳。「銀河」は"Milky Way"です。『一本刀土俵入り』(衣笠貞之助 1934)は"A Sword and the Sumo Ring"。『大当り三色娘』(杉江敏男1957)は"Big Hit Three Color Daughters"。

 『姿三四郎』(岡本喜八1977)は"Figure Sanshiro"。外国人が読んでもわけわかりません。『怪談蚊喰鳥』は"Ghost Story of Kakui Street"ですと。「鳥」が"Street"らしい。『第五福竜丸』は"Lucky Dragon No. 5"。核実験の犠牲になってなにがラッキーなんよ。ブラックユーモア?

 日本語の情感が吹っ飛ぶイージー訳も多い。"Dancing Girls of Izu"。すごいでしょう。伊豆が地名ということすらわかってない。"The Izu Dancer"というのもあります。森鴎外の『舞姫』(成瀬巳喜男1951)も"Dancing Girl"だと。クラブで踊り惚けてるコギャルかよ。『鞍馬天狗』(マキノ雅弘1959)は"Goblin of Mt. Kurama"。鞍馬天狗は人間ですって!

 総じて日本語タイトルの微妙な味わいが消され、無味乾燥なタイトルに変更される。英語って、すごく味気ない言語じゃないかと思えてくる。『吾輩は猫である』は"I Am a Cat"。微妙なニュアンスはどこにもない。『恋慕小唄』(清水宏 1929)は"Short Song of Love"。『殺陣師段平』(マキノ雅弘1950)は"Fencing Master"。『金色夜叉』(清水宏1937)は"The Golden Demon"。枚挙にいとまなし。

 『甲賀屋敷』(衣笠貞之助1949)は"Koga Mansion"。で『忍びの者 伊賀屋敷』(森一生 1965)は"The Ninja: Iga Mansion"。冗談みたいでしょう。

 悪いのばかりあげつらっていては不公平です。まじめに内容を噛み砕いたタイトルもあるのです。『蟻の街のマリア』(五所平之助1958)の"Ragpicker's Angel"は、なかなかだと思っているのです。『股旅千一夜』(稲垣浩1936)の"Matatabian Night"も、なかなかイケています。

 『有りがたうさん』(清水宏 1936)の"Mr. Thank You"は間違ってるように見えますが、路線バス運転手のニックネーム。映画を観ればなるほどとわかるわけです。

ひょっこり通信 2013.6.16




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