終末映画の娯しみ『フィフス・ウェイブ』



フィフス・ウェイブVSセブンス・ウェイブ


『フィフス・ウェイブ』
2016年度作品 監督:J・ブレイクソン 出演:クロエ・グレース・モレッツ、リーヴ・シュライバー、ニック・ロビンソン、アレックス・ロウ、マイカ・モンロー、ほか 原作:リック・ヤンシー 原題:The 5th Wave

 これもクロエ・グレース・モレッツが主演する『マザー アンドロイド』と似ている点が多い。記憶が錯綜し、どっちがどっちなのかわからなくなることもあった。

 強大な「敵」の出現により人類が壊滅的な状況に陥るSF映画という点が似通っている。敵が人類に対して仕掛ける罠が悪辣でおぞましい点も似ている。

 『フィフス・ウェイブ』で「敵」は地球を侵略する異星人。なんらかの理由で故郷の星を捨て、地球を乗っ取ろうとする。彼らから見ると人間はゴキブリみたいなものだ。じゃまな人類を効率的に駆除しようとする。五つの波が人類を襲うように、多様な攻撃を仕掛けてくる。そのたびに人類は大きく数を減らしていく。

 エンドは妙に明るい。戦いにおいて、点としての勝利を一つ獲得したせいで気が大きくなったようだ。状況を見れば、人類にとって悲惨な状況は変わってないのに。

 IMDbのサイトの投票を見ればこの映画の評価が低いことがわかる。映画そのものの評価が低いのとはちょっと異なる。多くの米国人観客はアンハッピーな映画を好まない。単細胞な米国人は単純な「勝利!勝利!」映画を期待して観ている。

 米国に限らず、日本でもいるだろう。自分の観たい映画から外れると修正できず、クソミソにこきおろしたがる。自戒を込めて書くが、自分の狭い視野のみにとじこもってては、成長はない。

 細かいツッコミどころの多い映画だが、魅力が上回る。この映画の魅力は熾烈さそのもの。それを快く受け入れる度量がなければ、終末映画を娯しむことはできない。

クロエ・グレース・モレッツ


   2022.8.17




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