騒ぎのあとで


騒ぎのあとで

米国史上まれに見る大騒動となった大統領選挙もようやく決着がついた。が、これで終わったわけではない。大きな懸念材料が残った。

米国の大統領では人格的に史上最低の人物が、あれだけネガティヴ材料満載の中、接戦に持ち込み、7400万票を得票し、史上第2位の得票数となった(1位は書くまでもないでしょう)。このことは軽視してはならない。この数字について、当然本国アメリカでは分析が進んでることと思う。

原因として、「反知性主義」が語られている。わかりやすく言えば「インテリに対する反発」です。反知性の人たちは物を考えることをせず、常に受け売り。そのくせ自分では考えているつもりになっている。自分自身を欺いているにすぎないので、本当に自分で物事を考えられる人を目の当たりにすると、嫉妬心を抱く。はたしてそれが原因なのか。

反知性主義より所得格差の問題のほうが大きなウェイトを持っていそうだ。世間的には富豪で通っているトランプが貧者の味方のはずがないことは、常識で考えればわかること。しかし格差社会の中で置いてきぼりを食らっている人たちは、「トランプが何かを変えてくれる」と信じる。実際のトランプの政策では弱者に配慮した形跡はない。富裕層への減税はやったけど。


対中国政策に関する誤解もありそうだ。中国政府の非常識で横暴なふるまいは米国のみならず、世界にとっての大きなリスク要因になっている。この認識は右も左もなく一致している。

大統領選挙の候補者レヴェルなら、ほとんどの者は「対中国強硬策」で一致する。一人だけ例外がいる。トランプ元大統領だ。

トランプが対中強硬政策をとってたのは、国際情勢に即していたからではない。彼にとって外交は取引。自分自身にとって有利な条件を引き出しさえすれば、あっさりひるがえす。国のことも世界のことも顧みない。その自己チューぶりがリスク要因になっていた。

トランプ=対中国強硬姿勢という、ズレたイメージが一人歩きしている。誰かが意図的に拡散させたのかも。物事を深く考える習慣のない者はイメージにコロッと騙されてしまう。


米国の分厚い共和党支持層の存在を忘れていた。共和党の支持者は多い。6000万人もいる。彼らのうち、一部は棄権し、ごく一部はバイデンに投票した。それ以外(過半数)はトランプに投票していた。差し引きすれば計算は合う。

共和党の支持者といってもトランプに対してのスタンスはさまざま。多くはトランプを支持してなくても共和党だというだけで投票する。誰が党の候補者になろうが、一定の基礎票は取れる。7400万人全員がアホなわけがないとわかって、ほっとする。

メディアに露出してるトランプ支持者たちはみな「イっちゃってる」人たちなので、投票した人たち全員がそうなのかと錯覚しかけた。イっちゃってる人たちは、自分にとって気分のいい情報のみを選択的に受け入れ、事実かどうかの検証をせずに浴び続ける。これは「自己洗脳」。治癒は難しい。


トランプは4年後も立候補するつもりだ。共和党幹部の大半は今のところ、立場を鮮明にしていない。第2位の得票が物を言っている状況だ。トランプの人気が持続すれば共和党の次の候補になる可能性はある。はたして4年後まで人気が持続してるだろうか。それは難しい。

トランプの御用報道官のごとくだったFOXニュースはあっさりトランプを見切り、他の報道より早くジョージア州での「バイデン勝利」を打った。当然トランプは激怒したが、身内からも離反は続いている。寝返りは共和党内で続くと思われる。

大統領特権を失うことにより、検察や連邦最高裁へのにらみがきかなくなり、トランプ離れは当然じわじわと進む。権力を失えば、ただの「被告・容疑者」。水に落ちた犬は打たれるのみ。

不完全な民主主義というものを再考するために与えられた4年間だった。トップは誠実で、ルールを遵守するのが当たり前、という前提条件を見直す必要がある。

日本でも同じことが起こりうる(すでに起こってるか)。権力の暴走を阻止する策がぜひ必要、ということです。


ひょっこり通信 2021.1.1 (通信の発行は2月21日となっています)

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